LGBTが登場するドラマ17選【日本の名作から海外作品まで】
テレビで「LGBT」の文字を目にする機会も増えましたが、ニュースやバラエティ番組だけでなく、ドラマのテーマとして取り上げられることも増えています。
2018年に流行語大賞にもノミネートされた『おっさんずラブ』や、主題歌が大ヒットした『逃げるは恥だが役に立つ』などもそのひとつ。誰もが一度はその名を耳にしたことがあるようなポピュラーな作品でも、LGBTが登場するようになりました。
そこで今回は、LGBTのキャラクターが登場する人気のドラマを17作品紹介します。話題になった日本の最新ドラマから海外の名作まで、幅広く取り上げます。
LGBTが登場する日本のドラマ6選
1. 女子的生活
まずご紹介したいのが、2018年1月に放送されたNHKドラマ『女子的生活』です。
主人公・小川みきは、出生時に割り当てられた性は男性。しかし性自認は女性のトランスジェンダーであり、恋愛対象は女性です。容姿、振るまい、ライフスタイル……すべてが「女性らしい」みきは、アパレル業界ではたらきながら憧れだった「女子的な生活」を送っていたのですが、仕事や人間関係のトラブルが次々とみきを襲います。
しかし、彼女はもちまえの強いメンタリティでそれらの問題を颯爽と解決していきます。
現代社会で実際に女性が悩まされている理不尽な問題や、セクシュアルマイノリティが直面するカミングアウトの問題がリアルに描写されており、様々な観点から人々の日常生活が捉えられています。
2. おっさんずラブ
ここ最近のLGBTをテーマとするドラマの中で、最も話題になったのが『おっさんずラブ』です。2018年のユーキャン新語・流行語大賞にノミネートされ、放送中に「おっさんずラブ」がTwitter世界トレンド一位になったことも。これほどの社会現象を引き起こした本作品は、2019年夏、『劇場版おっさんずラブ LOVE or DEAD』として映画化され、8月23日から公開されています。
田中圭演じる主人公の春田創一は、女性との結婚を夢見るモテないサラリーマンでした。しかし、会社の同性の上司や後輩から熱烈な愛の告白を受け、彼の生活は一変。自身のセクシュアリティに疑いをもつことなどなかった彼が、自分を見つめ直すようになります。
主人公を中心に次々と引き起こされる恋愛のドタバタが魅力の物語ですが、恋愛や結婚に対するそれぞれの価値観、セクシュアリティの流動性など、重要なテーマがいくつも含まれている作品です。
こちらの記事でも『おっさんずラブ』を取り上げています。ドラマだけでなく、ゲイが登場する映画や漫画などたくさんの作品を紹介していますので、気になる方はぜひチェックしてみてください。
3. きのう何食べた?
続いてのこちらの作品も、ゲイカップルが登場するドラマとして話題になり、人気を博しました。おいしそうな手料理や、ふたりの和やかな食事風景に癒された人も多いと思います。ゲイカップルの日常を描いたドラマではありますが、「飯もの」、「料理」ドラマとしても高い評価を集めています。
弁護士の筧史朗(西島秀俊)と美容師の矢吹賢二(内野聖陽)は生活を共にする仲のいいカップルですが、周囲に自分たちのセクシュアリティや関係性をカミングアウトするべきか否かという問題に関しては、意見がすれ違い、喧嘩になってしまいます。カミングアウトの話に限らず、同じセクシュアリティ同士でも考えが同じとは限りません。このようなドラマを通して、セクシュアリティによってカテゴライズされることがなくなるといいですね。
4. 俺のスカート、どこ行った?
この作品の主人公は、古田新太演じる「ゲイで女装家の高校教師」原田のぶおです。ドラマが公開された際、その奇抜なビジュアルやキャラクター設定が話題を呼びました。
原田はもともとゲイバーではたらいており、生徒や教師皆に本当の多様性を学んでもらおうという校長の思惑で、高校教師として雇われることになります。「普通」や「常識」を疑うことを、生徒だけでなく大人たちにも体当たりで伝えようとする原田の教師としての奮闘ぶりが描かれています。
5. 恋せぬふたり
2022年1月からNHKにて放送が始まった『恋せぬふたり』。恋愛や性行為がわからない、したくない……そんな2人の出会いと暮らしを、高橋一生さん・岸井ゆきのさんが演じます。
なお、こちらの作品では、2人の性のあり方が「アセクシュアル(他者に性的欲求を抱かない)・アロマンティック(他者に恋愛感情を抱かない)」と表されています。
※アロマンティックとは、恋愛的指向の一つで他者に恋愛感情を抱かないこと。アセクシュアルとは、性的指向の一つで他者に性的に惹かれないこと。どちらの面でも他者に惹かれない人を、アロマンティック・アセクシュアルと呼ぶ。
『恋せぬふたり』公式HPより
実は、今までの日本ではアセクシュアルとアロマンティックが「アセクシュアル」とまとめて考えられがちでした。にもかかわらず作品HP内にこの注釈を示しているところに、制作陣が、セクシュアルマイノリティや性のあり方と誠実に向き合ったことがうかがえます。
6. 作りたい女と食べたい女
2022年11月からNHKで放送が始まる『作りたい女と食べたい女』。ゆざきさかおみさんの同名漫画が原作となっています。
同じマンションに住む「作りたい女」こと野本ユキと、「食べたい女」こと春日十々子。春日に出会ってから自身のセクシュアリティや生きがいに気づき、そこから少しずつ2人の距離が近づいていきます。
女性同士の恋愛が穏やかに表現されていく、心地よく平和な世界観の作品です。
LGBTが登場する海外ドラマ11選〜名作から新作まで〜
1. glee
全米で大人気となったミュージカルドラマ。キャスト一人ひとりの高い歌唱力やダンスの技術、そして演技力など、ミュージカルとしての魅力も盛りだくさんですが、そのストーリーも人気の理由のひとつになっています。主人公が所属するグリークラブを中心に、異なる立場におかれている若者たちの苦悩を一つ一つ丁寧に描き、多くの人の共感を集めています。
主人公の親友であるカートは、ゲイという自分のセクシュアリティや「男らしく」ないふるまいに対し周囲の理解が得られないことも多く、学校でのいじめの標的になることも。それでも自分の魅力である高音域やファッションセンスを武器に、自分らしく振舞います。他にも、レズビアンやバイセクシュアルのキャラクターも登場し、それぞれが多感な思春期の経験を通して、自身のセクシュアリティのゆらぎを認識する様子が丁寧に描写されています。
2. Lの世界
アメリカ・ロサンゼルスを舞台に、レズビアンやバイセクシュアルの女性たちの人間模様やライフストーリーを大胆なタッチで描いた群像劇です。アメリカだけでなく、世界中で反響を呼び大人気となりました。2009年にシーズン6で惜しまれつつも終了した本作品でしたが、2019年、続編の公開が発表されました。気になる新シーズンの展開もチェックしていきたいですね。
フィクションで描かれるセクシュアルマイノリティとしては、先ほど取り上げた日本のドラマにもあったように、ゲイが最も多く取り上げられていると思います。そんな中でバイセクシュアルやレズビアンの女性たちを主人公として描き人気を集めた本作品は、LGBT作品の今後の可能性を大きく広げたといえるかもしれません。
3. グレイズ・アナトミー
2005年から放送が続いてる、大ヒット医療ドラマです。シアトルの病院ではたらくドクターたちの、目が回るような忙しない日常と日々変化していく人間関係の機微を緻密に描いています。人間味あふれるキャラクターたちの恋愛事情に目が離せません。
そんな大人気ドラマのシーズン15、シリーズ初めてのゲイのドクターが登場します。本作品はこれまでにもメインキャラクターに多様な人種を起用したり、レズビアンという設定が取り入れられたりしていました。人種だけでなく、セクシュアリティの多様性も描かれていることがわかります。
4. シックス・フィート・アンダー
カリフォルニア州・パサデナで葬儀屋「フィッシャー・アンド・サンズ」を営むフィッシャー家。その家族ひとり一人の人生を色濃く描いたヒューマンドラマです。親子間での対立や経済的な問題、人間関係、ドラッグなど、それぞれが個人的な問題を抱えていて、一見平和に見える家族の中で引き起こされる問題の数々を、登場人物たちはどのように乗り越えていくのか。葬儀屋に運ばれてくる故人の死を通して人生の教訓を獲得し、彼らが少しずつ成長していく過程がリアルに描写されています。
この作品に登場するデイヴィットは、フィッシャー家の次男で非常に真面目な性格の持ち主です。自分がゲイであることに苦悩し、女性と付き合ったこともありましたが、家族にカミングアウトし本当の自分を受け入れるようになります。恋人であるキースとともに二人の男の子の里親にもなり、新しい家族のかたちを実践しています。現代社会でゲイカップルが親になることの難しさも描かれています。
5. アグリー・ベティ
ハイセンスなファッション業界を舞台に、個性豊かな様々なキャラクターたちの人生を面白おかしく、ときに切なく描いたコメディドラマです。主人公のベティは見た目にコンプレックスをもっており、周りも彼女の容姿を馬鹿にするので、なかなか自分に自信がもてません。そんな彼女がニューヨークでファッション誌「MODE」の編集長のアシスタントを務めることになり、公私の様々な問題を乗り越えながら、美しい一人の女性に成長していくというサクセスストーリーです。
このドラマにも多様なセクシュアリティをもった人々が登場します。ベティの甥や同僚の男性はゲイで、彼らの日常生活も物語の重要な要素として取り上げられています。また、長年姿をくらましていた上司の兄(姉)は実は性同一性障害で、突然女性の姿で現れ家族を驚かせました。
ファッション業界ならではの華やかさと、次々と起こるアクシデントの行方に、つい引き込まれてしまう作品です。
6. モダン・ファミリー
エミー賞の作品賞を5年連続受賞し、アメリカで高視聴率を獲得し続けているシリーズです。多様な家族のあり方を描いたこのファミリードラマには、個性溢れる3家族が登場します。両親と3人の子どもという典型的なアメリカ人一家、子連れでセクシーなラテン系の妻とお金持ちの夫の歳の差夫婦、そして、ひとりの女の子を養子として迎え入れたゲイカップル。この3家族全員が親戚同士というのがまた驚きで、彼らが織りなすドタバタコメディが、長年人々に親しまれています。
ゲイカップルのひとりは弁護士、もうひとりは主夫として登場します。男性がはたらき、女性が家事・育児をするという性別役割分業の考えが未だに根深く共有されている中で、このような国民的ドラマを通して、今まで受容されてこなかった夫婦・家族のあり方が尊重されていくといいですね。
7. オレンジ・イズ・ニュー・ブラック
このドラマは、女子刑務所という特殊な舞台でストーリーが展開していきます。裕福な家庭に生まれ、お嬢様として育ってきたパイパー。しかし10年前、当時付き合っていたレズビアンの恋人のために麻薬密輸の代金を海外に持ち込むという罪を犯していました。付き合っている男性との婚約が決まった矢先、その罪で突然刑務所に収監されてしまいます。数々のトラブルに巻き込まれながら、賢明にたくましく成長していく彼女の変化が巧みに描かれています。
この作品には、トランスジェンダーの女性も登場します。彼女も他の囚人と同じように女子刑務所に収監されており、生まれもった身体の性のみに限定されない、多様な性の捉え方を再認識することができます。
8. スキャンダル
物語の舞台はホワイトハウス。主人公のオリヴィア・ホープは、政財界のセレブたちのスキャンダルをもみ消すフィクサーで、アメリカ大統領の重要なサポート役を務めます。しかし、その大統領と不倫関係になってしまい、自身が最大のスキャンダルに。そんな秘密を抱えながら、数々の壮大なスケールの問題を解決していくラブサスペンスドラマです。
大統領の首席補佐官であるサイラスは同性愛者で、同じくゲイであるパートナー・ジェームズと一緒に暮らしています。ふたりは養子を迎えることを考えているのですが、その話をめぐって夫夫喧嘩することも。ふたりがストーリーの中心になることはあまり多くはありませんが、あくまで物語の一要素として、ゲイカップルの日常生活が自然に描かれています。ホワイトハウスという特殊な舞台だからこそ、夫婦(夫夫)喧嘩のような日常性がより際立っている作品です。
9. 殺人を無罪にする方法
この作品は、犯罪学教授であり現役の弁護士として活躍するアナリーズ・キーティングと彼女に雇われた5人の大学生が、難しい事件の弁護に挑戦するというサスペンスドラマです。ある時彼ら自身も殺人事件に巻き込まれてしまい、スリリングな展開に目が離せません。
アナリーズの法律事務所ではたらくメンバーの一人であるコナーは同性愛者で、オリバーという同性の恋人ができます。コナーは自分の魅力を活かして色仕掛けで情報を集めるようなプレイボーイという設定なのですが、真面目な性格のオリバーと出会ったことで献身的な恋人へと変化していきます。リアルなゲイの恋愛事情がドラマで描かれれることによって、「ゲイは性的な事柄に積極的」という誤ったイメージの解消につながっていくのではないでしょうか。
10. グレイス&フランキー
この物語の中心となるのは、グレイス&ロバート夫妻とフランキー&ソル夫妻。この二組の夫婦は長年家族ぐるみで付き合いがあり、とても穏やかで友好的な関係を築いているように思えました。しかしながら、実は20年前から恋人関係にあった夫ふたりから、同性婚をしたいとカミングアウトされます。それぞれ自分の夫と離婚することとなってしまったグレイスとフランキーは、これをきっかけに女同士の友情を深めます。
Netflixオリジナルドラマで、豪華なキャストと大胆な切り口が話題を呼びました。熟年離婚と同性婚というふたつのテーマをコミカルに描くという今までにないスタイルは、主人公に近い世代の方だけでなく、LGBTに関心のある若い世代の注目も集めています。
11. センス8
ある日、生まれも性別も異なる見知らぬ男女8人が、突如自分たちの思考や感覚を共有できるようになってしまうというところから物語は始まります。彼らの高い共感能力を利用しようと襲ってくる組織から逃げるため、それぞれがもつ身体能力、知識、技術などを提供し合い、なんとか危機を乗り越えていくSF・アクションドラマです。
メインキャラクターのひとりであるノミは、もともとは男性でしたが性別適合手術によって女性になっており、アマニタという女性のパートナーもいます。また、有名俳優として活躍しているリトというキャラクターは、本当はゲイですがそれを隠してパートナーと生活しています。彼らのセクシュアリティは物語の本筋とはあまり関連はなく、あくまで物語の一部の日常として描かれており、多様な人種、文化、セクシュアリティを平等かつフラットに捉えようとしていることがわかります。
おわりに
最近話題になった日本のドラマや海外の名作など、様々な作品をご紹介しましたが、「LGBTが登場する作品」というカテゴリーではあるものの、LGBTは多様な方法で描かれています。「おっさんずラブ」のようにLGBTをドラマの主題にすることで注目を集めた作品もあれば、海外ドラマに多かったように、あくまで日常的なものとして、登場人物の単なる一要素として描いている作品もたくさんありました。
これが流行りとしてスルーされてしまっては意味がありませんし、ドラマやテレビ番組などから得られる知識は不確かなものが多いのもまた事実です。作品が正しい知識を得るためのきっかけのひとつになっていくといいですね。
今回ご紹介した作品の中で気になったものがあれば、ぜひチェックしてみてください。