ゲイカップルの悩みや課題
LGBT(レズビアン ・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーの頭文字をとったセクシュアルマイノリティの総称)のなかでも、ゲイをカミングアウトして活躍する芸能人は多く、テレビや映画で目にすることも増えてきました。
しかし、実生活においていまだに「ゲイカップルだからこそ」つきまとう課題は多いです。
そこで今回は、ゲイカップルが悩むことの多いことがらをライフイベント順に紹介します。周囲の人が働きかけることによってなくなる問題は数多いので、全ての人に読んでいただきたいです。
※なおこのコラムにおいては、便宜上シスジェンダーかつヘテロセクシュアルの人同士のカップルを「異性愛カップル」と表記します
ロールモデルがいない?
そもそも、ゲイカップルにどんな人たちがいるかわからない、参考にできるロールモデルのような存在がいない!と困っている方も多いと思います。
そこで、まずは有名なゲイカップルをご紹介します。
1. まさたいカップル(まさと&たいが)
若者に人気のSNS「TikTok」で20万人近いファンを獲得しているまさたいカップル。両方とも男子高校生ミスターコンでファイナリストになった経歴を持つ、容姿端麗なカップルです。SNSでプライベートに関する発信を頻繁にしているため、どういったところでどういった楽しみ方をするのか、まさしくロールモデルとしても参考になるでしょう。
2. エルトン・ジョン、デヴィット・ファーニッシュ
海外の大物ゲイカップルといえば、シングルとアルバムの売り上げがローリング・ストーンズを超えるイギリスのミュージシャンエルトン・ジョンと、カナダの映画監督デヴィット・ファーニッシュのカップルです。両者がビッグネームであることに加え、21年の交際を経ての結婚ということもあり、日本でも大きな話題となりました。
「出会う場」の悩み
そもそも、ゲイのパートナーを見つけるとき、出会える場が限られてしまっている現状があります。
具体的には、
- ゲイ・LGBTQ+コミュニティで出会う
- サイト・アプリを利用
といったケースが多いです。
1. ゲイ・LGBTQ+コミュニティで出会う
企業や大学に最近数多くできているLGBTサークルや、カミングアウトして働く方の多い新宿二丁目などには、交流や出会いを求めている方が多いです。
もちろんアライとしてLGBTQ+のコミュニティに参加する人もいます。ですが、性自認や性的指向に関して相手を傷つけるような言動(いわゆるSOGIハラスメント)が少ないからという理由でその場にいる当事者は多く、やはり他のコミュニティよりはゲイ同士で出会いやすい現状があります。
実際私にも、大学のLGBTサークルで出会ったパートナーと交際しているゲイの友人が3人います。
2. アプリの利用
ユーザーがゲイであることをオープンにして利用するゲイ向け出会い系アプリも様々な種類があります。出会い系アプリやサイトでは、相手も「出会いを求めているゲイ(もしくはバイセクシュアル・マセクシュアル)」であり、出会うという共通の目的があるため関係構築が比較的しやすいと言えます。
よく使われているアプリ・サイトとしては、9monstersやCool Boys、クリスタルボーイズなどがあります。また、人気マッチングアプリTinderでも性的指向が登録できるため、他のマッチングアプリに比べゲイ同士で出会いやすくなっています。
ただ、出会うことを目的としたスポットやサイトの多くは今もヘテロセクシュアルであることが前提となっているものばかりで、上記のような限られた部分での出会いに限られてしまうことは問題と言えるでしょう。
「カップル割」の悩み
付き合い始めてデートをする中で、「カップル割」がある場所に行く場面が出てくるでしょう。カップル割とは、付き合っている2人で訪れると価格が割引になるサービスのことです。水族館やテーマパークといったいわゆるデートの定番スポットでこの「カップル割」は導入されているのですが、これらも異性愛カップルを想定しているものが多いです。
ゲイカップルがカップル割を利用しようとした時、「ふざけている」とみなされたり、「カップル割の対象外とされる」こともあります。異性愛カップルだと当然のように適用されるのに、ゲイカップルだとそうではない、とは理不尽にも思えます。
漫画家らくたしょうこさんが公開している作品『夏の終わり』では、こうしたカップル割の現状が読みやすく漫画で描かれているので、特に接客業をしている方はぜひ目を通してみてください。
夏の喫茶店 #創作BLpic.twitter.com/UllOJalGqI
— らくたしょうこ4/25新刊発売 (@rakutadesu) 2018年6月26日
「住まい」の悩み
ゲイカップルが同棲しようとした時、
- 内見の時に不動産会社の社員が二人の関係を根ほり葉ほり聞いてくる
- (1に関連して)身分証明時にセクシュアリティをカミングアウトさせられる
- 大家が「ゲイカップルだから」という理由で入居を拒否する
- ローンを組ませてもらえない
といったケースが報告されています。
1. 内見の時に不動産会社の社員が二人の関係を根ほり葉ほり聞いてくる
2.(1に関連して)身分証明時にセクシュアリティをカミングアウトさせられる
異性愛カップルの場合別に二人の関係を聞いてこないのに、ゲイカップルの場合関係性をしつこく詮索されることがあります。
関係性をオープンにしたい方もいれば、したくない方もいます。そして本来、入居する際に必要な情報は「同居人」という情報だけのはずです。しかし、異性愛カップルだと掘り下げられない二人の関係を、ゲイカップルの場合オープンにさせられることがあるというのは不思議ですね。
3. 大家が「ゲイカップルだから」という理由で入居を拒否する
偏見を持った大家の中には、「ゲイカップルだから」というだけの理由でゲイカップルの入居を断る人もいます。(参考:リクルート住まいカンパニーが、同性カップルの入居が可能な物件を検索できるサービスの導入へ)
「ゲイカップルだから部屋を汚すに違いない」
「ゲイカップルだから周囲の住民から苦情が来るかもしれない」
こうした意見があるのですが、「ゲイカップルであること」と「部屋を汚すこと」に直接の因果関係はありませんし、「苦情が来るかもしれないこと」はどんな入居者にも言えることです。
4. ローンを組ませてもらえない
お互いが住宅ローンを組むペアローンはほとんどの場合、連帯保証人になれる親族同士でないと組むことができません。しかし現在日本では同性婚が認められていない以上、ペアローンは組めず、異性愛カップルとは税に関する手続きなどが変わってくることがあります。
また、「二人の家なのに共有名義にできない……」といった悩みもよく聞きますね。(参考:SUUMOジャーナル「同性カップルの住宅購入【前編】 住宅ローンの名義や支払いはどうする? 4人の専門家に聞いた」)
不動産業界に関わる方でこの記事を読んでいる方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度ゲイカップルの入居を断る理由について、論理的に考えてみてください。すると、ゲイカップルを取り巻く不条理な現状が明らかになってくるでしょう。
LGBTフレンドリーな不動産会社はこちらの記事にまとまっていますので、ぜひ参考にしてください。
「結婚」の悩み
1. 同性婚
仲を深めていくなかで、いずれ浮上するのが結婚の話題です。結婚する・しない以前に、現在の日本においては同性婚が認められていないという問題があります。2019年のバレンタインデーに13組の同性カップルが一斉に提訴したことは、ニュースでも大きく取り上げられました。(参考:バレンタインデーの今日、同性婚訴訟が始まりました!)
先日ついに台湾でも同性婚を認める法案が議会に提出され、閣議決定されました。これはアジア初のことである一方、同じアジアにある日本では未だ一部地域での同性パートナーシップ導入にとどまっています。
しかし、2019年1月30日に都道府県単位では初となる茨城県の同性パートナーシップ制度導入検討が発表されるなど、少しずつ社会は変わりつつあります。(参考:茨城県が「パートナーシップ制度」導入めざす 都道府県で初めて、同性カップルの権利後押し)
ただ、異性愛カップルにおいては「当然できる」結婚が、ゲイカップルだとできない、となると、どうしても優劣が生じているように感じざるを得ません。
2. 子どもがほしい
ゲイカップルの中にも当然、子どもが欲しい人々がいます。
2017年には大阪市でゲイカップルが里親として認定されました(参考:日経新聞「男性カップルが里親に 大阪市が異例の認定」)が、これも子どもが欲しいゲイカップルがいることの証明となるでしょう。
しかし、ゲイではない方だけでなく、自身がゲイでありながら「子どもができないことは覚悟の上だし、文句をいうのはおかしい」と発言する方が散見されます。ゲイ同士で対立が生じていることも、このテーマの根深い問題点だといえるでしょう。
もちろん、異性愛カップルの中でも子どもを授かれないことに悩む方はいらっしゃいます。ただ、社会の構造においては、「異性愛カップルは子供を産む/産まないの選択ができる」一方で「ゲイカップルは子供を産めないという一択」を強いられていることは紛れもない事実でしょう。
諸外国では「代理母出産」も可能になっているなか(参考:丸岡いずみ夫妻で再び注目される「代理母」 解禁を訴え16人を出産させた医師の思いとは)、日本国内ではまだ十分に制度が整備されていません。
「どちらがいい/わるい」と論じる以前に、ゲイカップルの抱える悩みにきちんと向き合うことが必要でしょう。
同性婚のトピックはコラムで詳しく扱っていますので、ぜひご覧ください。
【なぜ必要】日本で同性婚の実現は可能?パートナーシップ制度との違いや社会への影響も解説!
【差別ではない?】同性婚反対派の議論【解説してみた】
「老後」の悩み
4.「結婚」の悩みとも繋がってきますが、老後になるとどうしても保険や看取りについても考える必要が出てきます。
「法的に家族として認められていない場合保険金を受け取れないことがある」「親族とみなされないため看取りを病院によって拒否される」……こうした悲しいケースは後を絶ちません。病院を門前払いされ、長きにわたって連れ添ってきたパートナーの最期を見ることができない人の気持ちは、想像に耐えない辛さがあります。
こちらの記事では、同性パートナーを意識した制度設計の保険・ローンを取り扱う金融会社がまとまっていますので、ぜひ参考にしてください。
おわりに
ゲイカップルの悩みには、本人たちがどう思っているか以前に、「社会における構造上の不均衡」が原因となっているものが多いです。
出会いのきっかけが限られる、カップル割を使えるかどうか悩む、子供を産む/産まない・共同ローンを組む/組まない選択がそもそもできないetc…
異性愛カップルにおいては選択の余地があるのに、「ゲイカップルだから」選択ができず、加えてそれが「仕方ない」ことになっている現状こそが、悩みの根底にあるのではないでしょうか。
こうした悩みに対して、同性パートナーを配偶者として認定、福利厚生の対象とするなどの働きをしているLGBTフレンドリーな企業は徐々に増えつつあります。