LGBTの社員と人事に聞く、オラクルが目指すダイバーシティ【後編】

ライター: JobRainbow編集部
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ダイバーシティ&インクルージョンを草の根から支えるLGBT&アライコミュニティ・OPENの積極的な活動や、リクルーティングにおける多様性重視の徹底を行い、LGBT施策の先進的な例として今注目されている日本オラクル株式会社。

後編ではOPENで活動されている中野さん、川向さんに加え、人事担当者の鈴木さん、当事者社員である古積さんに、会社での働きやすさを生み出すオラクルのダイバーシティについてお話を伺いました。

まさに草の根。オラクルのLGBTコミュニティ“OPEN”の取り組み【前編】

社内でカミングアウトすること

―ここからは古積さんに当事者社員としてオラクルで働くことについて伺います。最初にご経歴をお伺いしたいのですが、現在はエンジニアをされていらして、もう新卒でずっとやっていらっしゃるということですか?

古積:そうですね。部署は何回か異動していますが、新卒で入社した時からずっと技術職です。

―セクシュアリティなどをお伺いしても大丈夫ですか?

古積:はい、ゲイで男性です。

―ありがとうございます。最初にOPENが始まった2015年頃から古積さんはOPENについてのお話は聞いていたのでしょうか?

古積:いえ、当時コミュニティが立ち上がったばかりで細々とやっていたそうなので、僕もその活動があるということは知らなかったですね。

発足のきっかけとなった元同僚の方が亡くなられたのが2015年の4月くらいで、そのころから川向さん、中野さんともう一人のメンバーが活動を始めていたそうです。ただそれは本当に、草の根中の草の根で、まだ発足して間もないので名前も決まっていなくて。彼、彼女らもまだLGBTの知識が足りないというので、いろんな外部の勉強会に行ったり講習を受けたり、まず勉強するところから始めていた状態でしたから。

同性パートナーとの結婚がカミングアウトのきっかけ

―カミングアウトの時期やきっかけは何だったのでしょうか?

古積:会社内では、所属しているチームの人たちに2014年くらいにカミングアウトをしました。プライベートで2013年に結婚式を挙げてから、結婚指輪をつけるようになって……最初はちょっと迷ったんですよ。結婚指輪をして会社に行ったら絶対聞かれると思ったので。でもその都度外したりつけたりするのも、せっかく結婚式まで挙げたのに自分自身を偽っているみたいで嫌だなと思って、カミングアウトすることに繋がりました。

―最初にカミングアウトされた時、周りのチームの方はどんな反応だったのでしょうか?

古積:チーム内は女性が多かったので、すぐに「そうだったのですか」とすっと受けいれてくれたように感じました。女性の方がとまどいは少ない印象でしたね。若い人も多いからというのもあるのですけど。男性は、あからさまな否定とかは全然なかったものの、最初はちょっととまどっていた印象でしたが、その後は普通に接してくれました。

―実際に会社内でカミングアウトをして、よかったなと思うことはありますか?

古積:する前は、会社内でカミングアウトしなくても、不都合はないし不要かなと思っていましたが、した後で思うと結構我慢していたということに気づかされましたね。例えば、飲み会でくだけた話になったときに、どうしても「彼女はいないの?」とかそういう話題が出ることがあったりしますよね。

でも、それって多くの人が無意識にこの世の中には異性愛者しかいないって思っているから、男の人には彼女いますかって聞くし、女の人には彼氏いますかって聞く。それに対して、頭の中で「彼氏」を「彼女」に置き換えて答えたりしていましたが、意外とストレスがあったのだなっていうことに後から気づきました。今はそういうのを隠さなくても良くなったので、とても楽です。

古積さんが話している様子
当事者でもある古積さん

当事者としてOPENでの活動すること

―カミングアウトをされてから、OPENの活動を知って参加するまでの経緯について。

古積:会社内でオープンにしたことをきっかけに、せっかくなら自分以外にカミングアウトできなくて苦しんでいる人のためにも、何か会社の中で活動できないかなと思い始めたんです。実は僕のパートナーは他の外資系IT企業に勤めているのですが、その会社は同じIT業界の中でもこういった活動をさらに先進的に行っているという話を聞いていたんです。そこがそんなに進んでいるのだったら、なんで日本オラクルはそういう活動がないのだろうってその時モヤモヤしていたんです。

そんなとき、2015年にどうやらオラクルがwork with Prideというイベントのプレセッションに参加するらしいという話を聞いて、それがきっかけでOPENを知りました。そこで川向さんとつながり、当事者社員としてOPENの活動にも参加するようになりました。


中野:あの時は嬉しかったですね。おぉー、うちに当事者の方がきてくれたー、って(笑)。

「むしろこっちにバイアスがあった」

―活動を通じて学んだ点や気づきはありますか?

古積:意外とみんながありのままで受け入れてくれることを実感できました。活動を始めたころは、どうせみんな表面上でしか受け取ってくれないのでは?と懐疑的だったんですが、自分がそうやって見くびっているのを、みんなとび越えてきてくれる。自分たちのほうが勝手に、この人たちはこのくらいしか理解してくれないだろうと思い込んでいただけで、むしろこっちにバイアスがあったと気づきました。この活動を通して普段話さない部署の人とも接点ができ、そういうことを知れたのは良かったです。

―活動を通じて職場環境における課題感などは感じますか?

古積:無記名の意識調査アンケートの中にも「こんな施策必要ないんじゃない?」とか「プライベートなことを会社に持ち込まないでください」といった意見はあります。理解がまだ進んでいないからこそ出てくるそういった意見があると、まだ課題が全て解消したわけではないと感じます。みんな違う考えを持っているのは当然なので、ある程度は仕方がないことなのですが、正しく理解していないために起こる拒否感は払しょくしていきたい。



また、カミングアウトした当事者としてOPENの活動をしているのは、現在は僕だけなんですね。アンケートで見ると他にも当事者の社員はいるはずですが、その多くの方はクローズドで働いているのかと思います。もちろんカミングアウトするしないは自由ではありますが、ただ、しやすさの点ではまだ課題があると考えています。会社全体としてはアクセプタブルでも、部署やグループによってはまだカミングアウトしづらいのかもしれない。そういうことを念頭に置きながら、いろいろな立場を考えて活動を続けていきたいと思います。

レインボーフラッグをバックに鈴木さんが話している様子
人事の鈴木さん

ダイバーシティの基本的な考え方

―ここからは人事の観点から、オラクルの持つ基本的なダイバーシティの考え方についてお伺いしたいのですが。

鈴木:まさにEqual & opportunity(平等に機会を)ですね。これは本社から始まったことで、人種等関係なく人を能力ベースで雇っているというのが我々の基本です。ですから、私たちの採用のシステムは構造上、差別できるようになっていません。たとえば通常だったらエントリーシートで男性か女性かどちらか選ぶと思いますが、オラクルは性別はおろか年齢や顔写真も要求することはありません。

一方、日本はダイバーシティに関しては遅れている側面もあります。まだまだ面接官一人ひとりがダイバーシティを常に意識しているかというと、そうではない。ただ、6月からCEOに就任したドイツ人の方は海外の進んだダイバーシティの考えを持っています。我々のリーダーからダイバーシティについて考えているという点では、会社全体としてダイバーシティを進めていく機運が高まっていると思います。

―オラクルがダイバーシティに取り組む意義とは?

川向:会社がダイバーシティを重視しているのは多様な価値観がイノベーションを産むという戦略的な考えがあるためです。ソフトウェアの世界は日進月歩だからこそ、会社はイノベーティブでないといけない。ダイバーシティが福利厚生としてだけ必要なのではなく、イノベーションを生み出すためのカルチャーとして必要だということです。お客様の担当がIT部門だった時代にはITの営業はITが得意な人だけいればよかったのかもしれませんが、ソリューションがクラウドに変化するに従い、お客様の窓口は人事担当もいればマーケティング担当もいる。営業がいろいろな職種の人とお話をする時代に変化しています。今は営業部門にも、IT以外の業種からバックグラウンドの違う人たちを採用してカルチャーを変えようとしているときです。

LGBTに対しメッセージを伝えていく

―採用における具体的な取り組みについて教えてください。

鈴木:アメリカ本社ではすでにダイバーシティの取り組みがあります。日本での取り組みは遅れていますが、それでもこの2,3年で世間でのLGBTの認知度が高まるとともに社内でのawareness(気づき)も増えています。採用の面から見れば、我々採用チームは新卒・中途に限らずLGBTの方々が応募者の中にも必ずいることを意識しています。候補者と会うときは、LGBTの方々も広く受け入れているというメッセージを伝えられるように対応しようとしています。

加えて、オラクルではダイレクトリクルーティングという採用手法を活用していまして、我々が候補者と直接コンタクトをとっています。これはつまり間に第3者やエージェンシーを挟まないということ。LGBTやダイバーシティ&インクルージョンに対する取り組みを直接候補者に伝えられることはブランディングという面でも強みだと思っています。

川向:採用におけるダイバーシティ&インクルージョンは性的マイノリティに限らず宗教や国籍なども含めています。そもそも全世界に共通するオラクルの行動規範の中には差別の禁止が書かれています。宗教はもちろん、国籍や肌の色、年齢、性別、性自認、性的指向、今年からは性表現が入りました。宗教による差別や、国籍で与えられる仕事が違うなどということがありえないのと同じように性的マイノリティであろうが性表現が違う人であろうが、仕事のアサインメントが変わることがないというのが大前提。それに違反するとコンプライアンス上の違反になってしまいます。ダイバーシティの中にはいろいろな人がいるというawarenessを高めることは、社内でも、採用している人にも重要なのかなと思います。

―LGBTやダイバーシティの活動の中でそういうのに興味を持ってくれる候補者の方はいますか?

鈴木:もちろんいます。OPENの話をしたり、OWLの活動を説明したり、こういう活動があるからオラクルに決めたという方はいます。女性の中ではOWLの説明をすると関心を持っていただける方が多いようです。

居心地のよさを生み出すオラクルのDNAとは

―社内の雰囲気について。

中野:部署の人同士仲が良いですね。休みの日に社員同士交流するイベントがあったりするのですけど、辞めた人もそのイベントに来てくれたりして。(一同笑)

鈴木:オラクルには自分たちがやりたければやることができるカルチャーがあります。ですから、出戻りの方も多いですね。自分のやりたいことを居心地よくできるので、辞めた後この会社が良かったなって言う方は多いです。

―外資系はとても競争が激しいイメージがありますが……

鈴木:もちろん、厳しいところはあります。採用の面ではその点もちゃんと説明します。外資系の世界であること、あとは競争が激しいITの世界ですから厳しいというのは当然です。それでも一方で、“Work hard , Play hard”つまり、仕事もしっかりとやり、遊びもしっかり楽しもうというカルチャーもあります。やりたいことができる、でも仕事もきちんとやりましょう、という会社ですね。

―求める人材像や、実際に働く社員の特徴について。

鈴木:IT業界は常にテクノロジーが変わるし、組織のダイレクションも変わりやすい。そういったチェンジの中で方向性の違いにすぐに対応できる人かどうかが大切です。チャレンジングでかつ、変わりやすい中でもうまくやっていける社員が多いというのがうちの特徴だと思います。Open&Acceptableな人。どういう状況でも理解して頂ける方が常にオラクルでは成功するのではないでしょうか。チャレンジ精神がある人にはやりがいのある職場でしょう。逆に、ただ決まっている仕事を淡々とやればいいという人には合わないと思います。

川向:オラクルは柔軟な働き方を推進しています。業務のパフォーマンスを最大化するために各社員が責任をもって自身の働き方を確立しています。それは、上司の信頼とそれに応える部下がいるからこそ成り立つ関係です。そういう大人のやりとりが前提で、結果を出したうえで様々な提案を聞く土壌があります。言われたことをただ受動的にやるだけでいたい人はオラクルではやりにくいと思います。自分から手を挙げるのに抵抗がある人は楽しめない会社かも。成果も出したうえで、さらにその中で新しいチャレンジに自発的に取り組むことを、面白いとかやりがいがあるとか居心地が良いと思える人には、極めていい会社だと思います。

話している鈴木さんの画像

求職者に向けてのメッセージ

―これから就活をする就活生や求職者に向けて、メッセージをお伺いします。

中野:会社のカルチャーと合うかどうかが大切だと思います。就職活動中って自分を良く見せようと考えがちなのですが、自分が自然に会話していて合うと思ったところを見極めていって活動されたらいいかなと思います。頑張ってください。

川向:就活では企業に選ばれているという意識ではなく、自分が選んでいるという意識が大事だと思います。仕事ってマッチングなので、私もここで働きたいって思えるかどうかが重要。そういう意味で言うと、鈴木さんがやっているようなリクルーターたちは会社のカルチャーの一部を体現しているので、その人と話してみて、あれ?って思った会社はきっと合わないのだろうし、この人とだったら働いてみたいって思える会社だと、きっとその会社のカルチャーに、どこかでマッチする点があるということ。最初は処遇などに目が行きがちだと思うのですけど、それだけではなく、カルチャーが合うかどうか、自分の感性を信用して判断することが、ハッピーな就職をするポイントだという気がします。

鈴木:これは僕のイメージなのですが、日本の就職活動って自分が何をやりたいのかがよくわからないまま、100社くらいにバーッとエントリーシートを出して、一つか二つ決まれば、いいやというような感覚で入社していくというイメージ。でも、海外の就職活動というのは全然違っていて、自分から会社のビジネスや制度のことを色々調べて、自分が何をやりたいかも含めて考えてアプローチをする。そうやって勝ちとった結果だから会社にもチャレンジ精神をもって入っていきます。だから、日本で就職活動をやられる方も、どんな会社なのかしっかり調べたうえで、自分が選んだ結果を勝ち取って活躍して頂きたいと思います。

古積:なんだかんだ、会社って一日の3分の1はいなきゃいけないところ。それが自分の生活を支えるお金をいただく大切な部分になるので、どこでもいいやと選ぶよりは、自分なりにどういう会社に入りたいかというビジョンを考えてみてください。あなたがもしLGBTの当事者なのであれば、自分がその会社に勤めたときに、どういう風に働けるだろう、どういう風に気持ちよく生活できるだろう、というのを想像しながらフィーリングが合う会社を選んでいくのがいいかなと思います。もし就活中に、自分が当事者であることをカミングアウトできるのであれば、会社がどんなスタンスなのかどんどん質問をしてほしいと思うし、その結果ここは全然ダメだと思ったら、自分から蹴ってやるくらいの心構えでOKだと思います。

もし就活でカミングアウトはまだできないと言う人でも、障害者や女性の雇用についてどう思いますかとか、LGBT以外のマイノリティがどんな風に扱われているか、他の質問でもその会社のダイバーシティへの取り組みを聞くことが出来ると思います。カミングアウトする・しないに関わらず、この会社だったら、ハラスメントをあまり受けないで済むだろうなとか、想像しながら選んでいくことはできると思うので、是非そういった心持ちで仕事選びをしていただければなと思います。

『まさに草の根。オラクルのLGBTコミュニティ“OPEN”の取り組み』【前編】

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