自分らしく働くってどういうこと?【LGBT就活・転職ガイド 1-1】

ライター: JobRainbow編集部
この記事のアイキャッチ画像

自分らしく働く社会に近づいている

LGBTを取り巻く社会の環境は、着実に変わりつつあります。また、働き方を取り巻く社会全体の環境も大きな変革期を迎えています。少子高齢化に伴い、労働力はどんどん不足する中、いわゆる求職者の数を求人数が大きく上回る「売り手市場」の状態が就活でも転職でも続いています。結果として、女性や外国人、障がい者、そしてLGBTなど多様な人材を積極的に企業は活用しようと動いており、同時に、私服勤務やリモートワーク、フレックスタイムなどを導入することで生産性を上げ、柔軟な働き方を認めつつあります。

今までは、3月に就活サイトがオープン、真っ黒なスーツに黒髪の就活生が直筆のESを持って合同説明会に一斉に参加する、という流れが一般的でした。しかし今後、こうした一斉採用の就活ルールは廃止されていく予定です。企業は通年に渡り、私服OKの面接実施をしたり、インターンシップなどの就労体験を提供することで、求職者のニーズに寄り添いながら、より多くの人材を惹きつけようとしています。

人材の流動化はますます加速し、転職活動も誰しもが経験するものになります。より良い給与や雇用環境を提示しての、人材引き抜きが活発になると同時に、その人材流出を防ぐためにさらに自社の環境をより良いものにしようと、人に投資する企業がますます増えていくでしょう。もはやこの”超”人材不足の時代に、多様な人材や多様な働き方を受け入れられない企業は、求職者から選ばれず、結果として経営も立ち行かなくなってしまうことが明白となりつつあるのです。

このように、LGBTへの社会的理解が進むのと同時に、働き方そのものの多様性が認められるようになってきました。この2つの変革期の最中、LGBTの求職者にとっても、より自分らしく安心して働ける仕事の選択肢が着実に広がってきています。

しかし、いざ「自分らしく働きましょう」と言われたところで、「自分らしい働き方って?」と戸惑ってしまう人も多いのではないでしょうか。

「自分らしく働く」って?

あなたが、思い浮かべる「自分らしく働く」はどのような働き方でしょうか? 高い給料をもらうことや、素敵なオフィスで働くこと、自由な服装で働くことや、良い人間関係を築くこと、定時で帰れることなどが一般には挙げられると思います。このように人によって「自分らしさ」は異なりますし、働き方に求めるものは違ってきます。本ガイドでは、「自分らしく働く」ことを大きく下記の二つの軸に分けています。

  1. 求職時や職場において、セクシュアリティがマイナスにならないこと
  2. 理想のライフプランとキャリアプランを最大限実現すること

1. セクシュアリティがマイナスにならない

これから就活・転職をはじめるにあたり、LGBTであることが採用合否に不利な影響を与えるのでは?カミングアウトしたら職場で仲間外れにされるのではないか?と不安に感じている人もいると思います。

まず最初に断言したいのは、個人のセクシュアリティが仕事の能力に直結することはないということです。厚生労働省は「公正な採用選考の基本」として、本人のもつ適正・能力のみを採用基準とし、LGBT等性的マイノリティを排除しないことを明確にしています。同省が発行する「セクハラ指針」の中でもLGBTに対する差別的言動はセクハラになることが明記されていますし、過去の裁判の中でもLGBTであることを理由とした懲戒解雇や、トランスジェンダーのトイレ利用制限は違法との判決が下されています。

このように、LGBTであることは、採用や職場の中において何らマイナスになるような事柄ではないというのは、国や司法がはっきりと判断を下しているのです。とはいえ、未だに「カミングアウトをしたら内定取り消しにあった/不採用になった」「ゲイを馬鹿にするようなホモネタが日常的にある」「自分の望む性別で働けない」という声が我々の下に寄せられているのも事実です。本ガイドでは、こうした現状の中、どのようにLGBT当事者が企業と向き合うべきなのか、問題が起きた時に対処すべきなのか、自分らしく働くための具体例を示しながら説明していきます。

一方で、より積極的にLGBTに対して平等な職場環境作りを行ういわゆる「LGBTフレンドリーな企業」も増えつつあります。例えば異性婚だと得られる家族手当やハネムーン休暇などを同性パートナーにも適用したり、トランスジェンダーの性自認に伴ったトイレや更衣室の施設利用を認めたり、最近では性別適合手術の休暇を付与するケースもあります。これらは、決してLGBTを特別扱いしているわけではなく、いわゆる平等な制度や環境作りをしていこうという企業意識の現れです。このような会社や職場環境で実現するLGBTの「自分らしく働く」とは何か?イメージが湧かない人も多いと思うので、いくつか例を挙げてみましょう。

【セクシュアリティがマイナスにならない「自分らしく働く」の例】

  • 採用面接でカミングアウトをしても不利に扱われない
  • 自認する性別で面接を受けることができる
  • 同性パートナーに対する結婚祝い金や家族手当の付与が貰え、転勤の際にパートナーを連れていくことができた
  • 戸籍の性別ではなく、自認する性別でトイレや更衣室が利用でき、性別適合手術の際には休暇を申請することができた
  • LGBTに対する理解が浸透しており、ホモネタ等、LGBTに対する差別的言動がほとんどなく、異性愛を前提とした恋人や結婚に対する深い詮索もされない
  • カミングアウトしていても、いじめや差別もなく、普通の人間関係が築ける

もちろんこれらの例のように、全てが整っている企業は多くはありませんし、取り組みを進めている企業でも、現実問題として、部署によってばらつきがあるケースも存在します。人によってはカミングアウトをしない人もいるし、パートナーがいない人はあまり関係ないとも思うかもしれません。そのような「カミングアウトをするのかしないのか?」「するならいつするのか?」「LGBTフレンドリーな会社を選ぶのか」「自分のやりたい仕事を選ぶのか」といった部分の見極めは難しいだけでなく、その場その場の成り行きで行動してしまった結果、後悔しているケースも沢山見てきました。そこで、本ガイドでは「自分らしく働く」をライフプランとキャリアプランを組み立てながら実現する方法を採用しています。

2. 理想のライフプランとキャリアプランを最大限実現する

自分らしく働く上で、どのようなライフプランを描くかは、ロールモデルが少なく人生計画が立てにくいLGBTだからこそ、重要です。そもそもどのような人生を貴方が歩みたいかによって、職場でカミングアウトする/しない、どちらが良い選択肢なのか、どのような軸で企業選びをすべきなのかといったキャリアプランが大きく変わってくるからです。勿論、理想のプランを描けたからといって、残念ながら全てを実現できることは稀です。そもそも条件に合う会社が存在しなかったり、第一志望の会社に落とされることもあります。ただその時に軸のあるプランがあれば、職場に求める優先度を上げ下げしながら、最大限自分に合った企業を見つけることができ、結果として自分らしく働くことにつなげていくことができるのです。

自分らしく=自分勝手にならないように気をつけよう

ここで気をつけてほしいことは、「自分らしく」を「自分の好きなように」、「自分の理想」を「自分の理想通りに」と解釈してしまうと、単なる自分勝手な考えになりかねないということです。なぜなら、企業や組織で働く限り、常に「成果」を出さなければいけず、それができる人材を企業は求めてるからです。

逆にいえば、仕事において「LGBTだから」は言い訳や何かを諦める理由にもならないということです。厳しいことを言うようですが、セクシュアリティを理由に辛い経験をしてきた人にこそ、これからはセクシュアリティを理由に何かを諦めることなく、挑戦してほしいと願っています。このガイドをご覧になった人にとって、就活・転職を通して「自分らしく働く」を実現できるよう、LGBTだから得られるものが人一倍大きいものであるよう、全力でサポートしていきたいと思っています。

>>次のコラムへ

>>LGBTのための就活・転職ガイドまとめ


検索

  • セクシャリティ診断ツール
  • 企業担当者の方向けLGBTフレンドリー企業マニュアル無料配布中
JobRainbow