【用語解説】ゲイとはどんなセクシュアリティ?【「ゲイだから」センスある?】

ライター: JobRainbow編集部
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LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーの頭文字をとったセクシュアルマイノリティの総称)の中でも、マツコ・デラックスさんをはじめ、カミングアウトして活躍している芸能人が多い印象があるのが、ゲイではないでしょうか。

でも、ゲイに対して偏見を持っている人が多いこともまた事実です。

実際、つい先日「ゲイがいてもいいけど、好かれたらキモい」という男性の発言を受け、ライターの小野美由紀さんがコラムにて問題提起したことも話題となりました。

(参考:「ゲイがいてもいいけど、好かれたらキモい」発言にキレた話

また、「ズバズバものを言う人」「女装している男性」……なんてイメージだけがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ですが、ゲイの方が全員女装しているわけではないですし、歯に衣着せぬ発言をするわけでもありません。だって、そもそも異性愛者全員に共通する特徴があるか、って言われたら、そんなことはないですよね。

そこで、今回のコラムでは、ゲイとはどんなセクシュアリティなのか、改めて解説します!

※なお、「ホモ」という表現は「ホモセクシュアル」の略語であり、「同性愛者全般」を指す呼称なのですが、日本においては男性同性愛者に対する蔑称として使用されてきた(馬鹿にしたり揶揄したりするときなど)ため、今回のコラムでは使用いたしません。たまに「ホモ」を自称するゲイ男性はいるのですが、だからと言って他の人に当たり前のように使ってはいけません、気をつけましょう!

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ゲイとはどんなセクシュアリティ?~性自認と性的指向~

二人で手をつないで歩いている画像

ゲイとは、自身のことを男性として認識しており、かつ男性が好きなセクシュアリティを指します。

「自身の性をどう考えているか」は性自認、「どの性を好きになるか」は性的指向というのですが、これらの用語を使って説明する場合、性自認が男性であり、性的指向が男性に向いていると言うこともできます。

よく似たような表現として、「オネエ」という言葉が使われることがありますが、これらはゲイとは意味が異なります。

ゲイは「男性として男性が好きである」というセクシュアリティを指します。逆に言えば、それ以外の意味はありません(英語圏では女性同性愛者のことも”Gay”と表現することがあるのですが)。

つまり、「ゲイ」というセクシュアリティに性自認と性的指向以外の観点はかかわってきません。

性自認と性的指向以外かかわってこないとはどういうことかというと、例えば、

・身体的性(身体構造における性)が男性であり性自認(自身の性に関する認識)も男性、そして性的指向が男性に向いている場合

……シスジェンダーのゲイ男性

・身体的性が女性であり性自認は男性、そして性的指向が男性に向いている場合

……トランスジェンダーのゲイ男性

ということができます。

つまり、身体的性や性的指向といった観点は、ゲイかどうかとはかかわってこないのです。

また、性的指向は好きになる相手の身体的性ではなく、性自認を基準にして決められます。この「性を考えるうえでは各人の性自認を基準とする」という姿勢はWHOからも公式に発表されている考え方です。

一方、「オネエ」という表現は非常に曖昧で、「”女性らしい”言動をする男性」「女装している男性」「ゲイ男性」これらをまとめるものとして使われることが多いです。

ここに、ゲイを取り巻く誤解があります。

テレビやインターネットでよく登場する「オネエタレント」の多くは性的指向が男性に向いていることをカミングアウトしており、かつ女装しています。すると、「オネエタレント」=「ゲイ」という思い込みが生まれてしまい、これらがごちゃ混ぜになってしまっているのです。

次の章では、こうした混乱について一度整理していきたいと思います。

「わからない」でもいいじゃない】「男性」「女性」だけじゃない、性自認って何?

【変わることもあるって知ってた?】「性的嗜好」じゃない!今きちんと知っておきたい「性的指向」とは?

「男」「女」だけじゃない?身体的性とは【身体的「性別」って言わない方がいい……ってどういうこと?】

トランスジェンダーとは?「広義」「狭義」ってなに?【性同一性障害との違いとは】

「オネエ」って何を指すの?~性の要素「性表現」~

目から涙が出ているような虹色のペインティングをしている人の画像

「オネエ」を考える際に登場するのが、「性表現」という概念です。

性表現とは、「自分のありたい性をどのように表現するか」です。

「オネエタレント」として今やお茶の間の人気者となっているマツコ・デラックスさんは、ゲイ男性であると同時に、性表現が女性である、ということができます。マツコさんの一人称は「あたし」「私」ですが、自身がゲイであるということを著書『マツ☆キヨ』にてカミングアウトしているので!

しかし、性表現が女性である人が全員ゲイであるとは限りません。

例えば、テレビなどで「女装教授」として活躍している、東京大学東洋文化研究所の教授、安冨歩さんは普段女装しており、性表現は女性だといえます。その一方、現在大阪大学で准教授を務めている深尾葉子さんと事実婚関係にあり、自分はゲイではないと雑誌のインタビューで明かしています。

(参考:女装東大教授・安冨歩「男性はまったく好きになりません」

これと同じことが、「言動」にも言えます。

「オネエタレント」としてメディアに登場する芸能人は、「歯に衣着せぬ物言い」「センスがある」「面白いことを言う」「性に貪欲」といった「キャラ付け」をされがちです。

しかし、芸能界という世界の演出がそういった誤解を招いているだけで、実際には性表現と人格に関係があるわけではありません。「男性としての性表現をしている人はみんな~」「女性としての性表現をしている人はみんな~」とひとくくりにはできないですよね。

一方、全く違った例もあります。

例えば、性表現が男性で、物腰が非常に柔らかい男性が、「女々しい」「オネエだ」と評されている場面はテレビだけでなく教育現場などでも見かけることがあります。ですが、物腰が柔らかいことは、性自認、性的指向、性表現のどれとも関係ありません。くわえて、「女々しい」といっても、女性全員の物腰が柔らかいわけではありませんし、また男性全員の物腰が柔らかくないわけでもありませんよね。

このように、広く安易に「オネエ」という表現が使われてしまっている結果、それらが「ゲイ」と結びつき、

ゲイ=オネエ=女装している、センスがある、ズバズバ物事を言う、面白い

ゲイ=物腰が柔らかい

などの不思議な誤解が生まれてしまっているのです。

「男性が好きだから○○」というように、あたかも人格と性的指向という全く別のものが結びついているような固定観念がうまれてしまうのは、少し不思議ですね。

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ゲイの社会運動

虹色の旗を掲げている人の画像

ダイバーシティの実現を目指すセクシュアルマイノリティ主体の運動は、過去から現在に至るまで数多く見られます。毎年東京で開かれるTRP(TOKYO RAINBOW PRIDE)などもその一種といえるでしょう。そのなかでも、ゲイやレズビアンなどの同性愛者が、自分たちに対する偏見を取り払うために展開してきた運動の歴史は古く、その根幹には二種類の運動が存在しています。

それが、ホモファイル運動ゲイ解放運動です。

1. ホモファイル(homophile)運動

……こちらは1950年代に起こった社会運動で、同性愛者が社会に既にある「男らしさ」「女らしさ」に従いながら、自分たちに寛容になってもらうよう求めました。

当時の西洋社会には、同性愛を「病理」としてみなすなどといった、同性愛者に対しての偏見や誤解を含んだ「あたりまえ」がありました。しかし、このホモファイル運動ではそうした「あたりまえ」をも受けいれていく方針をとっていき、結果としてはあまり成果を得られなかったようです。

しかし、ここで同性愛者同士の交流が盛んになっていき、次に紹介するゲイ解放運動へとつながっていきます。

2. ゲイ解放運動

……こちらは1960年代以降活発になっていった運動の総称で、ゲイに対する差別の撤廃を求めました。

きっかけのひとつは、1969年に起こったストーンウォール事件と呼ばれる事件だといわれています。

有名歌手ジュディ・ガーランドの追悼が行われていたゲイバー「ストーンウォール・イン」が、警察の不当な強制捜査の対象となった、この事件。当然、権利の侵害に納得のいかないゲイの人々は反発します。ここから、警察や公権力に対するゲイの抵抗、権利主張が活発になっていきました(以前からもゲイによる反差別運動はあったのですが、このストーンウォール事件が、各地のゲイ解放運動を大きく進展させました)。

この運動はホモファイル運動とは違い、同化主義的な方針はとらず、ゲイとして自分たちの文化や愛のあり方をそのまま主張しました。ゲイとしてのアイデンティティをもった連帯。こうした「ありのまま」「自分らしく」いたいという考え方は脈々と受け継がれ、今やゲイだけにとどまらず、誰もが「自分らしく」いることを願っているのではないでしょうか。

私たちが「自分らしく」生きたいと願う背景にある、昔の人々の戦いの記録や記憶。風化させずに、心に刻んでおきたいですね。

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AIDSが「ゲイの病」とされた過去

くしゃくしゃになったユーロ札の画像

HIV(ヒト免疫不全ウイルス)によって引き起こされるAIDS(エイズ、後天性免疫不全症候群)。そんなAIDSの最初の症例は、1981年にアメリカで報告されたもので、そこには「患者が男性同性愛者である」という情報が含まれていました。

そして厄介なことに、「ゲイの病」とされたAIDSはGRID(ゲイ関連免疫不全)などと呼ばれ、当時のアメリカにおけるゲイに対する偏見も相まって治療法や治療薬の開発・整備を後回しにされてしまったのです。

その結果、主にセックスワーカーなどの粘膜接触を伴う性行為の機会が多い方や、注射針を他人と共有する薬物中毒者を中心にAIDSが広がってもそれが放置されてしまうこととなりました。

しかしこれは、ゲイコミュニティに大きなインパクトを与えました。

「ゲイとしてのアイデンティティをもって活動していくことはもちろん重要だが、アイデンティティを持つだけでAIDS、HIVをはねのけられるわけではない……」

こうして、アイデンティティを重視した結果ある種独立していたゲイコミュニティが、問題解決のために社会に対してより強く働きかけるべく、マイノリティ全体での連帯というものに目を向けるようになったのです。

おわりに

パレードのような人だかりの画像

知っているようで知らなかったゲイのあれこれについて、今回はまとめてみました。

「いい誤解」なんてものは、世の中にありません。

「ゲイはセンスがいい」「ゲイは面白い」「ゲイは性に積極的」「ゲイは歯に衣着せない」……もちろん、センスが良くて、面白くて、性に積極的で、歯に衣着せないゲイの方もいるでしょう。ですが、そうではない方ももちろんいます。そんな方にとって、勝手な先入観を持たれることは、果たして嬉しいでしょうか。

また、ここで「ゲイ」の部分を「異性愛者」に置き換えてみましょう。「異性愛者はセンスがいい」「異性愛者は面白い」「異性愛者は性に積極的」「異性愛者は歯に衣着せない」。すると、「”異性愛者”とひとくくりにはできないでしょ!」という批判が来るのです。

ゲイであろうと、異性愛者であろうと、どんなセクシュアリティであろうと、性的指向や性自認とそれ以外の部分に、直接かかわりはありません。

事実をきちんと知っておくことが、差別や偏見に苦しむ人を減らすための第一歩だと私たちは考えています。

すべての方が自分らしく生きられるように、まずはゲイという概念について、正しい知識を持っておきましょう。

参考文献

JobRainbow