職場をLGBTフレンドリーに変える、3つのポイント【LGBT就活・転職ガイド8-5】

ライター: JobRainbow編集部
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主体的に企業改革に取り組んでみよう

LGBTフレンドリーでない企業に入社した場合、社内制度が変わるのを待つだけではなく、自分から主体的にはたらきかけ、制度改善の取り組みを行うこともできます。LGBTフレンドリーな企業だとしても、入社してみたら不十分なところを発見するかもしれません。

入社直後や転職してすぐに、これらの取り組みをはじめることは難しいかもしれませんが、その方法をあらかじめ知っておくことで、いざというときにすぐ行動できたり、希望を持って働くことにもつながります。また、本業はあくまで仕事内容です。成果を出すという目的を忘れずに、業務がおろそかにならないようにすることも大切です。

ここでは、JobRainbowが行っているLGBT研修でお話していることをもとに、職場を変える方法をいくつか紹介します。この方法を参考に、みなさんにもぜひ、前向きに小さなことから企業改革に取り組んでみてほしいと思っています。

また次の項目で紹介するコミュニティをつくることからはじめて、変えていく方法もあります。

LGBTフレンドリーな企業改革の方法

1. 現状を把握しよう

職場を変えるには、現状なにができていて、なにができていないかを確認するところからはじめます。JobRainbowが提供している24項目指標を参考に、チェックをつけてみてください。すぐにできそうなことから、年単位を時間がかかりそうな項目もあるでしょう。△のチェックから取り組みはじめることをおすすめしています。

※○:できている 
△:できていないが取り組みやすそう 
×:できていない

2. 社内のだれと協力をすると実現しやすいか

自分一人で制度を変えることは不可能です。社内にいる様々な立場・役職の人のなかから、だれと協力をすると実現しやすいか、キーパーソンを見極めます。

たとえば、人事のなかにダイバーシティ部門があれば、その担当者の方はあなたの相談をないがしろにはしないはずです。支店や営業所の設備に関することは支店長や営業所長が権限を持っているかもしれませんが、もし年配で理解面で不安がある場合は、発言力のある現場のリーダー的立場の人が適任かもしれません。

3. どんな説明をすると実現しやすいか

協力者に「変えなければいけない」と思ってもらえるよう、LGBTへの取り組みをすることがいかに企業にとってプラスになるのかを伝えることで、実現が近づくでしょう。あなた自身の困っていること、職場への思いは会社にとっては重要な意見です。それに加えて、ここでは説得材料を3つ紹介します。

説得材料1: 社内のLGBTの割合

2019年、LGBT総研による、国内最大規模となる42万人を対象とした調査では、日本でLGBT・セクシュアルマイノリティ該当者は10%と判明しました。つまり、100人の会社ならば10人、1000人の会社ならば100人のLGBT従業員が、カミングアウトの有無にかかわらずいる計算になります。このことは多くの企業にとって、決して他人事ではありません。これらの従業員は、制度が整っていないことで困難やストレスを感じ、生産性が低下しているかもしれないのです。従業員が安心して働ける職場をつくることは、企業にとって必須の課題といえるでしょう。

説得材料2: LGBTの働きやすさが企業の生産性アップにつながる

企業のLGBTやダイバーシティへの取り組みが、企業の生産性向上につながるというデータも報告されています。海外では、これらの取り組みが進んでいる企業ほど、成長率が高いともいわれています。実際、カミングアウトした当事者からは「LGBTであることを隠すためにエネルギーを割かなくなり、人間関係が楽になっただけでなく、仕事のパフォーマンスが向上した」という声もよく聞かれます。不平等さを感じにくくなることで、会社へ貢献する意欲も強くなる面もあるでしょう。

カミングアウトするかしないかは本人が決めることですが、悩んでいる従業員にとってカミングアウトしやすい環境であったり、カミングアウトしなくても当たり前に自分らしくいられる環境づくりは、企業の業績向上や成長率にもプラスになるのです。

説得材料3:人材確保にも有効

JobRainbowの調査によると、LGBTフレンドリーな企業とそうでない企業とを比べたとき、LGBTフレンドリーな企業で働きたいと思っているLGBT当事者は89%、LGBT非当事者は69%にものぼることがわかりました。JobRainbowの求人サイトも、非当事者の利用は年々増えています。求職者が企業を判断する際にLGBTフレンドリーかどうか、ダイバーシティの取り組みをしているかどうかといったことが、ひとつの重要な判断材料になっています。

本章冒頭でお話したように、LGBT従業員の離職率は非当事者よりも約2倍も高いことがわかっています。日本は今後も長期的な人材不足が予想されるなか、人材確保の面でもLGBTフレンドリーな取り組みは喫緊の課題であるといえます。

取り組みをためらう企業も

企業研修の際にこうした話をすると、思わぬ反応が返ってくることがあります。たとえば「生産性は向上するかもしれないけど、同性パートナーシップに対応したら人件費のコストがかかるのではないか」という声です。そもそもLGBTの人は10%、そのうちの全てが同性愛者ではありません。また、今は異性同士のカップルでもわざわざ結婚しない人もいるように、すべての同性パートナーをもつ人がすぐに制度を利用するかというと、現実的にはそうではないと考えています。それでも、会社が同性パートナーシップ制度を整えることは、それ自体で「会社はLGBTの存在を想定してくれているのだ」とポジティブな影響を持ちます。

非当事者にとっても、社員を大切に考えている会社なのだという認識につながるでしょう。就業規則にたった一文を入れるだけで従業員の士気を高められるならこんなにお得なことはありません。もちろん実効的な制度になるよう継続的な理解醸成が必要ですが、コスト的にマイナスになることはないでしょう。

Q. 人事担当者に同性パートナーシップ制度の導入を持ちかけたら、「うちにはあなた以外のLGBTはいない、一人のために制度を変えるのは難しい」と言われてしまいました。

人事担当者のコメントには、2つの誤解があると考えられます。

まず「LGBTはいない」のではなく「カミングアウトしているLGBTがいない」ということで、LGBTがいないと言い切ることはできません。制度が適用される該当者を一人だと決めつけることはできないのです。困っているLGBTがいるのにも関わらず、対応できていなかった結果、そのことが原因で離職してしまう人もいるかもしれません。

また、採用選考で出会う候補者の中のLGBTの人数を考えると、決して無視できる数字ではないでしょう。本項目で紹介した、3つの説得材料を参考に、LGBTに対する知識と、企業にとってのメリットを合理的に伝えてみることをおすすめします。応援しています。

POINT

  • 焦らずに長期的な視点を持って取り組むことが大切
  • 職場を変えるにはエネルギーがいるので、本業にがおろそかにならないように気をつけよう

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