Earth is now our only shareholder ― 地球が私たちの唯一の株主 2022年9月、パタゴニアの創始者イヴォン・シュイナードは本人及びその家族が保有している会社の全株を、環境保全活動を推進するNPOと、パタゴニアの企業理念や価値観を永久的に引き継いでいくことを目的とした信託に譲渡すると発表しました。 “We're in business to save our home planet” 「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」 私たちの存在意義を示すこのミッションステートメントを確実に実行していくために、他に例をみない手法で会社体制の変更を行いました。パタゴニアはビジネスを通じ、非凡な手法をとりながら地球環境を守っていくことに真剣に向き合っている会社です。 パタゴニアは、主にスポーツ・アウトドアウェアを扱うアパレル企業です。しかし、創業当初から自分たちのビジネス慣行を常に見直し、より環境負荷の少ない方法を取り入れ続けています。その取り組みは環境にとどまらず、環境を守るために必要となる公正公平な社会を実現するため、社員一人一人が日々自分にできることを模索しながら仕事に取り組んでいます。 地球を守ること、そのためにはまず、人権を守ること。 ストア単位の取り組みから、地球全体の問題解決まで、様々なレベルでの挑戦は続きます。 写真：横山泰介 TAISUKE YOKOYAMA

■ 「地球を守る」ミッション達成には、多様な意見と多様な社員が必要！ 地球環境を守るためのタイムリミットは刻一刻と迫っています。その中で会社体制の変更のような大胆なアイデアは、多様な社員、多様な意見と日常的に触れ合うことから湧いてくると考えます。それと同時に、環境問題は人種差別や貧困問題などの人権問題とも深く関わりがあります。パタゴニアはフェアトレードはもちろんのこと、環境問題を最前線で取り組んでいる方々を直接支援することで社会構造の根本に働きかけていきます。 アメリカ本社や日本支社の取り組みに加え、社員それぞれが大切にしているフィールドや、解決したい課題に対して時間を使えるよう、パタゴニア独自の制度が整っています。全社員が付与の対象となっているアクティビズムアワーという制度を使えば、年に最大5日間（就業条件により）の有給休暇を環境や社会活動に充てることができます。その他にも環境インターンシップ制度では、最長2か月間、環境団体のサポートを行えます。 ■ コミュニケーションを通じて、社員一人ひとりが柔軟に働くことのできる環境！ たとえば、障がい者雇用で例を挙げると、チーム全体でその人の特性や状況を配慮した上で最大限のパフォーマンスが発揮できるよう配慮しています。 自分のチームのスタッフにどんな障がい特性があるのか、どういうサポートが必要なのか、パーソナリティはどうか、どういった勤務体系が最適なのか、どの勤務時間帯にパフォーマンスが良い/悪いのか、などの情報を通じて、チームメンバーにサポートしてほしいことをしっかり伝え、協力体制を作ると共に、よりお互いの理解が深まるよう留意しています。 また、LGBTQ+を開示してくれている社員の中でも、自分の家族についてオープンに話してくれる社員を招き、アメリカ本社のLGBTQ+のコミュニティと一緒にセッションを行ったことがあります。どういう風に考えていて、どういう風に暮らしているのか、といった対話を通じ、自分の中の多様性・画一性にも気づけるプロセスです。 このセッションをきっかけに社内でLGBTQ+に限らず、Justice, Equity, Diversity and Inclusionについて会話を持ち、考えていく社内ワーキンググループが発足し、様々な視点からパタゴニアにおける公正・公平・多様性・インクルージョンについての取り組みを進めています。 社内での問題意識があるだけでなく、それぞれの価値観を大切にする傾聴の姿勢があるからこそ、こうして多様な社員が個性を活かして働くことのできる環境があると考えています。

■パタゴニア 5つのバリュー 1 最高の製品を作る 2 不必要な悪影響を最小限に抑える 3 ビジネスを手段に自然を保護する 4 従来のやり方にとらわれない 5つめとして「公正さ」が挙げられます。パタゴニアはこの先も人、社会、環境に対しての公平性を実現するために必要な取り組みを行っていきます。 これらバリューを体現するため、社内でよく使われる言葉は「言葉よりも行動」です。 たとえば現在のやり方よりもより環境への悪影響を抑えられるかもしれない、など何か新しいアイデアを思いついた場合、チームのサポートを得ながら挑戦できる環境が整っているため、失敗を恐れずにアイディアを実行に移すことができます。これは、パタゴニアの社員一人一人が上記バリューを常に意識していることの表れでもあります。 ■大切なものに妥協せず働く、ユニークで芯のある社員たち。 「パタゴニア」と聞くと、アウトドアやスポーツ用品を思い浮かべるかもしれませんが、食品の取り扱いや、環境への取り組みなど、仕事内容は様々です。 日常的にはアウトドアアクティビティをしない社員や、環境への活動に積極的に取り組んでいる人、ファミリーとの時間を大切にするライフステージにいる方など、それぞれの価値観を大切にする、多様な社員が集まっています。 守るものがしっかりあって、その守るべきものを全員で一緒に守っていく、という考え方が普及しています。ユニークで、その人自身にとって「守るもの」がしっかりしてる社員が多く働いています。