【前編】『息子のままで、女子になる』公開記念!主演 サリー楓 × 星賢人 特別対談【サリー楓のライフヒストリー〜誰もがスイミーの目〜】

ライター: Rickey
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映画『息子のままで、女子になる』が6月19日に公開されることを記念して、主演のサリー楓さんと株式会社JobRainbow代表 星賢人の対談オンラインイベント「JobRainbow presents 建築家でありモデル、サリー楓に聞く!トランスジェンダー女性のライフヒストリー」が開催されました。

参加者からも好評だった当イベント。

イベント開催前から特に注目されていた3つのトピック

  • 「サリー楓のライフヒストリー」
  • 「ダイバーシティが職場にもたらすものは?」
  • 「映画に込めた想い・サリー楓の原動力」

のうち、前編では「サリー楓のライフヒストリー」を本人の語り中心にご紹介します。

新時代のトランスジェンダーとして、映画などが注目されている サリー楓さんについて詳しく知りたい方は必見です!

また、

「ダイバーシティと企業の関係について深く考えたい」

「映画『息子のままで、女子になる』ってどんな映画?」

と考えているあなたは後編もチェック!

【後編】『息子のままで、女子になる』公開記念!主演 サリー楓 × 星賢人 特別対談【都市もカルチャーも「ユニバーサルデザイン」に】

ウェルカミングアウト〜誰もが何かのマイノリティ〜

サリー楓さんのプロフィール
サリー楓さんのプロフィール

サリー楓さん(以下敬称略):私が男性から女性に性別を「越境」してきた中で不快に感じたことや、就職活動中にあった「嫌だな」という経験を、次の世代に活かせればいいなと思って活動しています。

「セクシュアルマイノリティ」って不思議ですよね。「自分はセクシュアルマジョリティです」と自己紹介することはほとんどないのに、マイノリティだけ敢えて特筆されることに、いつも違和感があります。

多数派の周りに追い出されたマイノリティがいる、と思われがちですが、セクシュアリティに絶対的な中心がいるわけではありません。というのも、この世界にマイノリティ性のない人間は1人もおらず、誰もが何かのマイノリティであり、私の場合はそれが「性別」というわかりやすいマイノリティ性ゆえに説明できるだけなんです。

サリー楓:人種や国籍だけではなく、例えば乾杯の時にビールではなくノンアルコール、など皆「みんなに合わせられない何か」を持っています。そんな自分の「マイノリティ性」に向き合うと、職場にいる誰かのマイノリティ性にも気付けるのではないでしょうか。

思えば私自身、自分のマイノリティ性に向き合うのは苦手でした。「体を鍛えないのか」「結婚はいつするのか」など「あなたは男性だ」という前提でかけられる言葉に対し、「自分は女性だ」と言って受け入れられるのか、不安で向き合えずにいました。

でも、大学院生の時にカミングアウトを決断しました。それは、研究室の先輩がゲイだとカミングアウトしていたからこそ、言っても大丈夫だ、という雰囲気があったからです。そこで、他の人がマイノリティ性をカミングアウトしていると自身も言いやすい、と身をもって体感し、雰囲気づくりの重要性に気づきました。

ちなみに、こうした雰囲気のことをウェルカム+カミングアウトでウェルカミングアウトと呼ぶそうでウェルカミングアウトな職場・社会をつくりたい、と思っています。

『スイミー』の自己実現

サリー楓:『スイミー』をみなさんはご存知でしょうか。小学2年生の国語の教科書に載っているので、公立小学校に通っていた方は読んだことあると思います。

スイミーの表紙

サリー楓:私が初めて自分の性別違和に気づいたのは1年生のことです。幼稚園では男の子と女の子が混ざって遊ぶ、というのが普通だったのに、小学生になるといきなりそれが変わりました。ランドセルの色が分かれ、昼休みに教室にいると「男の子なんだから外で他の男の子とドッジボールでもしなさい」と先生に言われ、「自分は男の子なんだ」と自覚的になりました。

絵を描いていると先生は声をかけてこない、と気づいてからは、絵を描いて休み時間をやり過ごすしていました。自由帳にクレヨンで絵を描いて、男の子からも女の子からも、先生からも声かけられない。自分を守るための絵でした。でも、最初は絵を描くのが好きではありませんでしたが、コンクールなどを通過するようになって少しずつ絵を好きになり始めました。

サリー楓:なよなよしている自分が仲間外れにされるようになった2年生の頃、先生から「あなたが男らしくないからでしょ」と指導され、ジェンダーのことで人生で一番悩みました。

そんなとき出会ったのが、『スイミー』でした。

自分だけ色が違って悩む魚が、赤い仲間たちに「大きな魚」の体を作らせ、黒い自分は目となって天敵を追い払う、というストーリーです。一見、仲間と目標を達成する、よくあるストーリーですが、私は「マイノリティ性・コンプレックスに悩みながらも向き合って、短所を長所に変換すれば自己実現できるよ」とスイミーが伝えてくれたように感じたんです。

サリー楓:スイミーは、悩みのタネだった肌の色を活かす場所を見つけ、強みにしました。となると、男の子の集団に入れない自分が休み時間をやり過ごすための絵は、スイミーの「目」になれるのではないか、と思うようになりました。

そこから、遠足のしおりや卒業文集のレイアウトを引き受ける「クラスの広告代理店」になりました。絵やポスターはあいつに任せろ、というポジションになれたのです。

体育祭での集合写真
体育祭での写真(丸で囲われているのがサリー楓さん)

サリー楓:高校の体育祭では、男子/女子競技どちらも出られなかったので、絵を描かせてもらいました。本当はスイミーを描きたかったのですが、「小魚が集まっているのは強そうじゃない」と言われ、鷹の絵を描きました。でも、みんなが絵の前に集まって写真を撮ってくれて、しかも自分が持ち上げられている、というのはまさにスイミーの目みたいで、嬉しかったです。

誰もがスイミーになれる

サリー楓:『スイミー』に出会った20年前、私は「建築家になる」という夢を立てました。小学校の文集には、中学で数学を頑張ることや、大学で一級建築士になることなど、目標も書いていて。諦めそうになった時はいつもこの文章を読み返して、今はなんとか、文集に書いた通りの人生になりました。

サリー楓さんの卒業文集
サリー楓さんの卒業文集

サリー楓:大学の建築学科に入ってからは美術部に入部し、起業もしました。そこで自分の絵やロゴデザインなどを引き受ける機会が増え、丸井グループが安田講堂で行ったジェンダーレス・ファッションショーではグラフィック担当兼モデルとなりました。自身のマイノリティ性とグラフィックが融合し、私の自己実現を表しているなぁ、と感じます。

安田講堂に立つサリー楓さん
安田講堂の真っ赤な舞台で、黒い衣装に身を包むサリー楓さん

サリー楓:小学校に入った時悩んで苦しかったのは、「女の子になりたい」という自分のマイノリティ性に向き合ってあげられなかったからだと思います。『スイミー』に出会えて、早い段階でマイノリティ性が自己実現につながるんだな、と気づけたのは幸運でした。

「誰かと違う」は「誰かより劣っている」ではありません。誰もが何かのマイノリティだということは、「誰もがスイミーになれる」という素晴らしいことです。

自分自身のマイノリティに向き合う重要性に、『スイミー』を通じて気づけたサリー楓さん。
後編では、映画『息子のままで、女子になる』に込めた想いと、ダイバーシティを取り巻く社会の”今”について、株式会社JobRainbow星 賢人と対談します。

【後編】『息子のままで、女子になる』公開記念!主演 サリー楓 × 星賢人 特別対談【都市もカルチャーも「ユニバーサルデザイン」に】

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