SOGIハラ・SOGIとは?【読み方から事例、対策まで】
SOGIとは、性的指向(好きになる性・Sexual Orientation)と性自認(こころの性・Gender Identity)の観点からみた一人一人の持つ属性で、SOGIを理由とする不当な差別的言動・嫌がらせが「SOGIハラ」です。
性的な嫌がらせをするセクシュアルハラスメント、略してセクハラ。
地位や役職の優位性を利用して相手に精神的・肉体的苦痛を与えるパワーハラスメント、略してパワハラ。
飲酒を強いるアルコールハラスメント、略してアルハラ……
「○○ハラスメント」を略した「○○ハラ」は、ニュースなどでも毎日のように取り上げられています。
では、「SOGIハラスメント」改め「SOGIハラ」について、皆さんはご存知でしょうか?
「そもそもSOGIってどういう意味?」「SOGIってどう読むの?読み方は?」と思われた方も多いでしょう。
そこで今回は、SOGIの定義とあわせて「SOGIハラ」について詳しくご紹介していきます。
誰かのことを気づかぬうちに傷つけることがないように、ぜひご一読ください。
SOGIとは?
LGBTという呼称が広まる一方、SOGIという考え方が国連を中心に広まりつつあります。読み方としては、ソジやソギ、もしくは語末を伸ばしてソジーやソギーと読むことが多いです。また、アルファベットをそのままエスオージーアイと読むこともあります。
SOGIとは、Sexual Orientation and Gender Identityの略で、日本語に落とし込むならば「性的指向と性自認」ということになります。
性的指向とは、広い意味では好きになる性のこと。性自認とは自分で認識している性のことを指します。
LGBTという言葉は、セクシュアルマイノリティの存在を世の中に広めました。しかし他方で、「レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーをはじめとするセクシュアルマイノリティ」と「それ以外」という線引きをしてしまうという欠点もありました。
では、SOGIという言葉はどうでしょう。
SOGIという言葉を用いることで、自分の好きになる性はどのようなものか(もしくは好きにならないのか)、自分の性をどのように認識しているか……といったように、「性にまつわることはすべての人に関係する」ということがわかります。
気をつけてほしいのは、LGBT=SOGIというわけではありません。LGBTとは特定の身体的性、性自認、性的指向を持つ人たちの総称であった一方、SOGIはすべての人の属性を表すものです。
RPGでたとえるならば、SOGIがすべてのキャラクターがもつ「タイプ」を指し、LGBTは炎タイプ・草タイプ・水タイプ・雷タイプといった個別のものを指す……と考えるとしっくりくるでしょうか。
このように、すべての人に関係するもの、言い換えれば「他人事にしない」概念としてSOGIは浸透しつつある一方、SOGIに関するハラスメントのことを「SOGIハラ」と呼ぶことも増えてきました。
SOGIハラって何?
2018年11月6日の日経産業新聞で、以下のようにSOGIハラが取り上げられました。
「SOGI」(ソジ)は好きになる人の性別を示す性的指向(Sexual Orientation)と、自身が認識する性別を示す性自認(Gender Identity)の頭文字から取った言葉。心の性が一致しない学生に戸籍上の性の制服を強要することや、カミングアウトしたことなどを周囲に言いふらす「アウティング」などがSOGIハラにあたる。異性愛者らにとって何気ない言動も当事者らを傷つけている可能性がある。
「SOGIハラ」に注意 LGBT、就活で4割体験
新聞に掲載されるという時点で、世の中の関心が非常に高まっていることがうかがえます。
現在は、LGBT法連合会、国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチほか有志を中心に、SOGIハラに関する事例を漫画調で紹介したり、アンケート調査を実施する「なくそう!SOGIハラ」という動きがあります。
ちなみに、こちらでは以下のようにSOGIハラは説明されています。
好きになる人の性別(性的指向:Sexual Orientation)や自分がどの性別かという認識(性自認:Gender Identity)に関連して、差別的な言動や嘲笑、いじめや暴力などの精神的・肉体的な嫌がらせを受けること。また、望まない性別での学校生活・職場での強制異動、採用拒否や解雇など、差別を受けて社会生活上の不利益を被ること。 それらの悲惨なハラスメント・出来事全般を表す言葉です。
なくそう!SOGIハラ
わかったような、わからないような……といった方も多いのではないでしょうか。
そこで次の章では、SOGIハラの具体例を挙げて説明していきたいと思います。SOGIハラをしないためには、どういったSOGIハラがあるのかを知っておきましょう。
SOGIハラってどんなものがあるの?~具体例をもとに考える~
先ほどご紹介した「なくそう!SOGIハラ」では、以下の5種類がSOGIハラとして説明されています。
- 差別的な言動や嘲笑、差別的な呼称
- いじめ・暴力・無視
- 望まない性別での生活の強要
- 不当な異動や解雇、不当な入学拒否や転校強制
- 誰かのSOGIについて許可なく公表すること(アウティング)(参考:なくそう!SOGIハラ)
では、これら一つ一つについて、具体的な事例を挙げて説明していきます。
なお、過去にSOGIハラを受けて深く傷ついたことがある方にとってはフラッシュバックの原因ともなりうるので、お気をつけください。
1. 差別的な言動や嘲笑、差別的な呼称
「なんだよお前ホモかよ」
「ホモってきもちわるいよな」
「ホモ」とは同性愛者を意味する「ホモセクシュアル」の略称なのですが、上のセリフのように、日本では男性同性愛者の蔑称として使われてきた歴史があります。
たまに、当事者が自分のセクシュアリティに関して「ホモ」と表現することもありますが、そういった場合を除いてそもそも男性同性愛者のことを「ホモ」と表現することは、非常に差別的な言動となりますので、しないようにしましょう。同じように、女性同性愛者のことを「レズ」と表現することも差別的な言動となります。
そしてそのうえで、あたりまえですが「同性愛者だから気持ち悪い」というのは理不尽であり、同性愛者を深く傷つけます。
2017年9月、フジテレビで放送された「とんねるずのみなさんのおかげでした」にて、「保毛尾田保毛男(ほもおだほもお)」というキャラクターが登場して非難が殺到したのは記憶に新しいと思います。番組内のコントでは、男性同性愛者に対する差別的な言動が数多く見られました。
SOGIに対する意識が完全に欠落している方もいる、と明らかになった典型的な例ではないでしょうか。
2. いじめ・暴力・無視
「あいつ女のくせに女のこと好きになるらしいぜ、きもちわりぃ、ハブろ」
その人のSOGIがどうであれ、だからといっていじめていい、なんてことは決してありません。
勝手な偏見からいじめに発展するといったケースは多いのですが、近年は「姉がレズビアンだという理由で自分がいじめられる」といったように、家族がセクシュアルマイノリティだ、という理由でのいじめも報告されるようになってきました。(参考:レズビアンのタレント、牧村朝子さんと対談「”キャラ化”されるLGBT~いじめ実態調査から考える」)
3. 望まない性別での生活の強要
「お前男だろ、だから制服をちゃんと着ろ」
身体的性を基準に男女別の制服を強要する学校や職場では、身体的性と着たい制服の性が異なる方が苦しんでいます。
私服勤務を可能とする職場や、那覇高校など制服を自由選択制にする学校は増えてきました。(参考:制服の性差撤廃 那覇高が選択制導入 3学期から LGBTや利便性に配慮)
しかし、いじめや差別的言動が心配で結局着たい服を着ることができない、といったケースも多いようです。
4. 不当な異動や解雇、不当な入学拒否や転校強制
「なんで男なのに女の制服を着ているんですか、うちの学校を辞めてもらいますよ」
このケースの場合、その人の地位が奪われることをチラつかせることで、その人のありたい姿ではない状態での生活を強いています。
強いるだけでなく、実際にその人のSOGIを理由に左遷、といったケースもありえます。韓国映画『私の少女』ではレズビアンであるがゆえに左遷となったヨンナムの半生が描かれています。(参考:レズビアンとわかったら左遷?|GLASS GEM POPCORN)
5. 誰かのSOGIについて許可なく公表すること(アウティング)
「あいつホモらしいよ」「うわ、まじで?」
勇気を出してカミングアウトしたら、それを勝手に言いふらされ、馬鹿にされた……そして深く傷つき自ら命を絶ってしまった一橋大学アウティング事件は日本を驚かせました。
自分のSOGIについて人に言う義務はありません。カミングアウトするのは、その人には知っていてほしいと思ったからこそ。それを言いふらされれば当然悲しいですし、だいたい相談したことを勝手に言いふらすことはどんな話題であれ許されませんよね。
こういった、誰かのカミングアウトした内容を勝手に言いふらすことを、アウティングと呼びます。
SOGIハラが起こらないようにするには?
では、企業や組織においてSOGIハラが起こらないようにするには、何をすれば良いのでしょうか。
就業規則に盛り込む
一番効果的なのは、就業規則に「SOGIによる差別の禁止」を盛り込むことです。
「ルールを変えるだけじゃ意味ないでしょ」
と感じる方も多いでしょうが、就業規則の変更は社内外に告知・共有されるものです。つまり、「この会社/うちの会社は規則を変更して、SOGIハラが起こらないようにしたんだ」と企業のスタンスが求職者や従業員に伝わります。
注意喚起や問題解決の根拠となるだけでなく、意識改革に作用するという面でも、就業規則を変えることは効果的です。
なお、厚生労働省の出している「モデル就業規則」にも、SOGIハラ禁止に該当する記載があります。
第12条
(厚生労働省「モデル就業規則(令和3年4月)」)
職務上の地位や人間関係などの職場内の優越的な関係を背景とした、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により、他の労働者の就業環境を害するようなことをしてはならない。
(その他あらゆるハラスメントの禁止)
(厚生労働省「モデル就業規則(令和3年4月)」)
第15条
第12条から前条までに規定するもののほか、性的指向・性自認に関する言動によるものなど職場におけるあらゆるハラスメントにより、他の労働者の就業環境を害するようなことをしてはならない。
【第15条 その他あらゆるハラスメントの禁止】
(厚生労働省「モデル就業規則(令和3年4月)」)
恋愛感情又は性的感情の対象となる性別についての指向のことを「性的指向」、自己の性別についての認識のことを「性自認」といいます。性的指向や性自認への理解を深め、差別的言動や嫌がらせ(ハラスメント)が起こらないようにすることが重要です。
研修・その他社外のサービスを利用する
SOGIについての正しい知識をつけることや、ハラスメントの起こらない風土づくりに効果的なのは、外部機関の研修を受けることです。
私たちJobRainbowも、SOGIに関して
- 研修:LGBTについて深く知り、学べる研修でダイバーシティな職場環境が作れる(役員・管理職向け/人事・採用担当者向け/全社員向け/店長・エリアマネージャー向け)
- コンサルティング:人材の受け入れや会社の体制・制度づくりまでトータルに相談
- 外部相談窓口:当事者が社内の窓口に相談できず、SOGIハラの発見が遅れて訴訟に発展……というリスクを防ぐための、信頼できる外部相談窓口
- e-learning
など、さまざまな形式のサービスを提供しています。
もちろん、全種類のサービスではなく、「特に必要だ」と感じるものだけご利用いただくことも可能です。
とくにe-learningは、時間・場所を選ばずに視聴できることもあり、コロナ禍で全社員が集まる機会が減ってから人気が高くなっています。
「ダイバーシティ&インクルージョンとは?」「LGBTの基礎知識を知ろう」「LGBTと職場対応、あなたができること」「職場でのパワハラ防止〜日々のコミュニケーションのアップデートを目指そう〜」など多岐にわたる講座を提供しています。
JobRainbowのサービスを利用した企業例
実際に弊社のLGBT研修やe-learningを利用した企業様の、生の声をご紹介します(以下、敬称略)。
LGBTQや介護って自分から言い出せないこともあり、「周りにそんなにいないのではないか」「本当に今必要?」と思われてダイバーシティ推進では後回しにされてしまいがちです。いろんな状況で働く人がいて、当事者は身近にいる、ということが可視化されると話が進んでいきます。そういう意味では、新社員から役員まで見られるeラーニングは、階層に関わらない理解促進につながりました。
(引用:「ワンストップでアドバイスしてくれる安心感。渋谷を拠点とする不動産会社の「誰もが働きやすい」には、LGBTQへの視点がありました。」)
LGBTに対する取り組みにおける当社側の課題は2つあると思いました。
(引用:「従業員の幸せがお客様より大事」? 従業員の多様な「物語」が尊重される飲食業界の「異端児」)
まず1つは、ダイバーシティが大事だと考えていても、知識がなければ自信を持って対応できないこと。もう1つは、当事者とじっくり対話してみないと、想像しかできず実際に効果的かわからないこと。
でもJobRainbowの勉強会などで知識を得ると、「そうなんだ!」の後、「でもそんなこと、ちょっと考えたらあたりまえだな……」と痛感します。LGBTについて知らないからといって勝手に考えることをやめてタブー視していた自分達に気づき、社内の制度を見直すきっかけが生まれました。
弊社にはダイバーシティ推進専門の部署はなく、人材開発担当が社内のダイバーシティ推進から採用までを担っています。御社は採用・コンサルティング・外部相談窓口など多岐にわたるサービスを提供していらっしゃるので、人材開発の業務全般をワンストップで見てくださりそうだな、と思いお話を伺いました。
(引用:「ワンストップでアドバイスしてくれる安心感。渋谷を拠点とする不動産会社の「誰もが働きやすい」には、LGBTQへの視点がありました。」)
JobRainbowさんのeラーニングを全社で導入しているのですが、今年入社の新社員たちからの反応が非常によく、「社内研修の中で一番気づきがあった」「ダイバーシティについて知ってはいたがきちんと学んではこなかったので、社会人としてこういう意識を持つべきだとわかってよかった」といった声が上がりました。
(引用:「ワンストップでアドバイスしてくれる安心感。渋谷を拠点とする不動産会社の「誰もが働きやすい」には、LGBTQへの視点がありました。」)
研修受講をお考えのご担当者様は、ぜひこちらの実例紹介ページもあわせてご覧ください。
また、「研修はちょっと……」とお悩みの方は、JobRainbowの無料ダウンロード資料も是非ご活用ください。
LGBTフレンドリー企業マニュアル、同性パートナーシップに関する規程の雛形など、応用の効く資料を無料で配布しております。
SOGIハラのない職場にすることで、全ての人が働きやすい環境を実現しませんか?
おわりに
うすうす感づいた方もいらっしゃるでしょうが、「SOGIハラってどんなものがあるの?~具体例をもとに考える~」の1.から5.は密接にかかわっています。
カミングアウトした内容を勝手に言いふらされ、その結果差別的な言動に苦しみ、「職場環境のために」などといって異動を命じられる……といったように、SOGIハラは連動して起こることも多いです。
そんな中で私たちにできるのは、SOGIはすべての人に関係があり、LGBTの方だけの話ではないということをきちんと知ることです。そうすれば、SOGIを理由とした不当な言動はなくなっていくでしょう。
性自認が男だから〇〇しないのはおかしい、性的指向が女性に向いているのだから〇〇だ……こういった「あたりまえ」は、本当に「あたりまえ」でしょうか。私たちは一度立ち止まって考えてみる必要があります。
たまに、
「SOGIハラに気をつけていたら、まともにコミュニケーションがとれないだろ!」
と言う方もいらっしゃいます。
ですが、人のことを傷つけるかもしれないコミュニケーションが、果たして必要でしょうか。
誰もが生きやすい社会にしていくには、そうした認識自体を改めていく必要があります。
LGBTフレンドリーな企業には、研修などを通じてSOGIに関する認識がきちんとあるところが多いです。そんな企業・職場の情報をもっと詳しく知りたい方は、私たちJobRainbowをご活用ください。