「違いを価値に、世界をつなぐ。」JTBが追求するDEIB推進の現在地と未来【前編】

ライター: JobRainbow編集部
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株式会社JTBは「地球を舞台に、人々の交流を創造し、平和で心豊かな社会の実現に貢献する。」を経営理念に、ツーリズム事業、エリアソリューション事業、ビジネスソリューション事業を三つの柱として、お客様の感動や喜び、そして成果の実現を追求しています。

業界のトップランナーであるJTBは、DEIB(Diversity(多様性)、Equity(公平性)、Inclusion(包括性)、Belonging(帰属性)の略)推進にも積極的に取り組んでいます。今回は、株式会社JobRainbow 代表取締役 CEO 星賢人が、JTBのDEIB推進のこれまでと今後の展望について、JTB常務執行役員DEIB担当 人財開発担当 働き方改革担当(CDEIBO)の髙﨑さんにお話を伺いました。

インタビュー記事前編では、JTBのこれまでのDEIB推進への想いや取り組みについて。

インタビュー記事後編では、具体的なDEIB推進施策や、効果的なDEIB推進方法についてお届けいたします。

株式会社JTB 常務執行役員 DEIB担当 人財開発担当 働き方改革担当(CDEIBO) 髙﨑さん(写真左側)
株式会社JobRainbow CEO 星賢人(写真右側)
※以下敬称略

ダイバーシティからDEIBへ広がる、多様性への取り組み

JTB DEIBシンボルマーク
JTBグループ経営ビジョン「地球を舞台に「新」交流時代を切り拓く。」と
DEIBステートメント「違いを価値に、世界をつなぐ。」を
JTBグループカラーをベースに多様性・公平性・包括性・心理的安全性(帰属性)を表現

星:本日はインタビューにご参加いただきありがとうございます。JTB社の先進的なダイバーシティのお取り組みは、私たちJobRainbowの活動初期から度々耳にしていました。

DEIB推進は御社の理念である「新しい交流の時代をつくる」にも通ずるところがあるのではないかと思うのですが、まずはダイバーシティにかける思いから伺ってもよろしいですか?

髙﨑:私たちは、ダイバーシティ、つまり「様々な違いを持つ人がいること」そのものが価値だと考えています。もともと交流を生業にしていますので、同じような人同士が交流するよりも、違う者同士が交流した方が、絶対的に新しいものが生まれると思います。そういう意味では、ダイバーシティはマストだと感じています。

取り組みの中で特に大切にしているのは、「違いを価値に、世界をつなぐ。」という私たちのDEIBステートメントです。これは「違いは宝である」という私たちの意思を込めた言葉でしっかり浸透させていきたいですね。

DEIBステートメント(日本語版)
DEIBステートメント(英語版)

星:直近ではダイバーシティの取り組みをDEIBという4文字で、ダイバーシティ、インクルージョンに加えて、エクイティやビロンギングについても取り組まれているかと思います。

どのように推進されてきたのでしょうか?

髙﨑:当社のDEIB推進は、ダイバーシティ推進室という形で2007年からスタートしました。スタート当初はいわゆる外から見えるダイバーシティ、年齢、国籍、性別に関する取り組みがメインでしたが、取り組みを進めていく中で、それぞれの個性や価値観、バックグラウンドといった内面のダイバーシティの大切さにも気が付きました。

当初はダイバーシティだけでしたが、ダイバーシティを受け入れるためにはインクルージョン(包括性)が必要で、多様な人が活躍できる環境整備のためにはエクイティ(公平性)も必要……と、ダイバーシティ推進に必要な要素を付け加えていくことで、D&I、DEIへと発展していきました。

また、社員一人ひとりが「安心して挑戦できる、帰ってくる場所がある、周りから応援されている。」と感じること、すなわちビロンギング(Belonging)がDEI推進に重要と考えています。そのため当社では、DEIにビロンギングのBを入れた「DEIB推進」にこだわっています。

なお、ビロンギングはよく「帰属意識」や「帰属性」と訳されますが、このような考えを分かりやすく伝えるために、私たちはビロンギングを「心理的安全性」と表現しています。

星:その歴史を伺えてよかったです。私たちが社会的マイノリティ当事者の人とお話ししていると、「最近ダイバーシティが話題になっているから表面的に乗っかっているだけではないか」と懸念されていることも多いのですが、2007年から丁寧に積み上げてこられたという事実は、安心感につながりますね。

次に、個別の課題に丁寧に取り組みつつ、どのようにして全体に広げていったのか、取り組みのコツについてお伺いしたいです。

髙﨑:「なぜこのことを行っているのか」を分かりやすく伝えることが一番のポイントだと思います。

当社ではDEIB推進を5つの軸でとらえています。

  • 組織開発支援:組織風土、カルチャーをどう変えていくか。
  • ワークスタイル変革:誰とでも、どこでも働ける環境づくり。
  • キャリア開発支援:自分の「Will」をどう実現していくか。
  • 障害者雇用と活躍支援:障害がある人が自分らしく活躍するための支援。
  • ジェンダー平等:ジェンダーに関する取り組み。

これらの軸それぞれに20個ほどの具体的な施策が紐づいています。

例えば組織開発支援であれば、社内サーベイを実施して結果を分析し、各部署の課題を数字で可視化します。ただ数値化するだけでなく、サーベイ結果を基に改善案を該当部署と一緒に考え、1年間マンツーマンで支援することで、組織改善につなげていきます。

他にも、ジェンダー領域では女性活躍推進や、LGBTQ+の方々への理解促進の活動もあります。

DEIB推進がもたらす周囲の評価と、DEIB推進の原点

星:JTBは「D&I AWARD 2024」にて「ベストワークプレイス」を取得しているほか、くるみん認定やえるぼし認定、PRIDE指標 ゴールドなど、外部から高い評価を取得されています。これらの社外認定の取得に対して、社内外からの反響はいかがですか?

認定を取ることが目標ではありませんが、社内外での理解を進める一つのきっかけとして、社員や世の中に発信する上で非常に効果を感じています。認定取得がメディアに取り上げられたとき、実は一番関心を持つのは社員なんです。

TokyoPride(旧東京レインボープライド)などに出展すると、お客様から「JTBもこういった活動をしっかりされているんですね」とお言葉をいただいたり、社員が来てくれて「私たちの会社もようやく本気になってこういうイベントに出るようになったんだ」と言ってくれたりします。

また、TokyoPrideに出展したことをきっかけに、ALLY(アライ)の数が1.8倍ぐらいに増えました。CEOも含めて参加した様子を写真付きで社内に共有すると、「実は知らなかったけどやりたかった」という声もいただき、反響は非常に高いです。これからも続けていきたいですね。

星:外部認定の取得が、社内外からの評価につながっているのですね。髙﨑さんにとって「DEIB推進の原点」みたいなものはあるのでしょうか?

そうですね。思い返すとこれまでの仕事の多くが、DEIB推進につながるものでした。

入社時には教育旅行の営業担当者として特別支援学校のお客様を担当しました。身体・精神・発達などの面で制限があり、特別な配慮が必要な生徒さんたちが通っている学校です。

ある関西の特別支援学校の修学旅行を担当した際、プランニングから入り、当日は添乗員として同行しました。

せっかくの修学旅行なので、普段できないことを生徒さんには体験してほしいと考えていました。そんな思いから、ホテルでテーブルマナーの研修を受けて、コース料理を食べるプランを提案。しかし当初は、先生方から「うちの生徒には難しいかもしれない」とご意見がありました。

ですが、それぞれの個性に合わせたサポートと臨機応変に対応できるようプランニングすることで、マナー研修とコース料理を実現! うまくいくかドキドキでしたが、結果として大成功し、皆すごく喜んでくれました。

参加した生徒さんから「初めての旅行で不安でしたが、こんなに楽しいと思わなかった。これからは、旅行に行くために頑張って働くから、また髙﨑さんに旅行のプランニングをお願いしたいです。」と声をかけられ、心から嬉しかったことを覚えています。思い出すとつい涙ぐんでしまいますね…

私の原点はその時の生徒さんのキラキラした瞳かもしれません。本当にいい仕事をしているなと思いました。

時折涙を目元に浮かべながら、真剣な眼差しでお話しされる髙﨑さん

その後は広報として、社会へのメッセージ発信などを担当。雰囲気やバックグラウンド、所属部署も様々な人と接する中で、にぎやかな雰囲気が好きな人、落ち着いたコミュニケーションが好きな人、面白い人、真面目な人……「多様な人がいるな、それが私たちJTBの価値だな。」と実感しました。

その他にも、子育てをしながら、初めての女性営業担当者や女性課長など、多くの「女性初」を経験してきたため、活動のベースとして「後に続く女性社員が自分らしく活躍できる環境を作りたい」という想いもありますね。今後も女性管理職比率・役員比率を上げるための取り組みを頑張っていきたいです。

星:素敵なご経験を重ねてこられたのですね。髙﨑さんの実体験を伺って、やはり交流をすることと多様性は強く結びついていると感じました。社会的マイノリティ性がある方の中には、障害や精神疾患があって、周りの人たちや大人が「どうせ行っても迷惑がかかるから」と行かせてもらえないこともあります。そのような中で、適切な支援や配慮を受けながら旅行ができるということは、やはり御社ならではのバリューだと改めて思います。

髙﨑さんのPCにはJTBで作成しているALLYステッカー(左・中)、
JTB協賛 アートパラ深川大賞2024  JTB賞「舞い上がる」の作品ステッカー(右)が貼られている

「違いを価値に、世界をつなぐ。」JTBが追求するDEIB推進の現在地と未来【後編】

※本記事初出 2025年8月28日

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