「なかった市場をつくる」クレイヴ・サーガ誕生秘話と、ゲイ向けエンタメへの挑戦【株式会社テクロスホールディングス インタビュー vol.3】

ライター: JobRainbow編集部
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株式会社テクロスホールディングスが手掛ける『クレイヴ・サーガ 神絆の導師』は、ゲイ向けソーシャルゲームという、これまで大きな市場としては確立されていなかった領域に挑戦したタイトルです。

男性同士のロマンスや絆を描きながら、RPGとしての遊びごたえ、魅力的なキャラクター、継続的な運営を両立させる。

目指したのは「LGBTQ+をテーマにしたゲーム」を作ることではなく、ゲイ当事者が心から楽しめるエンターテインメントをつくることでした。

そして、その熱量をビジネスとして成立させ、持続可能な市場へ育てていくこと。

今回は『クレイヴ・サーガ 神絆の導師』(以降クレイヴ・サーガ、クレサガ)の立ち上げを主導した浅井さんに、制作の裏側や、ゲイ向けエンターテインメントに込めた想いについて伺いました。


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「自分が遊びたいゲーム」で市場を開拓する

−まず、『クレイヴ・サーガ』を立ち上げた背景について教えてください。

浅井さん:もともと、ゲイをターゲットにしたソーシャルゲームの市場は無いに等しかったんです。ある程度大きな規模感で展開されるタイトルはほとんどなかったですね。

もちろん、ゲイ向けのイラストや同人文化、インディーズゲームなど個人制作のコンテンツは以前からありました。でも、ソーシャルゲームとして継続的に運営し、キャラクターやストーリーを届け続けるようなものは、まだ市場として確立されていませんでした。

一方で、DMM GAMESのようなプラットフォームでは、シナリオがあり、バトルがあり、やり込み要素があり、たくさんの魅力的なキャラクターが登場するソーシャルゲームのタイトルが多く展開されていた。

「この仕組みで、男性キャラクター同士のロマンスや絆を描くゲームができないだろうか」そう考えたことが、企画の出発点でした。

−企画の原点には、浅井さんご自身の想いもあったのでしょうか。

浅井さん:ありましたね。一番大きかったのは、自分自身が遊びたいゲームを作りたい、という気持ちです。「こういうゲームがあったらいいのに」と思っていたものが、当時はほとんどなかった。だったら、自分たちで作れないかと考えました。

ゲイ向けのコンテンツって、どうしても小規模なものや、特定のコミュニティの中で楽しまれるものとして扱われがちだったと思うんです。でも、自分としては、ゲイ当事者が楽しめるコンテンツも、もっと大きな規模で、継続的に、しっかりビジネスとして成立させられるはずだと思っていました。

ただ「好きだから作る」だけではなく、その好きという気持ちを、どう市場として形にしていくか。

そこに挑戦したのが『クレイヴ・サーガ』でした。

最初は“重い物語”だった

−世界観やストーリーは、最初から現在の形だったのでしょうか。

浅井さん:実は、最初から今のような明るい物語だったわけではありません。最初は「男性同士の絆」や「仲間との関係性」を描くうえで、差別や偏見と向き合うようなストーリーを考えていたんです。

もちろん、現実のゲイ当事者の人生には、差別や偏見、理解されづらさが存在します。そこを無視したいわけではありません。ただ、実際に作ってみると、かなりしんどい物語になってしまって…。現実の中でつらい思いをしている人が、ゲームの中でもまた同じような痛みを突きつけられる。それは、自分たちが作りたいものとは違うのではないかと思いました。だから方向性を変え、もっと楽しく、明るく、何も考えずに夢中になれるものにしようと。

ゲイ当事者にとって、現実を思い出して苦しくなるゲームではなく、日常の中で安心して楽しめる場所になることを大切にして作り直したのが、今の『クレイヴ・サーガ』の原型です。

「当事者向け」であることを、あえてぶらさない

−近年は配信ドラマなどでも、ゲイやLGBTQ+をテーマとする作品が増えています。そうした流れについては、どう見ていますか?

浅井さん:等身大のゲイの姿を、当事者以外の方にも知ってもらう機会が増えていること自体は、とても良いことだと思っています。

たとえば恋愛リアリティ番組やドラマの中で、ゲイの恋愛や人生が丁寧に描かれることは、社会の理解を広げる意味でも大切です。ただ、そうした作品が大きく話題になる背景には、当事者以外の視聴者にも広く届くように作られているという面があると思います。

当事者だけをターゲットにすると、どうしても市場規模は小さくなる。それはビジネスとして考えれば、避けて通れない現実です。でも、私たちがやりたいことは、基本的にはゲイ当事者向けのビジネスです。

広げるとしたら、ターゲットを当事者以外に広げるのではなく、日本国内だけでなく世界中のゲイ当事者に届けるという広げ方をしたい。軸足はあくまで、ゲイ当事者が喜ぶもの。そこはぶらしたくないと思っています。

一方で、ゲイ当事者以外にもクレサガを楽しんでいる方が多い印象があります。

浅井さん:それは嬉しい誤算でした。実際に、シスジェンダーの女性の方から「クレサガが好きです」と言っていただくこともあります。

なぜ好きなのか聞いてみると、従来のBLやTLのようなコンテンツとは違う魅力を感じてくださっている方もいるんです。

クレサガには多様なキャラクター、例えば線の細い美しい男性キャラクターだけではなく、骨太なキャラクター、体格の良いキャラクター、年齢や種族の幅がとても多いんです。そうした多様な男性像に魅力を感じてくださる方が、当事者以外にも大勢いるんですね。

結果として多くの方に楽しんでもらえるのは、とても嬉しいです。

「ゲイ」と一括りにしても、好みは一人ひとり違う

−ゲイ当事者向けに作る難しさはありますか?

浅井さん:もちろんあります。「ゲイ向け」と言っても、ゲイの中で好みは本当に細かく分かれます。キャラクターの外見、体格、年齢、性格、関係性、シナリオの温度感。何を魅力的だと感じるかは、人によってまったく違います。だから、単純に「ゲイならこういうものが好きだろう」とは言えません。

むしろ、マイノリティ向けの市場だからこそ、その中の最大公約数をどう捉えるかが難しい。ニーズが小さく分かれている中で、どこを狙えば多くの人に刺さるのか。そこを考え続ける必要があります。

−クレサガには多くのイラストレーターやクリエイターが関わっていますよね。

浅井さん:そうですね。クレサガでは、キャラクターの幅を非常に大事にしています。若いキャラクターもいれば、年齢を重ねたキャラクターもいる。華奢なキャラクターもいれば、恰幅の良いキャラクターもいる。獣人もいれば、種族によってまったく異なる魅力を持つキャラクターもいます。

それぞれのジャンルには、「このタイプのキャラクターならこの人に描いてほしい」というクリエイターがいます。だからこそ、多くの方にお願いして、一緒に作ってきました。

大切なのは、外見だけを依頼するのではなく、そのクリエイター自身が持っているキャラクターへの考え方や愛情を活かすことです。こちらがすべてを決めて発注するというより、一緒にキャラクターを作り上げる感覚に近いですね。

−ユーザーの声や多様な好みを反映しようとすると、制作上の難しさもありそうです。

浅井さん:ありますね。理想を言えば、すべてのお客様のニーズに応えたいです。でも、現実にはそれはとても難しい。あるシナリオを読んで「すごく好き」と思う人もいれば、「かわいそうで苦手」と感じる人もいます。

キャラクターの扱い方ひとつとっても、受け取り方は人によって違います。だから、できる限りいろいろな意見を吸い上げながら、シナリオやキャラクターを作っていくことが重要です。

一方で、組織としてはコストやスケジュールも考えなければなりません。100点満点のものを作るために、どれだけ時間をかけるのか。あるいは90点のものをきちんと届け続けることを選ぶのか。

最終的にはビジネスなので、お客様に喜んでいただきながら、売上も作らなければいけない。その両立は、常に判断の連続です。苦しい場面もありますが、それでもこの市場を育てていくためには避けて通れないことだと思っています。

「ゲイ向けエンタメ」を、もっと広げていく

−今後、クレサガやゲイ向けエンタメをどのように展開していきたいですか?

浅井さん:まず、『クレイヴ・サーガ』で、ゲイ向けソーシャルゲームを大きな規模で展開するという一つの目標は達成できたと思っています。

でも、ここで終わりではありません。今後は、クレサガを超えるようなタイトルにも挑戦していきたいです。そして、ソーシャルゲームだけでなく、ゲイに向けたエンターテインメントを、さまざまな形で作っていきたい。

まだ具体的にお話しできないことも多いですが、ゲーム以外のアプローチも含めて、ゲイ当事者が心から楽しめるコンテンツを広げていきたいと思っています。

ゲイカルチャーには、まだまだ形になっていない熱量や表現がたくさんあります。それを一過性のブームではなく、きちんと市場として育てていく。そのために、これからも軸足をぶらさずに挑戦していきたいです。

編集後記

『クレイヴ・サーガ』は、単に「ゲイを題材にしたゲーム」ではありません。ゲイ当事者が本当に楽しめるものを、ソーシャルゲームという大きな器で届ける挑戦です。

浅井さんのお話から見えてきたのは、当事者性とビジネス視点の両方を持つことの重要性でした。

「自分が遊びたい」という純粋な想い。「市場として成立させる」という冷静な判断。その両方があったからこそ、『クレイヴ・サーガ』は多くのユーザーに愛されるタイトルになったのかもしれません。

浅井さんの想いに共感したあなた。ぜひ『クレイヴ・サーガ』を作る1人になってみませんか?

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