セクシュアリティにとらわれない身だしなみとビジネスマナーとは?【LGBT就活・転職ガイド 1-7】
- 就活・転職では、第一印象が大事!
- LGBTと身だしなみの関係
- セクシュアリティにとらわれない身だしなみ
- 身だしなみの重要なポイント
- 身だしなみで気をつけておきたいこと
- セクシュアリティにとらわれないビジネスマナー
- POINT
就活・転職では、第一印象が大事!
よく「人の印象は第一印象で決まる」といわれますが、就活・転職の場面でも第一印象は重要だといわれています。ある心理学の法則によると、第一印象に影響を与える要素は「視覚」「聴覚」「言語情報」の3つがあるそうです。
この中でも、視覚情報(身だしなみ、表情、ふるまい)が相手の印象に最も影響を与えるとされています。清潔感のある身だしなみと明るく礼儀あるふるまいを心がけましょう。
またこれから社会人として活躍していくうえでも、TPO(時、場所、場合)に合った身だしなみとビジネスマナーを身につけておくことは欠かせません。
LGBTと身だしなみの関係
LGBTの中でも、とくにトランスジェンダーは、性自認と合わないスーツを着たくなかったり、男女の性別に分けられた服装にとまどいを感じたりして、服装や身だしなみについて悩みをもっている人も多くいます。
またLGBTに限らず、そもそもスーツを着たくない人や、女性はメイク、男性はヒゲを剃らなければいけないといった男女別のマナー、髪は黒くしなければならないなどの世間の常識に抵抗感をもつ人は多くなっています。
こうした就活生・転職者のニーズに合わせて、企業側から私服での面接をあえて推奨する場合なども増えており、確実に就活・転職での身だしなみの幅は広がっています。
とはいえ、繰り返しになりますが、「自分らしく働く」ことと「自分の理想のままに働く」ことはまったく別の話です。企業は個人の理想をすべて叶えるためにその人を採用するわけではなく、「成果を出す人材」を常に求めているからです。
現実問題として、仕事においてお客様対応や円滑なコミュニケーションのための最低限必要な清潔感やマナーが必要とされる場面があります。それは採用面接などでも評価に入ってきてしまいます。
もちろん、身だしなみのルールがゆるい会社で働くことが、あなたにとって優先度が高いのであれば、そういった企業だけに絞って受けることもひとつの手です。
ただトランスジェンダーに向けてお伝えしておきたいのは、性自認に合った服装や身だしなみをすることは、ビジネス上のマナー違反には決してならず、仕事の能力や採用可否にも直結しないということです。
私自身これまで多くのトランスジェンダーが、性自認に合った姿で就活・転職をし、成功するのをサポートしてきました。理解のない企業はゼロではありませんが、必ずあなたが自分らしく働ける企業が存在することを忘れないでください。
ここからは自分に合ったスタイルで心地よく就活・転職にのぞめるよう、セクシュアリティにとらわれない身だしなみとビジネスマナーを紹介します。
セクシュアリティにとらわれない身だしなみ
身だしなみは、清潔感を第一に心がけます。基本的に服装の選択に正解はありませんが、企業から「私服(平服)でお越しください」「スーツでお越しください」などと、指定される場合もあります。
きちんとした服装は、相手への敬意・誠意の表れにもなります。身だしなみもコミュニケーションのひとつととらえて、自分の価値観やあり方を重視しすぎた自分勝手な服装にならないように気をつけましょう。
ここでは、LGBTの就活生・転職者が悩みがちなスーツの着こなし例を5種類紹介します。
- ビジネスカジュアルのスタイル(2種類)
- MtFのスタイル
- FtMのスタイル
- Xジェンダーのスタイル
これらを参考に、ご自身でもアレンジしてみてください。
ビジネスカジュアルのスタイル例1
(引用:『自分らしく働く LGBTの就活・転職の不安が解消する本』星賢人、翔泳社、2020)
ビジネスカジュアルで OKといわれた場合、とくにXジェンダーは困ってしまう人もいるようですが、基本的にはスーツ選びと同じです。
MtXはスキニーパンツに、ブラウスとジャケットを組み合わせるのもよいでしょう。
また、足を痛めやすいパンプスではなく、スニーカーを
推奨する企業もあります。
ビジネスカジュアルのスタイル例2
(引用:『自分らしく働く LGBTの就活・転職の不安が解消する本』星賢人、翔泳社、2020)
FtXはメンズパンツにYシャツとメンズジャケットを組み合わせると、しっくりくる人が多いようです。
春先はまだ冷えるので、タートルネックもおすすめです。
ビジネスカジュアル2例のポイントは「落ち着いた色味」「清潔感」「ジャケット」の3点です。
MtFのスタイル例
(引用:『自分らしく働く LGBTの就活・転職の不安が解消する本』星賢人、翔泳社、2020)
就活を経験したMtFの先輩からアドバイス
「人によっては、肩幅や身長の関係で、大きめのサイズを選ぶ必要があります。私の場合は、上半身がLL、下半身がMと上下でサイズ違いのものを選んで体のラインがきれいに見えることを意識しました。また、胸元の襟が太く、シャツの見える面積が広いものを選ぶことで、肩幅を狭く見せていました」
FtMのスタイル例
(引用:『自分らしく働く LGBTの就活・転職の不安が解消する本』星賢人、翔泳社、2020)
転職を経験したFtMの先輩からアドバイス
「既製品のメンズスーツは、体に対して大きいのでダボついてしまいます。そこで私は、オーダーメイドで仕立てました。『LGBT スーツ』と検索すると比較的リーズナブルに、理解あるお店を探せます。『肩幅』『胸が張らない』『腰と太もものラインが出ない』の3点を意識しました。Yシャツは襟が短いものを選ぶと、肩幅が広く見えて大人っぽさが出ました」
Xジェンダーのスタイル例
(引用:『自分らしく働く LGBTの就活・転職の不安が解消する本』星賢人、翔泳社、2020)
FtXの先輩が実際に就活で着用したメンズスーツにブラウスとレディースシューズを合わせたスタイルです。メンズとレディースのミックスでも表現の幅を広げつつ、リクルートスーツとして清潔感と信頼感のある身だしなみとなります。
たとえば、レディーススーツにネクタイとメンズシューズを合わせるスタイルも、全体としてバランスがよく、ジェンダーの偏りが見えにくくなります。
身だしなみの重要なポイント
身だしなみを考えるうえで重要なポイントは、選考のために気にかけるのではなく、実際にその企業で働くことを見据えたうえでの適切な服装や髪型を意識することです。
たとえば、入社後の服装がスーツ着用必須である企業を受ける場合は、スーツで選考を受けることがのぞましいでしょう。もし、選考段階でスーツを着用することが難しいのならば、入社後はもっとつらくなることが予想されます。
私服で選考を受ける場合も、入社後の服装を意識して選びましょう。たとえば、私服OKなIT企業だとしても、顧客と対面する仕事であれば、襟つきのポロシャツにチノパンなどを選ぶことで、信頼感のある印象を残すことができます。
Q. スーツの着用に抵抗があり、カジュアルな服装で働ける企業を受けていますが、最終面接でスーツを指定されるのはなぜでしょうか?
人事が服装について指示を出す場合は、あなたを援護するための味方になってくれていると考えましょう。
最終面接に出てくる社長や重役は一般的に年齢層が高く、あなたの中身を見る前に「スーツじゃないなんてけしからん」というだけの理由で不採用にすることもまだまだあります。
人事からすれば、そんなつまらないことで不採用になってほしくありません。そのため、最終面接にスーツを指定することがあります。
そのうえで、場合によってはスーツが求められる企業で働くことができるのか、冷静に判断してみましょう。
Q. 普段はメイクをしないのですが、就活や転職ではメイクをした方がよいですか?
メイクをせずとも清潔感や表情の豊かさで好印象を与えるように心がければ問題ありません。
職場でのメイクが必須ではない企業の場合、選考時のメイクは自身をアピールするポイントのひとつでしかありません。
もしあなたが普段からメイクをせず、これからもしたくないのであれば、接客業などの職務中のメイクを必須とする企業を受けるのは得策ではありません。
もしマイナス要素となるリスクを少しでもなくしたいということであれば、選考だけは軽くメイクをするというのも選択肢のひとつです。
身だしなみで気をつけておきたいこと
髪型、服装、カバン・靴、表情・姿勢、メイク他についての身だしなみのチェックポイントを紹介します。
ここでは「○」「×」ではなく、あえて「○」「△」を用いています。そもそも身だしなみはアイデンティティのひとつであり、良し悪しを誰かが決められるものではないからです。
ただ、現時点では、「△」より「○」の方が多くの企業の選考上、好印象につながるということは覚えておきましょう。
身だしなみのチェックポイント
(引用:『自分らしく働く LGBTの就活・転職の不安が解消する本』星賢人、翔泳社、2020)
トランスジェンダー、Xジェンダーにとっては、身体のサイズに合ったスーツがないことや、女性らしい服装、男性らしい服装のどちらも窮屈に感じることもあるでしょう。
「カミングアウトは必須じゃない!」でお話ししたようにし、そもそもセクシュアリティが採用可否の判断材料になることはありません。女性らしさ、男性らしさを服装で無理に表現する必要はありません。
たまに、自分の性別を強く表現したいあまり、身体のラインがはっきり見えるミニのワンピースや、胸元が大きく開いたシャツを着て面接に行く人がいます。ですが、必要以上に就活・転職の場面で女性らしさ、男性らしさを強調してしまうと、かえってマイナスの印象を与えかねません。この点も注意が必要です。
セクシュアリティにとらわれないビジネスマナー
身だしなみと同様、ビジネスマナーも相手に敬意を表すコミュニケーションのひとつです。
型通りに行動するのではなく、目的や状況に応じて臨機応変にふるまえることが大切です。
たとえばお辞儀をするとき、お辞儀の角度などテクニックを参考にするのもひとつですが、最も肝心なことは行動を通して気持ちが伝わるよう意識をすることです。同じお辞儀であっても、面接前と面接後とでは少し違った気持ちをもつことがあるかもしれません。
とはいえ、緊張した場面ではなかなか気が回らないこともあると思います。学生から社会人へ意識を切り替えるうえでも、日頃からマナーを気にかけながら過ごしてみるとよいでしょう。
ビジネスマナーのチェックポイント
(引用:『自分らしく働く LGBTの就活・転職の不安が解消する本』星賢人、翔泳社、2020)
POINT
- とにかく清潔感を意識した服装を心がける
- ビジネスマナーを普段から取り入れるようにする
- 「LGBTのための就活・転職ガイド」をイラスト入りでわかりやすくまとめた書籍版『自分らしく働くLGBTの就活・転職の不安が解消する本』も発売中!
- LGBTフレンドリーな企業や求人を探したい方は、JobRainbowに会員登録!