【学生ライター発掘プロジェクト⑤】ゲイに恋をした女子高生の話【なお】
本コラムは、LGBTQ+のライフとキャリアを支えるJobRainbow MAGAZINE主催「JobRainbow学生ライター発掘プロジェクト!」でご応募いただいたコラムとなっております。
なおさん、ありがとうございました。
LGBTじゃないのに?
静岡県の大学3年生である私は、大学でLGBTQ+を含む性の多様性について研究しています。
そして、大学にあるLGBTサークルにも所属しており、週に1回、サークルのメンバーで集まって活動をしています。
また、大学内でLGBTに関する講座をひらいたり、地域の中学校で講師として性の多様性に関する講義をした経験もあります。
しかし、私自身は、シスジェンダーの異性愛者。LGBTの当事者ではありません。
「LGBTの研究をしているってことは、あなたも当事者なの?」
「当事者じゃないのになんでLGBTの研究をしているの?」
3年間活動をしてきて、こう言われたこともあります。
確かに、LGBTについての講座やイベントでは、当事者の方が自身の体験談をもとにお話をされているのが多いイメージはあります。
ではなぜ私が大学でLGBTについて学んでいるのか……
高校3年生の時の出来事
高校時代、私には好きな人がいました。Aくんという男の子。
Aくんは、私の親友のような存在で、どんな時でも、私のいろんな話や悩みを聞いてくれました。
また、いわゆる「恋バナ」をすることもありました。
学生時代、こんな話をした人、された人、聞いたことがある人は少なくないと思います。
「好きな女の子はいるの?」
「好きな女の子のタイプ教えてよ」
「将来誰かと結婚したら、子どもは何人欲しい?」
「彼女欲しいと思わないの?」
当時の私は、当たり前のようにAくんにこんな質問をしていました。
彼の事が好きだった私は、彼について少しでも知りたくて、色んなことを質問しました。
でも、毎回返事は曖昧。Aくんは、あまり恋愛に興味ない人なんだな。そう思っていました。
突然のカミングアウト
そろそろ、告白してみようかなぁ。
12月。卒業が近づいてきて、私はこう思うようになりました。
卒業式までには絶対に告白するぞ。
そう思っていた矢先です。
普通の会話をしていると、突然Aくんから、お互い卒業してしまう前に、私に打ち明けたいことがあると。
「僕、ゲイなんだよね」
突然のカミングアウトに、私は一瞬パニックになりました。
今まで彼のことを傷つけていた……?
今まで、LGBTという名前は聞いたことあるけど、こんなに身近にいるとは、当時の私は思ってもいませんでした。
「しかも、よりにもよって好きになった人が……」
当時の私は、LGBTについて全く知識がありませんでした。
「ゲイってことは、男の子が好き?私は脈なし?」
そんなショックと当時に、
「私、今まで彼の事を傷つけていた…?」
そう、私が今まで彼の事を知るためにしてきた「女の子のタイプは?」「彼女は?」という色々な質問。それらは、「Aくんは女の子が好き」ということを前提にしていた質問だったのです。
彼は一体どんな気持ちで聞いていたのだろうと思ったら、彼がゲイだったショックよりも、大きな後悔が私を襲いました。
もっと彼の事を知ろう!
その日から私は、少しでも彼の事を知るためにLGBTについて調べ始めました。そして色々な事を知りました。
自分が思っていたよりも、LGBT当事者は多かったということ。
その大半の人は、カミングアウトできずに苦しんでいるということ。
日本は、他の国と比べて、学校でLGBTについてあまり教えてもらえていないということ。
調べれば調べるほど、そこには私の知らなかった世界が広がっていました。
彼の話を聞いて、変わる私
カミングアウトしてくれたその日から、彼は私に色んなことを話し、教えてくれるようになりました。
好きな男の子のタイプの話。かっこいい俳優の話。
そして、学校での辛い体験。悩み。
そうやって、LGBTについて色んな事を知り、彼の体験を聞いていくうちに、ある考えが浮かんできました。
もっとLGBTについて知りたい。そして彼の事を知りたい。
彼や、彼のように悩む人たちのために何かしたい。
その思いは、卒業した後も消えることはありませんでした。
いざ、大学へ
無事、大学に進学し、私は社会学を学ぶ学部に入学。
大学にLGBTサークルがあるのを知り、サークルに所属しながらLGBTについて学ぶようになりました。
そして、もっと多くの人に、子どもたちにLGBTの事を知ってもらいたいという思いから、講師として活動を始めました。
Aくんとは今でも時々連絡を取っています。
卒業してから3年が経ち、お互い彼氏ができ、ときどき惚気話を聞かされます(笑)
おわりに
私がLGBTを知った2016年から、たくさんのことが変わりました。
ドラマでLGBTについて取り上げられるようになり、同性婚を認めるための動きも少しずつ進んでいます。
社会が少しずつ変わっていっている気がします。
私が3年間学んできて思うのは、「知る」ということがどれだけ大切かということです。
私があの時、LGBTの事をもっと知っていたら、違った対応ができたかもしれない。
そう思う時があります。
もし、身近な人が、大切な人が、友達が、家族が。「実はね」と打ち明けてきてくれた時に、「知っている」ことで誰かが傷つくことを避けられるかもしれない。理解してあげられる、受け入れてあげられるかもしれない。
私は、そう思って、色んな人に「知って」欲しくて
今、活動しています。
JobRainbow編集部より
ゲイの親友に恋をしたことをきっかけにLGBTをもっと知っていきたいと思った道筋が、読み手にとって勇気や気づきを与える素敵なコラムでした。なおさん、ありがとうございました! 「JobRainbow学生ライター発掘プロジェクト!」のコラム⑥はこちら→【学生ライター発掘プロジェクト⑥】私の大学のLGBTへの取り組み〜関西学院大学編〜【永江 春輝】