インターセックスとは?性分化疾患(DSD)との違い〜日本の現状から有名人まで総まとめ~【“体”の多様性】

ライター: JobRainbow編集部
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皆さんは、インターセックス、またはDSDという言葉を聞いたことがありますか?

JobRainbowの記事ではこれまでジェンダーに関する様々なトピックを紹介してきましたが、このインターセックス(DSD)は、LGBTなどに関する問題とは一線を引くべきものかもしれません。

というのも、インターセックス(DSD)は厳密には「性的マイノリティ」ではないからです。

「でも、“LGBTQIA”のIはインターセックスじゃないの??」と混乱している方もいるのではないでしょうか。

今回は、日本で性に関する話題が表面化してきた今だからこそ、まだほとんど認知の進んでいないこの「インターセックス」という言葉について、ぜひ皆さんに知って頂きたいと思います。

一緒に正しい知識をつけ、更なる理解の発展に繋げていきましょう!

  1. インターセックスってどんな意味?
  2. DSDの種類・具体例
  3. Xジェンダーやトランスジェンダーとの違い
  4. DSD(インターセックス)に関する様々な誤解
  5. DSDに関する社会問題
  6. DSD(インターセックス)の有名人など
  7. DSD当事者の方・周りの方に向けて
  8. おわりに

インターセックスってどんな意味?

手を繋ぐ二人の子供

まず、インターセックスとは一体どういう意味なのでしょうか?

インターセックスの正式名称は「DSD」です。これはDisorders of Sex DevelopmentまたはDifference of Sex Developmentの略で、日本語に直訳すると、「体の性の様々な発達」という意味になります。

また、日本語では「性分化疾患」とも呼ばれています。

ちょっと分かりにくいですね。これをもっと分かりやすく言うと、

「体の性に関する様々な機能・形・発達が、一般的に『男』『女』とされる典型的な状態と一致しない部分がある」ということです。

人間の体が胎内で作られるとき、男・女になるための様々な構造が発達していきます。これを「性分化」といいますが、この過程で何らかの変化が生じ、性腺、内性器、外性器の分化が非典型に発達することが、「性分化疾患」です。

現在、日本では新生児の約2000人に1人がDSDだと言われています。

この名称についてですが、「DSD」よりも「インターセックス」の方が聞き覚えがある、という方も少なくないと思います。一体この呼び方の違いは何なのでしょうか?

両方とも意味は同じですが、実はこの「インターセックス」という呼び方、日本では現在あまり好まれていない傾向にあります。

以前はDSDを「インターセックス」や「半陰陽」と訳していましたが、「中性」や「男でも女でもない性」だと誤解されることが非常に多く、軽蔑的なニュアンスも含んでいたりしたことから、現在の「DSD(性分化疾患)」という名称に至りました。

※この記事ではそのことを踏まえ、以下より「インターセックス」ではなく「DSD」と表記していきたいと思います。

DSDを理解する上で注意しておきたいのは、DSDはひとつの症状を指している言葉ではなく、「性に関する体の特徴が、一般的なものとは違う発達をする様々な状態」を総称している言葉だということです。

たとえば、ひとくくりに「文系」と言っても

社会学を学んでいる人、文学を学んでいる人…など色んな人がいますよね。

DSD(性分化疾患)は、そのような大きなカテゴリー分けのことです。

実際にどのような状態がDSDとなるのかは、次章で詳しく説明していきますね。

また、DSDはあくまで「体の(性における)発達状態」の問題で、性自認(自分が認識している性)などの問題とは別だということもとても重要なポイントです。DSDだからといって、必ずしも「男・女」に当てはまらない性を自認しているわけではありません。これに関しても、のちほど説明していきます。

DSDの種類・具体例

薬品を調合する人

それでは、実際にどのような状態がDSDとして挙げられるのでしょうか?

これらがDSDのすべての疾患ではありませんが、いくつかの例として見ていきましょう。

ターナー症候群(性染色体が「X」のみ)

「女性の身体」は一般的に「XX」の染色体で構成されていますが、これはそのX染色体の全体または一部が欠けている疾患の総称です。

それにより卵巣機能不全による二次性徴・月経異常などが症状として見られ、性腺機能の不全から不妊となる場合が多い疾患です。

約2500人に1人の女性が発症すると言われています。

クラインフェルター症候群(性染色体が「XXY」)

ターナー症候群が「女性の身体」の疾患であるのに対して、これは「男性の身体」における症状となります。

「男性の身体」は一般的に「XY」の染色体で構成されていますが、そのX染色体が一つ以上多いことで生じる疾患の総称です。

思春期が来るのが遅れることや、精巣委縮・無精子症などの性腺機能不全、また女性化乳房を認める場合などが主な症状として見られます。

これは、約1000人に1人の男性が発症すると言われています。

アンドロゲン不応症(AIS)

インターセックス(DSD)の中でも比較的有名なのがこのAISです。

アンドロゲンは「男性ホルモン」とも呼ばれ、これは単体では働かず受容体があってはじめて身体に変化をもたらします。

しかし、AISの患者はこの受容体が一部または全て欠如しているため、染色体はXY(男性型)で精巣もありますが性器やからだの外見が女性型(もしくは男性型、女性型どちらともとれない形)に発達することがあるのです。

(染色体がXX型の女性の場合は、特に症状がないため疾患として発見されないことがほとんどです。)

特に完全型アンドロゲン不応症の場合幼少期には全く気付かない場合が多く、女児として育ち、思春期になり生理が来ないことなどから疾患が発見されるケースが多く見られます。

副腎皮質過形成

人間の体の「副腎皮質(腎臓の上部あたり)」では、からだを形成するのに必要な3種のステロイドホルモンが作られています。

1つ目は血圧の維持、2つ目は生命維持、3つ目は性発達の維持に必要な重要なホルモンです。

これらの形成過程に何らかの変化が起こることによって、嘔吐、脱水、めまいなどの症状が現れ、放置しておくと命の危険に繋がることもあります。

また、月経不順や精子減少、外性器の形がいわゆる「男性・女性」とされるかたちとは異なる(女子の外陰部に男性化が起こるなど)という症状が見られることもあります。

他にもDSDとされる疾患は60種類以上あるとされ、その症状や発見時期などによっても、個人の身体の状態や抱えている問題などは大きく変わってきます。

病気の存在自体がまだあまり知られていないこともあり、様々な偏見に苦しむDSDの方は少なくありません。

Xジェンダーやトランスジェンダーとの違い

キャンドルと虹色のリボン

「こころの性」に関する問題ではない

DSDおよびインターセックスは、Xジェンダー(自認する性が男女の枠組みに当てはまらない人)やトランスジェンダー(体と自認する性が異なる人)などと混同して捉えられることが非常に多く見受けられます。

前述したとおり、「インターセックス」という呼び方が「中性」という印象を与えてしまう可能性があることもひとつの原因です。

トランスジェンダーやXジェンダーなどは、生まれた時の体の性に対して自認する性が一致していない、または「男・女」という枠組みにこころの性が当てはまらない、などの「性自認(自分が認識している性)」に関する言葉ですが、

DSDは、この「性自認」が問題なのではなく、あくまで性に関するからだの機能や作りが一般的な男女のかたちと違う、という身体の状態を指す言葉です。

例えば、不妊症の女性に対して「あなたが自分を女性だと思っているから女性と認めます」なんて言わないですよね。

もちろんDSDの方の中にはXジェンダーやトランスジェンダーの方もいますが、「DSD=性自認がマイノリティ」というわけではないのです。

ホルモン注射について

DSDの方の多くがホルモン注射を必要としていますが、そのためトランスジェンダーと混同して認識されてしまうことが多いです。

「ホルモン注射」と聞くと、トランスジェンダーの方が体の性別や見た目を性自認に適合させるために行う、という印象が強いと思いますが、DSDの患者は性別を変えるためではなく、「健康の維持」という目的のためにホルモン注射を行います。

DSDの中には難病に指定されている深刻な症状もあります。そういった症状を抱える方も多く、彼らにとってホルモン注射は命を守るために必要なものです。

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DSD(インターセックス)に関する様々な誤解

憂鬱そうな女性

Xジェンダーやトランスジェンダーとの混同と同じように、DSDは実に様々な誤解を受けることがあります。

表面的なイメージによる誤解や偏見は、当事者やその家族の尊厳を深く傷つける原因となってしまいます。正しい知識をつけ、その理解を広げていくためにも、私たちが抱きがちな誤解を解いていきましょう。

DSD=「男女以外の性」ではない

これが一番多い誤解ですが、DSDは「男女以外の性、中間の性」という意味ではありません。むしろ体の構造の違いを認めた上で、DSDの方々の認識を尊重することが必要です。

これは、アンドロゲン不応症の患者のご家族の方がブログで上げている実際の声ですが、語弊を生むことがないようそのまま引用させて頂きます。

アンドロゲン不応症(AIS)をはじめとした性分化疾患(DSD)を持つ子どもや人々は、マンガやドラマのようなファンタジーのイメージではない、体の状態が一部異なるだけの全くの男性もしくは女性です。

私たちが問うているのは「男女の境界の無さ」ではありません。むしろそのようなご意見は、私たちの女性・男性としての尊厳を深く傷つけるものです。

​私たちがお願いしているのは、「女性にもいろいろな体がある、男性にもいろいろな体がある」ということです。

どうか、お間違いのないようにお願い致します。

引用元:アンドロゲン不応症とは何ですか?

もちろん、人間の性を「男・女」という2つのカテゴリーのみに分けることが、社会であらゆる問題を生んでいることも事実です。

しかしそれとは別に、私たちは「女性のからだはこうあるべき」「男性のからだはこうあるべき」という固定観念によって、それに当てはまらない体のかたちを男・女と認めない社会のあり方を問う必要があります。

DSD=LGBTというカテゴリ分けは実は危険!?

「LGBT」などの略称を集めた呼び方のひとつとして「LGBTQIA」という呼び方がありますが、これも「I」、つまりインターセックスをLGBTと同列に入れることは実はあまり適切ではないのでは?という問題もあります。

前述してきた通り、DSDは確かに性に関する問題ではありますが、性自認(自分が認識している性)や性的指向(好きになる性)とは関係ありません。

しかしDSDをLGBTと同じカテゴリに分けることによって、DSDを持つ人が「男女ではない性への理解」を求めている、つまり「中間の性である」と誤解されやすくなるという問題が生まれてしまいます。

私たちが「LGBTQIA」と検索して出てくる情報は、LGBTのみにフォーカスしているものがほとんどですよね。

現在メディアや社会ではDSDよりもLGBTの方が多く露出していることもあり、実態が知られていないDSDに関しては、「LGBTのイメージ=DSDのイメージ」と包括されてしまう可能性があるのです。

また、LGBTの権利が保障されている社会=DSDの権利が保障されている社会というわけでもありませんが、「LGBTQI…」とひとまとめにされることで、未だ認知の進んでいないDSDに関する問題が社会から見えなくなってしまうという懸念もあります。

このように、DSDをLGBTと同じものと扱うことで様々な誤解や偏見が生まれ、DSDの方々の更なる悩みに繋がってしまう場合があるため、DSDをLGBTと同じカテゴリ分けにすることは実は危険なのです。

実際にDSDの方々の大多数は、自らのことを「性的マイノリティ」だとは考えていません。

「LGBTQI…」という分け方は、現状ではカテゴリー的には下部画像左のLGBTとDSDが重なっている部分しか見えていないことになるため、「LGBTコミュニティーにDSD(インターセックス=I)が含まれる(下部右)」と認識するのは危ういと言えるのです。

参考ベン図
LGBTQI…の集合

参考URL:Adding the “I”: Does Intersex Belong in the LGBT Movement?

このようにLGBTとDSDの違いを説明してきましたが、決して2つのコミュニティーが対極にあるわけではありません。

LGBTもDSDも数あるマイノリティの中のひとつです。DSDを持つ方の中には、LGBTコミュニティーを支援している方が多数いますし、自身の性自認について悩みを抱えている方もいます。

そして、LGBTもDSDも、性における“こうあるべき”という規範に当てはまらないものが社会で排除されてきた、という点では、非常に似ていると言えますよね。

「マイノリティ」とされる人々がなぜ「マイノリティ」になるのか、そしてすべての人にとって生きやすい社会とは何か、私たちはカテゴリ分けに関係なく常に考えていく必要があります。

「DSD=男の子か女の子か選べる」というわけではない

DSDを持つ人が「中性」として生まれ、人生のどこかのタイミングで男女が選べる「特殊な人」だと捉えられている場合もありますが、それもひとつの誤解となります。

DSDを持つ子どもが体の状態によって出生時に戸籍上の性が与えられることは、DSDでない子どもがそうされることと、全く同じことです。DSDであることは決して特別なことではありませんし、まして異常なことでもありません。ただ、「性別を判断するときに注意が必要」というだけなのです。

また、DSDの子どもが成長するにつれ、自身に与えられた戸籍の性と性自認(自分が認識している性)が異なることが判明するというケースもありますが、これはDSD特有のものでは決してなく、他のトランスジェンダーと同じです。

実際にDSDの方の中で性別変更を求める人の割合は、わずか2%となっています。

一方で、現在は国連により禁止されているものの、かつてはDSD当事者の幼少期に本人の同意を得ないまま外性器の美容形成手術を行い、成長後そのことが本人の意思に反してしまうという問題がありました。

日本でも1996年まで続いた旧優生保護法のもと、DSDの子どもに強制手術を施していたことが医者や保護者によって隠ぺいされ続け、カルテなどが消失していたという歴史があります。このような過去も、DSDの実態がいまも明るみに出ていないひとつの原因です。

現在の日本でも、DSDの子どもやその保護者に対する病院側の正しい対応は、いまだ模索している段階にあります。しかし、望ましい対応や支援を標準化し、社会に広めていくことが必要です。

まずDSDの赤ちゃんに関わる医療従事者の方々は、保護者に出生届を出させることを急がせない、性別について染色体検査結果のみ(もしくは外性器の状態のみ)の説明で判断をうながさないといった注意が必要です。

また、DSDの子ども本人も、幼少期の早い段階で自分が周りの子と違うことに「どうして?」という疑問がわいてくる場合もあります。そういった中で保護者は子どもの理解できる範囲でからだのことについて伝えはじめ、また本人の性自認やからだについて決して否定的な発言をしないようにすることが必要です。 

(海外の一部の地域では、出生時に性別を決めずに育ててしばらく様子を見るというケースもあります。しかしこれは、身体的性やジェンダーに対する認識がそもそも日本と異なる社会の上で成り立っているものです。社会のあらゆる制度や文化が出生時から男女性に基づいて成り立っている現在の日本では、まだ難しい手段といえます。)

DSDについて発信するときに気をつけるべきことは?

これらの誤解や偏見を無くしDSDの正しい理解を広げるためにも、DSDについてインターネットや論文を通して発信する際に注意しておきたい点をまとめたいと思います。

DSDを持つ人のことを「男でも女でもない人」「精巣性女性化症」「中間の性」のような表現で説明しない

→DSDを持つ人々は、自分のからだの違いによって「完全な女性・男性でない」と捉えられることに苦しんでいます。正式な名称通り、「男の体・女の体にも、様々な発達状態がある」というように表現しましょう。

「彼女は本当は男性だった」のような表現は×

→例えばアンドロゲン不応症の女性に対してこのような表現をすることは、事実と反してしまう上に、彼女の女性としての尊厳を傷つけてしまいます。

代わりに、「XYの染色体を持つ人は一般的には男性とされるが、そうでない人もいる/女性として発達する場合がある」などの表現を使いましょう。

体の状態について、証拠を必要以上に求めない

→DSDの方の体や性器の状態について、医学的な目的などもなしに必要以上に証拠を求めるのも良くありません。自分の性器の状態についてなんて、誰だってすすんで話したくありませんよね。

また、LGBTコミュニティーが「性の多様性」についての講義や活動を行う際に、DSDについて注意して説明してほしいポイントを総括したページもあります。こちら(ネクスDSDジャパンより)

DSDの方々の声が広く分かりやすくまとめられているので、是非参考にしてみてください。

いかがでしたか?

DSDは当事者の実態そのものよりもメディアやポップカルチャーで歪曲されたイメージの方がまだ社会に根付いており、表面的な想像だけで誤解や偏見が広まってきてしまいました。

LGBTコミュニティーが徐々に社会の誤解と偏見から脱しているように、DSDに関しても、これを読んでいるあなたから正しい知識を広げていって頂けたらと思います。

DSDに関する社会問題

次は、DSDに関する問題について、実際のケースを交えながら一緒に考えていきましょう。

実際にDSDに関する問題が話題になった例のひとつとして、陸上選手のキャスター・セメンヤさんが挙げられます。

これは日本でもニュースやワイドショーで多く取り上げられていたので、記憶にある方が多いのではないでしょうか。

セメンヤさんは南アフリカ共和国出身の優秀な女子陸上選手ですが、2009年の世界大会で優勝したのち、「本当に女なのか?実は男じゃないのか?」という疑いがかけられてしまったのです。

セメンヤ選手

そして、オリンピック協会により、本人には目的を告げないまま勝手に性別検査が行われました。

結果、彼女の性器は女性でしたが、卵巣と子宮がない上に未発達の精巣があり、テストステロン(アンドロゲンという男性ホルモンの一種)の値は平均的な女性の3倍でした。つまり、「アンドロゲン不応症」であることが判明したのです。

オリンピック協会は、テストステロン値が一定以上であった彼女を女性選手とは認めないと判断しました。

このことは本人の許可を得ないまま「両性具有だ」とメディアで公にされ、彼女はテストステロン値を一定値に下げるまで、選手としての活躍を一時閉ざされてしまったのです。

確かにセメンヤ選手の骨格は「一般的な女性」の形とは異なるかもしれませんが、彼女は今まで女性として戸籍を受け、女性として育てられ、女性の選手として活躍してきました。そんな彼女や彼女の家族にとってこの扱いは、生涯トラウマになるようなショッキングな出来事だったといいます。

自分の性器の状態について勝手に他人に検査され、情報が一人歩きし、自分のからだが自分のものでなくなるような苦しみは、想像を絶するものだったでしょう。

スポーツの世界、特にオリンピックでは、何を「女性選手」の基準にするかという課題が非常に問題となっています。セメンヤ選手の他にも、同じように見た目だけで性別に疑いをかけられた女性選手、またそのせいで完全に選手生命を絶たれてしまった選手は数多く存在してきました。

性別疑惑がかけられる上で「女性らしい見た目」の基準が「健康な白人女性」を元に計られていたことや、他の性別疑惑をかけられた女性選手もほとんどが南側諸国出身であったことから、これは性差別だけでなく黒人女性に対する人種差別だとしても問題になりました。

これらの女性オリンピック選手に対する性別検査の問題は、単純に「男女じゃない性を認めよう」「スポーツの公平性を考えよう」という話ではありません。

むしろ体の構造の違いを理由に「男女の分類」を問うこと自体がDSDの方々にとっての人権侵害となり、高アンドロゲンの女性を「見た目が男っぽい」という理由だけで疑いをかけ「治療を受けない限り女としては認めない」と選手としての権利を奪ったことは、立派な女性差別となるのです。

他の選手の裁判などを通して、2015年より、ようやくオリンピックでの女性に対するテストステロン値の規約は保留となりました。

(トランスジェンダー女性の場合は、テストステロン値を一定まで下げないと、依然女性選手として認められていません。)

スポーツの世界では皆「公平な競争」であることを最重視しているため、性別の線引きを無くすことは簡単な問題ではありません。

しかし、私たちは当たり前のように「胸があり、子宮もある丸みのある身体が女性」「胸がなく、筋肉がつきやすいの身体が男性」と認識していますが、生物学的に男女をはっきりと区分することは実は極めて難しいのです。

それなのに「一部の人による基準」で制約を設け、他人が「女のからだ」「男のからだ」を決めることの危うさを、私たちは考えていく必要があります。

DSD(インターセックス)の有名人など

DSDの方々の中には、メディアに自身の症状を公言しながら活躍している人もいます。

ベルギー出身のモデル、ハンネ・ギャビー・オディールさんはその中の1人です。

Hanne Gaby Odiele

ハンネ・ギャビー・オディール(Hanne Gaby Odiele)

1987年10月8日生まれ。2005年に、ニューヨークコレクションでMARC BY MAC JACOBSやROBARTEなどのモデルとしてランウェイデビュー。その後もCHANELやPRADAなど多くのショーで活躍し、MULBERRYやBALENCIAGAのキャンペーンでも顔となった世界トップモデル。

彼女は、自身がアンドロゲン不応症(染色体がXYで体内に精巣があるが、外性器や体は女性型に育つ)であると公表しています。

彼女が10歳の時、医師から両親に「体内にある精巣が癌になる可能性がある」と告げられ精巣を摘出、そして18歳の時に外性器の形成手術を受けました。

そのような自身の経験も踏まえ、彼女はDSDの子どもたちが、本人の同意のないままに手術を受けさせられている事実を伝えるために声をあげはじめました。DSDの子どもたちの中には、自分のからだの状況をしっかりと理解できない段階で手術を強制されるケースが多くあり、その手術の内容も医学的には不要で「女性らしい・男性らしいからだ」にするためだけのものである場合があるといいます。

彼女はDSDの若者を支援する団体「interACT」とパートナーシップを結び、DSDの子どもに同意なしに行われる性器手術に対して声をあげ続けました。そして2015年、国連により、「本人の同意なしに行われる性器手術は人権侵害である」と発表されたのです。

彼女の前向きで建設的な行動は社会に確かな変化をもたらしました。

また、彼女は一貫して「わたしたちは“普通”」という姿勢をとっており、そのことも多くのDSDの方々の背中を押し続けてきたことでしょう。

DSD当事者の方・周りの方に向けて

最後に、この記事を読んでいる方の中には、DSD当事者の方やご家族、その周りの方などもいらっしゃるかもしれません。

当事者の方にも、そうでない方にも、これから情報を得るヒントとなるようなサイトをいくつか紹介していきたいと思います。

少しでも参考になれば幸いです。

nexdsd JAPAN 性分化疾患情報

↑の総合サイトはこちら

こちらは、世界のDSDサポートグループと連携し、DSDに関する情報を日本に発信しているネクスDSDジャパンという団体です。

日本ではまだ情報の乏しいDSDについて、基礎知識から世界の当事者の情報まで海外の資料の翻訳なども含めてまとめられています。

「DSDの家族のためのハンドブック」も公開中です。

客観的かつ当事者中心の資料が多く非常に参考になるため、DSDの方もそうでない方も是非一度訪れてほしいサイトです。

性分化疾患:PracticaDSD

PracticaDSDは、DSDに関するよくある質問などをまとめたブログです。

幅広い疾患についての情報がまとめられており、情報の引用元として海外にいるDSDの方々の実際の様子なども知ることが出来ます。

AIS-DSDサポートグループ

AIS-DSDサポートグループは、日本初となるアンドロゲン不応症サポートグループです。

アメリカのAIS・DSDサポートグループとも連携しているので、AISを持つ同じ境遇の女性、またその医療従事者と、グローバルに繋がることができるよう活動しています。

※上記サイトは、あくまで情報リソースやコミュニティーのひとつとして紹介しております。

DSDのからだの状態は一人ひとり異なるため、医学的な問題などに関しては、専門の医師に相談されることをおすすめします。

おわりに

DSDについてたっぷり紹介させて頂きましたが、いかがでしたか?

最近では性的マイノリティを形容する際に、「性の多様性」という言葉がよく使われています。

では、「体の多様性」に関しては?

DSDを持つ人々の声は、社会にはまだ非常に届きにくい現状にあります。

これを読んでいる方の中には、LGBTアライや当事者の方も多くいらっしゃるかもしれません。

是非LGBTなど「性の多様性」について発信する際に、同時にDSDについても正しい情報を伝え、支援を広げていっていただけたらと思います。

人は誰だって、1人ひとり違います。「女性のからだ」にも様々なかたちがありますし、「男性のからだ」にも様々なかたちがあります。他者を他者として、全ての人が尊重し合える社会を目指していきたいですね。

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