マイクロアグレッションとは?【職場での対処・解決法】
マイクロアグレッションとは、(主に)マイノリティが日常的に受ける、悪意のない微細な差別的・攻撃的言動です。
「微細なら別に気にするほどでもないんじゃないか」と思われた方もいるでしょうが、LGBTをはじめとするマイノリティはこのマイクロアグレッションにかなり悩みます。
今回は、マイクロアグレッションの概念と具体例、職場での対処や解決法についてご紹介します。
「自分の職場は”すべての人”が働きやすい環境だろうか……?」と気になった方はぜひ最後までお読みください。
マイクロアグレッションとは
マイクロアグレッションとは、国籍・セクシュアリティ・宗教など、特定の属性の人に対する無意識の偏見や無理解、差別心が含まれた、無自覚に相手を傷つける日常的言動です。
ステレオタイプや偏見が受け手に精神的なダメージを与えるものですが、「目に見えづらい」という厄介な特徴があります。
ポイントは、多くの場合マイクロアグレッションは相手を傷つけようとして行うわけではないということです。
攻撃する意図などない、ぽろっと出た発言だからこそ「無意識」が色濃く反映されており、それが当事者を苦しめる可能性があります。
また、マイクロアグレッションの中にマイクロアサルトと呼ばれるものあります。
マイクロアサルトとは、明らかに蔑む目的で、特定の個人に狙いを定めて行われる暴力的な言動です。蔑称で呼ぶ、避けるなどがこれにあたります。LGBTについていうと、ゲイのクラスメイトを「ホモかよ(笑)」「え、お前ソッチ系?」とからかうなどがマイクロアサルトといえます。
マイクロアグレッションの例
では、マイクロアグレッションにはどんなものがあるのでしょうか。
職場でみられる発言を例にとると、以下のようなものがあります。
国籍・人種に関連するマイクロアグレッション
- 「〇〇さんは海外生まれだし、考え方が大胆で日本人離れしているよね」
- 「計算早いね!さすがインド人!」
- 「金髪だし背が高いし目も青いし、白人は得だね〜学生時代モテたでしょ?」
ジェンダーに関連するマイクロアグレッション
- 「差し入れのケーキ美味しい!〇〇さんは女子だし、こういうの好きでしょ?」
- 「やっぱり男子の方が理系科目は得意だよね」
LGBTが悩むマイクロアグレッション
- 「やっぱり〇〇さんはゲイだからセンスあるよね!」
- 「トランスジェンダーだと、男性女性両方の気持ちわかるでしょ?この案にアドバイスほしいんだけど」
- 「自分も恋人も女性だと、家で喧嘩とか多いんじゃないの?」
一見すると、褒め言葉や個性を受け入れるような発言でも、あとから「もしかして馬鹿にされてたのかな?」と思ってしまうような発言こそ、マイクロアグレッションによくみられるケースです。
マイクロアグレッションによる悪影響
マイクロアグレッションの難しいポイントは、「明確な悪意がない」というところです。
マイクロアグレッションを受けた人は、多くの場合「ん……今のは悪意があるのか?いや、気にしすぎなのかな……」ともやもやを胸に留めます。
立命館大学准教授の金友子さんは、マイクロアグレッションを受けた人の心の動きの例として、
1.マイクロアグレッションが起こったのか確信がない
「自分の受け止め方は正しいのか?」
「相手は何か考えがあってそうしたのか、それとも意図せざる軽蔑?」
2.どう反応すべきか当惑する
「え、どうしよう」
「だまってやきもきするか、立ち向かうべきか?」「立ち向かったらどうなる?」
「このことを話題にして、証明できるか?」
3.「そんなことをしてもしょうがない」と合理化する
「苦労してまで言う価値があるか?」
「放っておくか……」
4.自分を疑い、ときに騙す
5.結果を過大評価する
「もしかして、あの発言って気のせいだったのかも」
「あれ、おかしいのって自分?」
「実は、自分は何も感じていない……そうに違いない!」
6.発し手をかばう
「別に○○さんも悪気があったわけがないだろうしな」
「いつもいい人だし、これも冗談の一環だ」
といった流れを挙げています。
これを繰り返していると、「自分は心が狭い」「敏感すぎる自分が悪い」と自分を責めるようになり、同時に自分の感情を否定している、騙している、といった感覚も抱き、これらのジレンマがストレスや孤立感につながります。
職場での対処法
悪意がないからこそ、マイクロアグレッションと思われる言動は職場でも見かけることがあるでしょう。
しかし、当事者が「どう受け取ればいいんだろう」「どう反応すればいいんだろう」「反応したところでどうなるんだろう」「変に反応したら面倒なやつと思われて評価を下げられるのではないか」と悩み、仕事や勉強の生産性・問題解決能力が低下することは個人ではなく全体で考えても大きなデメリットです。
では、マイクロアグレッションにはどのように対処すれば良いのでしょうか。
当事者ではなく周囲からの指摘
多くの場合、マイクロアグレッションの受け手がその問題点を指摘することは困難です。
だからこそ、見かけた周りの人が「それってどうなんですか」「偏見じゃないですか、それ!」など、それとなく注意することが最も効果的です。
悪意のない発し手であれば「ああ、申し訳ない」という反応と言動の改善がありますし、もし指摘されても何が問題かわからない、という反応だったときは、その発し手が「何がどう問題なのか」「どうして自分はこう考えるのか」などに気づくきっかけが必要です。
ワークショップ・研修を通じた意識改革
最も効果的なのは、マイクロアグレッションのもととなる偏見をなくすことです。
多くの人は、「偏見を持とう!」と意識的に偏見を持つのではなく、育ってきた環境などにより無意識のうちに偏見を持ってしまっています(これを、アンコンシャス・バイアスと呼びます)。
自身のアンコンシャス・バイアスだけでなく、先述の「何がどう問題なのか」を知ることにも、ワークショップや研修は効果的です。
JobRainbow含め、様々な企業・団体がアンコンシャス・バイアスに気づくためのワークショップや研修を提供しています。こうした外部機関の利用も是非視野に入れてみてはいかがでしょうか。
おわりに
マイクロアグレッションは「マイクロ」だからこそ受け手が対処しづらいですが、心に確かな負担を与えるものです。加えて、傷つけようという意図がないからこそ、自分だけで気づくことは困難です。
マイクロアグレッションのない、誰もが気持ちよく働ける職場を実現するためにも、同僚などから意見をもらいつつ、常に認識をアップデートしていきましょう!
JobRainbowは、全ての人が自分らしく働ける職場を目指す皆様を全力でサポートいたします。
参考文献
堀江有里・山口真紀・大谷通高編『〈抵抗〉としてのフェミニズム』「マイクロアグレッション概念の射程」生存学研究センター報告書[24]