【2025年最新】LGBTQ+・同性パートナーの生命保険受取人と家族カード 完全マニュアル

ライター: JobRainbow編集部
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「この人と、一生を共にしたい」。そう心に決めたとき、二人の未来を明るく描く一方で、「もしも、何かあったら……」という漠然とした不安がよぎることはありませんか? 特に、お金や保険のこととなると、どこから手をつけていいのか分からず、立ち止まってしまう方も少なくないかもしれません。

「同性パートナーは生命保険の受取人になれるの?」「家族カードって作れる?」「パートナーシップ証明書があれば全部解決する?」

そんな、あなただけの悩みじゃない疑問に、このマニュアルが一つずつお答えしていきます。

この記事が、あなたの漠然とした不安を解消し、パートナーとの未来を安心して築くための確かな一歩となることを願っています。さあ、一緒に「ふたり」の人生の地図を描いていきましょう。

LGBTQ+当事者が直面するお金と保険の壁

日本円の紙幣と硬貨がテーブルの上に置かれている画像。

日本の法制度と「結婚」の壁

同性カップルがパートナーとの未来を考える上で、まず最初に直面するのが、日本の法制度における「結婚」の壁です。現在の日本では、法的に同性婚は認められていません。この一つの事実が、お金や保険、税金といった多くの分野で、異性カップルにはない複雑な課題を生み出しています。

最も大きな問題の一つが、同性パートナーは民法上の「法定相続人」にはなれないという点です。これは、たとえ長年連れ添ったパートナーであっても、片方が亡くなった際に、その財産は法定相続人である親族(子、親、兄弟姉妹)に引き継がれることを意味します。この課題を解消するためには、遺言書の作成が不可欠となります。

また、税制面でも不利が生じることがあります。たとえば、亡くなったパートナーが残した死亡保険金を受け取ったとしても、法律上の配偶者であれば適用されるはずの「相続税の基礎控除」や非課税枠が適用されず、高額な税金を支払わなければならない可能性があります。さらに、生命保険の保険料を支払っても、年末調整や確定申告で利用できる「生命保険料控除」の対象外となってしまうなど、優遇措置が受けられないケースがほとんどです。

そして、所得税の「配偶者控除」や社会保険の「健康保険の扶養家族」といった、法律婚が前提となる国の制度は、同性カップルには原則として適用されません。これにより、経済的にどちらかがパートナーを支える場合でも、税制上のメリットや社会保障の恩恵を受けることが難しいのが現状です。

法律の壁と企業の柔軟性

国の法律が「配偶者」という言葉に限定的な定義を設ける一方で、多くの民間企業や一部の自治体では、同性パートナーシップのニーズに応えようとする動きが広がっています。たとえば、三井住友カードやJCB、ANAといった企業は、家族カードやファミリーマイルの適用において、「生計を同一にする同性パートナー」という独自の基準を設けています。これは、法的な書類を前提とせず、あくまで「事実上の関係性」を重視した対応です。

この背景には、公的な制度の硬直性と、個々の企業が顧客ニーズに柔軟に応えようとする姿勢との間に大きなギャップが存在する現状があります。法律は「民法の規定による配偶者」を要件としていますが、民間企業は「生計を同一にする」という実態ベースの基準でサービスを提供することで、法律が追いついていない領域で実質的な安心を提供しています。

このことは、私たちが「法律が変わるのを待つ」だけでなく、現時点で利用可能なサービスを賢く見つけ、組み合わせていくことが、二人の未来を守るための重要な戦略であることを示唆しています。

知っておきたい!同性パートナーと生命保険を結ぶ際のポイント

ビジネスミーティング中の三人の専門家がディスカッションしている場面。窓の外には都市のパノラマが広がり、プロジェクターやタブレットに表示されたデータを見ながら会話を楽しんでいる。

同性パートナーは「保険金の受取人」になれる?

結論から言うと、はい、多くの生命保険会社で、同性パートナーを保険金の受取人に指定することが可能です。これは、以前は困難だったことを考えると、大きな変化だと言えるでしょう。

ただし、手続きには各保険会社が定める条件をクリアする必要があります。一般的には、次のいずれかの書類の提出を求められるケースが多いようです。

  • 自治体が発行する「パートナーシップ証明書」の写し
  • 住民票(同居期間の証明)
  • 公正証書(準婚姻契約など)

保険会社によっては、戸籍上の配偶者がいないことや、一定期間以上の同居・生計を共にしていることなどを確認するため、面談が必要となることもあります。

【ケース別】あなたに最適な生命保険の選び方

生命保険を選ぶ際は、単に受取人を指定できるかだけでなく、二人のライフプランに合った保障内容を選ぶことが大切です。

1. 「一般的な生命保険」を検討しているあなたへ

死亡保障だけでなく、リビングニーズ特約など、生前に保障を受け取れる特約にも注目しましょう。もし被保険者の余命が6か月以内と判断された場合、死亡保険金の一部または全部を前もって受け取ることができる特約です。これにより、最期の時間をパートナーと穏やかに過ごすための資金として活用できます。

また、死亡時だけでなく、病気や介護状態になったときのための保障も検討してみましょう。貯蓄型の保険や、介護保険、医療保険などを組み合わせることで、二人の老後も安心して支え合うことができます。

2. 「健康上の理由で諦めていた」あなたへ

「過去に病気を患ったことがある」「性別適合手術やホルモン療法を受けている」といった理由で、生命保険の加入を諦めていた方もいるかもしれません。従来の生命保険は、健康状態の告知を厳格に行い、性別適合手術やホルモン療法を「治療中」とみなすため、加入が難しいケースが多くありました。

しかし、このようなハードルを乗り越えるためのサービスも生まれています。たとえば、R&C株式会社が提供する「パートナー共済」は、HIV陽性の方や、性同一性障害(GID)のホルモン療法中でも加入できることを明確にしています。さらに、PEP(曝露後予防)やPrEP(曝露前予防)といった、HIV感染予防に関する診療費用の一部を補助するサービスも提供しています。

こうしたサービスは、単に「保険を提供する」だけでなく、これまでの保険業界がデータ不足や理解不足から見過ごしてきたセクシュアリティ特有の健康課題にも深く向き合っています。こうした取り組みは、当事者への理解を深め、より多くのデータが集まることで、今後、保険業界全体の在り方を変えていく可能性を秘めていると言えるでしょう。

LGBTQ+フレンドリーな保険代理店R&C株式会社の「パートナー共済」が生まれたきっかけ

同性パートナーと家族カードを持つメリットと注意点

クレジットカードがノートパソコンのキーボードの上に置かれている写真

家族カードのメリット

家族カードは、本会員のクレジットカードに紐づく形で、家族が同じカードを持つことができるサービスです。同性パートナーが家族カードを持つ最大のメリットは、家計管理がシンプルになることです。二人の支出を一枚の明細で把握できるため、家計の見える化が進みます。さらに、利用に応じて貯まるポイントやマイルを合算できるため、効率的にポイントを貯められる点も大きな魅力です。

同性パートナーと家族カードを作れる企業を比較!

多くのクレジットカード会社が、同性パートナーでも家族カードを作成できるサービスを提供しています。ここでは、代表的な企業のサービス内容を比較してみましょう。

企業名対象者必要書類特徴・メリット
三井住友カード生計を同一にする同性パートナー特になし(本会員入会後の追加申込)Vpassからのインターネット手続きで簡単申込
JCB生計を同一にするパートナー(同性パートナーを含む)電話での問い合わせ姓が異なる場合でも申込可能
ANA生計を同一にし、同居する同性パートナー健康保険証または住民票の写しファミリーマイルを利用して最大10名でマイルを合算・利用できる
楽天カード生計を同一にするパートナー特になし同性パートナーシップ制度がない地域でも、書類不要で申込可能
アメリカン・エキスプレス生計を同一にする同性パートナー特になし家族の定義が広く、海外旅行時の手厚いサービスが魅力

上記のように、ほとんどの企業が「生計を同一にする」という事実を重視しており、楽天カードやアメリカン・エキスプレスのように、パートナーシップ証明書などの特別な書類を求めないケースも増えています。これにより、法的な書類を揃えること自体に不安やハードルを感じている方でも、手軽に利用できる選択肢が広がっているのです。

パートナーシップ証明書は必要?同性パートナーシップ制度の基礎知識

「証明書」が持つ意味と限界を知ろう

現在、日本全国で200以上の自治体が同性パートナーシップ制度を導入しています。この制度は、自治体が二人の関係を「公的に認める」ことで、様々な行政サービスや民間サービスが利用しやすくなることを目的としています。

ただし、一つ注意しなければならないのは、パートナーシップ制度は国の法律に基づくものではないという点です。そのため、法的効力は伴いません。これは、たとえ証明書を持っていても、先ほど触れた法定相続人になれないことや、税制上の優遇措置(配偶者控除など)を受けられないといった課題は解決しないことを意味します。

証明書を取得するメリット

それでも、パートナーシップ証明書を取得することには大きな意味があります。これは、完全な法的保障ではないものの、「私たちの関係性を公的に認めてもらう」ための第一歩であり、「社会的信頼」を得るツールとして機能します。

具体的には、以下のようなメリットがあります。

  • 公営住宅への入居申し込み: 「家族」として認められ、申し込みが可能になります。
  • 病院での面会や手術の同意: 多くの病院で、家族として扱ってもらいやすくなります。
  • 民間サービスの利用: 生命保険や住宅ローンの手続きをスムーズに進めるための証明として利用できる場合があります。

制度の利用には、お互いに配偶者がいないこと、一定の年齢であること、同居していることなどの要件があり、自治体によっては公正証書などの準備が必要となり、費用がかかるケースもあります。また、引越しによって制度が利用できなくなる可能性があることも知っておくべきでしょう。

パートナーシップ制度は、法律のギャップを埋めるための重要なステップですが、その限界を理解し、あくまで「より多くの安心を得るためのツール」として捉えることが大切です。

よくある疑問【Q&A】

Q: 住宅ローンは二人で組めますか?

はい、同性カップルでも二人で住宅ローンを組める金融機関は増えています。主な形態として、以下の二つがあります。

  • 連帯債務型: 一本の住宅ローンについて、二人が共同で債務を負う形式 。
  • ペアローン: 二人が別々に住宅ローンを組み、お互いが連帯保証人となる形式。

どちらの形態も、お二人の収入を合算できるため、単独で借りるよりも高額な借入れが可能になるのがメリットです。ただし、どちらの場合も、不動産の名義は共有となるのが一般的です。そのため、もしどちらか一方に何かあった場合、その共有持分は法定相続人である親族に引き継がれてしまい、残されたパートナーが住居を失うリスクが生じます。これを避けるためには、遺言書での対策が絶対に必要です

Q: 遺言書は絶対必要ですか?

はい、同性パートナーにとっては遺言書は絶対に必要です。なぜなら、繰り返しになりますが、同性パートナーは法定相続人ではないからです。遺言書がなければ、いくら長年連れ添い、財産を共に築いたとしても、パートナーに財産を遺すことはできません。遺言書は、大切なパートナーに財産を確実に引き継ぐための、唯一にして最も確実な法的手段です。

遺言書には、自分で作成する「自筆証書遺言」と、公証人が作成する「公正証書遺言」の二つがあります。

  • 自筆証書遺言: 手軽に作成できますが、形式の不備で無効になったり、紛失・改ざんのリスクがあります。ただし、法務局に保管する制度を利用すれば、こうしたリスクを大きく軽減できます。
  • 公正証書遺言: 公証人が作成するため、最も安全で信頼性が高い方法です。費用と手間はかかりますが、内容に法的効力が保証されます。

高齢の方だけでなく、若い世代の同性カップルも、遺言書作成は将来への備えとして大変重要です。

Q: 公正証書って何ですか?作るべきですか?

公正証書とは、公証人が公証役場で作成する、強い法的効力を持つ文書です。遺言書だけでなく、同性パートナー間で「準婚姻契約」として作成することも可能です。

この契約には、もしもの時に備えて「財産分与」や「死後の事務委任」などを盛り込むことができます。公正証書は、パートナーシップ証明書よりも法的効力が強く、二人の関係をより強固に守るための重要なツールとなります。住宅ローン手続きなど、公正証書の提出を求める民間サービスも存在します。

パートナーシップ制度には法的効力がないという限界がありますが、遺言書や公正証書といった私的な法的文書を作成することで、そのギャップを埋めることができます。二人の関係を「口約束」ではなく「文書」で明確にすることは、未来の安心を築く上で最も重要なステップなのです。

おわりに〜同性パートナーとの未来を安心して築くために〜

二人でセルフィーを撮るカップル。明るい笑顔とカジュアルな服装が特徴的で、背景には自然が広がる風景が見える。

同性パートナーとの未来を真剣に考えるとき、お金や制度の壁は、どうしても私たちの前に立ちはだかります。しかし、今回お伝えしたように、知恵と工夫で乗り越えられることがたくさんあるのも事実です。

大切なのは、一人で悩みを抱え込まず、まずはパートナーとオープンに話し合うこと。「もし私に何かあったら、あなたはどうしてほしい?」「二人でどんな未来を築いていきたい?」といった会話から、一歩ずつ前に進んでいきましょう。

そして、この記事を読んだことをきっかけに、生命保険、家族カード、そして遺言書や公正証書といった具体的な行動を始めてみませんか?一つずつ、丁寧に、二人で歩んでいくことで、誰にも邪魔されない、私たちだけの未来を築いていけるはずです。

参考

    本記事でご紹介する情報は、一般的な情報提供を目的として作成されたものです。

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