リンクトイン・ジャパン株式会社に直撃!~前編~【LGBTフレンドリー企業インタビュー】

ライター: JobRainbow編集部
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登録メンバーが世界で5億4千万人を超すビジネス特化型SNS、LinkedIn。日本だけでも200万人以上が利用しているこちらのサービスを支えるリンクトイン・ジャパン株式会社には、LGBTフレンドリーなだけに収まらない、限りないダイバーシティ実現への熱意があります。

そこで今回、LinkedInのダイバーシティを実現する熱意の原動力やそのための具体的な取り組みについて、リンクトイン・ジャパン株式会社代表の村上さん、LGBTの活躍をサポートする石谷さんにお話を伺いました。

村上さんの、「LGBTの求職者にどうしても言っておきたいこと」とは?
→気になる方は後編もチェック!

村上さん・石谷さんってどんな人?~スーパーアライ社長と道産子ダイバーシティ担当~

―まずはお二人の経歴から、よろしいでしょうか。

村上さん(以下敬称略):私はいわば「スーパーアライ(アライ:LGBTを支援する人々を指す呼称)」ですね。昔から渋谷や六本木で遊びまくっていたこともあって、国籍など問わず様々な人に接していました。身の周りにはLGBTのアクティビストも多く、傍目に見ていたんです、最初は。でも、ヤフーにいたとき人事が、女性やパパ・ママ、障がい者の活躍に力を入れるようになり、その中でLGBTが話題に出るようになりました。

―話題に出るように?

村上:学生から訊かれるようになったんですよ、LGBTについて。仲間内ではオープンにしている就活生が、社会人になったときにこのままでいいのか不安を抱いて、面接で「自分はLGBTなんですけど、ヤフーにもLGBTの社員はいますか」って質問するんですね。ところが、アンケートをとっているわけでもないし、人事は把握していない。ここ数年で、面接現場でカミングアウトしてくれる人はかなり増えてきていて、私たちはある種「試されている」わけなんです。

―試されている、といいますと?

村上:役員クラスならダイバーシティの重要性は当然理解していますが、一次面接を担当するのは現場の責任者であって、中には正直、ダイバーシティに理解のない人もいます。そこでカミングアウトを受けて動揺してしまうと、就活生は「ああ、この会社だめだな」って思うわけです。こうした背景があり、ヤフー社内のLGBTグループからご指名いただきまして、ヤフーの就業規則を同性パートナーシップや内縁関係を結婚と同様の扱いにする、といったものに変更しました。

―そして、LinkedInに来るわけですね。

村上:そうですね。ここは元々外資系なので、ダイバーシティを重視しているし、実際多様です。男女比もちょうど半々くらい、国籍も様々ですね。

―なるほど、ありがとうございます。続いて、石谷さんの経験についても、教えていただけないでしょうか。

石谷さん(以下敬称略):私は、会社でLGBTの活動をするっていうのは今回が初めてなんです。生まれも育ちも北海道なのですが、「なにか違う」ことに対する不思議な気持ち、無意識のソーシャル・プレッシャーみたいなものは感じていました。上京してからは何故かゲイの友人が増えたんですけど、その後ロンドンに行ったら、東京に比べてとてもオープンな社会に驚きました。でも同時に、LGBTから少し話が逸れるのですが、「自分がマイノリティだな」って思ったんです。「何者でもない自分」というか、英語が母語なわけでもなく、社会で頼れる人もいない。そこで、自分の中での小さな「覚醒」みたいなものがありました。

―そこで、マイノリティについての意識が生まれたのですね。

石谷:日本に戻ってきて就職したんですが、同期は9割日本人じゃなくて、会社の中でのマイノリティでした。採用後オーストラリアに駐在することになって、ここでゲイコミュニティの友達が爆発的に増えました。彼ら自身、もちろん葛藤や苦しみもあったと思うんですが、それでもシドニーという社会はかなりアドバンストでした。プライベートでLGBTの世界に興味をもった、と言えるかもしれません。

―その後、LinkedInに来るわけですね。

石谷:LinkedInには色々なダイバーシティグループがあるんですが、「Woman at LinkedIn」という女性をサポートするグループの、東京リードの方とお話しさせていただいたときに、「ウーマンあるのにLGBTはないの?」と訊いたら……気づいたらリードになっていました。

談笑している石谷さんと村上さん

LinkedInの「信念」~DIBsの”B”って何?~

―ではいよいよ、リンクトイン・ジャパン株式会社としての取り組みをお聞きします。

村上:うちの会社の信念として、「ダイバーシティがないと成り立たない」っていうのがあって。これがカルチャーの奥深くまで根ざしています。我々は、”DIBs”を掲げています。

―”DIBs”と言いますと?あまり聞き慣れないですが……

村上:”Diversity Inclusion Belonging”ですね。多くの会社は”DI”だけで終わっているんですけど、Belongingっていうところからもわかるように、SNSの会社として、従業員同士のコミュニケーションを重視しています。従業員同士で楽しく、ユーモアをもってやっていこう、そして結果を出そう。これが、うちの「カルチャー」なんですよ。ビジネスコミュニケーションを良くしていく会社なんだからこそ、自分たちが仲良くしていかなきゃ、って。

―では、そもそもなぜダイバーシティを大事にするのですか?

村上:日本にも潜在的に7.8%ほどLGBTQ+がいると言われています。そんな中で我々がダイバーシティを維持できていないと、メンバーのダイバーシティの分布と合わなくなってしまう。こうなってしまうと、意思決定の質が下がることにも繋がります。例えば、世界の男女比がおよそ半々なのに、男だけで「これいいじゃん」と決めたものを導入したところで、「全然よくないじゃん」となる。意思決定する側のダイバーシティが発信する物に影響する、という考えが根本にありますね。

―意思決定する側のダイバーシティ、ですか。

村上:だからこそ、採用の時から男女比などダイバーシティにはすごく気を配っています。もちろんその中で、LGBTの方が来てくれることも望んでいます。従業員グループでも、特にWomenとLGBTは活発に活動していて、従業員が自ら手を挙げてリードしていくようなグループは会社として支援しています。

話している村上さん

日本の企業のダイバーシティに物申す!

村上:日本の会社でも、ダイバーシティが大事だと言っている会社は多いじゃないですか。ただ、フタを開けてみると、「企業としての見た目がいいからやってる」みたいなところも、正直ある。なので、「実際どういった活動をしているのか」「シニアレベルのマネージャーに女性が少ないなか、真の意味で理解されているのか」見てみると、レベルはまちまちだな、と。

―耳が痛くなる企業もあるでしょうね。

村上:我々は、「何も隠さずに働ける環境」の実現に注力しています。こうした環境を作ることで、働きやすさや会社への帰属意識が高まって、結果的にパフォーマンスも向上する、っていうのはもう実証されているんですよ。なら、やらない手はない。逆に言えば、不安を抱えながら働いているとパフォーマンスは下がってしまうので、バイアスを破壊するための方法を常に考えています。僕はAPAC(アジア太平洋)経営会議のメンバーでもあるのですが、各国の代表にこの間のTRP(TOKYO RAINBOW PRIDE)の写真を見せたら、大喜びしていました。

レインボー仕様のLinkedInフラッグをもつ、石谷さんと村上さん

女性・LGBTグループの具体的な取り組みに迫る!~「人間って変われる」~

―先ほど、グループの中でもWomen・LGBTは特に勢いがあると伺ったのですが、具体的にどのような取り組みを行っているのでしょうか。

村上:out@inといううちのLGBTグループでは、各国でリードがいて、基本的にはリードに活動内容は任せています。なので、うちで言えば従業員に対してのワークショップやイベント以外に、「二丁目に飲みに行こう」といったこともやってますね。欧米だとロビイストやNPOとして活動実績のある人を講師として招く、といったことをしています。

―Women at LinkedInの活動は、具体的に何を?

村上:Women at LinkedInの方も活動は色々で、日本では出産・結婚後の女性のカムバック支援に力を注いでいます。労働人口が減る中で優秀な人を支援していきたいので。また、シニアレベルの女性のロールモデルが日本では不足しているので、我々のネットワークを使って、キャリアを積んできた女性をお招きして対談・パネルディスカッションなどを行っています。どのようにキャリアを築いてきたか、といったことを、ステップアップを考えている女性たちに対して発信したいなと。でも昔は今以上に、女性に対する「結婚しないことへのプレッシャー」は酷くて、それと今を比べると「人間って変われるんだな」とは思えますね。

―なるほど、そういう見方がありましたか。

村上:2~30年でここまで変わることが出来たなら、LGBTQ+に対してもこれから先、絶対に、急速に、変わっていくと思います。そこで、うちの誇るべき「カルチャー」を、アピールしていく必要があるわけです。Women at LinkedInとか、out@inとか、あとはLinkedIn for Goodといういうソーシャルグッドな活動をするグループ。日本にはこの3つのグループのリードがいて、どの社員もこれらの活動を発信しています。これらも会社の「価値」だと思っているので。

―やはり、積極的に発信していきたいわけですね。

村上:そうですね。あと、LinkedInを日本に広めていくには、いいニュースを発信しつつ人を巻き込むプラットフォームとなるべく、セルフブランディングをしていかなければいけません。積極的な発信をすることで仲間が増えていって、ネットワーキングが出来ていく。こうして、社会を巻き込むようなインパクトを創り出したいと考えています。

話す村上さんと、それを見守る石谷さん

就活生・転職活動中の方必見!~「キャリア」と「ダイバーシティ」~

―ヤフー時代の経験が今活きているなあ、と感じることは多いですか?

村上:そうですね。就活生にも言いたいですが、これからは、自分のキャリアは自分で作っていく時代。昔は特に意識しなくても研修から何から会社がキャリアを作ってくれたけど、会社はもうそこまで面倒を見てくれません。自分として「何が大事か」を考えていく必要があります。自分のキャリアを振り返ってみても、無駄だったことはありません。ヤフーでも、ソフトバンクでも、ダイバーシティを考えてきたわけですが、そういうことを理解できない人もいるわけですよ、やっぱり。もちろんそれも個性なのですが、そういう人たちとどうやって話し合っていくかってところは、やりながらわかってきました。

―実行に移していく原動力は何なのですか?

村上:「公私ともどもスーパーアライとしてやっていくんだ!」っていうのが自分の中にはあって。こういう風に、自分のやりたいことと会社でやりたいことを合わせながら、世の中にインパクトを出していくっていうのは結構大事で、これらが同じ軸なら、仕事って楽しくなるんですね。なぜなら、自分のやりたいことをして褒められるからです。「お前、よくやった!」って。それが、「嫌だけどやらなくちゃ」になったら、「やる」ことそのものが辛くなってくる。だから、合わなくなった時は、他のところに行けばいいんです。

―とはいえ、なかなか勇気が必要ではありますね。

村上:でも、無理に自分を会社側に合わせる必要はありません、病んでしまうだけなので。勘違いしてはいけないのは、それはあなたが悪いわけでも、会社が悪いわけでもないということです。「合わない」ってだけなんです。そうしたら、いったん離れればいい。後で戻ってくるかもしれないですしね。

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*本記事は、実際のインタビューの内容を基にして再構成しています。

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