先輩の体験談 サリー楓さんの場合【LGBT就活・転職ガイド 5-8】
建築家に憧れて〜就活から内定までの流れ
私は幼いころから建物が好きで、小学校二年生の頃には建築家になることを決めていました。卒業文集には「世界規模の建物をつくりたい」「誰にでも優しい建物が必要だ」といったことを書いていました。
そのまま興味が続き、大学と大学院では建築とマーケティングを学びました。大学院一年生の1月あたりに就職活動をはじめ、3月に3社の内定を受けました。
最終的には経営者の話に最もワクワクした建築業界の大手企業に就職を決め、小学生からの夢だった建築の世界で今日も働いています。
就活は、企業と学生がお互いに審査する場所
転職や独立を行わない場合、新卒の学生はほとんど半世紀もの時間を会社員として過ごすことになります。ですから、就活というと企業に審査されることばかり心配してしまいますが、企業が学生を審査するのと同じように、学生も企業を審査するべきなのではないでしょうか。
そういった意味では、あなたがLGBTであるかどうかに関係なく、LGBTフレンドリーやCSR、SDGsなどへの取り組みは、私たちが企業を「審査」するための試金石となります。
それは、職場環境が心地良いか悪いかといった問題を超えて、企業の将来性や風土を理解することにつながります。私の場合、OP訪問やインターン、株主総会・経営報告会などで企業が発行する資料を参考に、企業への理解を深めていきました。
カミングアウトによって不遇を受けた場合
カミングアウトするかどうかは自分の意思で決めるしかないと思いますが、カミングアウトによって不遇を受けたとしても気を落とさないでください。現代の企業は大なり小なりグローバル競争の可能性に晒されています。
昨日まで栄えていた企業が、ある日突然、斬新な発想のベンチャー企業にひっくり返されてしまう……。そういった時代では、ジェンダー・人種・宗教など、すべてにおいて多様な視点をもっていることが企業の資産になります。
逆をいえば、むやみに多様さを排除する企業があるとすれば、それは時代に逆行しているということです。不遇を受けた場合は、「ハズレだと分かってよかった、就職しなくてラッキーだった」と喜ぶぐらい大きく構えてもいいのでは
ないでしょうか。
私の場合、トランスジェンダー当事者であることをポジティブに受け取ってもらえるように、カミングアウトの段取りを工夫しました。今の職場では国際プロジェクトや多くの方々が利用する大規模な施設を計画するときに当事者としての意見が役に立つことがありますが、そういった可能性を説明しました。
あなたの大切にしている考え方や生き方を企業側の視点から組み立て直すといいかもしれません。とくに思いつかない場合は、「多様な視点が企業の資産になる」という私の話を引用しても構いません。
ただし、カミングアウトが受け入れられるということと、あなたが評価されるということは別の話なので、その企業で働くのに必要な素養や技術があるということが大前提です。
個性や多様性だけでは就活を突破できない、ということも忘れないでください。
一言メッセージ
就活は、社会や経済といった大きな文脈の中で、「私は何者なのか?」を自問自答する機会になります。ときに新しい自分に気づかされることもあります。
そこには宝石の原石を割る瞬間のような楽しさがあります。あなたの原石は何色でしたか? 就活が終わったら教えてくださいね。
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