高齢者、LGBT、誰もが「自分らしさ」を知って他者を受け入れる。介護から地域に貢献する埼玉ライフサービス 黒川社長の想い
埼玉ライフサービス株式会社は、埼玉県内に5箇所の拠点を持つ地域密着型の介護会社で、正社員やパート社員も含めた全社員にeラーニングを通してLGBT研修を行っています。社員数180名程度の会社規模でありながら、訪問介護/看護・訪問入浴介護・通所介護・障害福祉サービスなど様々なサービスを提供しています。
さらに新規事業として、介護保険が適用されない方へのサービスにも取り組むなど、地域の皆様が抱えるお困りごとを解決するための取り組みを続けています。
“らしさ”を大切にするのが当たり前だという介護の世界から、地域に貢献するべく事業を展開する背景には、どのような想いがあるのでしょうか。
代表取締役の黒川 芳道(くろかわ・よしみち)さんに、伺いました。
ご利用者と介護職がお互いを受容し、並走することが介護の基本
ーダイバーシティを大切にしている理由を教えてください。
黒川さん(以下敬称略):介護のサービスを行うとき、上から目線でご利用者さんにケアをしてあげるのではなく、ご利用者さんと同じ目線で並走する気持ちが大切です。介護職もご利用者さんのことを受け入れて、ご利用者さんにも私たちを受け入れていただくことが重要なんです。
LGBTの中にも生きづらさを抱えている方がいると思うのですが、高齢者の中にも、今までできたことができなくなったなど、ハンデや生きづらさを感じている方は多くいます。お互いを受け入れて寄り添うことで、その生きづらさに敏感に気が付けるようにしたいんですよね。その根本となるのが他者を受容すること。LGBTを含めて世の中に多種多様な人がいることを実感することだと思っています。
ー社員の方全員がLGBT研修のeラーニングを受講されたのだとか。
黒川:正社員50人とパート社員130人を合わせた全員に受講してもらいましたね。全員に対してこのような形で研修をしたのは初めての試みだったのですが、埼玉ライフサービスで働く全ての社員の共通認識にしたかったんです。
eラーニングを受けた社員からは「知らないことだらけだった」とか、「不適切な発言をしていたかもしれない」という感想をいくつももらいました。何よりみんな、LGBTの人数に驚いていましたね、想像よりも多かったみたいで。
黒川:eラーニングを受けてからは、少しずつですが社内での言動が変わってきたように感じています。例えば、今までだったら会議で「男性だから」「女性だから」と話していたのが、性別のくくりで話すことがなくなってきたり。LGBTについて知識を得たことで、日々の生活から、少しずつ世の中の見え方が変わってくるのではないでしょうか。
マニュアル通りに行うことが正解とは限らない
ー埼玉ライフサービスさんの理念やビジョンで“らしさ”という言葉をたくさん使われていますね。
黒川:介護では、ご利用者さんらしい生活を送っていただくことが基本なんです。その人らしく生きてこられた「そのまま」を生きていただきたいんです。なので、ご利用者さんが自分でできることに私たちが手出しをすることはありません。
これは社員についても同様です。仕事に来るたびに鎧を被って戦闘モードになるのって、違うと思うんです。礼儀やマナー、思いやりを持つことは必要ですが、自分らしくリラックスしていただきたいんですよね。
黒川:自分らしさ、ってすごく抽象的な言葉じゃないですか。私たちの会社でも、自分らしさって何なんだろうって悩んでいる社員は多いのですが、まずはそうやって考えることが大事だと思います。
私たちの訪問介護の世界は、マニュアルはあるものの、それ通りにやることが正解なわけではありません。その日のご利用者さんの体調や、天気などによって、その場でやり方を変えることも多々あります。自分らしさを知っている人は自律している人とも言えますが、社員が自律していないと、目の前のご利用者さんの日々の変化に対応できず、どこかで破綻してしまいます。
自分らしさを感じて、自分のことを認めることで、他者を認めて、受け入れられる。それでこそ、日々のご利用者さんの変化に柔軟に対応できる余裕が生まれるのではないでしょうか。
役職を無くして社長も「さん」付けで呼ぶ
ー黒川さんが代表になった経緯を教えてください。
黒川:もともとうちの会社のグループ企業で役員をしていたのですが、ある時当社(埼玉ライフサービス)の経営が悪化してしまったんです。私にとって埼玉が地元だということもあって、もしうちが無くなると、地域の皆さんにも働いている社員にも悪影響を及ぼしてしまうなと思って、私が社長として入ることになったんです。
当時は介護のことは、本当に何も知らなくて、ここではじめて介護の世界に触れましたね。
黒川:それまで当社では、会社の財政状況は一部の役員にしか知らされていなかったようでした。当時働いていた社員も、財政の悪化をなんとなく感じてはいても、具体的な危機感はなかったと思います。
ですが、そのままだといつか会社が潰れてしまうと思ったので、私が社長になってからは毎月の各部門の収支や会社全体の収支をパート社員も含めて全員に見えるようにしました。ノルマなどは当然無いのですが、今どのくらい利益が出ていて、その分どこにお金を使えるのか、などとそれぞれがお金の使い道を考えられるようにしました。
黒川:あとは、役職もなくしました。役職関係なく「さん」付けをするようにしていて、私のことも「黒川さん」と呼んでもらっています。ピラミッドのように指示や命令が上の階層から下に降りていくのではなく、自分たちのチーム内で話し合って決められるような「自律分散型」の組織にしたいと思っているんです。
私からあれをやりなさい、これをやりなさい、と命令するのではなく、私からは情報を提供して、それぞれの現場で情報の取捨選択をして、自分たちで判断できるようにしたいんですよね。
黒川:そんなことをしながら4年、ようやく経営を立て直せました。介護業界で働く方は、自分たちのことを「社員」ではなく「職員」と呼びます。「介護職に就いている」という意識が強く、会社に対する帰属意識があまりない方もいます。せっかくご縁があってうちに来ていただいたからには、会社も社員もお互いに幸せになりたいと思っていたんです。今ではみんなの意識も変わってきて、会社についてもそれぞれが考えるようになって。その変化が嬉しいですね。
「地域社会への貢献」が第一の存在意義
ー新規事業の計画もたくさんあるのだとか。
黒川:私たちの存在意義は「地域への貢献」に尽きると思っています。今行っている事業は高齢者の方や障がい者の方向けのサービスがメインですが、他にも地域の課題っていっぱいあって。
例えば、児童虐待の原因の一つとも言われている産後うつを抱えている方に対するサポートができないか、だったり。ただ会社を大きくするのではなく、地域で生きづらさを抱えている人のためになることをやりたいんです。
黒川:具体的に始めたいことがいくつかあって、その1つが「まごころサポート」という有償ボランティアのようなフランチャイズ事業のサービスです。
今私たちが行なっている訪問介護やデイサービスなどの事業は、介護保険が適用される方向けのサービスなのですが、介護保険が適用されない方でも日常で困っていることや不便なことって実はたくさんあるんですよね。そういった方々を定期的に訪問して、何か物を注文してあげたり、掃除のお手伝いをしたりするというものです。このサービスを通して、もっと地域の皆様の生活に入り込んでいきたいです。
黒川:他にも挑戦したいことは色々あるんです。いつかチョコレート屋さんも始めたいんです。久遠チョコレートというチョコレート屋さんがあって、見た目もおしゃれで美味しいチョコレートなのですが、そこで働いている人は障がい者の方やママさんなんです。これも障がい者の方が自律できるような地域貢献になると思っています。
黒川:介護ということにこだわってはなくて、地域全体のケアや課題解決ができるんだったらどんなことにでも挑戦したいです。私たちの会社規模で、訪問介護/看護・訪問入浴介護・通所介護・居宅事務所、訪問理美容、障害福祉サービスなどたくさんの営業品目があるのは実は珍しいんです。お伝えしたとおり、介護サービス以外でもやりたいことがたくさんあります。なので、「これをやりたい!」と手をあげていただけたら、入社時期や年齢などに関係なく、挑戦していただける環境です。指示されたことをやるのではなくて自分がやりたいことができるのは、私たちならではだと思いますね。
同じ方向を向いて進める仲間とともに、「人」に対して意義のあるお仕事をして、地域社会にとって必要な存在であり続けたいですね。
おわりに
介護の考え方の根本にあるのは、自分自身を受け入れ、他者を受け入れるということ。その先の「地域社会への貢献」を常に目指している黒川さん。埼玉ライフサービスの目指す壮大なビジョンの一端を知っていただけたのではないでしょうか。
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