あなたもそうかも? アセクシュアル診断
「アセクシュアル」というセクシュアリティをご存知でしょうか?
アセクシュアルとは、「他者に対して性的欲求も恋愛感情も抱かないセクシュアリティ」のことです。
アセクシュアルはLGBTの中でレズビアンやゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーに比べて認知度が低い上に、「どんな形であれ人を好きになる気持ちは素晴らしい」といったLGBT支援の言説がアセクシュアル当事者を傷付けてしまうこともあります。「誰もが恋愛感情を持ち、好きになった人とはセックスをしたいのが当たり前」という世間の風潮に疎外感を覚え、生きづらさを抱えている人は少なからずいるはずです。
「アセクシュアル」という言葉は様々なセクシュアリティを包括した概念であるため、この記事では、「恋愛感情はあるが、性的欲求はない」「深いつながりを持った相手にのみ恋愛感情、もしくは性的欲求を抱く」「恋愛感情はあるが、両思いになることは望まない」など、LGBTの四文字に含まれない多様なセクシュアリティ(これらを含め、「LGBTQ」ということもあります)を紹介します。
恋愛感情や性的欲求のあり方が周りと違うことで悩みを抱えている方が、この記事を読んで自分と近いセクシュアリティが見つかり、「自分だけじゃないんだ」と気持ちを楽にすることができれば幸いです。
アセクシュアル(ノンセクシュアル)診断
冒頭でも述べた通り、アセクシュアルとは「他者に対して性的欲求も恋愛感情も抱かないセクシュアリティ」を言いますが、ここでは「性的欲求」に絞って書きます。「他者に対して恋愛感情はあるが性的欲求は抱かないセクシュアリティ」を厳密には「ロマンティック・アセクシュアル」といいます。「他者に対して性的欲求を持たないセクシュアリティ」は、日本では「ノンセクシュアル」とも呼ばれています。
以下に当てはまる項目があれば、あなたはアセクシュアルかもしれません。
- セックスに興味がない、もしくは嫌悪感がある
- セックスに抵抗はないが、それほど大ごとに思えない
- セックスにまつわる話についていけない
- セクシーな服装が、着心地が悪くて寒そうなものとしか思えない
- TV番組や本に出てくるセックスシーンは、不要・つまらないものだとよく思う
- セックスをするよりはしないほうが楽/好ましいと思う
- セックスへの興味の持ち方が、ほかの人と違う
- セックスは好きだが、しっくりこない
「アセクシュアルの人は絶対にセックスをしない」というわけでもありません。子供を作るためや、パートナーの求めに応じてなど、性行為をすることもあります。性行為をしたことがあっても、上記の項目に心当たりがある場合あなたはアセクシュアルかもしれません。
アセクシュアルの人に「本当に良い相手に出会ったことがないだけだよ」「アセクシュアルは治療するべきだよ」などという言葉をかけることは不適切です。セックスに興味がないということは病気や欠陥ではありません。
グレーセクシュアル
「グレーセクシュアル」とは、性的欲求を全く感じないわけではないがごくわずかにしか感じない人、特定の条件の下でしか感じない人、自分が性的欲求を感じるのかどうかはっきりとわからない人のことを指します。ここでいう「特定の条件」が精神的な強い結びつきである場合、後述するデミセクシュアルに近いでしょう。
アロマンティック診断
アロマンティックとは、「他者に対して恋愛感情を持たないセクシュアリティ」のことです。
「アセクシュアル」は性的指向(誰に性的欲求を持つか、持たないか)に関わる言葉であるのに対し、「アロマンティック」は恋愛指向(誰に恋愛感情を持つか、持たないか)に関わる言葉です。厳密には、「他者に対して恋愛感情も性的欲求も持たないセクシュアリティ」のことを「アロマンティック・アセクシュアル」といい、「他者に対して恋愛感情は持たなないが性的欲求はあるセクシュアリティ」のことを「アロマンティック・セクシュアル」といいます。
以下に当てはまる項目があれば、あなたはアロマンティックかもしれません。
- 恋愛に興味がない、もしくは嫌悪感がある
- 恋愛をしない方が楽/好ましいと思う
- 人に恋愛感情を持つとはどういうことなのかわからない
- 「恋バナ」についていけない
- 恋愛を描いたフィクションに共感できない。退屈に感じる。
強調しておきたいのは、「恋愛感情がない」からといって「愛がない」「感情がない」のではないということです。アロマンティックでも家族愛にあふれていて、友情に厚い人、感情豊かな人はたくさんいます。もちろんそうでない人もいます。「恋愛感情のあり・なし」とそれらのことには何の関係もないのです。
1. アロマンティックの人の交際
では、恋愛感情を持たないアロマンティックの人は「お付き合い」をしないのでしょうか。そうではありません。アロマンティックの人と交際しているというAYAさんは、インタビューの中で「お付き合いをするのに「恋」は不要」と語っています。恋愛感情があるからといって相手に嫌なことをされても我慢してしまったり、逆に理不尽な要求をしてしまったりというデメリットがあるからです。
「恋」のステップを踏まなければ、そういう傲慢な態度を減らせると思っています。「私を一番にしてよ!」と思うこともなく、フラットな関係ですから、続けていくための努力も、お互いが当たり前のようにできるんです。私は今のパートナーとは、「更新日」と称して、月に1回、相手への要望や改善点などを話し合っています。まあ一般的にいう「記念日」ですね。
「恋って脳のバグみたいなもの」恋愛感情を持たない“アロマンティック”の価値観
2. グレーロマンティック
また、「グレーロマンティック」というセクシュアリティもあります。グレーロマンティックとは恋愛感情をごくわずかにしか、あるいはめったに感じない人、特定の条件の下でのみ感じる人、自分が恋愛感情を持っているのかどうかはっきりとわからない人を指します。「特定の条件」が「精神的な強い結びつき」である場合、後述するデミロマンティックに近いでしょう。
デミセクシュアル診断
デミセクシュアルとは、「他者に対して基本的に性欲を抱くことはないが、強い愛情や深い友情を持った相手に対してなど、ごく一部の場合に性的な欲求を抱くこともあるセクシュアリティ」を指します。
デミセクシュアルの特徴は以下のようなものです。これらの項目に当てはまる人はデミセクシュアルかもしれません。
- 恋愛感情はあるが、セックスをしたいとはめったに思わない
- セックスをするなら本当にわかりあっていると思える人とだけしたい
- 深い精神的なつながりがあれば、性別は問わない
- 初対面の人に性的感情を抱かない
デミロマンティック診断
デミロマンティックとは、「他者に対して基本的に恋愛感情を抱くことはないが、強い愛情や深い友情を持った相手に対してなど、ごく一部の場合に恋愛感情を抱くこともあるセクシュアリティ」のことです。
デミセクシュアルとの違いは、デミセクシュアルは「恋愛感情はあるが性的欲求はめったに抱かない」、デミロマンティックは「性的欲求はあるが恋愛感情はめったに抱かない」となります。
以下の項目に当てはまる人はデミロマンティックかもしれません。
- 一目惚れをしたことがない
- 恋愛に興味はあるけれど、お互いによく知った人と恋愛をしたい
- なかなか好きな人ができない
- 恋愛の相手を探すために出会い系アプリなどを使用する気になれない
- 恋愛感情を抱くタイミングが相手と合わない
リスロマンティック診断
リスロマンティックとは、「相手に恋愛感情を持つが、その相手から恋愛感情を持ってもらうことを望まないセクシュアリティ」を指します。アコイロマンティックや、アプロマンティックともいいます。
以下に当てはまる項目があれば、あなたはリスロマンティックかもしれません。
- 他人に恋愛感情はあるが、両思いになりたい、付き合いたいとは思わない。
- 恋愛感情を一時的に持つにもかかわらず、段階が進むと冷めてしまう
- 性的欲求を向けられることが気持ち悪い。
- 恋愛に嫌悪感がある、恋愛関係になることに恐れがある
- プラトニックな関係性を求めている
- 恋愛感情を向けられるのは嫌だが、性的な接触には抵抗がない
最後2つの項目は反対の状態を指しますが、リスロマンティックのあり方は人それぞれです。
リスロマンティックはグリム童話『かえるの王さま』の逆(素敵だと思っていた人を気持ち悪く思う状態)であることから、「蛙化現象」とも呼ばれています。
蛙化現象が起きる原因としては、自己肯定感が低く、「自分なんかのことを好きになるなんて、気持ち悪い」と考えてしまうからだとも言われています。
ただし、リスロマンティックの原因を「自己肯定感の低さ」に限定してしまうことは、自分のことは好きでも両想いになることを望まない人を語り落してしまったり、ひいては「健全な自己肯定感を持っている人間は恋愛ができて当たり前である」という価値観を強化してしまったりする危険性もあります。
ヘテロロマンティック(恋愛指向が異性のセクシュアリティ)に「原因」を求めないのと同じように、リスロマンティックである本人がそれによって困っている、「なおしたい」と思っている場合を除けば原因にこだわる必要はないのでは、と筆者は思います。
参考
他にもありますこんなセクシュアリティ
1. クワ(クォイ)ロマンティック(Quoiromantic)
クワ(クォイ)ロマンティックとは、「恋愛感情とは、友情とどう違うのかがわからない」状態を指します。相手に親しみを感じているけれど、それが恋愛感情なのか友情なのか区別がつかない、恋人になりたいのか親しい友達になりたいのかわからないという人は、もしかしたらクワ(クォイ)ロマンティックかもしれません。
2. クワ(クォイ)セクシュアル(Quoisexual)
クワ(クォイ)セクシュアルとは、「性的魅力と他の魅力の違いがわからない」状態を指します。相手のことを魅力的に感じるけれど、それが性的な惹かれであるかどうかはわからない人は、クワ(クォイ)セクシュアルかもしれません。
3. クエスチョニング
ここまでの記事を読んで、中には「ヘテロセクシュアル(性的指向が異性のセクシュアリティ)やレズビアン、ゲイ、バイセクシュアルではないけど、この記事に書いてあるセクシュアリティにもしっくりくるものがなかった……」という人もいるかもしれません。それでも不安に思う必要はありません。自分で自分のセクシュアリティがわからない、あるいは定めないことを選択していることを「クエスチョニング」といいます。
おわりに
いかがでしたでしょうか。「自分はこれかもしれない」と思えるセクシュアリティが見つかりましたか?
筆者自身、恋愛を主軸とした物語が理解できなかったり、恋人がほしいという気持ちに全くならなかったりする自分を「人間としてどこか欠けているのではないか」と悩んでいたとき、「アロマンティック」というセクシュアリティを知って恋愛に興味が持てないことは欠陥ではないのだと安心することができました。
「人を好きになる気持ちは素晴らしい。だからLGBTは尊重されるべき」ではなく、恋愛やセックスに興味がないというセクシュアリティを含め、どのセクシュアリティも尊重される社会になってほしいと願っています。
参考文献
・クォイセクシュアル、クォイロマンティックとは?聞いたことないこんなカテゴリー
・アシュリー・マーデル(須川綾子・訳)『13歳から知っておきたいLGBT+』
・見えない性的指向 アセクシュアルのすべて――誰にも性的魅力を感じない私たちについて