同性カップルの住宅ローン、二人で家を持つときに知っておきたいこと

ライター: JobRainbow編集部
この記事のアイキャッチ画像

パートナーと一緒に暮らす部屋を借りるだけでなく、将来は二人で家を所有したいと考えるカップルも少なくありません。しかし、日本では同性婚が法律上認められていないため、住宅ローンを二人で組めるのか、あるいは片方の名義でしか借りられないのではないかと不安を感じる方も多いでしょう。友人たちが結婚を機に夫婦でマイホームを購入していくのを見て、自分たちの場合はどこに相談すればよいのかすら分からないと感じる声も聞かれます。実際の制度はどうなっているのか、そして契約の際にどのような点を確認すべきか、具体的に掘り下げていきます。


同性カップルにも広がるペアローンや収入合算という選択肢

住宅ローンを二人で組む方法には、大きく分けて、主に三つの形があります。それぞれが別々に契約を結ぶ「ペアローン」、一つの契約を二人で返済していく「連帯債務型」、そして一方が主債務者となりもう一方が保証人になる「連帯保証型」です。これまで、これらの制度は法律上の配偶者や親子に限られることが一般的でした。しかし近年は、「配偶者」の定義に同性パートナーを含める金融機関が増えています。例えばPayPay銀行では、同一物件に同居する配偶者・親子・同性パートナー・事実婚の方それぞれとペアローンや収入合算を組むことができ、SBI新生銀行でも同性パートナーをペアローンの相手や収入合算の連帯保証人として指定できるとされています(引用:SUUMO「LGBTQ向けの家・マンション購入 同性パートナーと暮らす住まいのローン・相続の知識」)。

住宅金融支援機構が扱う「フラット35」でも、同性パートナーを連帯債務者として申し込むことができ、融資対象となる物件の共有者として登記することも可能とされています(引用:住宅金融支援機構「同性パートナーを連帯債務者とすることはできますか」)。ネット銀行のじぶん銀行も同様に、同性パートナーとのペアローンや収入合算、担保提供者としての利用について案内をしています(引用:じぶん銀行FAQ「住宅ローン 同性パートナーとペアローンや収入合算を利用したり、担保提供者としたりできますか」)。かつては同性カップルが「二人で家を買う」という選択肢そのものが見えにくい状況でしたが、今ではこうした形で制度上の入り口が用意されている金融機関が増えています。それぞれの組み方には特徴の違いもあります。ペアローンは二人が別々の契約者になるため、それぞれの収入や信用情報に応じて借入額が決まり、諸費用や手数料も二契約分かかる一方、双方が住宅ローン控除の対象になりやすいという面があります。連帯債務型は一つの契約を二人で返済する形で、契約や事務手続きは一本化される反面、金融機関によって取り扱いの有無に差が大きい形態でもあります。連帯保証型は主債務者一人の収入を基準に審査されつつ、もう一方が保証人として名前を連ねる形で、手続きは比較的シンプルですが、保証人側は住宅ローン控除の対象にならないという違いがあります。どの形が向いているかは、収入のバランスや将来のライフプラン、税金面での希望によって異なります。複数の形を比較検討した上で選ぶのが良いでしょう。


この10年で着実に広がってきた金融機関の対応

この流れは急に始まったものではなく、少しずつ積み重ねられてきた経緯があります。2017年にみずほ銀行が住宅ローンのペアローンや収入合算において、配偶者の定義に同性パートナーを含める対応を始め、2020年には三井住友銀行も連帯債務型借入における配偶者の定義に同性パートナーを加えました(引用:リクルート「はじめての住宅ローン」LGBTカップル向け住宅ローンの解説)。この背景には、2015年に東京都渋谷区・世田谷区で始まったパートナーシップ制度の広がりがあります。制度の登場によって、それまで口頭での説明や自己申告に頼らざるを得なかった「二人がパートナーである」という事実が、行政発行の証明書という形で可視化されるようになったことは、金融機関側にとっても契約の判断材料が一つ増えたという意味を持ちます。渋谷区と認定NPO法人虹色ダイバーシティが共同で行っている全国調査によると、2025年5月31日時点で導入自治体数は530、人口カバー率は92.5%に達しており、この制度の証明書が金融機関にとって「二人の関係」を客観的に確認する材料として機能するようになったことが、対応拡大を後押ししてきたと言えるでしょう(引用:渋谷区・認定NPO法人虹色ダイバーシティ「全国パートナーシップ制度共同調査」)。しかし、すべての金融機関が同性パートナーとの契約に対応しているわけではありません。地方銀行や信用金庫では取り扱いがない、あるいは個別対応になるケースもまだ見られます。物件を検討し始める段階で、候補となる金融機関がどこまで対応しているかを早めに確認しておくと、住宅探しの計画も立てやすくなります。

また、対応状況は「対応している・していない」の二択だけでなく、実際には段階的に広がってきた面もあります。当初は都市部の大手銀行やメガバンクが先行して同性パートナーを配偶者の定義に含める対応を始め、その後、ネット銀行や住宅金融支援機構のフラット35のように全国から申し込める機関にも広がり、近年は地方銀行の中にも独自にパートナーシップ制度の証明書を受け付ける動きが出てきています。この広がり方を踏まえると、今住んでいる地域や購入したい物件のエリアで対応している金融機関が見当たらない場合でも、全国から申し込めるネット銀行やフラット35を検討肢に加えることで、選択の幅を広げられる可能性があります。将来的にさらに対応金融機関が増えていくことも見込まれるため、数年前に調べた情報のまま判断せず、実際に住宅購入を検討するタイミングで最新の対応状況を確認し直すことが重要です。


銀行によって求められる書類には差がある

同性パートナーとの住宅ローンを申し込む際には、法律婚の夫婦であれば不要な書類の提出を求められることが一般的です。多くの金融機関で共通して求められるのが、自治体が発行するパートナーシップ証明書、パートナーシップ宣誓書受領証といった、関係を公的に示す書類です。加えて、合意契約に係る公正証書や、任意後見契約に係る公正証書および登記事項証明書の提出を求める金融機関もあります(引用:アットホーム「同性パートナーと利用できる住宅ローンを紹介!注意点やリスク、必要書類も解説」)。

こうした書類をそろえるには、公証役場での手続きなど一定の時間と費用がかかります。物件の購入を具体的に検討し始めてから慌てて用意するのではなく、パートナーシップ制度の利用や公正証書の作成について、余裕のあるタイミングから準備しておくと、住宅ローンの審査もスムーズに進みやすくなります。また、必要書類は金融機関ごとに異なるため、複数の金融機関に事前に問い合わせて、それぞれの条件を比較検討しておくことが、実務的にも有効です。

実際に検討を進める際は、まず不動産会社や住宅ローンの窓口に「同性パートナーとの契約実績があるか」を率直に尋ねてみるところから始めるとよいでしょう。担当者によって知識や経験に差があることも多く、同じ銀行の中でも支店や担当者によって案内の内容が変わってしまうことがあるためです。可能であれば、同性パートナーとの契約を明文化して公表している金融機関から優先的に問い合わせ、比較検討の対象を絞っていくと、無駄な手間を省くことができるでしょう。パートナーシップ制度を導入している自治体の窓口や、LGBTQ+支援に取り組む不動産関連の相談窓口に、実際に利用しやすい金融機関の情報を尋ねてみるのも一つの方法です。


住宅ローン控除は契約の組み方によって変わる

住宅ローンを組む際には、契約者が死亡または高度障害状態になった場合にローン残高が保険金で完済される、団体信用生命保険(団信)についても知っておく必要があります。一般的なペアローンでは、それぞれが個別に団信へ加入する形になるため、一方が亡くなった場合に免除されるのは、亡くなった人が契約していた分のローン残高のみです。残された側のローン残高はそのまま返済を続ける必要があり、この点はペアローンという契約形態そのものの特徴であって、同性カップルに限らずペアローン契約全般の特徴です。

一方で、二人のどちらかに万一のことがあった場合にローン残高全体が0円になる「連生団信」と呼ばれる商品もあり、こちらは金融機関によって同性パートナーが対象に含まれるかどうかに差があります。例えば三井住友銀行の連生団信付き住宅ローン「クロスサポート」は、法律婚だけでなく事実婚や同性パートナーの関係にある人も対象にしていると案内されています(引用:三井住友銀行「連生団体信用生命保険付住宅ローン クロスサポート」)。すべての金融機関がこうした商品を用意しているわけではないため、二人でどのような保障を持ちたいかを整理した上で、対応している金融機関を探すという順番で検討するとよいでしょう。連生団信は一般的な団信に比べて金利が上乗せされる商品が多く、保障が手厚くなる分、毎月の返済額も増えることが一般的です。どちらか一方に万一のことがあっても住み続けられる安心を優先するのか、月々の返済額を抑えることを優先するのかによって、選ぶべき団信のタイプは変わってきます。二人の年齢や健康状態、収入バランスも踏まえて、必要な保障の範囲を具体的にイメージした上で、金融機関の担当者に相談してみることをおすすめします。


家の名義と将来の相続に向けた備え

住宅ローンを組めたとしても、その先の名義や相続については別に考えておく必要があります。民法が定める法定相続人としての「配偶者」は法律上の婚姻関係にある人を指すため、パートナーシップ制度を利用していても、同性パートナーは法律上の相続人にはなりません。つまり、二人で購入した家であっても、名義人であるパートナーが亡くなった場合、その持分は法律上、パートナーではなく血縁の家族に相続されることになります(引用:アットホーム「同性パートナーには相続権がない?今できる4つの相続対策と注意点」)。何も準備をしていなかった場合、残されたパートナーは、それまで一緒に暮らしてきた家について、血縁の家族と持分をめぐるやり取りをしなければならない可能性があり、最悪の場合、住み慣れた家を離れざるを得なくなることも考えられます。長年連れ添った関係であっても、法律上の根拠がなければこうした場面で立場が弱くなってしまうのが、現在の日本の制度の現状です。

この状況に備える方法としては、公正証書遺言を作成してパートナーに財産を遺す意思を明確にしておく、死因贈与契約を結んでおく、生命保険の受取人にパートナーを指定しておく、といった手段が挙げられます。同じ物件を共有名義で持つ場合には、名義人それぞれの持分についてこうした備えを個別に検討しておくと、万一のときに家の扱いをめぐって血縁の家族との間でトラブルになるリスクを減らせるでしょう。共有名義の不動産は、売却や活用について共有者全員の同意が必要になる場面もあるため、購入時点で「この家をどう扱いたいか」を二人で言葉にしておくことが、結果的に将来の安心につながります。パートナーシップ制度と異なり、こうした遺言や契約の準備には手続き上の期限があるわけではありませんが、体調を崩してからでは公正証書の作成そのものが難しくなる場合もあります。健康なうちに、できれば住宅購入と同じタイミングで検討を始めておくと、後回しにしてしまうリスクを減らせます。

こうした備えは、住宅ローンを組む段階で必ずしもすべてを終えていなければならないものではありません。ただ、家という大きな資産を二人で持つことになる以上、遺言や契約の準備を先送りにし続けると、いざというときに一番困るのは残されたパートナー自身になってしまいます。血縁の家族に自分たちの関係を伝えているかどうかによっても、相続時に起こり得るやり取りの形は変わってきます。すでに関係を伝えている家族であれば話し合いの余地が生まれやすい一方、伝えていない場合は、公正証書などの書面がパートナーの立場を守るほぼ唯一の根拠になることもあります。自分たちの状況に応じて、どこまでの備えが必要かを見極めていくことが大切です。

二人の暮らし方に合わせて、情報収集と準備を進めていく

ここまで紹介してきたように、同性カップルが住宅ローンを組む選択肢自体は、この10年ほどで着実に広がってきました。ただし、金融機関ごとに対応の有無や必要書類、団信の対象範囲には差があり、法律婚の夫婦と全く同じ条件で契約できるとは限らないのが実情です。だからこそ、物件探しと並行して、金融機関の対応状況や必要な書類、税制上の扱いを早めに調べておくことが、実際の住宅購入をスムーズに進めるための土台になります。

パートナーシップ制度を利用するかどうか、公正証書をどこまで整えるかといった判断は、カップルによって優先順位が異なります。すでに制度を利用していて必要書類がそろっている人もいれば、これから住宅購入をきっかけに準備を始める人もいるでしょう。どちらが正しいということではなく、二人の暮らし方や将来設計に合わせて、無理のない範囲で、一つずつ準備を進めていくことが現実的です。

住宅購入という決断は、賃貸で暮らすよりもずっと長い期間、二人の関係と生活基盤を結びつけるものになります。だからこそ、契約の組み方や必要書類だけでなく、将来どちらかが体調を崩したときの備えや、転勤・転職といったライフイベントが起きたときにどう対応するかまで、購入前に話し合っておくことをおすすめします。金融機関の対応状況は年々変わってきているため、数年前に「対応していない」と言われた銀行が、今は条件付きで対応するようになっているケースも考えられます。一度断られた経験があっても、時間を置いて改めて問い合わせてみることも選択肢の一つです。

働き方の面でも、同性パートナーとの同居や住宅取得を福利厚生の対象として認め、住宅手当や社宅制度を配偶者に準じて適用する企業が少しずつ増えています。JobRainbow(https://jobrainbow.jp/)では、そうした同性パートナー向けの制度を含めてダイバーシティに取り組む企業の情報を探すこともできるので、二人の暮らしを支える働き方という観点から会社選びを見直してみるのも一つの方法かもしれません。

住宅ローンという大きな決断だからこそ、制度の現状を正しく知った上で、パートナーと納得のいく形を一緒に見つけていってほしいと思います。ただし、少なくとも「同性カップルには住宅ローンという選択肢自体がない」という状況ではなくなってきています。情報を集め、比較し、必要な準備を一つずつ整えるプロセスは決して楽ではありませんが、その先に自分たちらしい住まいを持つという選択肢が現実的に開かれていることを、まず知っていただけたら幸いです。


参考

  1. 住宅金融支援機構「同性パートナーを連帯債務者とすることはできますか」
  2. じぶん銀行FAQ「住宅ローン 同性パートナーとペアローンや収入合算を利用したり、担保提供者としたりできますか」
  3. SUUMO「LGBTQ向けの家・マンション購入 同性パートナーと暮らす住まいのローン・相続の知識」
  4. アットホーム「同性パートナーと利用できる住宅ローンを紹介!注意点やリスク、必要書類も解説」
  5. アットホーム「同性パートナーには相続権がない?今できる4つの相続対策と注意点」
  6. 三井住友銀行「連生団体信用生命保険付住宅ローン クロスサポート」
  7. 渋谷区・認定NPO法人虹色ダイバーシティ「全国パートナーシップ制度共同調査」(PR TIMES)
  8. リクルート「はじめての住宅ローン」LGBTカップル向け住宅ローンの解説

    本記事でご紹介する情報は、一般的な情報提供を目的として作成されたものです。

    各記事の日付はシステム上の更新日付であり、執筆時の日付と異なる場合があります。

    各記事は、執筆当時の情報に基づいて作成されています。そのため、最新の情報とは異なる内容や、現在の価値観と相違する表現が含まれている場合がございます。ご了承ください。

    また、当社は、読者様が本記事の情報を用いて行う一切の行為について、何らの責任を負うものではありません。本記事の内容の正確性や個別の状況に関するご判断は、読者様ご自身の責任において行っていただき、必要に応じて専門家にご相談ください。

    検索

    • セクシャリティ診断ツール
    • 企業担当者の方向けLGBTフレンドリー企業マニュアル無料配布中
    • LGBT研修
    • ダイバーシティ研修
    • LGBTQ+社外相談窓口
    JobRainbow