パンセクシュアルとは?【当事者監修】

ライター: Rickey
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パンセクシュアル(全性愛)とは、相手の性のあり方に関係なく人を愛するセクシュアリティです。例えば、「男性/女性」という2つの性別だけでなく、Xジェンダー(中性)の方なども含めて「あらゆる性のあり方の人」に惹かれます。

一見「男性・女性両方」を好きになるバイセクシュアルと似ていますが、相手の性のあり方に関係なく好きになるという点で異なります。

「そもそも相手の性のあり方などどうでもよく、好きになった人が好き」というパンセクシュアルは、まだ知名度が高くありません。

そこで今回の記事では、混同されるバイセクシュアルやポリセクシュアルと比較しながら、パンセクシュアルについて解説します。

※ポリセクシュアルやパンセクシュアルは「バイセクシュアルの一部」として説明されることもあるのですが、今回は用語解説コラムとして、一つ一つの違いに触れていきます。

パンセクシュアルとは~バイセクシュアル・ポリセクシュアルとの違い~

重なる手

「私はセクシュアリティに関係なくだれでも愛する」

「私は複数の性のあり方の人を好きになる」

「私は男性も女性も愛する」

……周りの人から見たら非常に似ているかもしれませんが、少し意味が違ってきますよね。

先に言ってしまうと、1つ目にあたるセクシュアリティがパンセクシュアル、2つ目がポリセクシュアル、3つ目がバイセクシュアルです。

バイセクシュアルとポリセクシュアルは「相手のセクシュアリティを意識する」のに対し、パンセクシュアルは「相手のセクシュアリティにとらわれない」点が大きな違いです。

また、その「好き」という感情に性愛感情が伴わない(恋愛感情のみの)場合、それぞれパンロマンティック・ポリロマンティック・バイロマンティックと表現します。

それでは、それぞれについて説明していきたいと思います。

1. パンセクシュアル(全性愛)

パンセクシュアルとは、「好きになるにあたってセクシュアリティを条件としない」というセクシュアリティを指します。言い換えると「好きになることに相手の性のあり方なんて関係ない」というセクシュアリティです。オムニセクシュアルや全性愛と呼ぶこともあります。

セクシュアリティ関係なく人を好きになる。そのため、視点を変えると「すべてのセクシュアリティを好きになる」と考えることもできます。

最近では、日本でも公開され大人気となった映画「デッドプール」の主人公にパンセクシュアルという設定があった、とわかり話題となりました。

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2. ポリセクシュアル(複数性愛)

ポリセクシュアルとは、「複数のセクシュアリティを好きになる」セクシュアリティを指します。

例えば、「私は男性も、Xジェンダー性自認が「男性」「女性」の枠に当てはまらないセクシュアリティ)の人も、クエスチョニング(自身のセクシュアリティについて悩んでいる・考えている最中、もしくは意図的に決めていない)の人も好きになるなぁ」といった自己認識がある場合、その方はポリセクシュアルだといえるでしょう。

ただ、「こういうセクシュアリティの人を好きになるな」と考えている時点で、

  • 好きになることにセクシュアリティを条件としている
  • 「好きにならないセクシュアリティ」も存在する

と考えられます。こういった点が、パンセクシュアルとの大きな違いです。

3. バイセクシュアル(両性愛)

バイセクシュアルは「男性も女性も好きになる」セクシュアリティを指します。

たまに、パンセクシュアルやポリセクシュアルをまとめ、「どんな人でも好きになる=バイセクシュアル」のような説明がされてしまうこともあるのですが、「両性」愛とあるように、本来の意味としては男性・女性を愛するセクシュアリティがバイセクシュアルであるといえます。

改めてまとめると、

バイセクシュアル:好きになる条件に性別が関わる

ポリセクシュアル:複数のセクシュアリティを好きになる(好きにならないセクシュアリティがある)

パンセクシュアル:好きになるのにセクシュアリティは関係ない

ということです。

ちなみに、私のバイセクシュアル・ポリセクシュアル・パンセクシュアルの友人はそれぞれ、

バイセクシュアルの女性:男性なら背の高い歳上の人、女性ならゆるふわロングの人が好き

ポリセクシュアルの男性:女性的な人であればトランス・Xジェンダーでも構わない

パンセクシュアルの中性:愛し愛されてくれるのであれば性別は問わない

と言っていました!

性はグラデーション

カラフルなキャンドルを抱える手

セクシュアルマイノリティに対する理解が進み、性的指向(好きになる性)だけでなく、自身の性自認(こころの性)にも多様性があることが知られてきました。この多様性を、「性はグラデーションである」と表現することもあります。

性はグラデーション、言い換えれば「男性」「女性」と二分できるわけではありません。

「バイセクシュアル=すべての人を好きになる=ポリセクシュアル・パンセクシュアル」という誤解が生まれてしまっているのは、性には「男性」「女性」しかない、という「性別二元論」が前提としてあるからです。

例えば、トランスジェンダーXジェンダーなどは、「性がグラデーションである」、つまり性は「男性」「女性」と二分することは出来ない、と知っていなければその概念自体わからないでしょう。

どうして「バイセクシュアル」としてまとめられてしまうことがある?~「知らない」ことで埋もれてしまう言葉~

私自身、今はパンセクシュアルを自認しているのですが、それまでは自分のことをバイセクシュアルだと思い込んでいました。

というのも、当時学生だった私は「パンセクシュアル」という概念自体を知らず、「よくテレビで男性も女性も好きになる芸能人が、自分のことをバイセクシュアルって言ってたな……」とテレビで得た知識をもとに、自分のセクシュアリティをバイセクシュアルだと判断していました。そして、1年ほど前にインターネットで「パンセクシュアル」に出会うまで、自分のセクシュアリティについて一切疑問に思っていませんでした。

でも、これって考えてみるとけっこう怖いことだなぁ、なんて今になって思います。

というのも、こうした「知識不足」が言葉の誤用や誤解へとつながっているのだと思うと、知らず知らずのうちに、自分の無知が誰かを傷つけているんじゃないか、と不安になってしまうのです。

また、本来の意味と違った言葉が広まり、最適な言葉が埋もれてしまえば、「あれ?自分のセクシュアリティに当てはまる概念ってないのかな……」と誰かを孤独にしてしまうかもしれません。

セクシュアリティを指す言葉はその人のアイデンティティにも深くかかわっています。

きちんと言葉を選んで使っていきたいですね!

おわりに

レインボーフラッグが映る水面に波紋が広がる様子

パンセクシュアルがどういうものか、わかっていただけたでしょうか。

今回の記事では、セクシュアリティに関して多くの定義や概念をご紹介させていただきましたが、これらはあくまでも「代表的な例」です。先述のとおり、性はグラデーションであり、一人ひとり、それぞれのセクシュアリティがあります。なので、「自分の性のあり方は何にも当てはまらない……」と思っても、心配しないでください。それが「間違っている」なんてことは、絶対にないのです。

誰もが胸を張って、自分のセクシュアリティを伝えられる、「自分らしく」生きることのできる社会のために、私たちJobRainbowは尽力いたします。

最後までこの記事を読んでくださり、ありがとうございました。自身の性のあり方についてもっと深く知りたい!と思った方は、ぜひセクシュアリティ診断もご利用ください。

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