同性パートナーの扶養と確定申告で知っておきたい税金と社会保険の実情

毎年、年末調整や確定申告の時期になると、同性パートナーと生活しているカップルから「パートナーを扶養に入れられるのか」という疑問の声が上がります。結論からお伝えすると、所得税の配偶者控除は、現在のところ同性パートナーには適用されません。
国税庁の税務大学校論叢では、所得税法上の配偶者について「民法の規定に従って解するのが相当であり、民法は婚姻の届出をすることによって婚姻の効力が生じるとしている」ため、婚姻届を出した者のみが配偶者控除の対象になると整理されています(引用:国税庁「所得税法上の『配偶者』の範囲」)。つまり、事実婚の異性パートナー、いわゆる内縁関係にある人であっても配偶者控除の対象にはならず、同性パートナーも同じ扱いになります。配偶者控除の具体的な所得要件などは国税庁のタックスアンサーにまとめられています(引用:国税庁「No.1191 配偶者控除」)。
この点は、日本で同性婚が法律上認められていない以上、婚姻届を出すという選択肢自体が存在しないため、同性カップルにとっては構造的な問題だと言えます。まずはこの前提を正しく知っておくことが、これから紹介する他の選択肢を検討するうえでも大切です。
扶養控除という別の道と、養子縁組という実務上の工夫

配偶者控除とは別に「扶養控除」という制度もありますが、こちらも原則として民法上の親族関係にある人が対象です。婚姻関係にない同性パートナーは、そのままでは親族に該当しないため、扶養控除の対象にもなりません。
ただし、実務上は成年年齢に達した者同士でも養子縁組を結ぶことで、法律上の親族関係を成立させるという方法が使われることがあります。養子縁組によって法律上の親子関係が生じれば、生計を一にしていることや、年間の合計所得金額が一定額以下であることなど、扶養控除の要件を満たす限りにおいて、パートナーを扶養親族として控除を受けられる可能性があります(引用:税理士法人ディレクション「内縁関係や養子縁組などの場合の扶養の取扱い」)。
もちろん、養子縁組は税制上の扶養だけを目的にした手続きではなく、戸籍上の親子関係という重い法的効果を伴うものです。将来の相続や、パートナーとの関係の変化があった場合の扱いなど、税金以外の面にも影響が及ぶため、安易に選ぶのではなく、税理士や弁護士に相談したうえで判断することをおすすめします。
健康保険の被扶養者になれるかどうか
税金と並んでよく質問されるのが、健康保険の被扶養者になれるかという点です。協会けんぽや多くの健康保険組合では、被扶養者の範囲は原則として民法上の配偶者や三親等内の親族などに限られており、婚姻関係にない同性パートナーは対象外とされるのが一般的です。
一方で、近年は企業ごとの福利厚生として、同性パートナーがいる社員に対して、法律婚の配偶者と同等の手当や金銭的サポートを独自に用意する動きも出てきています。例えば、同性パートナーが健康保険組合の扶養条件と同等の要件を満たす場合に、国民健康保険や国民年金の保険料相当額を会社が負担するという制度を導入した企業の例も報じられています(引用:Robert Walters「同性パートナーの国民健康保険や国民年金費用相当額をサポートする福利厚生を開始」)。
こうした制度があるかどうかは会社によって大きく異なるため、就職や転職を考える際には、福利厚生の内容を具体的に確認しておくとよいでしょう。
万が一のときの相続税にも重い負担がある
税金の話でもう一つ知っておきたいのが、パートナーに万が一のことがあったときの相続税です。同性パートナーは法律上の配偶者ではないため、遺言を残して財産を譲る場合でも、配偶者に認められている税制上の優遇はほとんど受けられません。
相続税には、配偶者が財産を取得した場合に1億6千万円まで、あるいは法定相続分までは相続税がかからないという大きな控除がありますが、これは法律上の配偶者に限られた制度です。同性パートナーがこの控除を使うことはできません。さらに、遺言によって財産を受け取る人が、亡くなった方の一親等の血族および配偶者以外である場合には、相続税額が2割加算されるという仕組みもあり、法律上の家族ではない同性パートナーはこの2割加算の対象にもなります(引用:国税庁「No.4157 相続税額の2割加算」)。
つまり、同性パートナーは遺言を用意していても、法律上の配偶者と比べて相続税の負担が重くなりやすい立場に置かれています。将来のことも見据えて資産を整理しておきたい場合は、税理士や司法書士に早めに相談し、遺言や生命保険など、今の制度の中で活用できる選択肢を確認しておくことをおすすめします。
2024年の最高裁判決が変えた「事実婚」の扱い

ここまでは厳しい現実を中心にお伝えしてきましたが、状況は少しずつ動いています。大きな転機になったのが、2024年3月26日の最高裁判決です。20年以上同性のパートナーと生活を共にしてきた方が、パートナーを殺害された事件をめぐり、犯罪被害者等給付金の遺族給付金の支給を求めた裁判で、最高裁は同性パートナーについても「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」に該当し得ると判断しました。犯罪被害者を保護する必要性は、被害者と異性であるか同性であるかによって変わるものではない、という考え方に基づく判断です(引用:日本弁護士連合会「犯罪被害者給付金不支給裁定取消事件最高裁判決に関する会長談話」)。
これは、同性パートナーが法律上の「事実婚」と同様に扱われ得ることを認めた初めての最高裁判決として、大きな意味を持ちます。
政府が動かした24法令、そして33法令へ

この最高裁判決を受けて、政府は2025年1月、「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」といった文言を含む法律や政令のうち、24の法令について同性パートナーも対象になり得ると発表しました(引用:内閣官房「法律及び政令における『事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者』と同一又は類似の文言を含む規定について」)。そして2025年9月30日には、災害弔慰金支給法や配偶者暴力防止法、借地借家法などを含む9つの法令が新たに追加され、対象は合計33法令に拡大しています(引用:時事通信「同性パートナー、9法令で対象に 政府」)。
これだけを聞くと大きく前進しているように感じられますが、注意したいのは、この33法令の中に所得税法や健康保険法、厚生年金保険法、雇用保険法といった、税金や社会保険に関する法律が含まれていない点です。LGBT法連合会も、社会保障や税制の分野が置き去りにされたままであることに繰り返し問題提起を行っています(引用:LGBT法連合会「声明」)。つまり、犯罪被害や賃貸借契約といった一部の場面では「事実婚」に近い扱いが認められ始めている一方で、日々の家計に直結する税金や社会保険の分野は、まだこれからの検討課題として残されているというのが、2026年現在の実情です。
転職先を選ぶときに確認しておきたいポイント
税金や社会保険の制度そのものは国が決めるものですが、家族手当や慶弔休暇、社宅の利用資格といった会社独自の福利厚生は、企業ごとの就業規則によって決まります。ここは、転職や就職活動の段階で確認できる部分でもあります。
就業規則の中で「配偶者」がどう定義されているかは、会社によって差があります。法律上の配偶者に限定している会社もあれば、独自にパートナーシップ制度を設け、自治体のパートナーシップ証明書や、会社所定の宣誓書があれば同性パートナーも配偶者と同様に扱うとしている会社も増えてきています。求人票だけでは分からないことが多いので、面接や内定後の条件確認の場で、家族手当や慶弔休暇、社宅などの制度に同性パートナーが含まれるかどうかを、率直に尋ねてみてよいでしょう。
こうした制度の有無や運用の実態は、実際にそこで働く当事者社員の声を聞かないと分かりにくい部分でもあります。転職エージェントや、当事者コミュニティのネットワークを通じて情報を集めることも、有効な手段の一つです。
今できる備えと、確定申告に向けた相談先

制度が変わっていく過渡期にある今、個人として何ができるでしょうか。まず、確定申告や年末調整の際には、現時点では配偶者控除も扶養控除も原則として使えないという前提で、それぞれが個別に申告を行う必要があります。無理に控除を適用しようとすると、後から追徴課税などのトラブルにつながりかねないため、正確な情報にもとづいて手続きを行うことが大切です。
養子縁組など税制上の工夫を検討する場合や、勤務先の福利厚生制度についてパートナーの扶養に関する相談をしたい場合は、税理士や社会保険労務士など、同性カップルの相談実績がある専門家に相談することをおすすめします。自治体によっては、パートナーシップ制度の利用者向けに関連する相談窓口を用意している場合もあるので、お住まいの自治体の制度もあわせて確認してみてください。
制度の対象が少しずつ広がっている今だからこそ、最新の情報を追いかけながら、自分たちの状況に合った選択肢を探していくことが大切です。JobRainbowでは、性的マイノリティであることを理由に働きづらさを感じることのない社会を目指し、就職や転職の支援を行っています。同性パートナーがいる方が、福利厚生の面でも安心して働ける企業を探す際には、JobRainbowの求人サービスもあわせて活用してみてください。
参考
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