身体的性とは?【身体的「性別」って言わない方がいい?】

ライター: JobRainbow編集部
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身体的性とは、身体構造における性を指す言葉です。なお、ここでいう「身体構造」とは、性染色体や外性器、内性器、性ホルモンなどです。

LGBTという言葉をよく聞くようになりましたが、実は性のあり方は身体的性、性的指向性自認性表現の4要素で構成されています。

「身体的性」と聞くと、多くの方は保険の教科書に載っていた内容を思い出すでしょう。しかし、それだけではないんです。

今回のコラムでは、わかるようでイマイチよくわからない身体的性についてまとめます。

※なお、本コラムで解説する「身体的性」については、現在「法律上の性(出生時に割り当てられた性別をもとに戸籍等に記載された性別)」という表現を使用すべきだとLGBTQ報道ガイドラインに明記されています。しかし、過去に使われていた用語の解説として、今回の記事では便宜上「身体的性」を使用します。

身体的性って何?

身体的性とは身体構造における性を指し、「生物学的性」と呼ばれることもあります。

身体構造とは、性染色体や外性器、内性器、性ホルモンといったものを指しますが、多くの場合身体的性は産まれてきた時の外性器によって判断されます。一般的には、妊娠16週目(妊娠5ヶ月目)頃を過ぎたあたりから産婦人科でのエコー検査(超音波検査)で診断することが可能となります。

では、「男性」「女性」の身体的性は学校で習ったものだけなのでしょうか。

実は、「男性」「女性」にも様々な身体の状態があるのです。

DSD(性分化疾患・インターセックス)とは?

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仮に、身体を戸籍と同様に「男性/女性」に二分するとしても、「男性ならばこういう身体構造が絶対」「女性だから必ずこう」と判断するのは早計です。

例えばDSD(インターセックス、性分化疾患)と呼ばれる、「男性ならばこういう身体、女性ならばこういう身体、と社会で考えられているものと生まれつき一部異なる発達を遂げた身体の状態」といったケースがあります。しかも、その数は新生児の2000人に1人ともいわれており、決して少なくありません。

なお、DSDの方の中にも、Xジェンダーをはじめとする「男性・女性」と断定できない性自認を持つ方がもちろんいらっしゃいます。

しかし、「自分が女性・男性である」ことを大事にしているにもかかわらず、「男性でも女性でもない」と扱われることで傷つく方が多いということも、頭に留めておく必要があります。

※「インターセックス」は日本語に直すと「間の性」となりますが、多くの場合、DSDの方は自身を「男性」「女性」のどちらかとして認識しており、「自分は男性と女性の間である」と考えている人は比較的少ない傾向にあります。そのため、「インターセックス」ではなく「DSD」という表現を使用させていただきます。

DSDと一口に言っても、そのケースは様々です。

  • 生まれてすぐの(外性器の)見た目でわかる
    外性器の形状が男性器とも女性器ともいえない、といったケースは、比較的早く判断が可能です。
  • 調べて初めてわかる
    性ホルモンや内性器、性染色体といったものは、調べてみなくてはわかりません。
    事実、「生物学的にXX=雌、XY=雄」しか存在しないというのは間違いで、性染色体にはXXYや、XXXYというケースが相当数存在することがすでに明らかになっています。
  • 成長して初めてわかる
    幼いうちは現れなかったものの、第二次性徴を経て身体的特徴がはっきりとしてくる、といった場合も存在します。また、なかには最後まで本人に自覚がない場合もあります。

このように、DSDには様々なケースが存在します。それぞれの体の状態・判明時期の違いによっても、体験のありかたは様々です。

「女性なら(男性なら)こういう身体の状態」という固定観念に合わせて手術を受けさせられていた、といった歴史もあります。それだけ、身体的性への固定観念が強いということがわかります。
しかし本当は、DSDのように、女性でも男性でも様々な身体の状態があるのです。

過去にはファッションモデルのハンネ・ギャビー・オディールさんは、本人の許諾なしに手術されたインターセックスである、とカミングアウトしたことがたいへん話題となりました。

「性差」は誰にでも当てはまるわけじゃない

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身体的性を語る際によく論点となるのが性差です。「男性は女性より背が高くて筋肉質」「女性は男性よりも背が低く丸みを帯びている」といった話は、インターネットやテレビだけでなく、日常会話でもよく耳にするのではないでしょうか。

でも、注意してほしいのは、これが「絶対」ではないということです。

たしかに、男性は身長が高い「傾向にある」といったように、「性差」と言える傾向のようなものはあるかもしれません。ですが、身体的性は「男性/女性」と二分できるわけではありませんし、よく語られる「性差」とはあくまで集団間の統計的なものです。

なので、個人差が存在します。

例えば、道ですれ違った男性と女性を1人ずつ選んで身長を比べた時、必ずしも男性が女性よりも背が高いとは限りませんよね。

しかも、科学的に根拠があいまいにもかかわらず当然のように語られてしまっている身体的性の性差もあります。

代表的なものを挙げると、

「男性と女性は脳の構造が違う」
→「男性は論理的思考ができる。一方女性は感情的である」

などですね。こうした「脳の構造の違い」は「男脳」「女脳」などと表され、今でもバラエティ番組などで散見されます。

しかし、男脳・女脳の根拠となった「脳梁や海馬の太さが男女で違う」という研究に関しては、肯定する研究結果も否定する研究結果も出ています。となるとやはり、性差は「絶対」とは言えないのではないでしょうか?

「男性はこういうものだ」「女性はこうあるべきだ」と区別されてしまうことで、「自分はふつうじゃないんだ」と感じて苦しむ人たちがいます。

ですから、「性は二つに分けられる」という考えを支えてしまいかねない「性差」を、「全員に当てはまるものだ」と勘違いしてはいけません。

身体的性やそこにある性差は絶対である、と思われがちですが、「男脳」「女脳」の話のように根拠があいまいな性差もありますし、身体的特徴なんですから当然個人間でばらつきがある、ということは忘れないようにしたいですね!

おわりに

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冒頭でふれた性的指向・性自認・性表現は男性/女性と二分できるわけではありません。ですが、そもそも「女性」「男性」自体、さまざまな身体の状態があります。

その「男性/女性としてあるべき姿」に当てはまらず苦しむ人々がいます。すべての人々が生きやすい社会になるためには、私たち一人ひとりが、性は単純に二分割できるようなものではなく、加えて「女性」「男性」のあり方自体、多様なものであると知っておく必要がありますね。

参考文献

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