100以上の国と地域の従業員が活躍中。楽天の「企業活動」にかかせないD&I推進

ライター: Rickey
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楽天グループ株式会社は、社内公用語が英語であることでも知られているグローバルな企業。多様な人材が集まるからこそ、活躍できるための環境を整えることに注力しています。

その取り組みに込める想いを、ダイバーシティの推進を行う部署に所属する半澤さんと森さんに伺いました。 

D&I推進の4つの軸「D&I Framework」

―楽天グループは非常に早い段階からD&I推進に取り組まれていますが、何かきっかけがあったのでしょうか。

半澤さん(以下、敬称略):楽天が全社的にDEIB*推進を始めたきっかけは、「社内公用語英語化」です。楽天グループでは、2012年に英語が正式に社内公用語となり、世界中から多様なバックグラウンドの従業員が増え、従業員間で文化の違いを感じる場面も見られるようになりました。海外在住・外国籍の候補者の積極的な採用が増えていく過程で、グローバルな人材が集まってくる企業として、「今のままでよいのだろうか。」「全員に働きやすさを提供できているのか。」こうした疑問から2015年にDEIB推進のプロジェクトが始まりました。今では100以上の国と地域(グループ全体)の従業員が活躍しています。

* Diversity(多様性)、Equity(公平性)、Inclusion(包括性)、Belonging(帰属性)の頭文字をとったもの

森さん(以下、敬称略):一部のカフェテリアでのインドベジやハラル料理の提供、足洗い場を含めた祈祷室を設置しています。

そもそも、楽天ではDEIB推進にあたり、働く環境の改善、帰属意識の醸成、ブランディング向上、事業成長という4つを軸にした「D&I Framework」として定義し、取り組んでいます。

―はっきりと軸を定めているのですね。具体的に「D&I Framework」はどのような内容なのでしょうか?

:まず「働く環境の改善」は、福利厚生や各種研修の提供、オフィス環境のアップデートなどを指します。わかりやすい例で言うと、無意識の思い込みや偏見に気づくことを目的とするアンコンシャス・バイアス研修の導入や、社内託児所、マザーズルーム(搾乳室)の設置、こども家庭庁ベビーシッター券の導入、ファミリーデーの実施などですね。他にもワーキングペアレンツネットワーク構築、各種セミナー(休職前セミナー、復職前セミナー)の実施、育児休業中の従業員向けニュースレター配信も行っています。

また採用選考時における取り組みとして、選考書類における性別や年齢、写真など、業務に関係のない情報の掲出は不要としています。

半澤:また、LGBTQ+の方に向けた取り組みとしては、配偶者の定義に同性パートナーを加えすべてのカップルが平等に福利厚生を利用できるようにしたり、社員証・メールアドレス・名刺などに通称名を使用したりすることができます。

―こうした新しい取り組みはどのように生まれるのでしょうか?

半澤:人事部門に「D&Iオフィス」という専門組織があり、そこで採用・研修・労務・企画の部長陣が顔を合わせ、どんな取り組みを行っていくべきか毎週議論しています。

社員や働き方の多様性に関わる知識、職場での実例、会社で利用できる制度などを学ぶことができる「Diverse Work Styles」というeラーニングの展開、来日したばかりの従業員に向けた日本語学習サポート、ビジネスマナーのワークショップ、産休・育休前の情報提供など、多様な取り組みが生まれていますね。

半澤さん
コーポレートカルチャーディビジョン エンプロイー・エンゲージメント部 DEIBグループ 半澤 幸太さん

半澤:帰属意識醸成のために力を入れているのは、社内の啓発活動や従業員ネットワークの強化です。「働きやすい職場」に求める要素は千差万別。しかし、それぞれのニーズに対して理解を深めないと取り組みの必要性がわからず、重要な施策が頓挫してしまうかもしれません。そのため、国際女性デー、プライド月間、国際障害者デーといった節目で啓発イベントを行ったり、定期的に従業員向けの研修を実施したりすることで、当事者にどのような困難があるのか、障壁をなくすために何が必要なのかを考える機会を設けています。

なお、多くの場合これらのイベントを運営するのは、当事者である従業員たちです。ワーキングペアレンツ、クロスカルチャー、LGBTQ+といった様々なテーマの社内ネットワークがイベントを主導する。イベント終了後には相談窓口となり、環境づくりの軸になっていきます。

―森さんは実際にネットワークのリーダーとして活躍されていると伺いました。

:はい。私はLGBTQ+をテーマにしたネットワークに所属しており、普段は当事者やアライの方々に向けたセーフスペースの提供を行っています。プライド月間には社外からもスピーカーをお招きし、「性のあり方と仕事は関係ないのでは?」という疑問に対し、心理的安全性の観点から職場との関連性を考えるというイベントを開催しました。

東京レインボープライドの写真

:また、社外向けにも活動を行っており、ネットワークメンバーのサポートを得ながら2018年から楽天は東京レインボープライドに出展しています。

―「ブランディングの向上」、「事業成長」とDEIB推進の繋がりについてもお伺いできますか?

半澤:多様なユーザーニーズを捉えてインクルーシブなサービスを提供することで事業を成長させ、またブランディングの向上にも繋げていこう、ということです。先ほど例として挙げた東京レインボープライドにて、楽天のブースでは当事者の皆様にサロン・美容関連での困りごとをヒアリングしました。伺った内容をもとに、LGBTQ+の方が楽天のサービスを利用した時にどのような困りごとがどのタイミングで生じるのか整理し、接客やプロダクトの改善を進めています。

また、JobRainbow主催の「ジョブレインボーしごとEXPO 2023」にも参加し、採用においても同様の取り組みを行っています。

森さん
コーポレートカルチャーディビション エンプロイー・エンゲージメント部 DEIBグループ 森 紗恵子さん

:そもそも企業活動とは、お客様に価値を提供することで初めて成り立つものだと考えています。「お客様」には多様性があったはずですが、これまでなかなか障がいを持つ方やLGBTQ+の方、外国籍の方などにはスポットライトが当てられてきていませんでした。

しかし、社会の変化に伴い、すべてのお客様へ価値を提供することの重要性がようやく多くの方に認められ始め、企業としてインクルーシブな取り組みを行うことの必要性が明らかになってきました。「他の企業が行っているから」「なんとなくやったほうが良さそうだから」ではなく、どんなお客様も置き去りにしないための取り組みの一環として、DEIB推進を行っていくのは当然ではないでしょうか。

半澤:それに、同じ視点・メンバーで変わらない活動をしていては、世の中の移り変わりに対応して成長し続けることはできません。一方、社内の多様性が尊重されれば多様な観点へのアンテナや視点が増え、多角的なアイデアの創出やリスク感度を高めることにも繋げられるでしょう。

確かに、DEIB推進の成果は数値化しづらいですし、事業にどれだけ貢献したかも見えづらいものです。それが意思決定を阻む原因になっているのかもしれません。でも、もし事業が成長していなければ、その原因はDEIBが進んでいないことにあるのかも、と立ち止まってみるのがいいと思います。

―最後に、お二人が楽天グループのDEIBを推進する想いをお聞かせください。

半澤:個人的に、いきいきと働けている実感があったシーンを思い返すと、どれも「自分の考え・価値で周囲に貢献できた」と感じる瞬間なんですよね。裏を返せば、本来の自分を見せずに仕事に取り組んでも十分なパフォーマンスになりませんし、仮にいい結果を収めても達成感が湧きません。だから、「100%の自分を受け止めてもらえる」という心理的安全性の担保は企業として不可欠ではないでしょうか。

インタビューに応える半澤さん

半澤:正直、社会人として過ごすなかで、誰しも一度は希望していないプロジェクトにアサインされたり、「苦しいな」と思ってしまったりするでしょう。そういった試練に直面した時、自分らしさが尊重・応援されている安心感があれば、チームに貢献するために頑張りたいと思えます。楽天ではそんな組織づくりや環境を提供するため、人事部門だけでなく様々な部署を巻き込み、横断的に連携しながら取り組みを広げています。まだ至らぬ点はあるとは思いますが、常に「自分らしく働ける職場」をアップデートし続けていきます。

:「自分らしくいる」ということは、「自分がマイノリティであることを意識しない状態でいられること」だと思います。私自身セクシュアルマイノリティとして暮らしているのですが、過去に働いていた会社ではカミングアウトしづらい環境だったため、数名にだけオープンにしていました。すると、自身のプライベートなどについて話す際「あれ、私ってこの人にカミングアウトしたっけ?」と考えて接する必要があり、その度に「自身がセクシュアルマイノリティである」ことを意識せざるを得ない状況にありました。でも、LGBTQ+向けの制度が用意され、DEIBに取り組むことが当然だというふうにとらえられている環境なら、わざわざ「自分には同性のパートナーがいるんだ」と意識する必要がありません。

インタビューに答える二人

:もちろん、これは社内だけでなくお客様向けのサービスでも同様です。例えば私が保険金の受け取り人を指定する時、記入欄に「夫の名前」なんて書かれていると「あぁ、同性と付き合っている自分のような存在は想定されていないのかなぁ」と悲しくなります。でも「パートナーの名前」となっていると、この悲しい気持ちを抱く必要はありません。

このように、「自分は〇〇なんだ」とマイノリティーであることを意識せず、自分らしく活躍できる制度・環境・サービスを整えていくことが、私たちの、そしてすべての企業でD&I推進を担当する人の使命だと思っています。

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