東京スター銀行はなぜLGBTに取り組むのか、人事に直撃インタビュー!

ライター: JobRainbow編集部
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はじめに

株式会社東京スター銀行の、LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーなど性的マイノリティの総称)への取り組みについて、JobRainbowライターがインタビューに行ってきました!

東京スター銀行といえば、2016年11月に日本の銀行として初めて預金商品における「家族取り引き」の範囲を拡大し、同性パートナーも対象にする取り扱いを開始しました。

そんな東京スター銀行は、金融のサービスだけでなく、社内でのダイバーシティ推進も先進的!2014年2月にはダイバーシティ推進を担う専任部署を立ち上げ、2016年からは女性の活躍推進を深耕し、また外国籍・障がい者・LGBTとより多様な人材が個性を活かして活躍できる組織風土の醸成に取り組んでいます。

今回は、人事部 ダイバーシティ推進の地村さん、上田さんの2名にお話を伺いました!

経営戦略としてのダイバーシティから、現場に即したダイバーシティへ

<ダイバーシティ推進は経営戦略!?戦略企画部で立ち上がったダイバーシティ推進とは!?>

上田さんが話している画像
人事部の上田さん

ーまずは自己紹介をお願いします。

地村様(以下敬称略):人事部でダイバーシティ推進の責任者をしている地村です。2014年、私は戦略企画部におりまして、その部署でダイバーシティ推進の専任組織を立ち上げました。
東京スター銀行においては、「ダイバーシティ推進は経営戦略である」という想いがあるんです。そういった中で、当行では人事部主導で立ち上げるのではなく、戦略企画部で立ち上げました。企画段階から実行運用フェーズに入るために、2年後に、人事部の一部としてダイバーシティ推進を行うことになり、現在人事部で活動を進めております。

上田様(以下敬称略):私も同じく人事部で、2016年10月からダイバーシティ推進、昨年度からは新卒採用を担当しています。基本的には私と地村ともう一人の合計3人でダイバーシティ推進を進めております。私がこの部署に来たのは2016年の10月でした。それまでは個人金融部門にいたのですが、前職で女性向けのメディアを創っていたこともあり、ダイバーシティや女性の価値観について研究していた実績があったんですね。そこでその経歴を活かしたいなと思い、地村に声をかけたんです。熱い思いが伝わってこの部署に呼んでもらえました(笑)。

ー現在は人事部の中にダイバーシティ推進があるんですね。

地村:そうです。人事部の取り組みってすべてがダイバーシティ推進に関連しているんですよね。例えば、育児とかキャリアとか。私たちも、ダイバーシティ推進に携わりつつ労務管理や採用活動などもやっています。
ダイバーシティ推進チームができた2014年頃は、ちょうど安倍首相が「日本の女性活躍を推進しよう」ということを掲げていた時期と重なります。今はダイバーシティ推進の一環として、女性活躍だけではなく、障がい者雇用なども推進しています。また、東京スター銀行の親会社が台湾にあることもあり、外国籍の行員が多くなってきているので、そういった点でも多様な人材が集まる企業であるという自負はあります。

ー台湾では同性婚が法制化される動きなど、LGBTへの取り組みが先進的なイメージがありますよね。

地村:そういうものを受けて、日本でもLGBTの取り組みへの機運が高まるというのはこれから、という印象ですね。台湾人の女性役員が今年から人事担当執行役として着任したので、今後もっと台湾の良いところを取り入れることのできる可能性は大きいのかなと思っています。もちろん、LGBTに関わること以外においてもですね。

ー今後はどのようなことに取り組んで行きますか?

上田:現状、多様な人材が働ける土台はできているのですが、多様な人材がいるからといって、必ずしも全員が最大限活躍できているのかというとそうではないと思っています。なので現在は多様な人材がいるという土台をどう活かしていくかということを課題に取り組みを進めています。
例えば、ダイバーシティの重要施策の1つとして「女性の活躍推進」を扱っているのですが、女性だけでなく多様な人材の意見が経営の意思決定に反映される、というステージにしたいんです。すでに役員の中には女性や外国籍の方がいるのですが、一方でまだまだ支店長や部長クラスでは少ないというのが現状なので、これを変えていきたいですね。

そして去年くらいから特に力を入れているのが、社内のコミュニケーション促進です。例えば、子育て中の人だったり、介護に関わっている人だったり、障がいのある人だったり、そういった人たちが集まって勉強会をしたり、お互いにアドバイスし合ったり、支え合えるような場を届けています。そうすることで、我々人事として彼らの繋がりを創るだけでなく、彼ら自身で繋がりを創ることができるんですね。
今年はそこをもう一歩進めて、その属性内のコミュニケーションに留まらず、当事者だけでなく非当事者、つまりいろいろな属性の方が集まって、コミュニケーションをとれるような場作りをしています。

ーコミュニケーションの場はどのような雰囲気なのですか?

上田:人事部が「何月何日にやります!興味ある人来てください!」と声かけをすると、来てくれた人の中で「次はこういうテーマでやりたい」という声があがるので、それを受けて次につなげていく、という感じで運営しています。現在は定期的にやっているものもあれば不定期にやっているのもある、という感じでゆるくやっていますね。
今後はいわゆる「人事側が場を創って提供する」というところから少しずつコミュニティが創られていって、「行員が自発的にテーマを掲げ行動していく」というステージに移っていけたら、と思っています。
行員は全体で1800人ほどいるのですが、現在ダイバーシティ推進を主導しているのは地村と私を含む3人だけなのが現状です。なのでなるべく行員が自ら動いてくれるように仕掛けていきたいですね。

ーダイバーシティに取り組み始めた頃と現在を比べるとどうですか?

地村:私がダイバーシティ推進チームの立ち上げをしてからしばらくは、主に私一人だけだったんです。部署を立ち上げた最初の頃、社内でダイバーシティ関連のセミナーやシンポジウムをしていたのですが、そこに上田が積極的に参加してくれていたんです。一人きりだった時と比べて、上田のように協力してくれる人、賛同してくれる人が増えてくれることで、だんだんと部署として動きやすくなってきたと思います。そうしているうちに部署のメンバーも3人に増えて。まだまだ部署としては小さいですが、少しずつネットワークを広げていますね。

上田:経営面での位置づけも少し変わってきましたね。当行の創業は2001年だったのですが、古くからある銀行とどう差異化を図るかという問題もあって、自然に多様な人材を集めていました。なので世の中でダイバーシティが謳われるようになるよりも早く多様化が進んでいたかなと思います。そんな中で当行にはせっかく多様でたくさんの人材が集まっているし…という流れで部署ができました。
それが今では、会社に必要な部署として存在しています。我々はダイバーシティにおいてある程度先駆者であり、それを経営の強みにしていこうという意識になってきたと思います。

社内で実施された勉強会の様子の画像
社内で実施された勉強会の様子

「家族割引」の範囲を同性パートナーにまで拡大!

<日本初の預金サービス!その裏側とは…!?>

ー東京スター銀行は2016年から、預金商品における「家族割引」の範囲を同性パートナーにまで拡大していますよね。日本の銀行では初めてとのことだったのですが、どのような経緯で始まったのでしょうか。

地村:ある時、社内の会議で「企業の女性の活用度調査」の結果を報告していて、「女性が活躍しているのはどのような企業なんだ?」という話になったことがありました。その中で私が、「女性活躍ができている企業って、LGBTへの取り組みを積極的にしている企業が多いですよね」という話をしたんです。

そうしたら経営陣の中に、以前渋谷区長と話したことがある人がいて。渋谷区で区長が「なぜLGBTの取り組みをスタートしたか」という話を聞いて、そのエピソードを経営会議の場で話してくれたんです。渋谷区を今後活性化するためには若い人やLGBTを惹きつけていく必要があるという話だったらしいのですが、当行としても沢山のお客様のニーズに応えられるようなサービスを提供して人を惹きつけていこうよという話になりました。

我々人事部はこの企画立案には加わっていないのですが、これから銀行としてサービスを取り扱う上で、LGBTへの理解を深める必要があるだろうということで、このサービスを直接取り扱う店舗に出向いて勉強会を開催しました。新宿支店と渋谷支店とコミュニケーションセンター(コールセンター)の3か所が直接お客様に接する場所になるので、その3か所を中心に、本部のいくつかの部署でも勉強会を行いました。

上田:特に海外とのやり取りがある部署では、通常の営業活動の中でもLGBTに関する話題が出たりすることがあるみたいで、知っておかなきゃということで「勉強会を開催してほしい」との声は多かったです。
渋谷や新宿エリアの支店に限って勉強会を実施したのは、我々の商品サービスがまだ同性パートナーを証明してくれる渋谷区と世田谷区でしか扱っていないので、という経緯でした。

ー勉強会の内容はどのようなものだったのですか?

地村:まずはLGBTに関する基礎的な知識ですね。そしてそれに加えて、現在世の中がどのようにLGBTを捉えているか、という観点から、マーケティングの視点や他社のLGBTに関する取り組みを紹介したり。ダイバーシティが経営の位置づけであるということを常に意識しながら勉強できるようにしました。
また、サービスを行う上で直接お客様からの問い合わせを受けるのは店舗の行員です。なので彼らがお客様と話す時に備えての情報を学べるようにしました。

ーサービスを同性パートナーにまで拡大したことで、社内や社外からはどのような反応がありましたか?

上田:行員の中には、2年ほど前に勉強会を行うまで、LGBTを全く知らなかった人も結構いましたね。言葉を知っていても内容を理解していなかったり、勉強会の中でびっくりされるような反応も多かったです。でも自分の周りにLGBTの方々が7.6%というかなりの割合でいるということを知って、「みんな周りに言えないでいるんだな」と気づきをもった人が多かったようで良かったです。

地村:自分の周りに7.6%もの割合でLGBTの方々がいるということで、「カミングアウトされたらどのように対応したら良いだろう」と相談してきた行員もいました。人事部には、ダイバーシティに関する相談や属性、ワークライフバランス、キャリアに関してなど様々な相談を受けている行員相談窓口というものがあるので、そこに相談してもらえるように環境を整えています。

上田:現状、実際にサービスを利用しているLGBTの利用者様はそんなに多くないですね。対象を「渋谷区や世田谷区が発行する『パートナーシップ証明書』や『パートナーシップ宣誓書受領証』などの公的証明書のご提示ができる方」と限定していることもあるので、そもそも対象となる方が少ないのかもしれません。でもお問い合わせや来店は増えましたね。「サービスを申し込みたいけどまだパートナーシップ証明書を取得してなくて…」という方もいらっしゃいました。
今後はもっとサービス範囲を広げていけたらとは思っているのですが、他の自治体でも実施が見込まれているとのことなので、それに合わせて順次検討していけたらと思っています。またLGBT当事者の方からのニーズが届いたらそれに応える形で検討を進めたいと思っています。

多様な人材が働く東京スター銀行

<変わった人ウェルカムな職場!?多様な人材に合わせた多様な取り組みとは…?>

地村さんが話している様子の画像

ー社内でダイバーシティを感じる瞬間はありますか?

上田:本当にいろいろな行員がいるなというのは常日頃から感じています。中途で入社した人も多いので、外資系や大手銀行といった金融機関出身、不動産業界や広告業界、メーカーから来た人まで本当に様々なキャリアをもつ人が集まっています。
また、先ほど社内ではコミュニケーション促進をする場作りというのを行っているという話をいたしましたが、子育て中の方や障がいのある方、外国籍の方だけではなく、女性管理職やイクメン/イクボスなど、様々な考え方を共有しあうことにも力を入れているので、ダイバーシティに対する取り組みも多様だなと感じます。

ー採用において、東京スター銀行ではどのような人を求めていますか?

上田:「変化を求めている人」や「変化を創り出せる人」はウェルカムですね。東京スター銀行には本当にいろいろな人がいて、一人ひとりのキャリアを活かしつつ働いています。銀行の経営的な観点から言えるのですが、「決まった風土で決まったことをしたい」と思っている人には不向きかもしれません。自分から変化を求めていける人にとっては楽しい会社ではあると思います。
私は採用の中でも新卒採用を担当しているのですが、「その人自身を見る」ということを心がけて、仕事のスキルなどはもちろん、考え方や価値観の元となる背景なども考慮しながら採用活動をしています。

地村さんが話している様子の画像

ー最後に求職者、就活生の皆さんにメッセージをお願いします!

地村:私にとって東京スター銀行は、「自分らしくいられる場所」ですね。勤め始めてもう10年以上になるのですが、入社時と比べると今は本当に素の自分でいられているなと感じます。求職者や就活生の皆さんには、「一期一会」という言葉にあるように、「縁」を大事にしてほしいと思っています。

上田:私は仕事を考える際の軸が、「女性」と「お金」でした。そんな私にとって東京スター銀行は、それらの軸に沿って働ける場所だと考えています。もちろん、その時によってはそれが達成できたり、達成できなかったりしますが、それでもその軸を大切にして働いていくことが大事だと思っているので、求職者や就活生の方にも自分の軸を大切にしてほしいと思います!

ーありがとうございました!

<<LGBTだけじゃない!?東京スター銀行のダイバーシティへの取り組みをもっと知りたい方はこちらの公式タイバーシティページから!>>

※本記事は、実際のインタビューの内容を基にして再構成しています。

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