LGBTを取り巻く課題って?【学校・しごと編】

ライター: JobRainbow編集部
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「LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーの頭文字をとった、セクシュアルマイノリティの総称)」という言葉が広まってから随分経ちます。

テレビ・YouTubeなどでも、様々なLGBTの人たちが活躍しています。このような人たちの活動が活発化することにより、ますますLGBTに対する認識が広まっているようです。

しかし、残念ながら、現在の多くの報道は、ただ「LGBTを取り上げる」ばかりで、LGBTの人たちが直面する問題を取り上げることは多くありません。

そのため、「LGBTの人たちを支援したいけど、そもそも何が問題なのかわからない」「LGBTだからってそんなに困難はないんじゃないの?」と考えるマジョリティの人は多いのではないでしょうか。

そのような認識の低さが、本記事で紹介する課題が解決されない一つの原因にもなっていると考えられます。

そこで、本記事では、「LGBTの人たちが遭う困難について知りたい」「現在の課題を解決したいという気持ちはあるけど、そもそも何が課題なの?」という方や、実際に困難に遭い悩んでいる方に向けて、「学校」「しごと」の大きく二つに分け、それぞれの課題を取り上げたいと思います。

1.学校における課題

机と椅子が並ぶ教室の写真

学校における最大の問題は、子供同士、また教員からのいじめ問題です。

そもそもどうしていじめが起こってしまうのでしょうか。いじめの原因である差別は、個人それぞれの感情の問題だけではなく、社会のシステムによるものであるという指摘がしばしばなされます。それでは、学校ではどんなシステムが差別、いじめを助長しているのでしょうか?

制度・施設の課題

学校の廊下の写真

こちらは主にトランスジェンダーに関する課題です。

多くの大学では改善されつつありますが、未だ小中学校・高校のほとんどは、多様性を想定していません。

その例としては、「トイレ」があります。

多くの学校では、「みんなのトイレ」など誰でも使えるようなトイレは設置されず、「女子トイレ」「男子トイレ」しか設置されていません。

特に見た目の性と性自認が不一致の人などは、他人の目が怖く使いにくい、と感じるようです。

似たような事例として、制服や体操服が「男子用」「女子用」しか用意されていないことや、学生寮が戸籍上の男女別でしか用意されておらず入寮できないなどの問題もあります。

また、学籍簿や戸籍上の性別と見た目が異なるために、「別人なのではないか」と疑われてしまうことや、本人の意思と反してトランスジェンダーであることが周りに知られてしまうというケースもあります。

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授業・行事での課題

海外の授業風景

こちらも主にトランスジェンダーに関する課題です。

学校で行われる健康診断・宿泊学習・体育の授業などにおいて、性の多様性が想定されていないことも問題です。

特に中学・高校では、体育の授業や部活が「男女」で分けられたり、見た目や戸籍上の性で判断され、「あなたは男なのだから、こっち」と性自認とは別の割り振りをされてしまうことがあります。

加えて、学校でおおい宿泊行事や、健康診断、身体測定において、自身の性自認とは異なる性の生徒たちと大浴場に入らざるを得なかったり、上半身裸で待機することを強制されたりすることもあるようです。

教材・カリキュラムの課題

本5冊が積み上がった写真

学習面においても課題は山積みです。そもそも、先ほどあげた二つの課題の根底にも、これが深く関わっています。

多くの教科書の内容・表現等には、性の多様性に対する配慮がありません。例えば、保健の教科書で異性愛が前提とされている表現を見た覚えのある方も多いのではないでしょうか。

こういった内容・表現が多いと、授業内で不快な思いをする当事者が生まれてしまうことはもちろん、そもそも性の多様性に対する適切な指導カリキュラムが組まれていないこと自体が問題です。

性の多様性に関する指導がきちんとなされていないと、性の多様性に対する理解を子供達に広めることが難しくなってしまいます。結果、LGBTの子供がセクシュアリティを理由にいじめられたり、仲間外れにされてしまい、快適に勉強を行うことができなくなるという弊害があります。

カリキュラムそのものが用意されていない弊害は他にもあります。子供同士だけでなく、教師の理解が広まらない、ということです。本来子供を助ける立場の大人である教師が、子供間での差別を助長することになりかねません。

実際、幼稚園から高校までの教員約6000人に対し行ったアンケートを見てみると、「出身養成機関で同性愛について学んだことがある」「性同一性障害について学んだことがある」と答えた教員はそれぞれ7.5%、8.1%と非常に低いことがわかります。

まず教員養成機関においてLGBTについて学ぶ機会を増やすことが、そのまま教育機関での教育の広がりにつながるでしょう。

こうした現状を背景に、認定NPO法人ReBitなど教育現場に出張授業をする取り組みをする団体も登場しています。

職員・教員の知識不足

海外の小学校の授業風景写真

子供が実際に自身の性について自覚を持ち、情報を集めたいと思っても、子供がアクセスできる情報源というのはどうしても教員や職員に限られてしまいます。

ですが先ほどふれたように、学校教師に必ずしも適切な理解や知識があるとは言えません。そのため、専門の施設が相談する候補となります。

しかし、そもそも周りに相談できる場所・施設が必ずあるかといえば、そんなことはないでしょうし、仮に施設があったとしてもそこの職員に知識がなく、適切な支援が受けられないケースもあるそうです。

大人になれば自身で情報収集をし、適切な施設を利用することができるようになります。しかし、子供は自力ではなかなか情報を集められず、財力も十分にありません。子供達に対して、より開かれた施設を学校内に設置する必要があるでしょう。

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2.しごとにおける課題

就職・転職活動における課題

①履歴書・スーツ

二人と面談する人事の写真

就職・転職活動を始める時、まず用意するのは「履歴書」です。これは正社員でも、アルバイトでも同様です。

日本において全国規格化されているJIS履歴書には、「氏名」「住所」「生年月日」「学歴・職歴」などのほか、「写真貼り付け欄」「性別欄」が必ず用意されています。それにより、様々な問題があるようです。

例えば、履歴書に現在生活している性別を記載した結果、企業側から「詐欺だ」と言われたり、そもそも性別・写真を要求されること自体が苦痛という人は、それを避けることで、業種が限られ、就活が困難になったりします。

就職活動では多くの学生がリクルートスーツを着用します。しかし、一般的なスーツ販売店では、「メンズ」「ウィメンズ」のスーツのみを取り扱っていることが多く、自分にあったスーツを着用することができず就活が難航したというケースもあるようです。

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②企業選びの難しさ

大きな窓から見える高層ビルの写真

志望する企業を選ぼうと思っても、LGBTにフレンドリーな企業を見極めるための指標がないと、自分に合う企業を選ぶことが非常に困難になります。

実際、LGBTについて理解が乏しい企業に応募し、就職試験時に性別に関する質問をされ、答えなかったところマイナス評価に繋がったり、面接でカミングアウトしたところ、不快な質問をされたりすることもあるようです。

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③相談施設職員の知識不足

相談に乗る人の手元の写真

企業側の問題がある一方、本来就職活動を支援する施設であるはずの厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署・キャリアセンター・ハローワークにも問題があるようです。

職員・相談員がLGBTに関する知識に乏しく十分な支援を受けられなかっただけでなく、アウティングなど二次被害に遭ったという声も上がっています。

就職・転職活動の際は、丁寧に企業を見極め、上手に自分らしさをアピールできる活動を行うことが鍵になります。信用できる人・施設を探しておくことも重要です。

LGBTの就活生が気をつけるべき6つのこと

職場での課題

無事に就職活動を終え、働き始めた後でも、様々な困難があります。

①パートナーに関する課題

鳥と鳥かごのタトゥーが入った二人の手の写真

現在、各自治体もパートナーシップ条例を導入し始め、キリン、サントリーをはじめとした多くの企業では、「同性パートナー」を配偶者として認めつつあるようです。

しかしながら、多くの企業では未だに、法的に認められる親族関係を根拠として、様々な制度を設定しています。

そのため、同性パートナーが法的に認められていない日本では、事実上のパートナーであるということを根拠に会社の扶養手当を受給したり、社員寮に一緒に入居したりすることができません。

加えて、パートナーと死別した時にも問題があります。

死亡退職金や遺族補償を申し込んでも、法的な遺族ではないことから、給付の許可がなされなかったり、逆にパートナーの死亡により忌引を申し込んでも、法的配偶者でないことを理由に拒否されたりしてしまいます。

②セクハラ・不当な取り扱い

頭を抱える髭をたくわえた方の写真

会社の制度以外にも、社員同士のやりとりも問題です。

「オカマっぽい人には営業をやらせられない」、と言われ、ハラスメントをされるだけでなく、希望していた営業職を断念させられるという直接的な制限をされるケースもあります。

このような性的指向や性自認をからかういじめやハラスメントなどにより快適に仕事できる環境がなく、その環境から逃れるために転職に転職を重ね、結果的に非正規雇用につかざるを得ず、経済的に苦しくなってしまうこともあります。

【なぜ必要】日本で同性婚の実現は可能?パートナーシップ制度との違いや社会への影響も解説!

おわりに

散らばったパズルピースの写真

以上、「学校」「会社」と人生のほとんどを過ごす場面での困難について紹介してきました。

今回の記事で取り上げた課題は、主に制度的な課題であり、実際に遭う困難のほんの一部です。

課題を根本的に解決するには、行政の協力・国民の意識改革などが不可欠です。今すぐに解決するということは簡単ではありません。

そのため、自分が自分らしく生きていける環境を自身で選択してゆくことが非常に重要になります。

なかでも会社は、人生のほとんどを過ごす場所です。

JobRainbowでは、LGBTの人が気持ちよく働けるような企業を紹介しています。みなさんが自分らしく気持ちよく働ける場所を見つけられるよう、願っています。

参考文献

性的指向および性自認により困難を抱えている当事者等に対する法整備のための全国連合会(2015)「性的指向および性自認を理由とするわたしたちが社会で直面する困難のリスト(第2版)」

日高康晴(2015)「教員5,979人のLGBT意識調査レポート」

中西絵里(2017)「LGBTの現状と課題 −性的指向または性自認に関する差別とその解消への動き−」『立法と調査』394巻、pp.3-17

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