LGBTフレンドリーな保険代理店R&C株式会社の「パートナー共済」が生まれたきっかけ
R&C株式会社は、東京レインボープライドやレインボー・リール東京(東京国際レズビアン & ゲイ映画祭)、九州レインボープライドなどで協賛企業として参加するなど、LGBTフレンドリーな総合保険代理店として知られています。
そんなR&C株式会社は、2020年5月から、LGBTの人がアクセスしやすい生命保険「パートナー共済」の提供をはじめました。
今回は、代表取締役・足立哲真(あだち・てつま)さんと、事業担当の小吹文紀(こぶき・ふみのり)さんに、「パートナー共済」誕生のお話をうかがってきました。
「パートナー共済」を作るきっかけ
「パートナー共済」を作ろうと思ったきっかけは?
足立さん(以下、敬称略):
構想を始めたのは2019年の5月ですね。
何か社会問題を解決できるようなことをしたいと思っていました。そもそも保険というものは、その要素が極めて強いものです。
ストレートやシスジェンダーの人は制度が整っているにも関わらず、LGBTの人はそもそも保険に入れなかったり、(遺産などを)残したい人に残せないことがある。つまり、守りたいものを守れない状況にあります。
守りたいものがある、ということが保険の本質であるわけです。
そういった理不尽さを解決できるようになるのは、大きな意義があるんじゃないか、と。
事業担当の小吹さんも、「パートナー共済」を作るきっかけになったそうですね。
小吹さん(以下、敬称略):
きっかけは2017年の4月でした。
損害保険の東京海上日動火災が、約款(保険商品の取り決め)における「配偶者」の定義を変えたんです。
それまでは、配偶者とは、「戸籍上の婚姻関係にあるもの」「事実上、婚姻関係と変わらない関係にあるもの(事実婚)」だったのですが、それに「戸籍上の性別が同一であっても、婚姻関係と同等であるもの」という文言を追加しました。
そうして、書類でも同性パートナーが配偶者として表記されるようになったり、同性パートナーシップ制度のない自治体に住んでいても加入ができるようになっていったんですね。
そこから、生命保険は? 他の保険会社は? と、お客様一人ひとりに合った保険商品を提案する身として興味をもっていきました。
LGBTがいないものとして扱われていた
小吹:
ただ、壁がありました。保険会社は、LGBTの人たちがいるということを知ってはいるけれど、いないものと扱っていたんです。
たとえば、HIV陽性の人。その人たちは(医療保険であれば入れるところもありましたが)、ほとんどすべての生命保険に入れません。また、ホルモン療法を受けているトランスジェンダーの人も、3ヶ月間ホルモン療法をやめないと保険に加入できないことがありました。
逆に、最初は加入できる条件だったのに、規定が改定され、HIV陽性の人が加入できなくなってしまったケースもありました。
今ではHIVは正しく服薬していれば感染させてしまうことは100パーセントありませんし、定期的に検査も受けられていますので、何もしていない人と比べたらはるかに健康なんですよね。
ホルモン療法も、続けているほうが心身ともに安定してリスクが低くなります。それなのに、わざわざホルモン療法を何か月も止めて、リスクを上げないと保険に入れてもらえないのはおかしいと思います。
「だったら作っちゃえばいいじゃん」
小吹:
これらは全部、保険会社がまだよく知らないだけなんです。それで私がもうめげてしまったときに、代表取締役の足立と出会ったんです。
そうしたら、「だったら作っちゃえばいいじゃん。え、どこもやってないなら作ればいいじゃん」と。
そうして作ることになったパートナー共済ですが、HIV陽性の人に死亡保険金を、そしてホルモン療法を受けている方こそ入れるようにします。PEP(曝露後予防)・PrEP(曝露前予防)についても手当てできるように計画しています。
PEPは現在自由診療ですが、特約条項をつけて、まず診察に行っていただく。そして診察代は共済からお支払する予定です。
PrEPもできればご加入された方のサービスとして選べるようにしていこう、と。お薬代は負担していただくことにはなりますが、その見守り診療の分を出せないだろうかと調整しています。
未来に希望を抱きづらいと感じるLGBTの人にとって、「パートナー共済」はとても価値のありそうなサービスですね。
足立:
ありがとうございます。
では、なぜ民間の保険会社は同じようなサービスをやらないのか。それは、データがないから、情報がないからなんですよね。保険は数値で成り立っているので、情報がないとやりようがないわけです。
しかし、「パートナー共済」が広まるとデータが集まります。そこで集まったデータを、民間の保険会社にも渡そうと思っています。そうすると、民間の保険会社も情報をもとに保険を作れるようになりますよね。
パートナー共済で描く未来
パートナー共済で、どんな未来を描いていきたいと思っていますか?
足立:
(LGBTの人の存在も)当たり前にしたいですよね。
「〇〇だから、何かができない」というのがなくなっていけばいいと思います。
小吹:
保険に加入しようとするLGBTの人は、普通にいらっしゃいます。でも、保険会社とのやり取りや交渉も個別で、みんな「点」だったんですよね。それが「線」になって、パートナー共済で「面」になるんじゃないかと思います。
たとえば、「HIV陽性の人がこれだけパートナー共済に入ってくださいました。それで〇年以内に、誰か亡くなりましたか? 医療保険を使っている人は何パーセントですか?」と言えるようにデータが集まっていけば、保険業界を、そして社会を変えていけるんじゃないかと思います。
「ひとの抱える理不尽を解消したい」
「より良い未来に向けて、ひとを導きたい」
「パートナー共済」の裏には、そんな熱意をもったお二人の思いがありました。
追記:パートナー共済は5月25日に申込み開始しました。
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