同性パートナーの住民票の続柄はどう書かれるのか。変わりつつある表記の実情

ライター: JobRainbow編集部
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住民票には、世帯主から見た同居人の続柄を記す欄があります。夫婦であれば「夫」「妻」、子どもであれば「子」と記載されるこの欄に、法律上の婚姻関係を結べない同性パートナーがどう記されるかは、長年にわたって当事者を悩ませてきた問題です。単なる書類上の表記に見えるかもしれませんが、緊急連絡先としての扱いや、賃貸契約、各種の届け出など、日常のさまざまな場面で関係性を証明する手段として住民票が使われることを考えると、この続柄欄の表記は、思っている以上に大きな意味を持っています。


かつては「同居人」としか記載されなかった

2018年、当時の総務政務官は衆議院法務委員会で、同性パートナーについて「親族関係があるといえないため、同居人と記載する」という趣旨の答弁をしています。この答弁を背景に、多くの市区町村では、同性パートナーを住民票に記載する際、家族関係を示さない「同居人」という表記が一般的に使われてきました(引用:東京新聞「同性カップルの住民票「続柄」が悩ましい 同居人、縁故者に「夫(未届)」が登場 同性婚の法制化こそ悲願」)。「同居人」という表記は、法律上は間違いではないものの、長年連れ添ったパートナーであっても、シェアハウスの同居人と同じ扱いに見えてしまうという点で、関係性の実態を反映していないと感じる当事者が少なくありませんでした。


パートナーシップ制度の広がりで「縁故者」という表記が使えるようになった

自治体による同性パートナーシップ制度が全国に広がるにつれて、住民票の続柄欄にも変化が生まれました。総務省の要領では、「縁故者」という続柄を「親族で世帯主との続柄を具体的に記載することが困難な者」と位置づけており、単なる同居人よりも関係性の結びつきが強いことを示す表記として使えるようになっています(引用:東京新聞「同性カップルの住民票「続柄」が悩ましい 同居人、縁故者に「夫(未届)」が登場 同性婚の法制化こそ悲願」)。パートナーシップ宣誓制度を利用した同性カップルについて、住民票の続柄を「同居人」から「縁故者」に変更できるようにする自治体は、この制度の広がりとともに増えてきました。


「夫(未届)」「妻(未届)」という表記に踏み込む自治体も出てきた

さらに一歩進んだ動きとして、事実婚の異性カップルに使われる「夫(未届)」「妻(未届)」という表記を、パートナーシップ宣誓を行った同性カップルにも認める自治体が登場しています。長崎県大村市が先駆けてこの表記を導入し、その後、栃木県鹿沼市など同様の対応を目指す自治体も出てきました。2026年2月時点で、倉吉市、大村市、鹿沼市、横須賀市、三豊市、栃木市、逗子市、葉山町、犬山市、東京都世田谷区、中野区、伊賀市、品川区、足立区など、複数の自治体でこの表記が認められています(引用:PRIDE JAPAN「住民票続柄欄「夫または妻(未届)」記載が可能な自治体」)。

「夫(未届)」「妻(未届)」という表記は、法律上の婚姻関係にはない事実婚カップルに使われてきたものと同じ枠組みを、同性パートナーにも当てはめる形です。関係性を家族として認識してもらいやすくなる一方で、あくまで「未届」という注記つきであり、法律上の婚姻そのものが認められたわけではない、という限界も残っています。


実際に変更するための手続き

住民票の続柄表記を変更できるかどうか、そしてどのような表記が選べるかは、自治体ごとに運用が異なります。多くの場合、まず各自治体のパートナーシップ宣誓制度やファミリーシップ宣誓制度を利用し、受領証明書の交付を受けることが前提になります。

世田谷区の場合、パートナーシップ・ファミリーシップ宣誓書の写しや、東京都パートナーシップ宣誓制度の受理証明書などを添えて、区内の窓口で手続きを行います(引用:世田谷区「パートナーシップ宣誓等を行った方の住民票の続柄変更に関する手続」)。品川区では、発行から3か月以内の東京都パートナーシップ宣誓制度受理証明書と、パートナー二人の署名が入った申出書、本人確認書類をそろえて申請する必要があります(引用:品川区「住民票の写しへの同性パートナーの続柄の記載に関する手続き」)。足立区でも、区内で同一世帯であることや、養親子関係ではないことなど一定の要件を確認したうえで、パートナー二人がそろって窓口に出向く必要があるとされています(引用:足立区「パートナーシップ宣誓制度の受領証明書を交付された方の住民票等の続柄表記変更申出について」)。

こうした手続きは、パートナーシップ制度を利用していることが前提になっている自治体がほとんどです。まだパートナーシップ制度を利用していない場合や、そもそも住んでいる自治体に制度自体がない場合には、続柄表記の変更にたどり着く前の段階で足踏みすることになります。引っ越しを機に、パートナーシップ制度や続柄表記の運用が手厚い自治体を選ぶという判断をするカップルもいます。


続柄表記が変わることの意味、当事者にとっての受け止め方の違い

続柄が「同居人」から「縁故者」や「夫(未届)」「妻(未届)」に変わることについて、当事者の受け止め方は一様ではありません。家族として公的に扱われている実感につながると感じる人もいれば、あくまで行政上の便宜的な表記にすぎず、根本的な解決にはならないと考える人もいます。東京弁護士会のコラムでも、パートナーシップ制度そのものが法律上の婚姻とは異なる限定的な効果しか持たない点が指摘されており、続柄表記の改善もその延長線上にある部分的な対応だと位置づけられています(引用:東京弁護士会「同性パートナーシップ制度について」)。

どちらの受け止め方が正しいということはありません。日々の暮らしの中で、緊急連絡先や賃貸契約の場面で関係性を説明しやすくなったことを実感として喜ぶ人もいれば、それでもなお「未届」という注記が残ることに複雑な思いを抱く人もいる、というのが実情に近いといえそうです。


課題として残ること

続柄表記の改善は、あくまで自治体レベルの運用にとどまっており、全国一律の制度ではありません。住んでいる場所によって選べる表記が違う、あるいはそもそも変更の仕組み自体がないという状況は、今も続いています。東京新聞の記事でも、こうした表記の工夫は積み重ねられてきたものの、当事者にとっての本質的な願いは同性婚の法制化にあるという声が紹介されています(引用:東京新聞「同性カップルの住民票「続柄」が悩ましい 同居人、縁故者に「夫(未届)」が登場 同性婚の法制化こそ悲願」)。続柄表記の工夫は、婚姻制度そのものが変わるまでの間、当事者の暮らしを少しでも支えるための現実的な対応だと捉えておくのがよさそうです。

住民票の続柄表記は、パートナーとの関係を公的な書類の上でどう扱ってもらえるかという、暮らしに直結する問題です。まずは自分の住んでいる自治体にどのような制度や運用があるのかを調べてみることが、最初の一歩になります。


これから住まいや暮らしの制度を調べていく人へ

JobRainbowでは、同性パートナーの福利厚生や各種制度に前向きに取り組む企業の情報も紹介しています。住まいや暮らしの制度とあわせて、働く場所の制度も見直してみると、新しい選択肢が見えてくるかもしれません。


参考

  1. 東京新聞「同性カップルの住民票「続柄」が悩ましい 同居人、縁故者に「夫(未届)」が登場 同性婚の法制化こそ悲願」
  2. 世田谷区「パートナーシップ宣誓等を行った方の住民票の続柄変更に関する手続」
  3. 品川区「住民票の写しへの同性パートナーの続柄の記載に関する手続き」
  4. 足立区「パートナーシップ宣誓制度の受領証明書を交付された方の住民票等の続柄表記変更申出について」
  5. PRIDE JAPAN「住民票続柄欄「夫または妻(未届)」記載が可能な自治体」
  6. 東京弁護士会「同性パートナーシップ制度について」

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