LGBTQ+当事者の老後を考える【孤立、医療・介護の不安と、自分らしく生きるヒント】

超高齢社会を迎えた日本では、多くの人が自身の老後について漠然とした不安を抱いています。その中で、LGBTQ+当事者の方々は、さらに複雑で「見えにくい」課題に直面しているかもしれません。
長年にわたる社会的な差別や偏見から、自身のセクシュアリティを隠して生きてきた方も少なくありません。その結果、孤立や孤独感、医療・介護現場での不安、そして経済的な困難など、異性愛者にはない特有の障壁に直面することがあります。「見えないマイノリティ」と言われる背景には、過去の社会情勢が深く関わっています。
かつて同性愛が精神疾患とされ、トランスジェンダーへの理解がほとんどなかった時代を生き抜いてきた多くの当事者は、家族や職場、地域社会の中で本当の自分を隠し、カミングアウトすることへの強い抵抗感を抱いてきました。これにより、統計データとして可視化されにくいだけでなく、一人ひとりが抱える課題も表面化しにくい状況が生まれています。日本の高齢化が進むにつれて、LGBTQ+(をカミングアウトしている)高齢者人口も増加すると見込まれています。彼らが安心して自分らしく歳を重ねられる社会は、個人の問題に留まらず、多様性を尊重する社会を築く上で欠かせない重要な課題です。
この記事では、LGBTQ+当事者が高齢期に直面しやすい「見えにくい」課題を深く掘り下げながら、その不安を解消し、自分らしく充実した老後を送るための具体的なヒントを提供します。そして、未来への希望を見いだせるよう、社会全体でどのような支援が必要とされているのかについても、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
LGBTQ+の高齢者が直面する「見えにくい」課題
LGBTQ+の高齢者が抱える課題は多岐にわたりますが、その多くは社会の「異性愛が前提」という構造と、長年にわたる差別の経験に根ざしています。ここでは、具体的な課題について詳しく見ていきましょう。
「異性愛が前提」の社会で経験する孤立と孤独感
多くのLGBTQ+当事者にとって、家族関係やパートナーシップは「異性愛が前提」の社会の中で特有の困難を伴うことがあります。例えば、長年連れ添った同性パートナーがいても、親族にその関係をカミングアウトしていなければ、緊急時に「家族」として扱ってもらえないのではないか、と不安を感じる方もいるでしょう。これにより、大切なパートナーが病気になったり、亡くなったりした際に、法的な手続きや病院での面会、病状説明の場から疎外されるのではないかと心配する声も聞かれます。
地域コミュニティにおいても、差別や偏見を恐れて自身のセクシュアリティを隠して生活してきた方も多く、その結果、孤立感を深めてしまうことがあります。アメリカの調査では、LGBTQ+高齢者の約3割が孤独を感じていると報告されており(参考:PMC「LGBT+ Older Adults Report Higher Rates of Loneliness and Other Adverse Social Determinants of Health」)、異性愛者の高齢者よりも高い割合を示しています。
日本においても同様の傾向が指摘されており、中高年期の孤立・孤独はLGBTQ+当事者だけのものではありませんが、カミングアウトに伴うリスクが他者とのつながりを難しくし、孤立を一層深刻化させる可能性があると感じている方もいるかもしれません。
医療・介護現場で感じやすい不安と壁
医療や介護の現場は、LGBTQ+当事者が特に不安を感じやすい場所の一つです。性的マイノリティの人々の約3人に1人が、医療サービスの利用時に困難を感じた経験があるという調査結果もあります(参考:PRIDE JAPAN「性的マイノリティの3人に1人が医療サービスの利用に困難を感じた経験があることが明らかに」)。
特にトランスジェンダーやノンバイナリーの方では、約62%が困難を経験していると報告されています。その背景には、医療従事者の性自認・性的指向への理解不足や、「異性愛前提」の対応があります。例えば、問診票が男女二択しかない、見た目の性別と保険証の性別が異なるために不必要な説明を求められるなど、何気ない対応が当事者にとって大きな心理的負担となることがあります。これにより、病院から足が遠のき、病気の発見が遅れたり重症化したりするケースも指摘されています。
また、同性パートナーの「家族」としての権利が十分に認められない現実も大きな課題です。医療機関では、戸籍上の家族でなければ病状説明を受けたり、手術の同意書にサインしたりすることが難しい場合があります(参考:IRIS「同性パートナーは手術の同意書にサインできる?入院・面会の現状と備えを解説」)。厚生労働省のガイドラインでは「家族等」に親しい友人も含まれるとされていますが、多くの医療機関では慣習的に血縁者や法律上の配偶者を優先する傾向が見られます。そのため、「法律上の家族ではない」ことを理由に面会や情報共有を拒否されるケースが依然として存在し、パートナーの命に関わる状況で情報を得られないことへの不安を感じる方も少なくありません。ホルモン療法など特定の医療ニーズへの無理解も、当事者が安心して治療を受ける上での障壁となることがあります。
安心して暮らせる住まいを見つける難しさ
高齢期に安心して暮らせる住まいを見つけることも、LGBTQ+当事者にとって容易ではありません。高齢者施設での差別や偏見への懸念から、自身のセクシュアリティを隠したまま入居せざるを得ないと感じる方が多い現状が指摘されています。過去の経験から、カミングアウトすることで嫌がらせや孤立に繋がるのではないかという不安を抱え、「クローゼットの中」に戻ってしまう傾向も報告されています。
また、同性パートナーとの同居を希望しても、施設側が「単身者」としてしか受け入れなかったり、公営住宅への入居を申し込んだ際に「同居親族」に当たらないとして拒否されたりする事例も発生しています。このような問題は、法整備の遅れや理解不足、配慮の欠如に起因していると考えられます。
日本でも近年、東京郊外にゲイフレンドリーな高齢者向け住宅がオープンしたり(参考:tayorini by LIFULL介護「ゲイの老後を孤立させない 日本初のゲイフレンドリー高齢者向け住宅」)、LGBTQ+フレンドリーなシェアハウスが登場したりといった先進的な取り組みが見られますが、これらはまだ全国的な動きとは言えず、選択肢は限られているのが現状です。
老後を支える制度と、法的・経済的な課題のギャップ
現在の日本では同性婚が法的に認められていないため、LGBTQ+当事者は「異性愛が前提」の社会制度の中で、さまざまな法的・経済的課題に直面します。長年連れ添った同性パートナーがいても、民法上の「配偶者」とはみなされないため、残念ながら相続権がありません(参考:アットホーム「同性パートナーには相続権がない?今できる4つの相続対策と注意点」)。
遺言書などの特別な対策をしていない場合、パートナーは故人の財産を承継できず、場合によっては故人の血縁者に財産が渡ったり、最終的に国庫に帰属したりする可能性もあります。これにより、残されたパートナーが住み慣れた家を失ったり、二人の預貯金を受け取れなくなったりする事態も起こりえます。
さらに、法律婚の夫婦に適用される相続税の配偶者控除や生命保険の非課税枠、所得税・住民税の配偶者控除といった税制上の優遇措置も受けられません(参考:相続会議「同性カップルの相続は税金がより多くかかりやすい 計算式と具体例で詳しく解説」)。これにより、同性パートナー間で財産を承継する際には、法律婚のカップルよりも税負担が大きくなる傾向があり、経済的な不安を抱える原因の一つとなっています。
全国的に広がりを見せる自治体のパートナーシップ制度は、同性カップルを「婚姻に準ずる関係」と認めるものであり、公営住宅への入居や医療機関での面会などで「家族」として扱われやすくなるなどのメリットがあります。しかし、この制度はあくまで自治体が独自に定めるものであり、民法上の婚姻と同等の法的効力を持つわけではありません。そのため、相続や税制面での法的な保護は依然として限定的であることに注意が必要です。
また、社会的な差別経験が、経済的な不安定さや貧困リスクに繋がることも指摘されています。アメリカの調査では、LGBT+高齢者が異性愛者高齢者よりも所得が低い傾向があることも示されています。
ロールモデルが少ないことによる漠然とした不安
LGBTQ+当事者の中には、自身の老後像を具体的に描くことが難しいと感じる方も少なくありません。これは、社会に多様な性のあり方を持つ高齢者の「ロールモデル」が少ないことに起因しています。
異性愛中心の社会の中で、結婚して家庭を築き、子どもを育て、孫に囲まれるといった一般的な老後像とは異なる人生を歩んできた当事者にとって、「自分らしい老後とは何か」「どのように生きていけば良いのか」という問いに対する答えを見つけることが難しい場合があります。特に、過去の差別経験から、長期的なパートナーシップを築くことや、頼れる支援ネットワークを形成することが困難だった世代も存在します。これにより、将来への漠然とした不安や、孤独死への恐れを感じる方もいるかもしれません。
多様な「性のあり方」と高齢期の健康
「LGBTQ+」という言葉は広く知られるようになりましたが、性の多様性はそれだけに留まりません。例えば、生まれつき身体の性が典型的な男性・女性のいずれにも当てはまらないインターセックス(性分化疾患)の方や、他者に恋愛感情や性的欲求を抱かないアセクシュアルの方など、性のあり方は一人ひとり異なります。高齢期を迎えるにあたり、これらの多様な性のあり方を持つ人々が、それぞれに異なる健康上のニーズや課題を抱えていることを理解することが重要です。
LGBTQ+コミュニティに特有の健康課題としては、社会的なスティグマや差別がメンタルヘルスに与える影響が挙げられます。性的マイノリティはシスジェンダー・異性愛者と比較して、メンタルヘルスの状態が悪い傾向が続いており、ストレスを抱える割合も高いことが複数の調査で示されています。孤立感は、うつ病や自殺念慮、薬物・アルコール依存のリスクを高めることも明らかになっています。
医療・介護現場では、こうした背景を理解し、個別のニーズに配慮したケアが求められます。例えば、性的にアクティブなゲイ・バイセクシュアル男性はHIVをはじめとする性感染症のリスクに注意が必要であり、トランスジェンダーの方には性別適合に関する生活上の配慮が求められる場合があります。このように、一人ひとりのセクシュアリティやライフヒストリーを尊重し、必要な情報提供や支援を行うことが、誰もが安心して高齢期を迎えられる社会のために不可欠です。
不安を解消し、自分らしく歳を重ねるための具体的なヒント

LGBTQ+当事者が老後の不安を解消し、自分らしく充実した日々を送るためには、具体的な行動や準備が大切です。ここでは、皆さんが実践できるヒントをいくつかご紹介します。
信頼できるコミュニティを見つける
孤立や孤独感を和らげ、精神的な支えを得るためには、信頼できる人々とつながり、コミュニティに属することが非常に重要です。オンラインとオフラインの両方で、多様な交流の場が提供されています。
- NPO法人や支援団体の活用: LGBTQ+当事者やその支援者向けのNPO法人が、交流イベント、サロン活動、相談窓口などを運営しています。例えば、高齢のLGBTQ+当事者向けの交流サロンや見守り・生活相談サービスを提供している団体もあります。これらの場では、同じような経験を持つ仲間と出会い、情報交換をしたり、悩みを分かち合ったりすることができます。
- SNSやオンラインコミュニティ: 地理的な制約なく、共通の趣味や関心を持つ人々とつながれるオンラインコミュニティやSNSも有効な手段です。匿名で参加できるものもあるため、カミングアウトに抵抗がある方でも安心して交流を始めやすいかもしれません。
- 当事者同士の支え合い: 自身のセクシュアリティを理解してくれる仲間との出会いは、自己肯定感を高め、未来への希望を見出す力になります。当事者同士で支え合い、互いの経験から学ぶことは、老後の不安を乗り越える大きな助けとなるでしょう。
LGBTQ+フレンドリーな住まい・施設を検討する
安心して暮らせる住まいを見つけることは、老後の生活の質を大きく左右します。近年、LGBTQ+当事者が安心して過ごせる住まいや施設が少しずつ増え始めています。
日本国内では、東京郊外に日本初のゲイフレンドリーな高齢者向け住宅がオープンしています(参考:ゲイの老後を孤立させない 日本初のゲイフレンドリー高齢者向け住宅)。ここでは、ホテルのような落ち着いた空間で、ゲイ当事者が安心して暮らせる環境が提供されており、管理人による生活サポートや終身にわたる身元引き受けサービスも利用できます。
また、東京の阿佐ヶ谷には、NPO法人と株式会社が協働で運営するLGBTQ+フレンドリーなシェアハウスも存在します。プライベートを尊重しつつ、入居者同士が楽しく安心して暮らせる場として注目されています。海外では、デンマークのコペンハーゲンに「スロテット」というレインボー介護施設があります(参考:ディチャーム株式会社「LGBTQ+の高齢者のためのレインボー介護施設」)。施設の全職員がLGBTQ+に関する研修を受けており、入居者が自分らしくいられる安全な環境を提供しています。共用エリアの装飾にも虹色を取り入れるなど、インクルーシブな空間づくりにも配慮が見られます。
施設を選ぶ際には、いくつか確認しておきたいポイントがあります。まず、施設のウェブサイトやパンフレットで、LGBTQ+フレンドリーであることを明記しているか。可能であれば、見学時にスタッフの理解度や対応について直接質問してみるのも良い方法です。職員がLGBTQ+に関する研修を受けているかどうかも重要な指標で、研修を受けている施設であれば、多様な性のあり方への配慮が期待できます。同性パートナーとの同居を希望する場合は、それが可能かどうか、契約形態についても事前の確認が必要です。施設内でLGBTQ+当事者同士の交流の機会があるか、コミュニティ形成をサポートする体制があるかどうかも確認しておくと良いでしょう。最近では、LGBTフレンドリーな物件を特集する賃貸検索サイトも増えており、不動産会社に相談する際に自身の状況を伝えることで、より適切な物件を紹介してもらえる可能性もあります。
医療・介護の相談先を知る
医療や介護の現場で不安を感じることなくサービスを受けるためには、事前の情報収集と相談が不可欠です。
性的マイノリティへの理解を深め、配慮ある対応を心がけている医療機関や介護サービス事業所が増えつつあります。インターネット検索や支援団体の情報、クチコミなどを参考に、そうした機関を探してみることをお勧めします。
JobRainbow Magazine「介護業界ってLGBTQ+フレンドリー?【LGBTQ+フレンドリー企業4社まとめ】」
専門家や支援団体に相談するという選択肢もあります。NPO法人キャンサーネットジャパンは、同性パートナーの医療同意や面会に関する相談を受け付けており(参考:「もっと知ってほしいがんと生活のこと」同性のパートナーの面会、同意書へのサインについて)、必要に応じて医療同意契約書の作成なども提案しています。ラムダ(LGBT包括生活支援連絡協議会)のような団体は、LGBTQ+高齢者向けの見守りや生活相談窓口を設置しており、老い支度や終活に関する専門チーム(行政書士、社会福祉士、医師など)による相談も可能です。ソーシャルワーカーや行政書士といった専門家は、医療同意や任意後見制度など、法的な側面からサポートを提供してくれます。
医療機関によっては、患者本人の意思を尊重し、戸籍上の家族以外でも病状説明や面会を認める柔軟な対応が増えています。自身の希望を明確に伝えること、そしてパートナーとの関係性を示す書類(パートナーシップ証明書など)を携帯することも有効です。
法的準備を進める
日本では同性婚が認められていない現状では、大切なパートナーを守り、自分らしい老後を送るために、法的な準備を進めておくことが非常に重要です。
- 公正証書遺言の作成: 同性パートナーに財産を遺すための最も確実な方法の一つが、公正証書遺言の作成です(参考:柏 相続・生前対策相談所「同性パートナーが安心して生活できる法的サポート(遺言・任意後見)」)。遺言書がない場合、同性パートナーは相続権を持たないため、二人で築いた財産が血縁者に渡ったり、国庫に帰属したりする可能性があります。遺言書で「すべての財産を○○に遺贈する」と明確に記すことで、パートナーに財産を引き継げます。遺言執行者を指定することで、遺言の内容が確実に実行されるよう手配することも可能です。
- 任意後見制度の活用: 将来、自身の判断能力が低下した場合に備えて、任意後見制度の活用を検討しましょう(参考:長岡行政書士事務所「LGBT・同性カップルの財産管理には『任意後見』の活用がおすすめ!」)。任意後見契約を公正証書で締結することで、信頼する同性パートナーを後見人として指名し、自身の財産管理や医療・介護に関する意思決定を委任できます。これにより、本人の意思が尊重され、パートナーが生活上の困りごとに対応できるようになります。
- パートナーシップ制度の利用: 自治体によるパートナーシップ制度は、法的な婚姻関係と同等の効力を持つわけではありませんが、多くの場面で「家族」として扱われるための有効な手段となります。公営住宅への入居、医療機関での面会、生命保険の受取人指定、企業の福利厚生の利用など、日常生活における様々な場面でメリットを享受できる可能性があります。居住地の自治体で制度が導入されているか確認し、利用を検討することをお勧めします。
- その他: 死因贈与契約や、養子縁組なども、財産をパートナーに承継させるための一つの選択肢となりえます。また、パートナーシップ契約書(準婚姻契約書)を作成し、同居、扶養、扶助の義務、財産分与、療養看護に関する委任などを盛り込むことで、法律婚に準じた関係性を構築することも可能です。
老後の経済的な備えを考える
法的準備と並行して、老後の経済的な備えをしっかり考えることも重要です。
- 専門家との相談: ファイナンシャルプランナーや税理士といった専門家に相談し、自身のライフプランに合わせた資産形成や保険プランニングを進めることをお勧めします。同性パートナーの場合、相続税の配偶者優遇が適用されないため、税負担を考慮した上で、どのような財産の移譲方法が最適か専門家のアドバイスを受けることが特に重要になります。
- 生命保険の活用: 生命保険の死亡保険金の受取人に同性パートナーを指定することは可能です。ただし、この場合でも相続税の非課税枠は適用されないため、保険金にかかる税金についても考慮した上で、プランを立てる必要があります。
- 生前贈与・信託契約: 生前贈与によって計画的にパートナーへ財産を移したり、信託契約を利用して死亡後もパートナーが安定的に資産を承継できる仕組みを構築したりすることも有効な手段です。
一歩を踏み出すことで、見える景色は変わる
老後の不安は、誰にとっても大きなものです。ただ、ここまで見てきたように、コミュニティとつながる、LGBTQ+フレンドリーな医療機関や施設を探す、専門家に相談して法的・経済的な備えをする――そうした一つひとつの行動が、漠然とした不安を「具体的に対処できるもの」に変えていく力になります。
一人で抱え込む必要はありません。同じ立場の仲間や、理解のある専門家、支援団体とつながることで、これまで見えなかった選択肢が見えてくることもあります。
一人ひとりのセクシュアリティやライフヒストリーが多様であるように、老後の選択肢もまた多様です。大切なのは、諦めずに情報収集し、信頼できる専門家やコミュニティとつながり、自分らしい一歩を踏み出す勇気を持つことです。
社会全体で取り組むべきLGBTQ+の老後支援の未来

LGBTQ+当事者が安心して歳を重ねられる社会を実現するためには、個人レベルの努力だけでなく、社会全体の意識変革と制度の整備が不可欠です。未来に向けて、私たちはどのような取り組みを進めていくべきでしょうか。
医療・介護現場におけるLGBTQ+理解の啓発と研修の推進
性的マイノリティの約3人に1人が医療サービスの利用時に困難を感じる現状を改善するためには、医療・介護現場におけるLGBTQ+に関する理解を深めることが喫緊の課題です。
2023年に施行された「LGBT理解増進法」(参考:「LGBTQ+に関する課題の現状と今後必要なことは?日本の取り組みについて解説」)では、公的機関に対し、性的マイノリティに関する研修や啓発活動の実施が努力義務として定められています。この法律に基づき、以下の取り組みをより一層推進する必要があります。
- 体系的な研修プログラムの導入: 医療・介護従事者全員が、LGBTQ+に関する基礎知識、性自認や性的指向への配慮、差別的な言動の排除、そして個別のニーズに応じた対応方法などを学ぶ機会が必要です。
- 問診票や書類の見直し: 「男女二択」といった異性愛前提の書式を改め、多様な性のあり方を反映した、誰もが安心して記入できるような書類への改善が求められます。
- 相談窓口の設置と周知: 当事者が安心して相談できる専門の窓口を設置し、その存在を広く周知することで、不安を抱える人々が適切な支援を受けられるようになります。
- アライ(理解者・支援者)の可視化: 医療・介護機関がLGBTQ+フレンドリーであることを示す「サイン」を明確に提示することも重要です。
行政・自治体による支援制度の拡充と法整備の必要性
自治体によるパートナーシップ制度は全国的に広がりを見せており、2025年5月末時点で導入自治体は530に達し、人口カバー率は92.5%を超えています(参考:みんなのパートナーシップ制度「データで見るパートナーシップ制度」)。しかし、この制度はあくまで自治体独自の取り組みであり、法的な強制力は限定的です。真に多様性を尊重し、誰もが平等に権利を享受できる社会を実現するためには、国レベルでの法整備が不可欠です。
- 同性婚の法制化: 同性婚の法制化は、同性パートナーシップの法的保護を確立し、相続、税制、医療同意など、現行制度とのギャップを解消する上で最も重要なステップです。地方裁判所での違憲判決が相次いでいるほか、日本学術会議も婚姻平等に向けた法改正の必要性を示しています。同性婚の実現は、個人の生活の安定と社会での可視化を促進し、LGBTQ+当事者の老後の不安を大きく軽減することに繋がるでしょう。
- パートナーシップ制度の全国的普及と法的効力の強化: 同性婚が実現するまでの間も、パートナーシップ制度を全国の自治体に普及させ、その法的効力を可能な限り強化していくことが求められます。
企業やNPO、民間サービスによる新たな価値創出と連携
企業やNPO、民間サービスも、LGBTQ+の老後支援において重要な役割を担っています。
- LGBTQ+フレンドリーなサービスの開発: LGBTQ+当事者のニーズに特化した住宅、介護、金融、保険などのサービス開発がさらに求められます。
- NPO法人との連携: NPO法人は、当事者コミュニティに根差した支援活動を行っており、行政や企業が連携することで、よりきめ細やかなサポートが可能になります。
- 職場環境の改善: 企業は、LGBTQ+当事者が安心して働き続けられる職場環境を整備することで、老後の経済的な安定にも寄与できます。LGBTQ+フレンドリーな企業が増加傾向にあるという調査結果もあります(参考:認定NPO法人虹色ダイバーシティ「累計6,593名の声を可視化。LGBTQの職場・生活実態調査を公開」)。
世代を超えた理解と共生社会の実現に向けて
LGBTQ+の老後支援は、特定の世代やコミュニティだけの問題ではありません。多様な性のあり方を理解し、尊重する共生社会の実現は、すべての人が自分らしく生きられる未来につながります。教育の現場から、若者世代への性の多様性に関する正しい知識の普及、そして高齢者世代への啓発活動を通じて、世代を超えた理解を育んでいくことが大切です。互いの違いを認め合い、支え合う社会こそが、誰もが安心して歳を重ねられる豊かな社会と言えます。
性の多様性を尊重した老後をJobRainbowは考えます

この記事では、LGBTQ+当事者が日本の高齢化社会で直面する「見えにくい」課題、そしてその不安を解消し、自分らしく歳を重ねるための具体的なヒント、さらに社会全体で取り組むべき未来の支援について深く考察してきました。
大切なのは、「正しい老後」という一つの決まった形は存在しない、ということです。一人ひとりのLGBTQ+当事者が歩んできた人生は異なり、抱える課題も、望む老後も多様です。結婚やパートナーシップの形も、家族との関係も、コミュニティとのつながり方も、そして老後の暮らし方も、その人らしくあることが何よりも尊いのです。
JobRainbow Magazineは、すべてのLGBTQ+当事者が、自身のセクシュアリティを隠すことなく、安心して、そして希望を持って歳を重ねられる社会の実現を目指しています。そのためには、今回ご紹介したような個人でできる備えはもちろんのこと、医療・介護現場の理解促進、法制度の整備、そして社会全体の意識変革が不可欠です。
なお、記事内でも触れた通り、老後の経済的な安心は、現役時代からどれだけ安心して働き続けられるかの積み重ねの上に築かれる面もあります。運営元のJobRainbowでは、LGBTQ+フレンドリーな500社以上の企業と当事者をつなぐ求人サイト「JobRainbow」を運営しています。自分らしく安心して働ける職場を探すことも、将来への備えの一つになるかもしれません。転職や就職を考えている方は、あわせてご活用ください。
私たちは、これからもLGBTQ+当事者の皆さんが自分らしい選択をできるよう、正確で、温かく、希望に満ちた情報発信と支援を続けてまいります。老後の不安を感じている方も、これから老後を迎える方も、どうか一人で抱え込まず、信頼できる情報や支援の輪に繋がり、あなたらしい「性の多様性を尊重した老後」を築いていってください。
参考
- Aging with Pride: Information for LGBTQ+ Older Adults – Agency on Aging Area 4
- 【脱・機能訓練デイサービスVol.55】ポストコロナ時代のLGBTQ+高齢者の居場所づくり|ウチヤマリョウタ
- LGBTQ+のコミュニティにおける介護の影響 – 日本認知症国際交流プラットフォーム
- LGBTQ+の高齢者のためのレインボー介護施設 – 介護美容・訪問美容を中心にシニアのお困りごとを解決 – ディチャーム株式会社
- 同性のパートナーの面会、同意書へのサインについて | もっと知ってほしいがんと生活のこと
- 同性パートナーが倒れたら|面会も同意もできない現実と同性婚 | みなづちっと。
- LGBTQのパートナーがいる方
- LGBT+ Older Adults Report Higher Rates of Loneliness and Other Adverse Social Determinants of Health – PMC
- 1980年代以来のLGBTQ +研究&支援から見えてきたこと(後編)ー直面する課題と解決の方向性ー|Famiee
- 性的マイノリティの3人に1人が医療サービスの利用に困難を感じた経験があることが明らかに | Magazine for LGBTQ+Ally – PRIDE JAPAN
- 【前編】医療現場におけるジェンダー課題 〜LGBTQ+の基礎知識〜|PT-OT-ST.NET
- 同性パートナーは手術の同意書にサインできる?入院・面会の現状と備えを解説 | 【IRIS】LGBTsの賃貸部屋探し、不動産売買、住宅購入ならLGBTフレンドリー不動産へ
- パートナーシップ制度、病院での対応は? コロナ禍での現状は? | 【IRIS】LGBTsの賃貸部屋探し、不動産売買、住宅購入ならLGBTフレンドリー不動産へ
- 医療・介護従事者のためのLGBTQ講座 ―全ての人にやさしい医療機関を目指して―
- 258.LGBT高齢者のための施設とかあるんですか?|金城(LGBT+に関するQ&A)
- LGBTQ+に関する課題の現状と今後必要なことは?日本の取り組みについて解説
- ゲイの老後を孤立させない 日本初のゲイフレンドリー高齢者向け住宅|tayorini by LIFULL介護
- 同性パートナーには相続権がない?今できる4つの相続対策と注意点|【アットホーム】住まい・不動産のお役立ち情報&ツール
- 同性パートナーの相続対策について実務上のポイントを解説 | 相続・遺産分割・遺留分の相談なら弁護士法人朝日中央綜合法律事務所
- LGBTの方がパートナーシップ制度を使っても相続できないの?│遺言相続問題コラム│東京新宿法律事務所
- 【2026年6月更新】同性パートナー相続税|保険設計と税負担の3要点 | 保険相談の掟 by ほけんのAI
- 同性カップルの相続は税金がより多くかかりやすい 計算式と具体例で詳しく解説 | 相続会議
- minnano-partnership.com
- 医療・介護の管理職が理解するLGBTQとダイバーシティ 知識編
- 性的マイノリティに関する社会課題の現状と癒しの取り組み | ヒューライツ大阪(一般財団法人アジア・太平洋人権情報センター)
- 累計6,593名の声を可視化。LGBTQの職場・生活実態調査を公開。当事者が直面する困難やニーズなど3年分の変化・傾向を分析。LGBT理解増進法後も半数の職場が「施策ゼロ」と判明 | 認定NPO法人 虹色ダイバーシティのプレスリリース
- 性的マイノリティ(LGB)高齢者の主観的生活課題
- Find Support at SAGE | SAGE USA
- 【LGBT高齢者向け】見守り・生活相談サービス開始のお知らせ | アライアンサーズ株式会社のプレスリリース
- Get in Touch – LGBTQ Aging Center
- Senior Services | LGBT Life Center
- gladxx.jp
- 介護業界ってLGBTQ+フレンドリー?【LGBTQ+フレンドリー企業4社まとめ】 | LGBT就活・転職活動サイト「JobRainbow」
- LGBT・同性カップルの財産管理には「任意後見」の活用がおすすめ!行政書士が制度内容を解説 – 横浜市の遺言作成相談は港南区の長岡行政書士事務所
- 同性婚と任意後見契約|パートナーに老後を任せる方法 | みかち司法書士事務所
- 同性パートナーが安心して生活できる法的サポート(遺言・任意後見) – 柏 相続・生前対策相談所|運営:司法書士法人クレスタ | 柏 相続・生前対策相談所|運営:司法書士法人クレスタ
- LGBTの法律〜今後の準備(任意後見など)〜練馬相続相談センター
- LGBTQ+の人たちが医療とつながる社会に J&Jと医師、当事者が対談【中編】トランスジェンダーの医学生でも受診をためらう現実 | ジョンソン・エンド・ジョンソン
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各記事の日付はシステム上の更新日付であり、執筆時の日付と異なる場合があります。
各記事は、執筆当時の情報に基づいて作成されています。そのため、最新の情報とは異なる内容や、現在の価値観と相違する表現が含まれている場合がございます。ご了承ください。
また、当社は、読者様が本記事の情報を用いて行う一切の行為について、何らの責任を負うものではありません。本記事の内容の正確性や個別の状況に関するご判断は、読者様ご自身の責任において行っていただき、必要に応じて専門家にご相談ください。







