日本最大のLGBT合同採用イベント「Real JobRainbow 2019」レポート
2019年3月30日、渋谷ヒカリエで合同就職説明会Real JobRainbow 2019が開催された。
約800名が参加し、LGBTフレンドリーな企業だけが集った合同説明会としては史上最大規模となった当イベント。しかしなかには、止むに止まれぬ事情で参加することが叶わなかった方もいるだろう。
そんな方のために、Real JobRainbow 2019のレポートをお送りする。
「行きたかったけど行けなかった……来年あれば参加したい!」
「どういうことをやっているのか知った上で来年以降の参加を検討したい」
そんな方はぜひ最後までチェックしてほしい。
1. 全体像
「合同説明会」と聞くと、企業のブースで社員と会話をして、移動して、別の企業のブースで話をして、また移動して……をひたすら繰り返すイメージがある方も多い。
しかしReal JobRainbow 2019では、もちろんそういったこともできたのだが、説明会以外にも様々なコンテンツがあった。
- 企業ブース
- 特設メイクアップブース
- 情報交換テーブル
- ステージ会場
- 登録相談ブース
などのブースがあり、来場者は自分の目的や欲しい情報に合わせて、自由に回る場所を決めることができた。
時間の区切りによる強制移動もなく、途中入退場が自由だったこともありがたい。
来場者が腕に巻いているのは、紙製のバンド。
入口で配布されるこのバンドは色ごとに「全身撮影NG」「顔撮影NG」など写真撮影の範囲が区別されており、来場者はそれぞれの意味に合ったバンドを巻くことでプライバシーを守ることができた。このバンドの情報をもとに、スタッフはメディアの撮影した写真や映像に目を通し、アウティング(予期せぬ形で自分のセクシュアリティが明らかになってしまうこと)の恐れがないかを確認していた。
また、フロアを貸し切り状態にしながらも、敢えて奥まったヒカリエ9FのBホールを会場とすることで、さらにプライバシーを守ることに配慮した。
2. 企業ブースエリア
やはり、イベント会場の中で最も人気だったエリアは企業ブースエリアだ。
IT・テクノロジー、証券・投資銀行、コンサルタント、飲食、運輸、ブライダル、教育などあらゆる業界の企業が出展していたこのブースエリア。ソフトバンクや丸井グループからセールスフォースといった名だたる企業の採用担当者と、時間を気にすることなく話せるとあって、イベント開始直後から大盛況だった。
よくある合同説明会と違い壁で企業ごとに仕切られていなかったため、カジュアルに自由なタイミングで企業関係者と話すことができたことも人気のポイントだった。
強いていうなら、大盛況すぎて人が多く動きづらい場面があったので、来年以降もし開催される場合はさらに広い会場となることを切に願う。
3. 特設メイクアップブース
こちらでは、就活中も自分らしくいられるメイクをプロが一人一人に指導。
就活だけでなく、日頃のメイクにも活かせるテクニックやスキンケアのコツなども伝授。プロがきめ細かく実演してくれたため、時間こそかかってしまったものの、来訪者の満足度は非常に高かったようだ。事前予約が不要だったことも人気のポイント。
4. 情報交換テーブル
こちらも通常の合同説明会では見ることのない、来場者同士が情報を共有できるテーブル。
着席した来場者は、「企業訪問で”LGBTフレンドリー”を感じる瞬間ってどんなとき?」など就職活動で気になることをはじめ、「カミングアウト、いつするのが無難?」といった悩みも共有した。来場者が共通して「自分らしく働きたい」と願う「LGBT(およびアライ)の求職者」だったからこそ実現できた企画だろう。
来場者の緊張をほぐすため、そして「発言したいけどできなかった……」と後悔する方がいないよう、JobRainbowのスタッフが常駐していたのだが、いなくてもよかったのではないかと思えるほど和やかなムードで交流が行われていた。
場所を増やして欲しかった、という声も多かったため、参加者の満足度は非常に高かったことがうかがえる。
5. ステージ会場
ステージ会場では、
- プロの人事が語る「自分らしさの伝え方講座」
- ゲストによる「Special Talk」
- 11社による企業紹介プレゼン
など、時間ごとに異なったプログラムが進んでいた。
「自分らしさの伝え方講座」では、グローヴエンターテイメント株式会社をはじめ多くの企業で人事顧問をしている佐藤彰吾氏が、「過去–現在–未来を貫く自身の行動の軸」と「企業の求めている人材像」をフィットしているように見せる方法をプロの人事の視点からアドバイス。周りの来場者のほとんどが、一言一句を聞き漏らすまいとノートにペンを走らせていた。
「Special Talk」にはFruit in Suitsの代表を務めるLoren氏が登場。現役就活生と対談しながら、会場の参加者にも質問を募っていた。「自身の過去を振り返ることで、自分のやりたいことが見えてくる。」これは、先ほどの佐藤氏の話にも通じるところがあるのではないか。
企業紹介プレゼンに参加したのは、株式会社物語コーポレーション、グローヴエンターテイメント株式会社、CEN DIVERSITY HOTEL&CAFÉ、日の丸交通株式会社、株式会社賢者屋、株式会社丸井グループ、株式会社セールスフォース・ドットコム、アバナード株式会社、マッキンゼー・アンド・カンパニー・インコーポレイテッド・ジャパン、ソフトバンク株式会社、PwC Japan グループ(順不同)の計11社。企業ブースでは語りつくせなかった「絶対に言っておきたいこと」を来場者に熱く語る姿は、見た人全員の心に残った。
おわりに
LGBTフレンドリーな企業は、「LGBTだけに配慮している」わけではなく、「全ての人が働きやすい環境」を実現する一環としてLGBTの働きやすさを探求している。いずれ全ての企業がLGBTフレンドリーであることが当たり前になり、「LGBTフレンドリー」の概念自体がなくなることこそが、多様性ある世界の実現と言えるだろう。
しかし、現実としては、LGBTフレンドリーな企業とそうでない企業がある。そんな中でJobRainbowは、こうしたイベントや企業に向けたLGBT研修、LGBTフレンドリーな企業紹介を通じて、全ての人が「自分らしく」はたらける社会を創り上げていく。
ちなみに、イベント後のアンケートによると、「次回も開催してほしい」と答えた方は94.5%。
2020年には、さらに規模を大きくしてReal JobRainbowを開催する予定だ。今回のイベントで改めて興味を抱いた方や、興味はあったけど参加できなかった!といった方も、ぜひ参加してほしい。