何が違う?LGBTの教育事情【日本と海外を比較】

ライター: りっきー
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日本政府が2017年3月、10年ごとに改訂する学習指導要領にLGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーをはじめとするセクシュアルマイノリティの総称)に関する内容を盛り込まないことを決めたことは、まだ記憶に新しい方も多いと思います。(参考:『LGBT生徒への支援、政府は絶好の機会を逸す~10年に一度の学習指導要領改訂 LGBTに触れず~』Yahoo! Japan ニュース

何故、日本では教育現場でLGBTを取りあげないのでしょうか。

また、日本以外の国では、教育においてLGBTはどのように扱われているのでしょうか。

今回は、教育におけるLGBTの取り扱われ方について、日本と海外の国々それぞれを比較していきます。

日本

机に向かう日本人の子ども

先ほども述べたように、日本においては、学習指導要領にLGBTの内容を盛り込まないことが決定しました。ここでは、国としては、義務教育過程でLGBTに関するテーマを扱わない方針であることが伺えます。

その一方で、2017年度から高校の家庭総合・家庭基礎の教科書にLGBTが記載されるようになったほか(参考:『教科書検定「LGBT」初登場 多様な性、高校で学んで』毎日新聞)、2019年度からは中学校で使われる道徳の教科書で、文部科学省の検定を合格した8社中4社がLGBTについて取り上げることになりました(参考: 『「性的少数者」道徳教科書で初の掲載 8社中4社で』朝日新聞DIGITAL)。加えて、2020年度から小学校で使われる保健体育の教科書にLGBTについての記載が追加されるなど(参考:『小学校教科書検定 新要領初英語聞く、話す重視』毎日新聞)、民間レベルではありますが、LGBTに関する教育に前向きであるということが見て取れます。

ところで、どうしてつい最近まで義務教育においてLGBTが取り上げられなかったのでしょうか。

教育現場においてLGBTが軽視されているのか、というと、そういうことではありません。むしろ、重要視している人が多いことが明らかとなっています。平成25年に6つの自治体の教師を対象に実施されたアンケートからは、6割以上の教師がLGBTについて教育現場で教えていくべきだと考えていることが分かります。

このアンケートにおいて、LGBTを授業で取りあげない理由の1位となっているのは「教える必要性を感じる機会がなかった」ですが、一橋大学で男子学生がゲイであることをアウティング(本人が望まぬ形で自分のセクシュアリティを人に伝えられること)されたことをきっかけに自ら命を絶ってしまった事件は今もなお記憶に新しいでしょう。こういったことを背景に、LGBTを授業で取り扱うべきだという意識は少しずつ高まってきているように思われます。

となると、授業などでLGBTを扱うに際してネックとなる最たるものは、「LGBTについての知識不足」でしょう。同アンケートのLGBTを授業で取り上げない理由の2位に「同性愛や性同一性障害についてよく知らない」があるように、性的指向(どの性を好きになるか)が自分の選択によるものだ、という誤解を持っている教師が4割近くいることが明らかとなっています。正しい知識がなければ、教育の現場で取り扱っていくことなど不可能です。加えて、義務教育機関に得た知識はその後の人生の基盤となります。だからこそ、今世界で共に生きる多様な性を扱わなくてはいけないですし、教育者が生半可な知識で臨むわけにもいきません。

さて、LGBTに関する教育の前向きな進展に対して、ネットでは「流石先進国だ」と海外からも称賛の声が挙がりました。一方で、「子供の年齢を考えると、LGBTについて義務教育で扱うのは早すぎるのではないか」といった批判的な意見も挙がっています。ですが、多くの人は中学・高校生の時期、人によっては小学生の時期に自身がLGBTであることを自覚し、強く悩みます。だから、義務教育でLGBTについて扱うのが早すぎるということはないはずです。また、義務教育期間に得た知識はその後の人生の基盤となります。だからこそ、今世界で共に生きる多様な性を扱わなければならないでしょう。

加えて、アンケートにおいて、LGBTを授業で取り上げない理由の2位に「同性愛や性同一性障害についてよく知らない」があるように、性的指向(どの性を好きになるか)が自分の選択によるものだ、という誤解を持っている教師が4割近くいることが明らかとなっています。子供たちに正しい知識を教えるためには、教師たちが正しい知識を持っていることが不可欠です。いかに教師たちが正しい知識を身につけるか、ということが今後の課題になるでしょう。批判的な意見、新たな課題もありますが、着実に日本のLGBTに関する教育は動きを見せ始めています。これからの日本における、LGBT教育の展開に目が離せません。

「理解がある」だけでは差別がなくなっていかないということがよく分かりますね。

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フランス

難解な本を読み解く姿

戦時中のフランスでは同性愛者は「犯罪者」として強制収容所に入れられるなどといった扱いを受けていました。しかし、そのような過去を持つフランスも、今となっては同性パートナーシップの制度も整い、それに上積みする形で、同性婚も合法化しました。結果としてEUの中でも比較的LGBTフレンドリーな国となったフランスでは、LGBTは「科学」の生物領域で取りあげられています。「女性、男性になること」という項目の中で、胎児の性決定の際、XX(男性)やXY(女性)など性染色体役割を説明し、そしてXXでも女性の染色体をもち、女性の外見を備えた男性がいることに触れ、性的なアイデンティティや性的指向についても解説しています。加えて、歴史的、社会制度的な側面、生命倫理の点からなど様々な方向からLGBT教育が行なわれているため、LGBTフレンドリーな土壌が築かれています。

LGBTを多様な方向から捉えることで性についての観点も多様となっているフランスでは現在、PMA(人工授精などの生殖援助)を同性カップルにも適用するかどうかが論点となっています。当然課題も山積していますが、全ての人が望むように生きられる社会がフランスでも実現してほしいものです。

アメリカ

学校の授業風景

LGBT先進国とも呼ばれるアメリカでは、LGBTはどのように扱われているのでしょうか。

2017年11月にカルフォルニア州教育委員会が、中学校までの教科書にLGBTの歴史の内容を含めることを認めました。これは、50ある州の中で初めての試みで、さらに、LGBTの歴史を含んでいない2つの教科書を使うことを禁止しました。オバマ政権時代、すでにダイバーシティを重視した政策がとられていたにも関わらず、当時このような一部の教科書にLGBTについての言及がなかったということから、「性の多様性」という点については、オバマ政権時代の政策は効果が不十分なものだったということがうかがえます。

2016年段階のものではありますが、ヒューマン・ライツ・ウォッチの報告書には、LGBTの生徒たちが受けている差別やいじめの実態が綴られています。こうした実情をうけて、ジョージア州にはLGBTのための学校、プライドスクールアトランタが設立されました。この学校は、LGBTを含めたセクシュアルマイノリティの生徒、家族、教育者に、安全で、楽しく学べる環境を提供することを目的としています。しかし裏を返せば、このように守る環境が必要なほど、LGBTを取り巻く環境は整っていないということになります。2018年、コロラド州において同性愛嫌悪的ないじめを受けていたとされる9歳の少年が自殺してしまった痛々しい事件は、皆さんの記憶にも新しいと思います(参考:『同性愛公言の米9歳児、いじめ受け自殺 新学期初週に』AFP)。

アメリカを見ていると、LGBTを教育内容に盛り込んだ後は、実際に正しい知識によって教育現場を改革していかなければならないということがわかります。日本の義務教育でLGBTに関する内容が扱われるようになってきた今だからこそ、このようなことも意識していきたいですね。

フィンランド

本棚

LGBTフレンドリーな地域として知られる北欧諸国ですが、その中でフィンランドは、中学高校ともに「人間生物学」と「健康教育」でLGBTを扱っています。カップルと家族の項目では、法的婚姻以外の事実婚、パートナー法に基づく同性同士の結婚などについて歴史的変遷をたどりながら説明しています。文化的・科学的観点の両方から論じることで、LGBTに限らない、より多角的な視野を持つことに繋がるのでしょう。

フィンランドは、GDI(ジェンダー開発指数:人間開発における男女格差を表す)で世界第1位、GGI(ジェンダーギャップ指数:経済、教育、保健、政治の各分野での男女格差の平均を表す)では世界第4位という男女平等社会を実現しています。LGBTをはじめ、多様な生き方について学ぶ機会があるからこそ、真に平等な、多様性の認められた社会が実現しているのですね。

おわりに

虹色の道を進む子ども

日本や海外の教育現場におけるLGBTの現状について分かっていただけたでしょうか。義務教育で扱われていない今だからこそ、ある種LGBTについての理解が進んでいるともいえる他の国を参考に、一人ひとりが多様な性について理解を深め、認め合えるような社会を日本でも実現していければいいですね。

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