アイエスエフネットが取り組むダイバーシティ(前編)〜社長インタビュー〜
はじめに
ビジネスにおいてグローバル化に伴う顧客ニーズの多様化、また新たな創造性を生み出し柔軟性を持つためにも必要不可欠なダイバーシティの推進。昨今、ニュースなどでもダイバーシティという言葉を聞かない日はなくなったように思います。しかし、言葉ばかりが独り歩きしてしまい、実態や現実性のないものや、効果をなしていない施策が巷に溢れているようにも思います。
今回は、日本で現在の様にダイバーシティという言葉が一般的になる前から多様性のあるインクルーシブな組織づくりに取り組んでいる株式会社アイエスエフネットの代表取締役渡邉さんにJobRainbowインターンのヒロがインタビューをしました。
前編がダイバーシティの取り組み全般に関して、後編がLGBT関連の取り組みに関して。求職者の方だけでなく、障がいのある方やLGBTの方の雇用などの取り組みを推進している企業の方にも有益な知見を得られるものだと思います。
後編はこちら
アイエスエフネットのLGBTへの取り組み(後編)〜社長インタビュー〜
- はじめに
- アイエスエフネットグループの現在の取り組み
- ダイバーシティに取り組み始めたきっかけは?
- ダイバーシティへ取り組む上での考え
- 取り組む中で良かったと感じたこと、困難だったこと
- 取り組んだ結果として社内外からの反応は?
- 今後もっと取り組んでいきたいことは?
アイエスエフネットグループの現在の取り組み
アイエスエフネットグループでは、2006年から始まった、「ニート・フリーター」「障がいのある方」「ワーキングプア」「引きこもり」「シニア」の雇用を生み出す「5大採用」を、現在では「30大雇用」というスローガンの下、LGBTや難民、疾患を持つ人などの「働きたいのに本人の理由でない何かしらの理由で働けない、アイエスエフネットの基準で働けると判断している人」に働く環境を創出することを目指しています。
1人でも多くの方に「働くことの喜び」や「やりがい」を見出していただき、少しでも「生きがい」を感じてもらいたい、というアイエスエフネットグループ全従業員の願いが込められています。また、アイエスエフネットグループでは障がいのある方を、「未来の夢を実現するメンバー」としてFuture Dream メンバーと呼んでいます。
ダイバーシティに取り組み始めたきっかけは?
弊社はIT事業を軸とした会社です。マーケットが大きくなるにつれ、多くの多様な人財を受け入れる事が必要になってきました。障がいの有無に関わらず、働く意欲を大事にしながら採用をおこなってきました。
ダイバーシティへ取り組む上での考え
日本社会の多くの企業では、全てにおいて「最低限できるか」でまずは判断し、その上で評価していく、というのが多いと思っています。
しかしながら、そのような評価基準には課題があると考えています。例えば外国人。彼らはやる気がありとても優秀ですが、少なからず言語や文化の壁が存在します。女性だと出産期間や育児期間といった時間的制約が、採用段階や就労時に非常に不利になるケースがあります。弊社では、まず採用段階から“普通”に仕事をするという前提を持つのではなく、一人一人に個として向き合い、フラットな視点に立つことからはじめています。その結果、多様な人財が社内で活躍することにつながっています。
採用後も、個人の事情や配慮が必要な部分がありますので、制度として育児休暇や子の看護休暇、時短勤務、充実した研修といった多くの、サポート体制を整えています。その他、メンタルヘルスケアや相談窓口の設置、家族との連携が必要な障がいのある従業員とは、家族を含めて話し合いの場を設けるなど、個々のケースに対応できる機関と環境をつくり、細かな配慮を可能にしています。
そして、私たちは常に、一人一人「個」をみることで、特別扱いではなく、仕事をするために必要である「配慮」をしていくという姿勢を一貫してもっています。
取り組む中で良かったと感じたこと、困難だったこと
何に良さを感じ何に困難を感じるのかは、捉え方や考え方の問題であると思っています。現実問題として、様々な人を雇用することは均一化や効率化が難しいので大変手間のかかる事です。日本でビジネスをしている人にとっては、ダイバーシティに取り組むことに対して、デメリットの方が圧倒的に大きいと考える人が多いのは当然だと思います。
短期的に見た時、ダイバーシティへの取り組みは経済的なメリットが見えにくいかもしれません。しかし、金銭的な部分以外の幸せというものは、本来もっと重要視されるべきだと思います。働きたくても働けない人に、就労の機会をもってもらうこと、そうして働きはじめた社員がそれぞれの障がいの有無に関わらず、幸せに働ける環境を作ること、それによって社員の家族や周りの人も幸せになること。これは金銭的なメリットとは比べものにはなりません。
私自身、ダイバーシティに取り組み、こうした組織をつくることで、本来出会えなかった人たちに沢山出会うことができました。若いころは、障がいやLGBTであることを理由に不利益を被る人がいるとは、気付けていませんでした。しかし、世間で言われる普通の人が、努力をしなくて報われないのは当然かもしれませんが、障がいやLGBTなどはそうではないことを知りました。さらに当事者だけでなく家族も苦しんでいることを知り、少しでも役に立てることが自身の幸せにも繋がっていると感じます。
一方で、こうした雇用を続けられるように、会社としては利益を追求することが必要となってきます.
この「利と理のバランス」は非常に難しいです。ただ長期的な目線で見た時、多様な人財がいることは社員の柔軟な意識を生むことにもつながりますし、弊社では特に意識していませんが、結果的にホワイト企業としてのブランドにも繋がってきます。そうしたイメージや取り組みを知った上で、弊社に魅力を感じて入社をする社員も多く、それはとても嬉しいことですね。
取り組んだ結果として社内外からの反応は?
弊社では例えば、女性活躍への取り組みも充実していて、産前・産後休暇や育児休暇といった多くの制度があります。また、ただ制度を作るだけではなく、社内の意識改革や理解を促進することで、制度をワークさせることも重要視しています。その結果、産後の復帰率は100%で、今年は7名ほどが実際に職場に復帰しています。男性女性関係なく、子育てをする従業員からの、働きやすいという声はありますね。
また、障がいのある従業員とその家族からは、社会にでて当たり前に働くことができるようになるとは思わなかったという、喜びの声もきけます。
実際に、産前・産後休暇や育児休暇は仕事を離れる期間も長くなるので、受け入れをする部署は大変ですが、これらの取り組みに関して社内からの不満は一切ありません。しかしながら、利益を追うことに相反してしまうこともあり、それが重荷となり、モチベーションが低下するケースなどは課題だと感じています。
会社外の声としては、良い事をしていると思っていただける反面、メリットがあまり感じられない、と日本のビジネスシーンでは理解される事が少ないです。ただ、このダイバーシティの面で日本社会が大きく変わろうとしているのも、ここ最近実感するようになってきました。弊社を参考にしたいという企業の方も多く、定期的にそういった方にお話しをする機会も増えました。
もともと人とは懐が広い生き物です。しかし、利益を追求するばかりに、人や会社が変えられていってしまう事もあるように感じます。経済的なメリットを追うことで、人としての幸せといった部分が分からなくなってしまう事は、とても勿体ない事だと思います。ですので、こうした動きや取り組みが進んでいくのは、私としても非常に嬉しく感じています。
今後もっと取り組んでいきたいことは?
他の企業と相対的に比較したら、ダイバーシティに関して弊社は進んでいる企業だと思います。そして、世の中も法律も今まさに変化しているし、そんな状況が自分たちに追い付いてきているという感覚もあります。
しかし、ダイバーシティには終わりが見えないものです。これで完璧、ということは絶対にありません。これだけ多様な人財が働いていると、起こる問題も様々です。本当に一つ一つ、一人一人に真摯に向き合っていくことが、これまでと同様、今後もしていかなくてはならない事です。そうやって取り組みや配慮をしていくことで、様々な人が活躍できる場所をもっと作っていこうと考えています。