「自分が幸せになるための仕事」——物語コーポレーションが考える、誰もが“自分らしさ”を表現できる働き方

ライター: JobRainbow編集部
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「自分らしく働くって、どういうことだろう?」

自分に嘘をつかなくてもいい場所なんて、本当にあるのか? 働くことに少し疲れを感じていたり、これから社会に出ることに不安を抱えていたり。そんな風に感じているあなたへ。

今回『焼肉きんぐ』や『丸源ラーメン』などを全国に展開する株式会社物語コーポレーションで、「自分らしく働く」とは何か、どうして誰もがいきいきと働き続けることができるのかを伺いました。

物語コーポレーションは「Smile & Sexy(スマイル&セクシー)」の経営理念のもと、多様性を軸にした取組みを実施・展開してきたD&I推進企業です。この企画では、そんな同社の経営、現場、LGBTQ+当事者……それぞれの立場から、全三回にわたり働く人々の想いを紐解いていきます。

第一回は、経営理念の推進やダイバーシティ&インクルージョン(D&I)を担う横浜さんに、株式会社JobRainbow代表の星がインタビュー。「自分らしく働く」とは何か、そのヒントを探りました。

株式会社物語コーポレーション 横浜さん プロフィール

叔父が経営する焼肉店で修業後、焼肉を中心としたレストランのチェーン店を経営する大手外食企業に入社。事業部長を経験したのち、2005年に物語コーポレーションに入社。店長職を経験したのち、本社にて営業企画、丸源事業部長、採用や広報の部署長を経て2021年より現職。物語コーポレーションの人事領域全般および経営理念推進に関する業務を担っている。

「君は無理だよ」挫折から始まった、自分だけの“物語”

星: 本日はよろしくお願いいたします。横浜さんはいつもエネルギッシュな印象ですが、これまでのキャリアについて、改めてお伺いできますか?

横浜さん(以下、敬称略): よろしくお願いします。実は僕、もともとプロ野球選手になりたかったんですよ。本気で野球に打ち込んで、高校3年生の時には、プロのスカウトの方に「給料も契約金もいらないから3年だけ入れてくれ!」なんて直談判したくらいです。

星: すごい行動力ですね!

横浜: でも、あっさり「いや、君は無理だよ」と言われてしまって。それまで野球のことしか考えていなかったので、本当にどうやって生きていこうかと考えていた時に、叔父が焼肉屋を始めると聞いて、「料理も自営業も面白そうだな」と料理人の道に進みました。

星: そこから、物語コーポレーションさんへ?

横浜: いえ、そこからも紆余曲折ありました(笑)。弟子入りした親方がすごすぎて「この人にはなれない」と思ったり、叔父と喧嘩して店を飛び出したり…。一度は「本当にやりたいことが見つかるまで働かない!」と決めて、アルバイトで食いつないでいた時期もありました。でも結局、「やっぱり焼肉屋がやりたい」という気持ちに気づいて、焼肉レストランのA社さんに入社し、事業部長まで経験させていただきました。

星: 事業部長まで!

横浜: ただ、当時の外食産業は、今とは少し違った価値観の会社も多くて。悩んだ末に退職したのですが、その時に出会ったのが、物語コーポレーション創業者の小林 佳雄です。かれこれ20年前になりますね。

ビジネススーツを着た男性が、窓のそばで微笑みながら座っている。背後には緑豊かな景色が見える。

「Smile & Sexy(スマイル&セクシー)」——経営理念に込められた想いとは?

星: 20年前の出会いが今につながっているんですね。物語コーポレーションさんといえば、やはり「Smile & Sexy」という経営理念が印象的です。この言葉には、どのような想いが込められているのでしょうか?

横浜: この理念には、創業者である小林自身の経験が色濃く反映されています。彼自身、若い頃は周りに流されて自分で何も決められず、幸せを感じられない時期があったそうです。その経験から、「自分をちゃんと表現し、周りから認めてもらえる自分にならなければいけない」と強く感じた。その想いが形になったのが、この言葉なんです。

星: なるほど。

横浜: 私たちは、「スマイル」を“自分を磨くこと”、「セクシー」を“自分を表現すること”と定義しています。だから社員にはいつも「自分らしくいていいよ」「個性を活かしてね」と伝えています。もちろん、それは自分自身で個性を育む努力をした上での話ですが。「なりたい自分でいいんだ」と、まず自分を否定されない文化。それが、社員がいきいきと働ける原動力になっているんだと思います。

星: 確かに、御社のオフィスに伺うと、皆さんが自分らしいファッションを楽しみながらも洗練されていて、会議でも役職に関係なく活発に意見を交わされている。理念が本当に浸透しているんだなと、いつも感じます。

DEIは特別なことじゃない。違いを認め合う、当たり前の文化

星: その「自分らしさを尊重する」という理念は、DEI(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)の考え方と深くつながっているように感じます。

横浜: まさにその通りです。自分を表現するということは、それを受け止める誰かがいるということ。「あなたはそのままでいいよ」と言うなら、自分と違う考えの人も、その人のままでいいはずですよね。

私たちは、多数決で物事を決めたり、無理やりみんなを同じ意見にしたりすることが好きではありません。それぞれが違うからこそ、新しい可能性が生まれると考えているので、DEIという言葉が広まる前から、その精神は会社の根っこにありました。

星: 「飲食業界はきつい」というイメージを持つ人もいるかもしれませんが、御社にはそれとは違う空気が流れていますよね。

横浜: それは、「本当に言ってもいい会社」だからかもしれません。僕自身、社長と真剣に議論することもありますが、それで評価が下がることはありません。現場のスタッフからも、「この湯呑み、熱くて持てません」「トレーの滑り止めがすぐ剥がれます」といった改善提案が、アルバイト・パートの方含め誰でも直接経営層に届く仕組みがあります。

星: それはすごいですね。ボトムアップの文化が徹底されている。

横浜: 僕がこの会社に入って驚いたのは、手が空いている時に「掃除しろ」ではなく、「お客様のところへ行って話してきなよ」と言われたことです。飲食のようなサービス業に携わる人って、お客様との触れ合いが好きで業界に入ってきてくれるんですよ。だからこそ、配膳ロボットなどを導入して、人がやるべき“お客様との対話”に集中できる時間を作ります。それが、いきいき働くことにつながっているんだと思います。

インタビュー中のビジネスマンが笑顔で座っている様子

国籍も、性別も、障害も超えて。未来を描くための「多様性」

星: 御社では、DEIを経営戦略としても重要視されていますよね。その背景には何があるのでしょうか?

横浜: 私たちの業界は、残念ながらまだ不人気業種です。だからこそ、みんなの力を合わせなければならない。そして、私たちは常に新しいブランドを自社開発して成長してきた会社なので、これからも成長するには「0→1」を生み出す多様な発想が不可欠なんです。性別も、国籍も、障害の有無も関係なく、色々な人に力を貸してほしい。それが一番の理由です。

星: 具体的な取り組みとして、社内の当事者コミュニティの活動も活発だと伺っています。

横浜: はい。当事者だけで集まったり、アライ(支援者)も交えて集まったりしています。ただ、誰が当事者かという情報は、本人の許可なく絶対に共有しません。アウティングは絶対に防がなければならない。安心して話せる場であることが何よりも大切ですから。

星: その配慮は、当事者にとって本当に心強いです。

横浜: 昔は、カミングアウトもすごく深刻な雰囲気でした。「赤いネクタイが、死ぬほど嫌なんです…」と泣きながら相談してくれたトランスジェンダー男性の社員もいました。その時は「もういい、青でいい!」って(笑)。でも最近は、会話の中で「私、パートナーが同性なんです」というように、ずっと軽やかに話してくれる人が増えました。それは、会社としてDEIに取り組んできた成果なのかなと、嬉しく思いますね。

星: 素晴らしい変化ですね。

横浜: また、外国人社員の採用にも力を入れています。最近では、フィリピンで採用活動を行い、来日前に半年間、日本語学校で学んでもらうという取り組みも始めました。言葉の壁を乗り越えて、日本で活躍したいという彼らの熱意には、いつも心を打たれます。

星: 最後に、この記事を読んでいる方々へメッセージをお願いします。

横浜: 何よりもまず、「自分が幸せになるために仕事をしてほしい」と伝えたいです。きっとどこかに、あなたに合う会社はあるはずです。自分の幸せは、自分だけのもの。人の意見も大切ですが、最後はちゃんと自分で考えて、自分が本当に幸せになれる場所を見つけてほしいなと思います。それがもし当社だったら、僕たちはとても嬉しいですけどね。

星: 横浜さん、本日は心温まるお話を本当にありがとうございました。

連載第二回「自分らしく働ける場所に出会うまで——トランスジェンダー当事者・稲垣さんが歩んできた道」

▼株式会社物語コーポレーションの企業情報

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