【トランスジェンダー社会人インタビュー】〜私が自分らしく働けるようになったワケ〜LGBTQ+当事者が働きやすい会社って?
人生の中で「しごと」に費やす時間は3分の1と言われている。
1日8時間働いたとしたら、1週間で40時間(週休2日の場合)、1ヶ月で160時間、1年で1920時間を「会社」で過ごすわけだ。これは人生の時間の大半を占める。
会社での時間を充実させることは、人生を充実させることと同じだ。
できることなら楽しく働きたい、と誰もが願っている。
自分を偽ることなく、ありのままで。
そこで、「JobRainbow」を利用して就職した渋谷のベンチャー企業で働くトランスジェンダー(出生時の性と自認する性が一致しないセクシュアリティ)のひろはさんに、「自分らしく働く」ための極意を聞いてきた。
—今までどのようなお仕事をしてきましたか?
高校卒業後、自動車メーカーで機械設計やロボットを動かす仕事をしていました。その後、転職して、現在はテストエンジニアをしています。具体的には、エンジニアの方が作ったソースコード(プログラムの動きを記述したテキスト)をユーザーに届けられるようにチェックをしています。
転職のきっかけ
—どうして転職しようと思ったのですか?
理由は2つありました。
1つ目は、幅広いお仕事がしたいと感じたからです。
大企業だと社員数が多いため、部署がきっちり分けられて、仕事内容も決まってしまいます。なので、比較的小規模なスタートアップの会社を探していました。
2つ目は、迷惑をかけている気がしたからです。
前の会社は「男性」として入社しました。そのため、同僚は私のことを「男性」と思って接していました。
トイレと更衣室については、「男子用」を使用しなければいけませんでした。それでも私は、服装や髪型を含め「女性」として過ごしていました。普段面識のない社員さんとトイレで遭遇するたびに驚かせてしまいました。
更衣室では、「オカマがいる」や「今の女だよな」と言われたこともあります。
そのため、上司に多目的トイレの設置や更衣室の使用について相談をしました。しかし理解はしてもらえませんでした。周りの同僚にも自分が悩んでいることを話せず苦しかったです。
—転職という一歩を踏み出せた理由を教えてください。
単純な理由でした。
「今のままでは嫌だ」と思ったからです。一回きりの人生、誰かのためだけに生きているわけではありません。私は自分の人生を、自分のためにも生きています。その気持ちが大きかったと思います。
—転職活動中に困ったことはありましたか?
転職活動中も履歴書の性別欄には「男性」に丸をつけていたので、面接官に「思っていたのと違った」や「性同一性障害とかわからないよ」などと言われた経験があります。
特にお客様に会うお仕事をする会社では理解は難しいように感じました。
—LGBTに対して理解のある会社はどのような会社ですか?
多様性を受け入れる会社だと思います。
LGBTだけでなく、障害のある方や、国籍が違う人に対しても理解のある会社は、誰にとっても働きやすい環境なのではないでしょうか。
性別以外の問題もたくさんあるので、様々な問題に対して積極的に取り組んでいる会社は理解が進んでいるように感じます。そのような会社を見つけるために、株式会社JobRainbowの運営する「JobRainbow」を利用しました。
—転職して変わったことはありますか?
時間の融通がきくようになりました。
転職する前は、ホルモン注射のための通院の時間をとることができませんでした。現在は、通院時間の確保だけでなく、通院の次の日の出勤時間もずらしてもらっています。注射を打つことによって、疲れやだるさが出てしまい、仕事の効率が落ちるからです。
あとは、同僚や上司に相談したいことや悩んでいることがあったらすぐに言える環境なので、円滑にコミュニケーションが取れるようになりました。これによって、仕事のパフォーマンスも上がったように思います。
—就活をする際に気をつけておくべきことはありますか?
面接では、自分のやりたいことや、どのように働きたいか、を相手に伝えることが重要です。「自分の中で大事にしたいもの」と「企業が求めるもの」が合致しているのかを確認する場であると思っています。
大事なことは、自分のパフォーマンスが最大限に発揮できる環境を整えることだと思います。「自分らしさ」を大事にしてください。
「自分らしさ」とは
—ひろはさんにとって「自分らしさ」とは何ですか?
なにかやりたいことがある時、自分の気持ちを押し殺さず「これがやりたい!」と上司や同僚に言えることですかね。私の場合は、常に「これ面白そう!」「やってみたい!」という気持ちがあるんです。
今までは、やりたいことも我慢することが多かったのですが、今の会社では、色々なことに挑戦できるので「自分らしく」働けています。
—日常生活で「自分らしく」生きられるようになったきっかけを教えてください。
実は、人間関係に悩んで自殺未遂をしたことがありました。その時に、一瞬で死んでしまう「怖さ」を感じました。
「今生きていることは当たり前ではない。あの時に死んでいたかもしれないんだ」と思うと、生きていることが奇跡のように感じたのです。
これ以降、せっかく生きてるんだし、もう自分を隠すのはやめよう!と思うようになりました。
—悩んでいた頃の自分にどんな言葉をかけてあげたいですか?
「前を向いて歩いてたら、一歩でも二歩でも進んでるから。進むのをやめないで。」と言いたいです。
”成功”の壁まであと少しなのにその手前で引き返してしまう人がいます。でも、歩き続ければ案外到達できるんです。
歩き続けるといっても、休憩も必要です。それも、前へ進んでいる過程の一部ですから。
—LGBTの中で、仕事または就職に困っている人に一言お願いします。
一歩を踏み出してください。
もし今の会社が苦しいと感じているようでしたら、会社を変えるのも一つの解決方法です。
今の場所だけでなく、別の場所にだってあなたの居場所はあります。
何もしなかったら何も起きません。
でも、何か行動したら必ず何かが起きます。
ひろはさんの言葉は、人一倍苦しんだ経験があるからこそ、説得力がある。LGBT当事者だけでなく、誰にとっても参考になる言葉だ。
結局一緒に働くのは「人」である。
会社を選ぶ際は、自分のありのままを受け入れてくれる上司、そして雰囲気なのかを見極めることが重要だ。では、どのようにそういった会社を見つけるのか。
ひろはさんは、JobRainbowが運営する就職者とLGBTフレンドリー企業をマッチングする求人サイト「JobRainbow」を利用した。無数の企業がある中で一つ一つ見極めて行くのは時間がかかる。限られた時間の中で、LGBTフレンドリー企業を見つけるには最適のサイトだ。
それを知るためにも面接時に、自分が思っていることを伝える大切さをひろはさんは語っている。
今、職場で苦しくて耐えられそうにない人がいたら、どんな些細なことでもいいので、その苦しんでいる思いを上司に話して、それでもダメならば環境を変えるのだって立派な選択だ。
あなたの”ありのまま”を受け入れてくれる場所が必ずどこかにあるのだから。