ライフネット生命のLGBTとダイバーシティ&インクルージョンへの取り組み

ライター: JobRainbow編集部
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今年6月には札幌市で同性パートナーシップ制度が開始されるなど、同性婚に対する世の中の関心は日々高まっています。そんな中、いち早く同性パートナーが受取人になれる保険商品を採用してきたことで有名なライフネット生命。今回は人事部の関根さまと篠原さまにお話を伺いました。

関根さんと篠原さんの画像

ダイバーシティに対する基本的な考え方

ライフネット生命の従業員数は現在約150名※ですが、新卒の22歳から一番上は70歳まで、幅広い年齢層の人がいます。まず、年齢の軸でのダイバーシティがあり、60歳を過ぎた方が入社してくるということがあります。
※2017年7月現在

性別・ジェンダーについてはフリーになっていて、「男性だから・・・女性だから・・・」とただ単に性別で区別するのではなく、従業員一人ひとりに向き合うことを大切にしています。

ライフネット生命には「マニフェスト」という行動指針があり、その中で採用にあたって「学歴・国籍・性別」の差別をしないことが明記されています。マニフェストはゼロから生命保険を作る際に、創業した出口と岩瀬が「こういう保険会社を作りたい」という思いを言語化したものです。つまり創業期からダイバーシティを大事にしようという考え方が基本にあったことになります。

例えば、LGBTについての取り組みは、同性のパートナーも死亡保険金の受取人にできるというサービスの検討にあわせ、社内啓発のアクションも同時にはじまりました。他にも、フレックス制度はもともと育児をしている社員がいたことがきっかけで始まりましたが、誰でも利用できますし、育児休暇は男性社員も取得しています。特定のセグメントの人のだけのために、というよりは誰でも利用しやすい制度づくりを心がけています。

LGBTについての取り組みのきっかけ

同性パートナーを死亡保険金の受取人にできないか、ということについては数年前から検討を重ねていました。発案は社員で、「戸籍上の配偶者じゃないと受取人になれないのはどうにかならないものか」という意見が上がりました。実際に適用範囲を拡大するにあたって、どんなことが問題になるのか、どうすれば実現できるのか、時間をかけて慎重に検討しました。

採用ホームページの中で、この受取人の指定範囲拡大プロジェクトに関わった3人のインタビューを見ることができますので、ぜひご覧になってください。
採用ホームページ

このプロジェクトは、偶然にも2015年11月に渋谷区が同性パートナーシップ証明書の交付のタイミングと同時期のリリースとなり、大きな注目を集めるニュースになりました。
私たちはこれからの保険のあり方を考える中で、国内だけでなくグローバルな観点からも常に研究していて、欧米ではできることがなぜ日本では認められていないのか、あるべき形にしていこう、というところからこの施策は始まったとも言えます。息長く取り組みを続けていきたいと思っています。

レインボープライドでの取り組み

東京レインボープライド(以下、TRP)では、レインボーフォトプロジェクトを行いました。レインボーフォトプロジェクトは、参加者の方に写真に写ってもらい、1枚につき100円ずつ当社が自前で積み立てていって、そのお金でLGBTの児童書を買って、公立の図書館や学校に寄贈をする活動です。

LGBTイベントは東京だけでなく、名古屋、沖縄、福岡、横浜と、全国各地で参加しています。今年のTRPは特に参加者の方が多く、昨年の1.5倍もの方に写真に協力していただきました。イベント全体として、ご家族連れも多く、当事者の方だけでなくアライの方も増えている印象がありましたね。誰もが参加できるイベントになってきていることを感じました。

フォトブースを訪問してくださった参加者の中にはライフネット生命の保険について熱心に聞いてくださるお客様もいました。そういった対話を通じて、必要な取り組みだと再確認することができました。普段面と向かってお客様と接することが少ないので、こういったイベント参加は貴重でしたね。参加した翌日の朝礼でも、TRPについて共有しました。

他に印象的だったこととして、参加者の方と、子供たちに伝えることの大切さについて意見交換をしたときのことです。「自分が子供の時には誰も教えてくれなかった。子供のときから教育することが重要ですね」という声がありました。レインボーフォトプロジェクトを通じて、誰もが自分らしくいられる社会づくりに少しでも貢献できればと思います。

2017年の3月に「LGBT当事者の意識調査」として、いじめ問題や職場問題について宝塚大学の日高教授に委託したアンケート調査結果を発表しましたが、こちらも併せて考えていきたい課題です。
「LGBT当事者の意識調査」

社内でのLGBT関連の取り組み、理解について

もともと法的な家族をベースにした福利厚生が少ないので、特段の届け出をするという制度はありません。慶弔休暇などは同性パートナーでも当然受けられるようになっています。緊急連絡先も籍を入れているといないとにかかわらず、希望する人を記入していただければ良いという運用になっています。

また、ライフサポート休暇と言って、自分や家族が病気の時に年次有給休暇以外に年3日の特別有給休暇をとることができるのですが、これも親や夫、子供、パートナー、一緒に住んでいる人等、自分が大切にしている人を対象として使えるようになっています。

ライフネット生命には「制度より風土」という言葉があります。制度として特別なものやキャッチーなものがあるわけではありませんが、そこにいる人のために設計されていて、自然に利用できるようになっているのが特徴かと思います。

病気のように誰にでも起こりうる緊急事態の時にはお互い様ですし、旅行であってもお互い様。仕事はなるべくシェアをしながら、休む時には休んで、働く時には働いて、という環境づくりを意識してやっています。先ほどのマニフェストがよりどころになって、多様性を受け入れる土壌になっています。

ー社内のLGBT理解への進みはいかがですか?

社員の理解を促す仕組みとしては、2回に渡って全社員研修を行っています。TRPのようなイベントにはメンバーを変えて参加し、当事者の方の声を直接伺うようにしています。研修やイベントに参加したからと言って社内の全員が完全に理解できるとは考えていません。当初はLGBTという言葉を知らない人もいましたので、丁寧に説明をしてきました。しかし、ライフネット生命には、自分と違う人を受容しないという考えがそもそもありません。みんな違っていいのだ、という考えがベースにあります。

ただ、LGBT当事者の方に対するトイレ等のオフィス設備面ではまだまだ課題はありますので、今後対応していきたいとは思っています。基本的には本人と相談しながら使いやすいようにしていきたいと考えています。セクシュアリティについての公表は、もちろん個人の自由。人事としてしっかりと対応しますので、安心して相談してもらえればと思っています。

採用におけるLGBTへの考え方

特定の方々に対して何かを発信するということではなく、その方のありのままを私たちが受け止めて、私たちも当社のありのままを伝えて、「よければ一緒に働きましょう」という伝え方をしています。ですからLGBTの方へ向けた特別なメッセージはありません。ベースは「ライフネット生命で何を実現したいか」に尽きます。その中で「自分はここでカミングアウトをしたいな」と思う方がいらっしゃれば、採用側はそれを受け止めます。

もちろん、エントリーシートの中で性別欄にチェックがなくても特に理由を伺ったりしませんし、カミングアウトによって選考に影響があるということもありません。フェアに判断しています。

採用説明会では、当社の施策の一例として同性パートナーも死亡保険金の受取人になれる制度の話をするのですが、説明会後に「自分も当事者なので共感しました」というようなお話を受ける機会は去年に比べても圧倒的に多くなっています。採用の場でセクシュアリティについて語り合える土壌ができつつあって、学生さんたちの意識が変わってきていることを肌で感じますね。

当事者の方以外でも、大学でLGBTについて学んだことをきっかけにライフネット生命を知って選考を受けにきてくださる方もいます。私たちが当然取り組むべきと考える課題への思いがきちんと伝わり、それに心を動かされて、ライフネット生命のファンになってくださっている、そんな「良い循環」が生まれていることは嬉しく思います。

東京レインボープライドにてライフネット生命とJobRainbowスタッフの写真
東京レインボープライドにてライフネット生命とJobRainbowスタッフの写真

ーライフネット生命が求める人物像についてお聞かせください

ライフネット生命では、30歳未満の方はすべて定期育成採用(いわゆる新卒枠)としてご応募いただくことが可能です。そこでは「応援される人」を求めています。説明をする時には、いつも自分の周りの人をイメージしてもらっているのですが、何かと周りに助けてもらえる人って、その人自身が普段から人を助けているんですよね。

社長の岩瀬は、give & takeではなく、give & give & give & give & giveであれ、と言っています。普段から見返りを求めずに相手に与えることが、本物の信頼関係につながると考えているのです。それを「応援される人」と呼んでいます。社内には、人が困っていたら助ける、というキャラクターの人ばかりです。ですから、そういった人たちにライフネット生命という船を作る仲間となってもらいたいですね。

ダイバーシティ担当としての思い

(篠原さん)
ライフネット生命の社員数は150名と決して多くはないですが、だからこそ人事の政策もフェイスtoフェイス、一人ひとりと相対する中で、お互いにいいやり方を考えられる規模感です。これまでも様々な課題を、コミュニケーションを通じて明確にして、解決してきたと思っています。

やはり、「当事者の声を丁寧に聞く」ということが大切だと思います。困っていることを真摯に受けとめる。それを反映していくのが、企業に求められる姿勢でしょう。
そのためには、「上司と部下」「人事部と社員」間で信頼関係を作り、話をしたくなる関係を作ることが肝ではないでしょうか。

(関根さん)
今後の課題としては、みんな一緒でという軸は持ちつつ、個々人で年齢やバックグラウンド、思考は当然違うので、それを柔軟に受け入れられる「制度」や「風土」をどこまで実現できるのかな、ということを考えています。「みんながみんなわがまま言ったら(立ち行かない)」というようなことも、本当にわがままなのか、個々人にとって本当に必要なことなのか、という線引きは結構難しいですよね。
そこを一本の線で分けて制度に落とし込むということを、どこまで人事ができるのか。みんなのパフォーマンスをあげていい会社を作っていくために、一つの挑戦だと思っています。

「普通の人」はいなくて、150人いれば150人の個性があって事情がある。例えば働き方改革についても、いろんな人がいる方が柔軟に対応できると思うので、いろんな人の個性を大事にすることが本来のダイバーシティチームで実現していくようなことかなと考えています。

就活生へのメッセージ

(篠原さん)
ありのままをどう出すか、が大切だと思います。就活が「仮面舞踏会」になっていることがあると思います。ESや面接の場面で、企業も学生も自分をよく見せるために仮面をかぶっていますよね。入ってから仮面を脱いでびっくり、ということも(笑)。それなら、最初からありのままの姿で望んで欲しい。ありのままのあなたにこそ、「ぜひ入社して欲しい!」という会社がきっとあります。

(関根さん)
働くことは人生の全てではありません。けれど平日の1日で考えるとそれなりに長くいる場所ですから、そこの居心地がよかったり、モチベーションを高く保てたり、携わる仕事に意義があると思えるかどうかというのは、人生の幸福度を考えた時にそれなりのウェイトを占めていると思います。

私たちは社員一人ひとりにとってより良い場所でありたいと考え、ミスマッチがないよう、人事としてお手伝いをしていきたいという気持ちで仕事をしています。いろんな側面からライフネット生命に興味を持ってくださる方はいると思いますが、当社で働きたいと思われる方はぜひ、門戸を叩いてくだされば嬉しいです。

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