インフォテリアを直撃取材!【LGBTフレンドリー企業インタビュー】
はじめに
株式会社インフォテリアのLGBTへの取り組みについて、JobRainbowライターがインタビューに行ってきました!
インフォテリアといえば、ソフトウェア開発・販売から製品サポートまでを行うことを通し、様々なビジネスを繋ぐ、日本発の超ハイテクな会社!
2016年に策定された、企業のLGBTに関する取り組み評価指標である「work with Pride」にて「シルバー」を受賞していることでご存知の方も多いのではないでしょうか?
今回インタビューに応じてくれたのは、広報を担当する長沼さん、そして人事を担当する高橋さんの二名です。
「work with PRIDE」でシルバーを受賞!その背景に迫る!
<LGBTは当たり前!?ダイバーシティに取り組む中でのLGBTとは>
―まずは、インフォテリアがLGBTに取り組むようになったきっかけを教えてください。
高橋:きっかけは渋谷区でパートナーシップを認めるようになってからですね。
ただ、私たちは「セクシュアルマイノリティだから」とか、「外国籍だから」とか、「障害者だから」といった事情はまったく考えない会社だと思います。現在「ダイバーシティ」という考え方が世の中に広がっていますが、「それって普通のことでしょ」という考え方が元々ある会社なんです。
そんな中、社会的にいろいろなことが進み、渋谷区がパートナーシップを認めるということを始めたので、それに対応すべく社内規定の変更などをしてきました。それがLGBTに取り組むきっかけとなったと思います。
長沼:元々平野(社長)はアメリカの会社におりまして。その会社は世界的なパッケージソフトメーカーだったのですが、アメリカの本社ではカミングアウトしたゲイの方も普通に一緒に仕事をしていたんです。会社の中にもゲイのサークルがあり、1990年代の頃から、そういった世界を体験してきたわけです。だからもう世間に発表するまでもなく、それが普通だという認識でした。
―社長自身にとってはそれが「あたりまえ」だったんですね。それでは一方で、LGBTに対する社員さんの反応はどうなのでしょうか
高橋:現在、社内にカミングアウトしているLGBT当事者がいるという状況ではないんです。なので、なかなか実感しづらい部分はあるんですけど、LGBT社内研修会を開き実際に当事者の方に来て話をしていただくことで、身近になってきているという実感はあります。LGBTに関する書籍も全社員に配布して更なる啓発も図りましたね。取引先などではLGBTの方に接する機会があるんですが、こうした研修の効果や成果が出ていることが確認できています。
―カミングアウトされているLGBTの当事者の方はいないということですが、お二人は働いていてダイバーシティを感じる点ってありますか?
高橋:個性って、ひとりひとり全く違うじゃないですか。LGBTや外国籍じゃなかったとしても、非常に個性あふれるような人が多くて、そういった意味で多様性を感じることはすごく多いですね。
長沼:当社は外国人が多いんです。それこそ日本語もあまりしゃべれないような人もいますね。そしてその中でも中国人の方って、大家さんの理解を得られなくて、なかなか部屋を借りられなかったりするんです。それで社長がかなり心を痛めて、会社で契約することにしたんですよ。社長が保証人になって。
そういったように、ダイバーシティって結構広い問題なんだなというように意識しています。LGBTだけじゃなく、障がい者とか外国人とか、いろんな人が楽しく働けて、型にハマらず自分らしく生きることができればいいなと思っています。
―はたらきかたの面でも型にハマらない様々な施策をされていますよね。
高橋:そうですね。育児とか介護とか、ライフイベントがみんなそれぞれありますので、それに合わせた形で働いてもらいます。やっぱり長く働いてほしいので、そういうところを大事しています。
長沼:うちの会社は、言われてからソフトを開発するのではなく、売れるかどうかわからないモノを作る会社なんですよ。そういう面では、型にハマらない異質な人が集まった方が、よりイノベーティブなモノができると考えています。
社外に発信することを通して
<経営理念は「幸せの連鎖」>
―「work with PRIDE」で評価されたのはどんな取り組みだったのですか?
高橋:渋谷区のパートナーシップ条例に合わせて規定を変えたことと、発信力ですね。
異性の結婚と同等に扱うように規定を変更しました。「配偶者」という扱いにしました。
―今後はどのようなことをしていく予定ですか?
高橋:特別なことをしようというわけではありませんが、外に向けて発信することが影響力をもつのであれば、積極的に発信していきたいです。あとは、お手洗いとかをいろんな人に対応できるようなものにしていきたいなと思っています。自社ビルだったらガンガンやりたいんですけど、そうではないのではがゆい想いをしていますね。
長沼:以前「LGBT研修会」をやったときに、製品サービスに応用できる部分も多くて沢山の発見がありました。
例えば、ユーザー登録のとき性別は「女性・男性」だけだったんですけど、「その他」があった方が選びやすいということを知ったので、「その他」を入れるようにしたんです。あとは日ごろの会話の中でも、「彼氏・彼女」と言わず「恋人」と言ってみたりとかですね。
―研修を行っている会社でも、一度行ったきりでおわりになってしまったり、義務感でやっているという状態だったりすることが多いのですが、製品に反映したり発信したりというところまで至る企業ってなかなかないですよね。そのような推進力ってどこから来るのでしょうか。
高橋:製品を作るときも、世の中で役に立つものを創りたいという考え方をしているので、世の中で社会的に問題になっていることがあれば、こういう会社があるということを発信していくべきだと思っているんですよね。ある種、「使命感」が一番強いのかな。できることならうちの会社だけでなく、他の会社にも「インフォテリアさんがこういうことしてるならうちもやりたい」という気持ちが連鎖していけばいいなと思います。うちの経営理念に「幸せの連鎖」というものがあるというのも一つの要素ですね。
―発信だけでなく、世の中全体を考えたうえで行われているんですね。
高橋:そうですね。間違いなくそうです。採用で有利だとかの理由で取り組みを行うのではなく、それはあくまで副次的な効果としてあればいいなという程度。やはり世の中的に変質していってくれたらいいなと思っていますね。
―「発信する」という面では、ダイバーシティに関してどのように取り組まれてきたんですか?
長沼:LGBTの規定を変えるまでは、そんなに「これ」といえるようなことはしてなかったですね。社長のブログで発信してたくらいで。良くも悪くも、ダイバーシティに関しては「前からやってます」ということが多すぎて、公表するタイミングを逃したまま時が過ぎてしまったという面もあるんですよ。ただ「こういうことやってる会社があるんだよ」とお知らせする機会は欲しいなと思っていました。そこで世の中の動きに合わせて、ダイバーシティの中でもLGBTにフューチャーさせたプレスリリースをしました。
高橋:取り組み自体は前からしてたけれども、それに対してアピールできてなかったんです。でも徐々に発信力をつけていって、新たな取り組みをするときには、どんどん外に発信するという思考に代わってきましたね。
長沼:渋谷区で同性パートナーシップ条例が決まったころ、社長と「渋谷区でこういうことやるみたいだ」という話をしたんです。そしたら社長は「そんなこと、うちは元々やってるぞ」と。それならば、きちんと期間を設けて、会社として進めていけるようにしていったというわけです。
行政で発信をしてくれているならば、民間でも「企業でもやっている。」ということを発信すれば、きっとLGBTの方々にも勇気を与えられると思っています。
我々としても、多様な人々が会社に集まった方がよりイノベーティブで価値のある職場にできると思っているので。
採用や取り組みで大切にしていること
<カミングアウトはプラスにしかならない!?>
―採用のときにカミングアウトされたりしたことってありますか?
高橋:面接の中ではいまのところないですね。でもカミングアウトしやすい雰囲気をつくるというようにはしてます。なので社員向けにLGBTに関する書籍を配ったりしてますね。
ただ、採用で「LGBTに対して注力して採用しよう」ということはしません。特別感を出すことがすべてにとって良いことではないと思っているので。
でもカミングアウトしてくれたら「ええっ!ほんとですか!」と逆にぼくらが食いついてしまうかも(笑)。そういう人がでてきたら、ぼくらのやってる取り組みも成果が出てきているということだし、当事者にもぼくらのことが届いているということだから、嬉しいなと思います。
それにやっぱりカミングアウトするって、なかなか勇気がいることだと思うんです。そういったことをする決断をぼくらに対ししていただけたら、それはもうすごいことだと思うし、勇気をもって面接に臨んでくれたんだと思います。カミングアウトはデメリットどころか、メリットでしかないですね。
―ダイバーシティを進めるうえで、困難はどのように乗り越えているのですか?
高橋:「歩み寄る」ですね。相互に「歩み寄る」。これは外国籍とか関係なく、すべての事柄においての「歩み寄り」だと思います。わたしと長沼においてだって、一個性として「歩み寄る」必要はあると思います。
これは決して慣れ合いだとかではなくて、思ってることを伝えるということがものすごく大事だなと思っています。思ってることを伝えあい理解し合うということ。ダイバーシティにおいてはまさしくそこが大事なのかなと思います。
―日本人って、コミュニケーション不足になりがちなところはあるかもしれませんね。
高橋:そうですね。世界的に見たら、日本ってすごくダイバーシティという面で遅れているように見えるかもしれませんが、「ダイバーシティ」さが表層に表れてきたのが最近だったと思うんですね。手をつけようにも今までどうにもできなかった部分はあって、ただそれだけのことなのかなと思います。日本人だけがダイバーシティに対して受容性が低いとは全く思わない。むしろ高いと思っています。世界的なアピールも日本全体としてできるようになってきたらいいですよね。
―日本だと、「そもそも認識していない」という部分が多いですよね。知ってさえいれば、スッと受け入れてくれる人も多いのかもしれませんね。
高橋:そうですね。だからこそ研修などで認識をしてもらうということはとても大事だと思いますね。ぼくらがもっと社会に対して影響力を上げていくというのも、ひとつダイバーシティへの取り組みのひとつになるのかもしれません。
インフォテリアのお二人からLGBTQ+アライへ
―読んでいるLGBTの就活生・求職者の方にメッセージをいただけますか。
高橋:日本の会社って、そんなに捨てたもんじゃないと僕は思ってます。
わたし今まで6社くらいを転々としてきたんですけど、それぞれの会社において、LGBTにマイナスな印象をもっている職場って基本的になかったなって思ってます。
もう少し会社を信じてもらいたいなって思うし、自分らしく働けない人が実際にいるという現状を創ってしまっている日本の会社があることに対しては申し訳ないです。ぜひ勇気をもってほしい。人と違う感性や見え方をもっているのってものすごくすごいことで、そういう人たちがいる会社は輝くと思っているので、決して諦めないでほしい。そしてじぶんが就職・転職した職場に対しても諦めないで欲しい。
もしそれが名の知れてる大きな企業だとして、もしかしたら異質性は拒まれるんじゃないか、と思われるかもしれないけど、実際はそんなことないよ。もちろん認識不足である種の嫌悪感をだしてくる人はいるかもしれないけど、決してその人たちが最初からそうなわけではないと思います。やっぱり認識不足だと思うんですね。そこさえなんとかできれば、周りにいる人たちって、そんなに捨てたもんじゃないよって思います。
長沼:わたしは以前、LGBTの人のための合同就職説明会に行ったことがあるんですね。そしたらそこにいた学生さんたちがものすごくキラキラしてて。でも一方で、話を聞いているとみんな学生のときに自殺してしまいたいほどの苦労をされてて。でも、いや、だからこそ、とてもしっかりしている人が多いなとびっくりしましたね。
いまぼくらの会社のように努力している会社も増えていると思うので、あきらめずにそういう会社と出会ってほしいなと素直に心から思ってます。
―ありがとうございました!
*本記事は、実際のインタビューの内容を基にして再構成しています。