【学生ライター発掘プロジェクト⑦】開けっ広げなカミングアウト~こういうのもアリじゃないですか?~【緑川マコト】

ライター: Rickey
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本コラムは、LGBTQ+のライフとキャリアを支えるJobRainbow MAGAZINE主催JobRainbow学生ライター発掘プロジェクト!でご応募いただいたコラムとなっております。
緑川マコトさん、ありがとうございました。

「カミングアウト」というと、どのようなイメージが浮かぶだろうか。

人目につかないところで、親しい誰かに秘密を打ち明けること?愛の告白と同時にするもの?親しくない人には普通しない?

それらも間違いではないだろうけど、全く違ったカミングアウトもあるはずだ。 人目につくところで、初対面の人におおっぴらにする「カミングアウト」。それを行った私の体験について、これから書いていこうと思う。


大学でカミングアウトするべきか?

私は大学進学と同時に、東京から京都に移り住んできた。実家から遠い大学に通って一人暮らししたいという願望があり、また着物をはじめとした日本文化が大好きだったからだ。

大学受験を終えた後、3月中旬頃に大学の入学者説明会があった。早い人たちは、既に新大学生同士でTwitter上での交流を始めている時期でもあった。

私も大学用アカウントを作成しようと思い立ったのだが、その時に迷ったのだ。

カミングアウトするべきか否かを、である。

私のセクシュアリティ

この時の私の状況を説明しよう。

私は、中学2年生の時に、女性として女性を好きになった。この時の恋愛をきっかけとして、私は自身のセクシュアリティを見直し始めたのである。

大学生になる時点で、私は自分が「Xジェンダー両性」(=自身が男性でもあり女性でもあるという性自認)であり「パンセクシュアル」(=相手の性別に関係なく人を好きになるという性的指向)であることを自覚していた。

カミングアウトの不安

私の大学は、どちらかというと保守的で、LGBTについてもよく知らない人が多いのだろうと勝手に考えていた。それゆえに最初は、カミングアウトをためらっていた。下手に言って村八分にされるのも怖かったからである。

カミングアウトしたとして、何を言われるのだろう。LGBTに明るくない人は、「そもそもXジェンダーって何?両性??パンセクシュアル???」という感想を持つかもしれない。あからさまな攻撃は無くとも、後ろ指をさされるかもしれない。

加えて、私は京都に不案内だし、関西圏に友人どころか知り合いすらいない。カミングアウトしたことで大学生活が上手くいかなかったらどうしよう……

こういった不安が、私に重くのしかかっていた。

カミングアウトする理由

前述のような不安があったが、最終的にはカミングアウトすると決断した。主に2つの理由があった。

理由1. ストレスに嫌気がさした

1つ目は、今まで公表しなかったことで被ってきたストレスに嫌気がさしたからである。

今まで親しい友人にすら、「女性」で「ヘテロセクシュアル」(=異性を好きになるという性的指向)であるとして振る舞わねばならないのがどうしても耐えられなかった。僕や俺といった一人称を意識的に避け、自分の心の中の「男性」を押さえつけ、無理に「女性らしく」いるのが心苦しかった。これからできるであろう友人にもそうやって嘘をつかねばならない、というのが悲しかったのである。

理由2. 他の人がLGBTを知るきっかけに

2つ目は、私が大々的に公表することで、他の人がLGBTを知ったり理解するきっかけになると考えたからである。

私の書き込みを見て、Xジェンダーやパンセクシュアル、また別のセクシュアリティについて知識を得たり理解するという人が、少しでもいるかもしれない。当時LGBTに関する情報発信活動を始めたいと考えていたので、まずは近場から働きかけようとも考えたのである。

いざ、カミングアウト!

そして私は、ついに大学用アカウントを作成し、そこに書き込んだのである。

「〇〇大学〇〇学部〇〇学科 新一回生」

「身体は女性、心は両性のXジェンダー」

「一人称は私だったり僕だったりする」

「パンセクシュアル」

「性別など関係なく仲良くしてくれると嬉しいです」

カミングアウトして嬉しかった2つのこと

以上の書き込みをしてから約半年たったが……結果的に言うと、カミングアウトして本当に良かったと思っている。 いろいろな影響があったが、特に嬉しかったことが2つある。

1. 自分のままでいられる

まず、自身のセクシュアリティを気にせず話したりツイートしたりすることが出来るようになった。 もしセクシュアリティを隠したい場合、それがバレないように「女性」で「ヘテロセクシュアル」に見えるよう話したりツイートしなければならないが、カミングアウトした後だと「もうおおっぴらに書いちゃったし今更隠すこともないよね」というスタンスで居られるのだ。これがとにかく楽である。

好きな一人称を使える

例えば、一人称。私……いや、自分の一人称は「私・僕・俺」である。女性でネタとして僕や俺という一人称を使う人もいるが、私の場合は素の一人称として僕や俺を使う。変におちゃらけて「今僕とか俺って言ったけど、私はソッチじゃないですよ笑」みたいな謎アピールをするのも、それを求められるのも真っ平御免だった。

元カレの話も、好きな女性の話もできる

他には、恋愛の話。パンセクシュアルであることを明かしているので、昔好きになった女性の話も、最近別れた彼氏の話も同様に話しやすいのである。私は見た目が完全に「女性」のそれなのだが、今のところ「え、女なのに女の人が好きなの?笑」みたいな反応は、今のところ一度もされていない。元々そういう風に恋愛するんです、と言ってあるからだ。自然体でいられるのは本当に楽だ ……。

自分のままえで何も考えずにツイートできるの最高。いや、本当に。

2. 同じLGBTやアライの友人ができた

次に、同じLGBTやアライ(=LGBTに理解を示す非LGBTの人)の友人ができたことである。

実を言うと、カミングアウトしてすぐは特に何も無かった。同じ大学の新入生同士でつながっていたので、お互い顔も名前も分からず、もっと言えば話すような機会がなかったからかもしれない。

しばらくすると、少しずつ「自分もLGBTだ・LGBTかもしれない」と打ち明けてくれる友人や、アライとして賛同を示してくれる人と出会えたのである。

自分はバイセクシュアルだ、レズビアンだ、自分もXジェンダーかもしれない、自分はLGBTじゃないけどどういう感覚なのか知りたい・・・。

最終的に10人ほどが、私のカミングアウトをきっかけとして、声を掛けてくれたり自身セクシュアリティを見直したりしてくれたのである。

これはあくまで私が認知している範囲内での話であり、もしかするともう少し多くの人たちがLGBTについて考えてくれているかもしれない。正直「予想以上に受け入れられた」と感じている。本当に嬉しい。

おわりに

以上のことから、このカミングアウトはかなり大成功であったと考えている。

特にこれが上手くいったのは、Twitterユーザーの若者たちの中には、バズったツイートやトレンドなどで社会問題や差別や偏見を認識しており、LGBTに関しても理解のある人たちが多かったからだろう。

そして、初めましてと同時にカミングアウトしたからこそ、私の見た目による先入観を持つ前に、私の中身を見てもらえたのだろうと考えている。

一般にカミングアウトというと、仲良くなってから親しい人にだけ、といったものが多いとは思う。

だが、こういう形のカミングアウトもありなのではないだろうか?と、私は考えている。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました!

JobRainbow編集部より

大学進学と同時にカミングアウトするか迷い、カミングアウトするに至る……自身の経験に基づいた、緑川さんならではのコラムですね。

実際にカミングアウトした結果、自分らしくいられるようになった・同じLGBTやアライの友人ができた……読者を勇気づける素敵な内容でした。

改めて、素敵なコラムをありがとうございました!

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