

LGBT診断 ~多様なセクシュアリティの世界まとめ~

2018年1月15日、広辞苑第七版が出版されました。ここで初めて、「LGBT」が広辞苑に掲載されたのですが、ここでの記載は不思議なものでした。
「エル・ジー・ビー・ティー【LGBT】(レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダーの頭文字)多数派とは異なる性的指向を持つ人々。GLBT」
関係あるのは、性的指向(どの性を恋愛・性愛の対象とするか)のみなのでしょうか。
トランスジェンダーとは、実は非常に幅広い概念です。性自認(自身の性に対する自己認識)と身体的性、戸籍上の性別が異なっている人だけでなく、異性装をする人などもトランスジェンダーに含まれます。つまり、性的指向だけの話ではないのです。
現在、LGBTという単語は「レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーの頭文字をとった、セクシュアルマイノリティの総称」ととらえられています。
知っているようで知らない、グラデーションになっている性の世界。そこで今回は、「LGBT診断」と題して、多様なセクシュアリティをご紹介していきます。自分のセクシュアリティがどんなものなのか診断できるだけでなく、詳しく知りたい方のために紹介コラムへジャンプできるようにもなっています!
性についての4つの観点
ここで、知っておかなければならない性についての「4つの観点」があります。
1. 身体的性(セックス)
この表現に抵抗がある方もいるかもしれませんが、今回は便宜的にこの表現を使わせていただきます。これは、生まれたときに医者が男女二元論に基づいて割り当てる男性・女性です。戸籍を割り当てる際に判断される性であることから、「戸籍性」と表現されることもあります。
しかし、それ以外にもDSDs(性分化疾患、インターセックス)と呼ばれる人々もいます(詳しくは10.DSDs(性分化疾患、インターセックス)の項目で説明します)。
「男」「女」だけじゃない?身体的性とは【身体的「性別」って言わない方がいい……ってどういうこと?】
2. 性自認
これは男/女と二元的にとらえられますが、ほかにも男性でも女性でもない性自認で生きる人々はXジェンダー、そもそも自身の性自認(性的指向も含む)がどのようなものか考えているため、定まっていない人々はクエスチョニング、と表現されます。
【「わからない」でもいいじゃない】「男性」「女性」だけじゃない、性自認って何?
3. 性的指向
性的指向とは、「どの性を好きになるか」です。ですが、男性を好きになる、女性を好きになる、男女の両方を好きになる以外に、そもそも好きになる人の性別を条件としない、誰も好きにならないというセクシュアリティもあります。
【変わることもあるって知ってた?】「性的嗜好」じゃない!今きちんと知っておきたい「性的指向」とは?
4. 性表現
これは、自身が「どの性としてふるまうか」を指します。男性・女性だけでなく、中性、無性としてふるまうこともあるので、これも男女二元論的に捉えてしまわないことが重要です。
【自由な性のあり方】LGBTを考えるうえで欠かせない「性表現」とは?【オススメブランドもアリ!】
性についての4つの観点まとめ
どうでしょうか?
- ・自分の身体的性は何か
- ・自分の性をどうとらえているか
- ・自分はどの性を好きになるか
- ・自分はどの性としてふるまっているか
整理ができたでしょうか?
では、これらをもとに、セクシュアリティを分けてみましょう。
多様なセクシュアリティ
1. レズビアン
性自認が女性で、性的指向が女性であるセクシュアリティを指します。重要なのは、ここにおいて身体的性は関係ないということです。それは以下の2.ゲイ、3.バイセクシュアル、5.パンセクシュアル、6.アセクシュアル、7.ノンセクシュアルでも同様です。
2. ゲイ
性自認が男性で、性的指向が男性であるセクシュアリティを指します。
【用語解説】ゲイとはどんなセクシュアリティ?【「ゲイだから」センスある?】
3. バイセクシュアル
性的指向が男性・女性の両方であるセクシュアリティを指します。ここにおいては、身体的性だけでなく、性自認も関係がありません。これは、5.パンセクシュアル、6.アセクシュアル、7.ノンセクシュアルも同様です。
4. トランスジェンダー
トランスジェンダーとは、自身の身体的性と性自認が異なる性を指します。
しかし、実はこれは正確に言うとトランスセクシュアルと言います。トランスジェンダーとは本来包括的な概念で、
・身体的性と性自認が異なるトランスセクシュアル
・身体的性と性自認は一致しているが、他者からみられる性とそれらが異なる狭義のトランスジェンダー
(例:身体的性も性自認も男性だが、女性として見られる)
・性表現として性自認とは異なる異性装をするトランスヴェスタイト(クロスドレッサー)
をすべて含む概念です。
【実は意味が違う!】トランスジェンダーと性同一性障害の違いって何?【英語か日本語か、ではない!】
5. パンセクシュアル
性的欲求を抱く際に、相手のセクシュアリティを条件としないセクシュアリティを指します。パンセクシュアルは、バイセクシュアルの一種ととらえられることもあります。
【LGBT用語解説】パンセクシュアルって何?~グラデーションのように広がる性~
6. アセクシュアル
他者に対して恋愛感情も性的欲求も抱かないセクシュアリティを指します。これはよくノンセクシュアルと混同されがちなのですが、何が異なるのでしょうか。
7. ノンセクシュアル
ノンセクシュアルとは、性的欲求は抱かず、恋愛感情は抱くセクシュアリティを指します。アセクシュアルとの違いは、「恋愛感情を抱くかどうか」です。
8. クエスチョニング
「①性自認」の項目でも述べたように、自身の性自認や性的指向について考えており、定まっていないセクシュアリティがクエスチョニングです。この概念も非常に広がりを持ったもので、性自認や性的指向だけでなく、性についてそもそもなぜそのようなことを「定める」必要があるのか疑問を抱き、意図的に自身の性自認や性的指向を定めない人々も、クエスチョニングだと言えます。
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9. Xジェンダー
男性でも女性でもない性自認のセクシュアリティを指します。具体的には、自分は男女両方だ・男でも女でもない・中性だ、などといった性自認が挙げられます。
10. DSDs(性分化疾患、インターセックス)
DSDsとは、「染色体や性腺、外性器の形状、膣・子宮などの内性器、性ホルモンの産生などが、男性ならばこういう体の構造でなければならない、女性ならばこういう体の構造でなければならないとされる固定観念とは、生まれつき一部異なる発達を遂げた体の状態」を表します。
DSDsは単一の体の状態ではなく、出生段階でわかることもあれば、第二次性徴でわかることもあります。それぞれの体の状態や判明時期の違いによっても、その体験のありさまは様々に違います。かつてはDSDsの赤ん坊に対して、性別二元論に基づき医者が手術を施し、無理やり「男性」「女性」のどちらかにしてしまう、といったケースが見られました。DSDsをめぐる悲劇は、2005年に日本語訳が発売された『ブレンダと呼ばれた少年』(扶桑社)などでも知ることが出来るので、興味のある方はぜひ手に取ってみてください。
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11. シスジェンダー
性自認と身体的性が一致しているセクシュアリティを指します。ここで注意してほしいのは、性的指向は関係がないということです。つまり、性自認が男性で性的指向も男性であれば、シスジェンダーのゲイである、ということになります。
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12. ヘテロセクシュアル
性自認と身体的性が一致しており、かつ性的指向が異性であるセクシュアリティが、ヘテロセクシュアルです。
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おわりに
どうでしょうか。自分はこのセクシュアリティだな、といったものがあったでしょうか?
まだまだヘテロセクシュアルが「普通」とされる風潮は消えません。ですが、このコラムでみてきたように、セクシュアリティは非常に多様ですし、今回のコラムで挙げたもの以外にも様々なセクシュアリティが存在します。ヘテロセクシュアルが「普通」……ってわけではありませんね。
この記事では簡単にまとめましたが、興味を抱いた方やもっと詳しく知りたい方は、ぜひ各セクシュアリティの下にあるリンク先にジャンプして調べてみてください!
参考文献
- ・森山至貴『LGBTを読みとく』(2017)ちくま新書
- ・加藤秀一・石田仁・海老原暁子『図解雑学 ジェンダー』(2005)ナツメ社
- ・千田有紀『ヒューマニティーズ 女性学/男性学』(2009)岩波書店
- ・nexdsd JAPAN(https://www.nexdsd.com/dsd)

