トランスジェンダーとは?【「広義」「狭義」ってなに?性同一性障害との違いとは】

ライター: りっきー
この記事のアイキャッチ画像

トランスジェンダーとは一般的に、性自認(こころの性)と身体的性が一致していない方全般を指し、大きく分けて「トランスセクシュアル」「トランスヴェスタイト(クロスドレッサー)」「狭義のトランスジェンダー」の3種類があります。性同一性障害と混同されがちですが、こちらは医学用語で、イコールとは言えません。

LGBTの「T」にあたる、トランスジェンダー。最近では、テレビや映画などではトランスジェンダーの芸能人の半生を描いたドキュメンタリーも見ることがありますね。

LGBTを公表している有名人まとめ 日本&海外

また、トランスジェンダーという言葉と同じくらい、性同一性障害(GID)という言葉も近年頻繁に使われるようになりました。

この2つ、「英語表記と日本語表記の違いでしょ?」と勘違いされることが多いのですが、じつはそもそも、表すものがちがうことを知っていますか?

今回は、この2つの言葉「トランスジェンダー」と「性同一性障害」について解説します。

※「障害」という言葉に抵抗がある方もいらっしゃるかもしれませんが、今回のコラムでは公益社団法人 日本精神神経学会などをはじめとする用例に基づき、こちらの単語を使わせていただきます。
ただ、2019年5月にWHOが「性同一性障害」を「精神障害」の分類から除外し、「性の健康に関連する状態」の「性別不合」に変更する(参考:WHOが性同一性障害を「精神障害」の分類から除外しました)など、世界の潮流は変わりつつあります。

知っておくべき2つの基本概念~「性自認」と「身体的性」~

トランスジェンダーを知るには、まず2つの概念を知っておく必要があります。

それは、性自認身体的性です。

1. 性自認

こちらは、文字通り「自認している性」を指します。例えば、自分のことを女性だと思っていれば、性自認が女性である、と説明することが可能です。

ですが、性自認は「男性」「女性」だけではありません。例えば、「間性」「無性」といった性自認もあるんです。

Xジェンダーとは? 【男女の枠に属さないってどういうこと?】

2. 身体的性

身体的性、とは身体構造における性を指します。

こちらは戸籍上の性別と同じものとして説明されることが多いのですが、日本では現在、戸籍上の性別は「男性」「女性」しかありませんが、身体的性というのは、その2つだけではないと考えられています。

例えばDSD(性分化疾患)と呼ばれる、「男性ならばこう、女性ならばこうでなければならない、と社会で考えられている体の構造とは生まれつき一部異なる発達を遂げた体の状態」といったケースもあります。

かつては、性分化疾患の赤ん坊に対して、身体を無理やり「男性」「女性」のどちらかに手術していた歴史もあります。

性分化疾患については、こちらのサイトで詳しく解説されていますので、詳しく知りたい方はご覧になってください。

この性自認・身体的性をふまえ、トランスジェンダーと性同一性障害それぞれについて説明していきます!

トランスジェンダーとは?

ステージに立つ人々

トランスジェンダーという言葉の由来は、自身の状態を病気としないためにトランスジェンダーの方々が展開してきた運動にあります。

なお、「トランスジェンダー=病気」という思い込みは残ってしまっていますが、2018年6月の段階でWHOはトランスジェンダーを「精神疾患」から除外すると宣言しています(参考:WHOの「国際疾病分類」が改訂され、性同一性障害が「精神疾患」から外れることになりました)。

トランスジェンダーに関してはいろいろな説がありますが、今回は大きく3種類に分ける説をご紹介します。

その3種類とは、トランスセクシュアルトランスヴェスタイト(クロスドレッサー)、そして狭義のトランスジェンダーです。

1. トランスセクシュアル(TS)

トランスセクシュアルという単語は、英語として2つの意味を持っています。

1つは、身体的性と性自認が一致しておらず、それらに対して違和感や嫌悪感を抱き、場合によっては外科的な手術を望む状態。そしてもう1つは、性別適合手術を受けた状態です。

これら2つの意味に共通する、身体的性と性自認が一致していないことに対して違和感や嫌悪感を抱いている状態をトランスセクシュアルと表現することがあります。

2. トランスヴェスタイト(TV)

トランスヴェスタイトはクロスドレッサーとも呼ばれます。「異性の服装をする」と説明されることが多いのですが、医学的には性自認と身体的性は一致していて(シスジェンダーで)、その性とは異なった服装を身にまとう状態です。

ただ、歴史的にトランスヴェスタイトはトランスジェンダーに含まれるとして扱われてきましたが、現在そのように扱われることはほとんどありません。なぜなら、かつては「異性装をする=自分の性となりたい性が異なる」と解釈されていたためにトランスヴェスタイトを広義のトランスジェンダーに含めて説明することが多かったのですが、現代では「どんな性として振る舞いたいか(性表現)」と性自認は異なる、との認識が広まってきたからです(参考:マツコの「コスプレと似てる」発言で考えた”女装”をめぐる根深い問題)。

3. (狭義の)トランスジェンダー(TG)

そして最後にトランスジェンダーです。トランスジェンダーの説明としてトランスジェンダーの説明が出てくるなんてややこしい状態ですが、狭い意味でのトランスジェンダーは、出生時に割り当てられた性別と性自認が異なる状態を指します。

自分は「男性」とされているが、「女性(もしくは次男性でも女性でもない性)」として生きたい……と考えている方などは、狭義のトランスジェンダーと言えるでしょう。また、性自認と身体的性が異なり、周囲から性自認とは別の性として見られるものの、外科的な手術までは求めない……といった状態もこちらに含まれるでしょう。

つまり、トランスジェンダーとは、

  • 狭義:社会から割り当てられた性別と性自認が異なる状態
  • 広義:狭い意味のトランスジェンダーにトランスセクシュアルとトランスヴェスタイトを合わせたもの(ただし現代ではトランスヴェスタイトをトランスジェンダーに含まないことが多い)

と言えます。

ちなみに、「LGBT」という単語を使う際に、LGB(レズビアンゲイバイセクシュアル)とT(トランスジェンダー)を同じくくりにしてよいのか、という議論があります。

その理由としては、今まで説明してきたように、トランスジェンダーは性自認についての話である一方、レズビアン・ゲイ・バイセクシュアルは、主として性的指向(どんな性を好きになるか)に関する言葉だからです。

言葉を使う際には、こういった議論がある、と知っておくことも大事ですね。

性同一性障害とは?

クエスチョンマークが書かれた木々

性同一性障害とは、医学用語です。GID(Gender Identity Disorder)ともいわれ、性自認と身体的性が一致しておらず、外科的手術による一致を望む状態を指します。先ほどのトランスセクシュアルと非常に近い意味の言葉ですね。つまり、広い意味のトランスジェンダーの中に、性同一性障害は包括されることになります。

しかし、「性同一性障害」という言葉を手放しで使うことには疑問が残ります。というのも、「性自認と身体的性が一致していないため、それを一致させたい」だけにもかかわらず、それを果たして「障害」と呼んでよいのでしょうか(もちろん、この話をするとそもそも障害って何を指すのだろう……となってしまうのですが)。

また、現行の制度においては、「障害」として診断されるからこそ「手術」ができる、という論理のジレンマも存在しています。(参考:厚生労働省「みんなのメンタルヘルス」

MtF・FtM・MtX・FtX……って何?

現在の日本においては、生まれたときに男性/女性どちらかの性別が割り当てられます。

この割り当てられた戸籍上の性が男性(Male)で、性自認が女性(Female)である方のことをMtF(Male to Femaleの略)と表現します。また、戸籍上の性が女性で、性自認が男性の方はFtM(Female to Male)と表現します。

「なるほどね……MaleとFemaleの頭文字をとったのか……じゃあ最初に言ってたFtX/MtXの「X」って?」

こう思われた方も多いと思います。実はFtXとMtXの「X」とは、Xジェンダーを意味します。

Xジェンダーとは、性自認が「男性」とも「女性」とも断言できないセクシュアリティのことで、Xジェンダーの中にも「男性でも女性でもない」「男性でも女性でもある」「日によって変わる」「男性と女性の間」など様々な性自認があります。

そして、戸籍上の性別が男性でXジェンダーの方をMtX、戸籍上の性別が女性でXジェンダーの方をFtXと表現するのです。

「だれでもトイレ」とトランスジェンダーの関係

シャボン玉を両手いっぱいに乗せた子供

「だれでもトイレ」については、よく議論が巻き起こります。

例えば、このようなもの。

「男性用トイレと女性用トイレがあるのにもかかわらず、だれでもトイレを使わせるなんてカミングアウトを強制している!」

こういった方は、「だれでもトイレ」を一部のLGBTしか使わない、という誤解を持っていらっしゃる方だと思います。実際、過去にはMEGAドン・キホーテ渋谷本店に「だれでもトイレ」とは別に「All Genderトイレ(LGBT用トイレ)」が設置されたことで物議を醸しました。(参考:「LGBT用トイレ」報道に波紋 ドンキ「誰でも利用できる」

「だれでもトイレ」は車いすを利用している方や、足腰の不自由な方、オストメイトの(癌や事故などにより消化管や尿管が損なわれ、排泄のため人工肛門や人工膀胱がある)方をはじめとした、「必要としている方」がいます。性別適合手術をした、排泄に不安を抱えていらっしゃる方もまた、その一人です。

そして、自身のことを男性か女性か悩むクエスチョニングの方や、身体的性と性自認が違うため、周囲を困らせたくないし「だれでもトイレ」を使いたいな、と思う方もいらっしゃいます。

使いたいと思う人がいて、使える状況がある。そのためにも、「だれでもトイレ」は存在してもよいのではないでしょうか。「だれでもトイレ」を必要とする人がいるにもかかわらず、「だれでもトイレ」があること自体が「差別だ」ということには、少し疑問が残りますね。

また、トランスジェンダーの方は「だれでもトイレ」しか使わないという誤解もあるようですが、もちろん、性自認にあわせて通常のトイレを使う人も、身体的性に合わせてトイレを使う人もいます!

「LGBTトイレ」?〜アメリカと日本それぞれ比較〜【ハウスビル2を考えてみた】

トランスジェンダーの有名人

トランスジェンダーをカミングアウトしている方は芸能界にたくさんいらっしゃいます。

1. はるな愛

はるな愛
引用:BARKS

芸人、鉄板焼き屋の経営者、ミスインターナショナルクイーンのチャンピオン……マルチな活躍を見せるタレント、はるな愛さん。最近では、ショーパブが突然休業したことが波紋を呼びました。(参考:はるな愛2億円店10日で閉店!夢のパブ襲った“異臭騒動”

はるな愛さんは、物心ついたときから自身の性に違和感があったと語っており、男性戸籍として生まれ性自認は女性というトランスジェンダー(MtF)です。多忙な現在でも、自身の経験をもとに、セクシュアルマイノリティを積極的に支援したり、意見を発信しています!(参考:時事ドットコム「18歳選挙権 私はこう思う」

2. 中村中

シンガーソングライターや舞台で活躍する役者として活動を続けている、中村中さん。

小学5年生の頃、同級生に自分が男性を好きであると告白し、20歳になってから母親に女性として生きたいことをカミングアウトした、とOUT IN JAPANのHPで述べています。

はじめてのカミングアウトは小学5年の時、同級生にでした。
女性として生きたいことまではまだ言えず、恋愛対象が男性であることを話しました。
最初は笑われました。
でもそれは、馬鹿にしていたわけではなくて、こちらがあまりに真剣で思わず笑ってしまったという感じでした。
もし馬鹿にされていたとしても、悩みを口に出せたことは当時の私には大きな一歩でした。

女性として生きたいと母親に相談出来たのは二十歳になってからでしたが、あの日、同級生にカミングアウト出来たことで少しずつ気持ちが楽になっていったことは確かです。

カミングアウトをすれば悩みが全て解決するわけではありません。
でも、誰かに悩みを打ち明けることで悩みは変化し、いずれは愛せるようになることを私は経験しました。

悩みのない人などいません。
あなたに、誰かの悩みを少し持ってあげる気持ちがあれば、あなたの悩みを誰かに打ち明けても少しも申し訳なくないのではないでしょうか。

OUT IN JAPAN

OUT IN JAPANには中村さん以外にも多くの方がカミングアウトについてのメッセージを発信しています。ぜひご覧ください!

ちなみに、中村さんが芸能界でカミングアウトしたのは、メジャーデビュー後の2006年。公式サイトにてトランスジェンダー(MtF)を告白しました。

3. 西原さつき

西原さつき

西原さつきさんはタレントや女優などマルチに活躍しており、「さつきぽん」の愛称で親しまれています。また、自身の経験を踏まえ、「女の子らしくなりたい」全ての人を対象とした会員制レッスンスクール「乙女塾」を運営しています。乙女塾ではボイス講座やメイク講座、撮影コースなど数多くの講座が準備されています。

4. サリー楓

モデルとして活躍しつつ、今年の3月までは慶應義塾大学大学院で建築とデザイン戦略を学んでいたサリー楓さん。現在はNIKKENを拠点として活躍しています。先述の乙女塾卒業生であり、ミス・インターナショナルクイーンジャパン2019にも出場しました。

5. SECRET GUYZ

日本初のFtMユニットとして一躍有名になったアイドルグループ、SECRET GUYZ。自分たちのことを「オニイ」と呼び、LGBTに関する正しい理解を広める活動をしていました。

メンバーは吉原シュート、諭吉、池田タイキの3名で、池田さんの慢性的な喉の不調により音楽活動の継続が難しいと判断したそうです。吉原シュートさんは2019年1月にソロライブを開催したり、諭吉さんも吉本坂46のオーディションファイナリストになったりと、現在も活躍を続けています。

6. GENKING

genkingの画像
引用:GENKING公式ブログ

タレント業だけでなく美容家やファッショニスタとして幅広く活躍するGENKINGさん。自身のスタイルブックやエッセイなども出版しており、彼女の生き方に多くの方が元気づけられています。

GENKINGさんは、2015年3月に放送された日本テレビ系番組「行列のできる法律相談所」の中で、ゲイであるとカミングアウトしましたが、2016年、化粧品ブランドSK-IIのキャンペーン動画にて、トランスジェンダー(MtF)であることを語っています。その翌年には、自身のInstagramに性同一性障害の診断書を投稿し、葛藤しつつも自身の性と真摯に向き合う姿にたくさんの応援の声が寄せられました。また、2017年5月に性別適合手術を受けていたことを自著で明らかにしています。

7. KABA.ちゃん

kabaちゃん画像
引用:KABA.ちゃん公式facebook ※画像左

2002年にMtFのトランスジェンダーであることを公表し、2016年には性別適合手術を受け戸籍上でも女性となったKABA.ちゃん(本名:椛島一華)。タレントとして数多くのテレビ番組に出演している一方で、振付師としても存在感を大きく示しているKABA.ちゃん。これまでにSMAPや安室奈美恵さん、HKT48など、たくさんの有名アーティストの振り付けを担ってきました。

現在では、「ダイバーシティな社会」、「Borderless」をテーマとしたヒールダンスパフォーマンスグループ「THAT’S WHY!!」をプロデュース。エンターテイメントを通して、多くの人が活躍できる社会の実現を目指しています。

8. IVAN

IVAN画像
引用:IVAN 公式Twitter

パリコレにも参加したことのあるIVANさん。モデルやアーティスト、タレントとして、様々な分野で活躍しています。2013年9月に日本テレビ「有吉反省会」において、トランスジェンダーであることをカミングアウトしました。

2018年3月にはフジテレビ「良かれと思って!」という番組の中で、数年前に性別適合手術を受けていた事を告白。自身のInstagramには、手術を受けた当時の様子を映した動画を投稿し、ひとりの女性として生きる一方で、オネエタレント、プロのメンズモデルとしてのイメージを守りたかったと胸の内を明かしました。

LGBTを公表している有名人まとめ 日本&海外
世界で活躍するトランスジェンダーモデルまとめ

おわりに

性同一性障害とトランスジェンダー、似ているようで実はかなり違う意味ですね。言葉は、複数の意味を持っていたり、誤用が広まってしまったり、意味が変化してしまったり、扱いが非常に難しいです。

しかし、その言葉に関係のある人々は、誤用に戸惑い、ときには傷つくこともあるかもしれません。身近な誰かを傷つけないためにも、正しく意味をわかっておく必要がありますね!

2018年10月21日にトランプ政権が打ち出した、性別の定義を「産まれた時の生物的かつ不変な性器の形状に寄るもの」と限定する方針は、今でも議論になっています。

でも、「トランスジェンダーを認めない」ということ自体、よく意味が分かりません。今アメリカでは140万人もの人々がトランスジェンダーとして生活しているのですから。また、このコラムで追ってきたように、トランスジェンダーというのはたいへん広い概念であり、現在把握されている以外にも多くの方がいらっしゃるのではないでしょうか。

今回のトランプ政権の方針は、そうした人々のアイデンティティを根本から否定することにつながってしまいます。しかし、すべての人が「自分らしく」生きられるように、私たちは今こそきちんとトランスジェンダーの概念について知っておきたいですね。

また、このコラムを読んで「もしかして自分はトランスジェンダーなのかも……?」と思ったり、性に関して以前から悩みを抱えていた方! トランスジェンダーや性同一性障害をはじめとする、自身のセクシュアリティに関することを相談できる場所をまとめましたので、ご確認ください。

LGBTの相談や診断はどこですればいいの?あなたの生活をもっと暮らしやすくしてくれる施設・団体

参考文献

検索

  • セクシャリティ診断ツール
  • 企業担当者の方向けLGBTフレンドリー企業マニュアル無料配布中
  • ジョブレインボーLGBT仕事博2020事前エントリー受付中
JobRainbow