レズビアンとは?【当事者が徹底解説】
レズビアンとは、女性として女性を好きになる「女性同性愛者」を表します。
性的少数者全般を指す、LGBTの「L」に当たることでも知られていますね!
欧米では同性愛者をまとめて「Gay」と表現することがあるため、レズビアンの女性でも「Gay」と名乗る方もいます。日本で有名な「レズ」という呼び方には、ネガティブな意味合いが含まれることもあるため、「レズビアン」や「ビアン」と呼ぶことが主流です。
今回は、レズビアンの当事者から、レズビアン同士におすすめの出会い方や、あなたがレズビアンかどうかを知るための診断方法、リアルなレズビアンカップルの多様な形、日本におけるレズビアンの歴史、レズビアンに関するエンタメ情報まで、盛りだくさんの情報をお届けします!
自分はレズビアンか?診断してみよう
女性が好きな女性はレズビアン。こう説明してしまうと単純に感じられるかもしれませんが、実は性のあり方は多様で奥が深いもの。自分の性別に対する認識や、好きになる相手の性別なども、男性/女性の二択ではありません。
本章では、自分がレズビアンかどうかを自己診断できるよう、レズビアンの定義を解説します。
1. セクシュアリティは主観的
本題に入る前に、念頭に置いておいていただきたいことが一つ。それは、セクシュアリティ(性のあり方)は、自分のありたいように自分で決められるものということです。ですから、病院などで「あなたは同性愛者です」と診断されることはあり得ませんし、他人を「あの人は同性愛者だ」と決めつけることもできません。
このように、判断基準に幅があり、個人の感覚に委ねられていると、「それで大丈夫なの?」と不安に思う方もいらっしゃるでしょう。しかし、心配はご無用。人と人のコミュニケーションにおいては問題ないのです。
たとえば、初対面の人と話すときに、いちいち犬が好きか猫が好きか確認せずとも会話は成立しますよね。同じことがセクシュアリティにも言えます。
偏った見方にとらわれず、想像力を持って相手に向き合えば、互いを尊重しあう素敵なコミュニケーションが取れるのです。その具体的な方法については、「レズビアンには女役・男役ってあるの」3. コミュニケーションの注意まとめをご参照ください。
2. セクシュアリティの4つの観点
レズビアン診断にあたり、まず、セクシュアリティを理解・診断するにあたって基本の観点である4つの性、身体的性・性自認・性的指向・性表現を紹介します。
- 身体的性:からだの性。性染色体や外性器、内性器、性ホルモンといった身体構造における性。
- 性自認:こころの性。「自分は男/女だ」「自分は男でも女でもある/ない」というように自分で認識している性。
- 性的指向:好きになる性。「同性/異性が好きだ」「すべての性別が好きだ」「どの性別も好きにならない」など、恋愛感情や性的欲求がどんな性に向くか向かないか。
- 性表現:ふるまう性。ファッションや言葉遣いなど、自身のありたい性をどのように表現するか。
これらの観点は、セクシュアリティに関するさまざまな議論の整理に役立ちます。
3. レズビアンの定義
2で紹介した4つの観点からレズビアンは以下のように定義できます。
①身体的性:人によって自由
②性自認:女性
③性的指向:同性の女性
④性表現:人によって自由
したがって、一口に「女性が好き」と言っても、身体的性や性自認のちがいによって以下のようなバリエーションが生まれます。
- 出生時に女性と割り当てられ、自分は女性だと自認:レズビアン
- 出生時に女性と割り当てられ、自分は男性だと自認:ヘテロセクシュアル(異性愛)のトランスジェンダー男性
- 出生時に男性と割り当てられ、自分は女性だと自認:レズビアンのトランスジェンダー女性
- 出生時に男性と割り当てられ、自分は男性だと自認:ヘテロセクシュアル…等
また、性自認が女性であっても、「女性に加えて男性や他の性別の人も好き」という場合には、ほかのセクシュアリティの可能性があります。
- 女性だけを好きになる:レズビアン
- 女性も男性も好きになる:バイセクシュアル(両性愛)
- 相手の性別に関わらず好きになる:パンセクシュアル(全性別愛)
このように、性のあり方は十人十色なのです。
ただし、本稿でもすべてのセクシュアリティを紹介できている訳ではありません。ここまででピンとくるセクシュアルティが見つからなかった人は、ぜひセクシュアリティ診断ツールを使ってみてください。
レズビアンには女役・男役ってあるの?
レズビアンカップルのあいだで、「男性役」「女性役」といったポジショニングが必ずしも決まっているわけではありません。先に紹介した通り、レズビアンの性表現は人によって自由です。
したがって、一方が女性らしく振る舞い、一方が男性らしく振る舞うカップルもあれば、両者とも男性/女性らしいカップル、男性らしさ・女性らしさを意識しないカップルもいるのです。
これは、レズビアンカップルだけでなく、すべてのカップルに当てはまる話です。同性カップルに対する「どちらが男/女っぽいの?」「お母さん役はどっちなの?」といった質問は、「人はみな本来的には異性を愛するのだ」という異性愛規範の押しつけと受け取ることができますので、控えましょう。
しかし、レズビアンコミュニティ内のカルチャーとしては、性表現や性的役割を表す言葉があります。「フェム」「ボイ」と「ネコ」「タチ」「リバ」です。これらも、セクシュアリティと同様に自分で判断して自称するものなので、安易に尋ねたり決めつけたりしない方が賢明です。
1. フェム/ボイ
「フェム」「ボイ」は、カップル内での女役/男役を表す言葉ではなく、性表現の女らしさ/男らしさを表す言葉です。性表現は、言葉遣いや髪型、ファッションなど、「社会に自分をどう見られたいか」に基づいてどのように装うかです。
ここで「男らしい服装をしているのが男役なんじゃない?」「女らしい言葉遣いなら女役じゃん」と思われた方もいるかもしれません。それでは、異性同士のカップルで考えてみてください。
たとえば、「いわゆる男らしいよそおいが苦手」でロングヘアにしている男性と、「女性らしく見られるのが好きじゃない」と髪を短く切りそろえている女性のカップルがいたとしましょう。このカップルで、男性が女性役、女性が男性役をしているとは決めつけられないはずです。性表現と性的役割は一致しないことも多々あるのです。
2. ネコ/タチ/リバ
「ネコ」「タチ」「リバ」は、性行為や恋愛関係上、自分はどういう立ち位置を好むか・得意とするかを表します。性行為や恋愛関係のうえで、「ネコ」は受け身、「タチ」は能動的なことを指し、どちらでもという場合は「リバ」と表現します。
すべてのレズビアンが「ネコ」「タチ」「リバ」のいずれかに分れるわけではなく、「タチ寄りのリバ(受け身にもなれるが能動的になることが多い)」といった中間的な表現をする人や、どれも標榜しない人も多く居ます。
ここまで読んで、「受け身なネコが女役で、積極派のタチが男役ってことね!」と思われたかもしれません。実際に、世間ではそのような言葉の使われ方をすることも多くあります。
しかし、「女性は受け身で男性は積極的」というのもまた、ジェンダー・ステレオタイプ(性別に対する根拠のない偏った見方)なのです。それに則った「男役/女役」という言葉は避けた方が良いでしょう。
3. コミュニケーションの注意まとめ
さて、ここまで解説してきたことをまとめます。
これは見た目にかかわらず、性行為や恋愛関係上、自分がどの立ち位置が得意か、または好むかを表すのですが、この考え方は世間でいう「女役」「男役」と一致していると言えます。
①同性カップルには必ずしも男役・女役が存在するわけではない。
②男役・女役という言葉は使わないほうが良い。(異性愛規範やジェンダー・ステレオタイプの押しつけになりうるから)
③「フェム」「ボイ」や「ネコ」「タチ」「リバ」はネガティブな言葉ではないが、セクシュアリティと同様に自称するもの。他人が勝手に決めつけてはならない。
アウトをしていない同性愛者の可能性は十分にあります。常に以上の三つのポイントに注意すれば、相手を傷つけてしまう可能性がグッと減るでしょう。
【「偏見」とは違う?】レズビアンの特徴とは【共通するものなんてある?】
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日本におけるレズビアンの歴史
1.「レズビアンの歴史は浅い」?
日本をはじめ、多くの国で「レズビアンの歴史は浅い」と言われています。その原因として挙げられるのは、男性中心の社会構造です。
まず、女性についての歴史的資料はとても少なく、「女性を愛する女性」*の歴史をうかがい知ることが難しくあります。これは、女性の社会進出を阻む社会的圧力のためです。たとえば、葛飾北斎の娘である葛飾応為は、父をも唸らせる画力を有していながら、ごく少数の作品しか残っていません。それは、当時「女の描く絵」が軽視されており、彼女も北斎の名を語って活動していたからです。
さらに、「女性は男性に所有されるモノであり、欲望の対象である」という家父長制の価値観から、女性は性欲の主体になりえないと考えられていました。そのため、女性同士の恋愛は「思春期の気の迷い」として流されていたのです。
このような理由から、「女性を愛する女性」は昔から存在していたにも関わらず、歴史として残っている部分はごく短いのです。
*当然ですが、「レズビアン」という言葉が生まれる以前は、「女性を愛する女性」を「レズビアン」と認識する人は(当人を含め)居ませんでした。しかし、性的指向は自分で判断するものであり、「レズビアン」という自己認識がなければ、厳密には「レズビアン」と呼べません。そのため、ここではあえて「レズビアン」ではなく「女性を愛する女性」という語を用いています。
2. 女性同性愛への注目
しかし、1911年に婦人運動団体「青鞜社」が結成されたことに端を発して、「女性を愛する女性」を無視し、抑圧してきた社会への抵抗がはじまりました。まず、同年に新潟県親不知海岸で女学校卒業生二人の心中事件が起き、その後女性同士の情死事件が相次いで発生します。
最後の手段を取った彼女たちの心痛を思うと、筆舌に尽くし難いほど哀しい歴史の一ページと言えますが、これらの事件によって、日本ではようやく女性同性愛が関心を集めるようになりました。
また、同時期(1910〜20年代)に、性科学ブームが起こります。性に関する研究雑誌や科学書が多数刊行され、性科学の先進国であるドイツの性科学書が積極的に翻訳されました。
ドイツでは、同性に向く性欲を倒錯した性欲として扱い、その原因を幼児期の異常な性的体験などに求めました。それによって、性欲と人格が結びつけて考えられるようになり、性的指向がアイデンティティの一つとなったのです。
こうして、「女性を愛する女性」は一挙に注目を浴びると共に、「変態性欲」という偏見を持たれるようになっていきました。
3. 戦後から現在のレズビアン 偏見を克服しよう
戦後になると、様々な性風俗雑誌上で女性同士の性行為が取り上げられるようになりました。そして、「キンゼイ報告」(人間のほとんどがある程度の両性愛性を有していることを示した研究)で「レズビアン」という言葉が用いられて以降、性風俗雑誌などでも「レズビアン」が取り上げられるようになります。
そして、レズビアンは「能動的な性欲を持つ女性=性に奔放な女性」といった偏見を持たれ、ポルノのカテゴリーとして位置づけられていきました。現在でも、Google検索で「レズ」**と検索すると、まず出てくるのはアダルトサイトです。
しかし、自明の理ではありますが、レズビアンも異性愛者と同じように人を愛するのです。それをポルノの一ジャンルとして消費されてしまう苦痛は想像に難くないでしょう。彼女たちの心を尊重できるよう、正しい理解に努めなければなりません。
**本稿冒頭でも述べた通り、「レズ」という言葉にはこのようなイメージがつきまとうため、現段階では使用を控えましょう。いずれ「レズ」にまとわりつく差別的な意味合いが払拭されることを望んで。
レズビアンの有名人っているの?
1.AyaBambi
椎名林檎のバックダンサーとして紅白に出場し話題を集めたAyaBambi。シンメトリーのダンスと、ミステリアスなビジュアルから人気に火がつきました。
彼女たちは、レズビアンカップルであったことを公表して活動しており、海外でもその独創的なパフォーマンスが評価されています。
様々なアーティストとコラボして作品を作りつづけている二人は、カップルとしても、アーティストとしても輝いています。
2. 一之瀬文香
グラビアアイドルとして活躍している一之瀬文香さんは、2009年に週刊誌『FLASH』のインタビューでレズビアンであることをカミングアウトしました。
ダンサーの杉森茜さんと2015年に同性結婚式を挙げ、その結婚を含めた自身の半生を描いた自叙伝『ビアン婚。』を出版したことでも知られています。
3. 滝沢ななえ
元バレーボール選手の滝沢ななえさん。美人すぎるバレー選手とよばれて一躍脚光をあびました。自身がレズビアンだと気づいたのは、20代の頃だそう。
バラエティ番組で同性パートナーの存在を明かし、レズビアンであると告白されました。現在はバレーボールのコーチとして活躍されています。
4. 牧村朝子
タレントや文筆家として活躍し、「まきむぅ」の愛称で知られる牧村朝子さん。2013年には、『百合のリアル』という本を発売し、同性婚が合法化されているフランスでパートナーの女性と結婚しました。
まきむぅさんは、性自認は女性ですが、学生時代、女性が女性を愛するには男役をしなければならないと考えていたことから、男装をしていたそうです。今では「女らしさ」「男らしさ」に縛られず、「自分らしく」生きるまきむぅさん。LGBTに関する様々な活動を行っています。
5. 尾辻かな子
尾辻かな子さんはレズビアンをカミングアウトしている立憲民主党の衆議院議員です。ダイバーシティやLGBTフレンドリーに根ざした政治活動をされています。
また、自身のセクシュアリティや当時のLGBTが直面していた社会問題をまとめた『カミングアウト−自分らしさを見つける旅―』の執筆、様々なセミナーや講演会に登壇など、日本初のオープンな同性愛の公職者として活発に活動されています。
レズビアンを描いた映画
物語はときに、知識を超えた「リアルの手触り」を与えてくれます。本記事では「レズビアン」という枠組みで話を進めていますが、セクシュアリティは人のほんの一側面でしかありません。そこで、レズビアン一人ひとりのあり方を知るために、映画はもってこいの媒体なのです。
当事者にとって、レズビアンを描いたストーリーは、人生のお手本や親身に寄り添う友人のような役割を果たしてくれることがあります。
非当事者の方にとっては、物語を通してレズビアンに出会うことで、より彼女たちへの想像力を働かせられるようになるでしょう。
なかにはレズビアンをコメディの道具のように扱った作品もあるのですが、セクシュアリティと真摯に向き合って描かれている物語もたくさんあります。そのうち今回は三つをご紹介します。
恋人になる前のレズビアンを描いた映画
マンガが原作のこちらの作品。少女が初めて誰かを好きになったけれど、相手は自分と同じ女性。「これっておかしいことなのかな……」と思いつつも、彼女のことが忘れられない。そんな切ない青春の1ページです。
「初めて観たのは高校生の時でした。当時女子高生だった私は、大人になる前の女子高生の心を見抜かれたなと思うくらいとても繊細に丁寧に描かれていると思いました」
Yahoo!映画 ユーザーレビューより引用
「主役二人が、この世から浮き上がっているように見え、何となく死を感じさせられ、どこか怖く感じてしまった。でもそれが逆に美しく、みずみずしく見えてしまうのが不思議です」
Yahoo!映画 ユーザーレビューより引用
レズビアンカップルの家庭を描いた映画
精子提供を受けて授かった娘と息子がいるレズビアンカップルの二人。ある日、子どもたちが「精子提供者に会いたい」と言いだして……。
テーマは重く感じられるかもしれませんが、実はこの映画に悲壮感はありません。「ひとつの家庭」に起こった「ちょっとした」事件を、楽しんで見ていただける作品です。
「家族とはどういうものだっけ、とわからなくなったらこれを見よ!だね。何度も繰り返し観たくなりそうな良作だ!」
Yahoo!映画 ユーザーレビューより引用
「家族関係は不思議なもので、いつの間にか役割が生まれ、子供が大きくなるにつれて、家族関係も成長していくようだ。家族なんて頭で考えても分からないんだよ」
Yahoo!映画 ユーザーレビューより引用
おわりに
今回の記事では、レズビアンについて色々なことを知りたい方にむけて、様々な視点からレズビアンについてまとめました。
レズビアンの方も、そうでない方も、また自分がどういった人間なのか悩んでいる方も、今回の記事を通して自分らしくいきる事の素晴らしさと難しさを理解していただければ幸いです。
誰もがありのままで生きられる未来を目指して。
参考文献
- 「美少年による売春が流行。江戸時代の男色の実態はハードだった【おもな客は僧侶】」江戸ガイド
- 礫川全次『ゲイの民俗学』批評社
- 呉 佩珍「「青鞜」同人をめぐるセクシュアリティー言説─ 一九一〇年代を中心に─」『立命館言語文化研究 28(2)』
- 三成美保『同性愛をめぐる歴史と法―尊厳としてのセクシュアリティ』明石書店
- 杉浦郁子「日本におけるレズビアン・ミニコミ誌の言説分析─ 1970年代から1980年代前半まで』」『 和光大学現代人間学部紀要 第10号』
- 小田亮「〈変態〉へのまなざし 一九二〇年代の通俗性欲学」『性 一語の辞典』三省堂