性別移行のタイミングを考えよう【LGBT就活・転職ガイド 1-6】
- 性別移行に必要な期間や費用は、人それぞれ異なる
- 性別移行のステップ
- 決断を急がない、大切なのは自分がどうありたいか
- 働きはじめてから性別移行をはじめることもできる
- キャリアプランとトランスジェンダーフレンドリーな職場
- POINT
性別移行に必要な期間や費用は、人それぞれ異なる
からだの性とこころの性に違和を感じるトランスジェンダーは、こころの性に合ったからだの性へ変化させる「GID(性同一性障害)医療」を受けるという選択肢があります。
これらの治療は心身ともに負担が大きく、治療および手術の内容や本人の体調により術後の回復期間は異なります。
数週間で回復する人もいれば、数年にわたって体調不良や精神不安定に陥ってしまう人もいます。
性別移行のステップ
まず、性別移行がどのようなステップで進んでいくのかを説明します。
1. 診断書の取得(通院頻度:1~2回/月 所要期間:~半年間)
専門の医療機関(ジェンダークリニック)で「性同一性障害」の診断を受けます。
初診から診断までの期間や通院頻度は病院によって異なりますが、1か月に 1~2回の通院で、半年ほどかかることがあります。
2. ホルモン療法(通院頻度:1~4回/月 所要期間:継続的)
ホルモン剤の投与を受けると少しずつ体が変化していきます。体調不良や抑うつ状態になるなどの副作用が表れることもあります。
なお、通常、ホルモン療法は、性別適合手術を受けたり、戸籍上の性別を変えた後も継続します。
3. 手術療法
- 性別適合手術(所要期間:数日 ~3か月間)
内性器(卵巣や精巣)摘出や外性器の手術です。国内では、対応可能な専門医が不足しているため、タイなど海外で手術を受ける人も多いです。
性別適合手術を行うと、戸籍上の性別変更が可能になります。 - その他(乳房切除・喉仏切除・声帯手術など)
いずれも、術後は定期的な検診や通院が必要となることがあります。
決断を急がない、大切なのは自分がどうありたいか
もしあなたが若い学生で「就活のために手術を受けて戸籍を変えたい」と思っているならば、一旦立ち止まって考えましょう。なぜなら、手術は最も体への負担が大きく後戻りできない決断だからです。
体にメスを入れるかどうかは、十分な情報収集と準備をしたうえで、誰かを納得させるためでなく、自分のために決断してほしいと思います。
実際に、こころの性に合わせた見た目と戸籍の性別が一致しない状態で、通称名を使うなどして就活を行って内定をもらい、自分らしく働いている先輩もいます。
そういった先輩たちは、精神的にも金銭的にも比較的余裕をもって、働きながら休暇をとって手術を受ける人もいます。
働きはじめてから性別移行をはじめることもできる
働きはじめてから性別移行をはじめる、いわゆる「在職トランス」は一番ハードルが高いといわれています。社内ですでに関係を築いている人に対しては、必然的にカミングアウトをすることになるうえ、周囲にとまどいや混乱を生む可能性もあるからです。
そういった理由から、性別移行をきっかけに仕事を辞める方も少なくありません。予定外にキャリアに空白期間ができ、再就職時にうまく説明できずに苦しむ人の話も聞きます。
読者のみなさんの中にもこういった悩みを抱えている人がいるでしょう。キャリアの空白期間についての説明方法は別のコラムにて掲載しています。
一方で「在職トランス」は不可能ではありません。ある企業では、入社から数年後に性別違和が原因でうつ病を罹患した社員に対し、休職期間を経て自認する性で復帰することをサポートした、という事例もあります。
また、トランスジェンダーであることを明かして転職し、働きはじめて社内の様子を見てから性別移行を決断し、チームに応援されながら自認する性で再び働きはじめたという方もいます。
キャリアプランとトランスジェンダーフレンドリーな職場
いますぐに性別移行は決断できない、または性別を決めかねているという人こそ、キャリアプランとトランスジェンダーフレンドリー(トランスジェンダーが働きやすい環境)な職場であるかどうかの兼ね合いはよく検討した方がよいでしょう。
「この企業で長く働きたい」というキャリアプランと、「この企業では在職トランスはできそうにない」という現実がぶつかったときに、苦しい選択を迫られるかもしれないからです。
いつでも性別移行ができるようにと考えて、トランスジェンダーフレンドリーな職場を選ぶこともひとつです。性別移行のタイミングで転職しても大丈夫なように、つぶしがきくスキルを身につけるのもよいでしょう。
Q.トランスジェンダーであることを隠して働くことはできるでしょうか?
性別移行がうまくいけば、戸籍上の性別変更の有無にかかわらず、周囲に対してカミングアウトせずに溶け込むことができるでしょう。
その場合でも、いつか秘密がバレるのではないか、という心配がつきまとうかもしれません。
もし人事や採用選考に関わった人があなたのセクシュアリティを知っているとしても、その情報を本人の同意なしに公にすること(アウティング)は、許されない行為であることが、いくつかの裁判でも示されています。
心配であれば、改めてカミングアウトの範囲について、関係者に伝えておくとよいでしょう。
また、過去について質問をされたときに、明らかにとまどってしまうとバレてしまう可能性もあります。
絶対にバレたくないという意思があるのであれば、次のような話題になった際につじつまの合う回答を自分の中で用意しておきましょう。
- 男子校/女子校時代の話
- 中高時代の部活動の話
- 温泉などに誘われたときの断り文句……など。
POINT
・性別移行についての正しい知識をもっておく
・性別移行は心身への負担が大きいため、決断を急がずにじっくりと向き合う
・キャリアプランと性別移行について長期的な視点をもって考える
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