「ストレート」とは【差別的って本当?】

ライター: JobRainbow編集部
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ストレートとは、身体的性と自分で認識している性が一致していて、かつ異性を愛するセクシュアリティです。

自身を男性と自認し、性的指向が男性のセクシュアリティをゲイ、自身を女性と自認し、性的指向が女性のセクシュアリティをレズビアンといいますが、性的指向が異性のセクシュアリティのことを「ヘテロセクシュアル」といいます。

そして、ヘテロセクシュアルであり、かつ身体的性と性自認が一致している人(シスジェンダー)が「ストレート」と呼ばれます。ゲイバーなどでは「ノンケ」とも呼びます。

また、LGBTのことをよく理解し、支援の意志があるストレートは「ストレートアライ」といいます。LGBT支援に関心のある方は耳にしたことがあるかもしれません。

他方で、「『ストレート』という言葉は、ストレートではない同性愛者たちが曲がっている、歪んでいるかのような印象を与えてしまうため差別的である」という言説を目にすることがありますが、本当なのでしょうか。また、同じ異性愛者という意味で使われる「ノーマル」という言葉に問題はないのでしょうか。

この記事ではいくつかの用語を解説しながら、「ストレート」という言葉にまつわる誤解を解いていきます。

「ストレート」って何?

ストレート」とは、性的指向が異性のセクシュアリティを指す一般的な呼称のことです。

初出は1941年。George W. Henry著『Sex Variants: A Study Of Homosexual Patterns』という本に「ストレートは「同性愛者ではない」という意味で同性愛者たちによって使用されている」という記述があります。

「ストレート」は少し古い英語の慣用句で「従来の道徳や法律を守るふるまいを通じての、実直な生活。正直でまっとうな暮らし」を指す”straight and narrow path”からきており、さらにさかのぼるとマタイによる福音書7章13、14節「狭い門を通って入りなさい」の誤読(聖書では”straight”ではなく”strait” the gate)や、「堅苦しい(strait-laced)」という言葉などが語源であるとされています。
「まっすぐである」という意味の「ストレート」ではありません。(参考:「異性愛者をストレートと呼ぶのは、同性愛者が『曲がって/歪んでいる』ってことになるからダメ」説が疑わしい件について

「ストレート」は差別的?

「ストレート」という言葉はもともと同性愛者の側から使い始めたのであり、マジョリティがマイノリティを「歪んでいる」と揶揄する目的で作ったものではないということ、その語源も「まっすぐ」という意味の「ストレート」ではないということがわかりました。

したがって、ストレートという表現は差別的ではありません。

同性愛者を支援する団体、LGBT研究の教科書もストレートという言葉を否定的なものだと捉えずに使用しています。ストレートは差別的な表現だという意見は言葉の表面的な見た目に基づく誤解によるものだと考えて良いでしょう。

「ノーマル」には気を付けて!

「ノーマル」という言葉を、異性愛という意味で使われているものとして、たとえば漫画のジャンルが挙げられます。

  • 男性の同性愛を描くフィクションのジャンルを「BL(Boys Love)
  • 女性の同性愛を描くフィクションのジャンルを「GL(Girls Love)
  • これらに対して、男女の恋愛を描いたものを「NL(Normal Love)

しかし、異性愛を「ノーマル」と称するのは、「人は皆異性を愛するものだ」という考えを強めてしまう可能性もあります(このような考えは、「異性愛規範」「ヘテロノーマティヴィティ」と呼ばれています)。

なぜなら、「ノーマル(Normal)」の名詞形が「ノーム(norm、規範)」であることからわかるように、ノーマルには「普通である・規範的である」というニュアンスがあるからです。

代替案として「HL(ヘテロラブ)」が使われることもあります。しかし、作中で明言されていない人物のセクシュアリティをヘテロセクシュアルだと決めつけてしまうことがあり、この表現も問題がないと言い切るのは難しそうです。

また、「BG(Boys&Girls)」ならフラットかといえば、そもそも「Boys」「Girls」といった表現は登場人物がシスジェンダーであると決めつけており、性別二元論的でもあり……と指摘を続けていけばキリがありませんが、できるだけ包摂的な表現を探しつづける余地はありそうです。

「ストレートアライ」って?

虹色の旗の画像

アライ(Ally)」とは、「自身のセクシュアリティに関わらず、LGBT全体を理解し支援する人」のことです。英語の「alliance(同盟、提携の意)」からきています。

ストレートの方がアライである場合、特に「ストレートアライ」といいます。もともと非当事者(ストレート)の方がLGBTに理解、支援の意を示すときに使われていた言葉ですが、最近は当事者だとしてもセクシュアリティはさまざまであり、自分とは別のセクシュアリティへの理解・支援の意を表明することの重要性から、当事者同士でも「アライである」と立場を表明することが増えています。

「アライである」と表明するためには

「アライである」という意思表示には、どのような方法があるのでしょうか。

実際のところ、アライであることはなにも難しいことではありません。例えば、以下のような言葉遣いによってアライであるという気持ちを伝えることができます。

  • 子供の親に話しかけるとき、「お嬢さん」「息子さん」という性別を特定する表現を使うのではなく「お子さん」と言う
  • 「男らしい」「女らしい」というジェンダー規範の強い言葉を使わない。「○○らしい」と言いたいとき「○○さんらしい」と言う
  • 「ホモ」「おかま」「レズ」等の差別用語を使わない。「ゲイ」「レズビアン」といった中立的な言葉を使う

すべての価値観に平等に、真摯に向き合う姿勢さえあれば、誰でもアライになることができます。これからももっとアライであることを表明してくれる人が増えたら嬉しいですね。

おわりに

同性愛者に比べて数が多い異性愛者にも、ゲイやレズビアンと同様にセクシュアリティの名称があると知ることで、「異性愛者=当たり前」という考えに一歩距離を置くことができるのではないでしょうか?

筆者はゲイやレズビアンの人がストレートという言葉を使用するのを目にする機会が多いという体感を持っていたのですが、そもそも同性愛者の方が使い始めた表現であると知り腑に落ちました。ゲイやレズビアンの人は、ヘテロセクシュアルの方に比べて異性愛が「当たり前」ではないと気付きやすい立場にあるからかもしれませんね。

今回の記事が、「ストレート」という言葉について知識を深める手助けができれば幸いです。

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