カミングアウトをしたときの一問一答【LGBT就活・転職ガイド 6-6】

ライター: JobRainbow編集部
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思いがけない質問に慌てないよう、心がまえをしておこう

LGBTに関する知識や理解が十分ではない面接官にカミングアウトをした場合、面接官に悪気はなくても、ときに本人を傷つけ、困惑させてしまうような言動をとってしまうことがあります。

こうした場面に遭遇したときの一問一答の例を、カミングアウトをしたとき(本コラム)としないときに分けて紹介します。どの例も、実際にあった面接官の質問です。本章冒頭で紹介した心がまえも参考に、なるべく感情的にならずに冷静に対応し、穏便な対応で賢くやり過ごす方法をおすすめします。一方で、理解の乏しい人に対して自分の意見を伝えることも大切なことだと考えています。

なお、ここでの回答事例は参考程度にとどめ、自分なりの受け答えをシミュレーションしておくと安心です。

場面①「そもそもLGBTって何?」「性別を変えたいってこと?」

相手にLGBTについての知識がない場合です。LGBTに関する知識を伝えるタイミングととらえます。「LGBT=生まれたときの性別を変えたい人」だけであると誤解している人は多くいます。説明に時間をとられすぎないように気をつけましょう。

回答例「LGBTとは性の『あたりまえ』に違和感を抱く人たちで、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの4つのセクシュアルマイノリティの頭文字をとった言葉です。生まれたときの性別と性自認が一致しないのはトランスジェンダーで、同性愛者や両性愛者など好きになる性におけるマイノリティも含まれます」

場面②「ゲイってことは、心は女なんだよね?」

面接官が間違った理解をしている場合です。異性愛が当然だと思っている人が抱いてしまいがちな誤解です。この場合も、端的に説明して誤解を解きましょう

回答例「いえ、ゲイとは自分を男性として認識しつつ男性を好きになる人を指します。男性が好きだからといって、自分のことを女性だと認識しているとは限りません。生まれたときが男性で、性自認が女性である人はトランスジェンダーです」

場面③「……。(沈黙)」

相手が挙動不審になった場合です。もしかしたら面接官は、知識としては知っていても実際にカミングアウトをされるのははじめてで、言葉選びに迷っているのかもしれません。「誠意をもって対応してくださっているんだな」と余裕をもってとらえ、相手の対応を待ちます

必要に応じて、LGBTについて軽く説明したり、LGBTをからめた自己PRなどの話をして、こちらも丁寧なコミュニケーションを心がけましょう。相手が挙動不審になったからといって、こちらも動揺してしまわないようにし、むしろ話の主導権を握るくらいの気持ちに切り替えましょう。

場面④「そうなんですね」「はい、わかりました」

まったく気にされない場合です。相手の反応が思ったより薄かったからといって、焦って話を軌道修正しないでください。むしろ、フラットにLGBTであるとは関係なく見ている証拠なので、あらかじめ用意していたストーリーを話し、しっかりと自身の強みや志望動機などのエピソードを伝えることが大事です。

場面⑤「日本のLGBT事情はどうなっている?」「LGBTは何に困っている?」「身体はどうなっているの?」

選考に関係のない質問が続いたり、拒否された場合です。面接官が知りたいことは、社会一般のLGBTに関することなのか、それとも本人のことなのか、質問の意図を考えましょう。社会一般に関することなら、手短に説明しつつ自己アピールや経験にうまくからめて、面接の本題(仕事について)から離れないようにします

回答例「細かい説明をすると時間がかかってしまいますので、手短な説明でご容赦ください。LGBTと一括りにいっても、困るポイントは人それぞれです。
私はレズビアンであることで『彼氏いるの?』といった何気ない質問に答えづらいことがあります。ただこうした経験から、人によってはポジティブに聞いたことでも、ネガティブにとらえることもあると気づくことができ、相手の気持ちに寄り添ったコミュニケーションができるようになりました」

自分自身に関することなら質問に対応しつつも、もし面接官の知識不足やLGBTであることを好奇の目で見ているように感じられたら、さりげなく本題の話をしたり、丁寧に話を終わらせます。

とくにパートナーの有無、身体がどうなっているかなどは仕事にはまったく関係ありません。単純なセクハラでもあるので「プライベートなことなので……」と軽く受け流しましょう

面接は、面接官に対してLGBTのことを説明する場ではなく、就活生・転職者と企業のマッチングの場です。「御社では、LGBTやダイバーシティに関する取り組みを何かされていますか?」と逆質問をしてもよいでしょう。

万が一、差別的な面接官に出会ってしまったら、その人だけの問題なのか、職場環境にもつながりそうなことなのか、面接以外の情報もふまえて冷静に見極めます。職場として理解がないように感じた場合は、「入社前に気づけてよかった!」と前向きにとらえ、次に切り替えましょう

場面⑥「LGBTへの理解を促す研修プログラムを立てるとすると、どのようなものがよいでしょうか?」

理解ある対応で、励ましてくれた場合です。LGBTフレンドリーな企業や面接官次第では、セクシュアリティの話がPRのチャンスとなる場合があります。自分なりの意見がいえるよう、これまでの体験を話せるように準備しておきます。

これから自分が働くことも想像し、企業に提案できるアイデアとその実行案をいくつか用意しておくとなおよいでしょう。

回答例「私は、日本でLGBTの理解が進んでいないのは、カミングアウトしているLGBTが少なく、職場の中で身近な存在だと思われていないことが原因だと考えています。ですので、研修プログラムを立てるときは、LGBTの講師のライフヒストリーを交えたり、カミングアウトをされたときの対応を学べるワークショップなどを行うのがよいと思います」

場面⑦「LGBTであることは仕事とは関係ないから言わなくていいですよ」

この場合、相手がどのような意図で発言したかを、しっかりと見極めましょう。フラットに見ているからこそ「LGBTであることと評価は関係ない」という意味でいっている場合もあれば、「性の話を職場にもち込むなんてけしからん」という意味で、カミングアウトを制している場合もあります。

どちらにせよ、唐突にいったように思われないように自己PRや志望動機につなげて、LGBTであることが自分のアイデンティティであることを伝えましょう。

回答例「はい、私もLGBTであることと能力はまったく関係ないと思っております。一方で、私自身、当事者として参加したLGBTサークルで、自身のセクシュアリティに悩むメンバーを見てきました。LGBTであることは、誰とともに過ごしたいか、どのように生きるか、といったアイデンティティに関わることです。だからこそ、それがマイナスにならず、誰しもがフラットに生きられる社会づくりに貢献できる社会人になりたいと思っています」

また、次のように伝えた理由をはっきりということも考えられます。

回答例「私はトランスジェンダーで、まだ戸籍の性別を変えていません。今後は自認する性別で働きたいと思っており、面接の趣旨には関係ありませんが、大切なことなのでお伝えしました」

POINT

  • 相手の対応を事前に想定していれば、恐れることはない
  • つらい思いをしたときは「 入社前に気づけてよかった」ととらえる

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