

ヴォーギングとは?流行中のダンスジャンルを徹底解説!【パリ、夜は眠らない】

ヴォーギングというダンスジャンルを聞いたことはあっても、言葉で説明できる人は少ないのではないでしょうか。マドンナの「VOGUE」のミュージックビデオやYouTubeのダンス動画などを見たことがあれば、イメージがつきやすいかも知れません。今回の記事ではそんなヴォーギングを徹底解説していきます。
ヴォーギングとは?Vogue誌との関係は?
ヴォーギングはヴォーグ、ヴォーグダンスなどとも呼ばれることがあります。有名ファッション誌「VOGUE」が名前の由来です。1960年代頃から現在に至るまで様々な進化を遂げ、現在では3つの大きなジャンルがあり、
エジプトの神話のような優美さがある「Old Way (オールドウェイ)」、手首のねじれなど幾何学的な動きが特徴の「New Way (ニューウェイ)」、モダンなダンス技術と女性らしさを誇張した動きを兼ね備える「Vogue Fem (ヴォーグフェム)」に分けられます。
何れにせよ、煌びやかなポーズを連続してきめていくダンススタイルは他のダンスジャンルには見られないものです。このファッションモデルのような動きが取り入れられた背景には、ボール・カルチャー(ball culture)と呼ばれる文化があります。
ボール・カルチャーとは?
ヴォーギングは1960年代のボール・カルチャーが発祥と言われています。ボール・カルチャーとは、アフリカ系とラテン系アメリカ人のLGBTコミュニティの中で定期的に開催された「ボール(ball)」というパーティーイベントからなる文化です。有名なものとしてはニューヨークのハーレムなどのボールが挙げられます。
ボールは簡単に言えばファッション対決パーティーのようなもので、観客と審査員が囲むランウェイを自慢の衣装を着て踊りながら歩き、その場の盛り上がり具合を団体ごとに競うのが主な内容です。
そして、徐々にこのファッションを「見せる」為のウォークが「魅せる」為のダンスウォークになったことから、ヴォーギングが生まれました。
参加者は「House (ハウス)」と呼ばれる派閥に所属し、ハウスの先輩からテクニックを伝授してもらいます。その中でも「House of Xtravaganza (ハウス・オブ・エクストラヴァガンザ)」や「House of Ninja(ハウス・オブ・ニンジャ)」などが有名なハウスとしてボール・カルチャーの中ではよく知られています。
ボールに参加する者の多くはLGBTであるため、勘当などの経験者が多く、ハウスは第二の家族として機能があったそうです。ボールカルチャーはLGBTの人々を受け入れるコミュニティそのものでもあったと言えます。
マドンナの曲「Vogue」との関係
ヴォーギングと聞いて、マドンナの曲「Vogue」を思い浮かべる方もいると思います。曲名も「Vogue」で、ミュージックビデオもヴォーギングを中心にダンスをしているので、そもそもヴォーギングはマドンナが始めたものだと思っている方も多いようです。
しかし、前述の通りヴォーギングは1960年代にLGBTコミュニティで生まれたもので、あくまでも1990年に発売されたマドンナのこの曲はヴォーギングがさらにメジャーな文化となるきっかけになったものと言えます。
現在では様々なアーティストのダンスにヴォーギングの要素が見られるようになりました。日本では東京ゲゲゲイなどがヴォーギングの動きを取り入れていることで知られています。これからももっとヴォーギングが世に広まっていくかもしれませんね。
ヴォーギングとボールを題材にした映画「パリ、夜は眠らない」
ヴォーギングやボールのみならず、LGBTカルチャーを題材とした映画の中でも名作と言える「パリ、夜は眠らない (Paris Is Burning)」は是非見ておきたいドキュメンタリー作品の1つです。
【あらすじ】
1980年代、エイズ問題もありLGBTコミュニティにはとても生きにくい時代。特にニューヨークのハーレム地区はアフリカ系とラテン系のLGBTコミュニティがあり、人種とLGBTのダブルマイノリティである彼らは苦労の多い生活を強いられていました。ボールはそんな彼らの生きがいとなっていました。ボールで勝利すること、ファッションアイコンになること、ヴォーギングで有名になることが彼らの一番の目標です。それは有色人種であり、LGBTである彼らが得ることのできる唯一の成功でした。
彼らの人生とボールへの情熱を切り取ったこのドキュメンタリーは世界的にも高く評価されています。LGBTカルチャーについて知りたい方は是非、見てみてください。
おわりに
今ではポップカルチャーにもヴォーギングの影響がみられるようになり、メインストリームの文化になりつつあります。LGBTに限らず楽しまれているダンススタイルですが、ヴォーギングはアメリカのLGBTの歴史を受け継ぐカルチャーであることを知っておくことは重要だといえるのではないでしょうか。
参考文献
Harlem’s Drag Ball History, Harlem World Magazine, August 7th 2017
A short history of voguing – an art, a sport, a way of life, The Spectator, July 15th 2017.
Paris Is Burning (1990) by Jennie Livingston</a></span>

