

PRIDE指標レインボー認定を獲得!時代の最先端を行くイトーキのDE&Iとは

株式会社イトーキは「明日の『働く』を、デザインする。」をコンセプトに、オフィス家具の製造・オフィス設計などを通じて新たな働き方やオフィス空間を提供しています。
そんなイトーキは、2022年から継続的にJobRainbowのコンサルティングサービスを利用。二人三脚で様々な制度改革や施策を実施し、2024年度のPRIDE指標(一般社団法人work with Prideが2016年に日本で初めて定めた職場におけるLGBTQ+への取組みの評価指標)ではレインボー認定を獲得しました。
今回の記事では、イトーキのDE&Iへの想いや取り組み、今後の展望について、JobRainbow MAGAZINE編集部が詳しくお話を伺いました。
きっかけは当事者社員の声。PRIDE指標ゴールド認定、そしてレインボー認定へ

ーまず、イトーキ様がLGBTQ+に関する取り組みを始められたきっかけ、そしてPRIDE指標レインボー認定に至るまでの経緯について教えていただけますか?
石戸さん(以下敬称略):2020年頃に社員からカミングアウトを受けたことが、大きなきっかけとなりました。時を同じくして、社会的な関心の高まりを受けお客様からワークプレイス(働く場所)のDE&Iについてご相談を受ける機会が増えていたため、「ワークプレイスを提供するプロとして、知識を深め、具体的な取り組みを進める必要がある」と感じました。そこで、JobRainbowさんにご相談させていただいたのが始まりです。
ー具体的にはどのような取り組みから始められたのでしょうか?
石戸:以前、別のインタビューでもお話しましたが、まずはパートナーシップ制度の導入や、ビジネスネーム(通称名)の使用許可、アライ宣言の実施などから始めましたね。その後、全社員向けの研修を実施し、基本的な知識を共有。さらに、人事担当者やアライコミュニティのメンバー向けに、カミングアウトを受けた際の対応などを学ぶ相談対応研修も行いました。
専門家との伴走により、前代未聞のスピードでD&I推進。社内制度も大きく変わる
ーレインボー認定の前にも、2023年度にPRIDE指標でゴールドを取得されていますよね。DE&Iがある程度進んだ後も、積極的にDE&Iを推進している理由はなんですか?
石戸:「より本質的なDE&Iを推進していきたい」という想いがあるためです。基本的な土壌は整ったため、より視座の高い取り組みとして、ハンドブックの作成(後述)やそれに関連するセミナーの実施を決めました。
それらの取り組みにより、ショールームで使用するアテンドブックをショールームスタッフが主体的に作成したり、弊社デザイナーが講師となってDE&Iに関するウェビナーを実施したりするなど、受け身ではなく、社員自らDE&Iを推進・発信していく動きが出てきていて…社員がDE&Iを「自分の業務」として捉え始めてくれていると感じます。
ー2022年から、JobRainbowをDE&I推進のパートナーに選んでいただいています。その理由について、お聞かせいただけますか?
石戸:LGBTQ+はもちろん、DE&I全般について幅広く相談できるためです。例えば、社内向けのハンドブックを作成する際、LGBTQ+に関する内容は勿論ですが、「障害」も重要なキーワードでした。身体障害や精神障害のある方への配慮やサポートについてハンドブックにどう落とし込むか、具体的なアドバイスをいただけたのが非常に助かりましたね。
また、ゲイ当事者である星 賢人さん(JobRainbow 代表取締役 CEO)から直接お話を聞けたことも、私たちにとって大きなインパクトがありました。
藤城さん(以下敬称略):私としては、JobRainbowさんの「空間づくり・オフィスづくり」への理解の深さが印象的でした。社員やお客様に説明する際に困らないよう、ワークプレイスの視点とDE&Iをしっかり紐づけてお話いただけた点が素晴らしいと感じています。

JobRainbowとのプロジェクト以外にも様々な取り組みを行っている
DE&I推進を「自分事」に。イトーキ独自の「DE&I WORKPLACE HANDBOOK」作成秘話

ーイトーキ様ならではの取り組みとして、「DE&I×WORKPLACE HANDBOOK」の作成が挙げられると思います。作成に至った背景や想いについて教えてください。
石戸:DE&Iを推進する上で、まずは社員一人ひとりにDE&Iの重要性を認識してもらい、取り組みを「自分事」として捉えてもらうことが大切だと考えていました。ちょうどその頃、社会的にも多様なジェンダーとお手洗いなどのハード面の在り方が注目されており、お客様から更衣室のレイアウトやロッカーの配置などについてのご相談が、営業担当を通じて人事部に寄せられるように。「これはオフィスづくりのプロとして知っておかなくてはいけない」と感じたんです。
「社員それぞれが自分事としてDE&Iを考えるためにはどうすればよいか?」
「DE&Iに正解はないが、私たちなりに考え、一つの指針となるようなものを作りたい」
そんな想いがあり、ハンドブックを作成することにしました。

ーハンドブックの作成にあたって、周囲の反応はいかがでしたか?
石戸:正直なところ、作り始めの頃はすべてがスムーズだったわけではありません。「イトーキ自身はこのハンドブックに書かれていることを実践できているのか?」という問いもありました。ハンドブック作成と自社の実践、どちらを優先すべきか、あるいは同時に進めるべきか、といった葛藤もありましたが、最終的には「本質的なDE&Iの推進」という思いを大切に、その足掛かりになればという想いを持って作成を進めました。
藤城:一方で、ハンドブックで扱う内容が「重要なことだ」という理解は、比較的スムーズに得られたように思います。お客様から世の中のことや働く場について質問される機会も多く、「自分が深く理解していないと提案できない」という意識は変わりません。
このオフィス(ITOKI DESIGN HOUSE)の存在も大きいですね。年間約3万人ものお客様がいらっしゃいます。それだけ多様な方々と触れ合う機会があるということですから、DE&Iへの意識は自然と高まっているのかもしれません。
ーハンドブックの活用にあたって、意識していたことはありますか?また、反響はいかがでしょうか?
石戸:まずハンドブックの重要性を認識してもらうために、2つのことに取り組みました。1つ目は管理職層にDE&Iの重要性を実感してもらい、その理解をメンバーに落とし込んでもらうこと。経営視点でイトーキにとってDE&Iがなぜ重要なのかを理解し、自身の業務にどう活かせるのかをよりイメージしてもらいやすくするためです。
2つ目は、定期的に情報を発信し続けること。一度の発信だけでは、参加できなかったり忘れてしまったりする人もいるため、意識定着のためにも定期的なイベントや社内発信を継続しています。
ハンドブック自体は社員用なため、お客様に直接お見せするものではありません。しかし、お客様に人事や総務担当の方が多いこともあり、「実は社内でこういったハンドブックを作成しまして…」とお話しすると、非常に興味を持っていただけます。少し内容をお見せすると「実はうちでもこういう課題がありまして…」といった具体的な会話に繋がることも。DE&Iがより一層注目されていることを感じますね。
DE&Iは経営戦略の核。イトーキが描く未来とイノベーション

ーDE&I推進において、気をつけていることはありますか?
石戸:発信する内容や表現についてこまめに周囲と相談したり、普段の会話の中で「今の言い方、もし当事者の人が聞いたら傷つくかもしれない」といった気づきを共有したりするようにしています。そうした小さな積み重ねが、お互いの意識を高めることに繋がっていると感じます。
仲本さん(以下敬称略):そういう時に、JobRainbowさんのようなプロに相談できるのは本当に助かります。考えすぎると何もできなくなってしまいますが、それが一番良くない…という側面もあるのではないでしょうか。「何も言わないよりは、不完全でも発信していく方が、結果的に心理的安全性を高めることに繋がるのではないか」という意識で取り組んでいます。
ーDE&I推進において今後取り組んでいきたいことはありますか?
藤城:イトーキは全国に拠点を持っていますが、拠点ごとにDE&I浸透度のばらつきがあります。今後は全社的にDE&Iの意識を揃えていけるよう、情報発信を強化していきたいと考えています。
仲本:本社がしっかりとDE&Iの「ハブ」となり、発信し続ける。そうすることで各拠点社員がDE&Iの取り組みについて知り、それを自拠点に持ち帰ることで、結果として他の拠点のDE&I推進にも繋がっていく。そんな良い影響が波及していくはずです。
ー 最後に、イトーキ様の今後のDE&Iに関する取り組みについて、想いや具体的な予定などがあれば教えてください。
藤城:DE&I推進の必要性は経営層にもしっかりと共有されており、非常に重要な要素と位置づけています。人事のみならず全社で取り組み、その内容を社会へ発信していくことが、さらなる企業文化への浸透や、DE&I推進、そして新たな学びにも繋がるはずです。
また、 自社内での取り組みを継続することはもちろんですが、社外との連携を通じて、新たな発見や価値創造に繋げていきたいと考えています。
実は、最近社内の体制が変わり、DE&Iに対する考え方も少し変化してきました。「できていないことがあっても、それを恥ずかしいことだと思わない」「できていない部分も含めて共有し、お互いに高め合っていこう」という意識が生まれてきています。以前は「完璧にできてからでないと発信できない」という意識がありましたが、それでは何も進まなくなってしまう。むしろ、オープンにすることで、より良い方向に進めるのではないかと考えています。
仲本:今後、労働人口が減少していく中で、優秀な人材を確保し続けるためにも、DE&I推進は企業に不可欠だと感じています。研修などを継続的に実施し、着実にDE&Iを推進するほか、お客様も巻き込んだイベントや仕組みづくりを通じて、より多くの方に関心を持っていただけるようなアプローチも検討していきたいですね。
石戸:その他にも、各拠点で定期的にアライグッズを展示するイベントを行っていますが、その対象拠点を増やして、より多くの人にDE&Iへの取り組みを知ってもらえればと考えています。これまでの流れを大切にしながら、「DE&Iとワークプレイスのプロフェッショナル」としてより一層励んでいきたいです。


