ポリセクシュアルとは【バイセクシュアル・パンセクシュアルと何が違う?】
ポリセクシュアル(Polysexual)とは、複数のセクシュアリティを好きになるセクシュアリティを指す。
近年、LGBTをカミングアウトする芸能人が活躍していたり、2月14日のバレンタインデーには、全国13組の同性カップルが同性婚の承認を求めて提訴したりと、「LGBT」という単語は改めて注目されている。(参考:同性婚訴訟、2月14日に全国一斉提訴へ)
「LGBT」と聞くとレズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーを思い浮かべる方が多いかもしれないが、それ以外にも、セクシュアリティがあることはご存じだろうか。
実は数えきれないほど存在しているセクシュアリティ。その中で今回は、バイセクシュアルと混同されやすい「ポリセクシュアル」について解説していきたい。
ポリセクシュアルとは?
ポリセクシュアル(Polysexual)は、複数のセクシュアリティを好きになるセクシュアリティのことで、多性愛、複数性愛と呼ばれることもある。全てのセクシュアリティを好きになるわけではなく、好きにならないセクシュアリティも存在する。
例えば、トランスジェンダー女性、クエスチョニングの人は好きになるけど、シスジェンダー(身体的性と性自認が一致している)男性は好きにならない、など複数のセクシュアリティを好きになり、かつ好きになるセクシュアリティに条件がある方はポリセクシュアルである。
バイセクシュアルとの違い
バイセクシュアル(Bisexual)とは、「男性も女性も好きになる」セクシュアリティ。日本語では両性愛という。
ポリセクシュアルが「複数」のセクシュアリティを好きになるのに対して、バイセクシュアルは「男性」と「女性」の2つのセクシュアリティを好きになることがある。
例えば、バイセクシュアルの方は「男性だったらこんな人、女性だったらこんな人が好き!」といったように、「男性」と「女性」2つのセクシュアリティを好きになる。
それに対してポリセクシュアルの方は、「こういうセクシュアリティの人を好きになるなあ」といったように2つに限らず、複数のセクシュアリティを好きになる。こうした点がバイセクシュアルとポリセクシュアルの違いである。
なお、意味としては上記の通りだが、実際は「バイセクシュアル」の方が意味が通じやすいこともあり、当事者の中で「バイセクシュアルの一種」として扱われることもある。
パンセクシュアルとの違い
ポリセクシュアルは、パンセクシュアルとも異なる。
パンセクシュアルとは、「好きになるにあたり相手のセクシュアリティは関係ない」という考えをもったセクシュアリティである。第三者から見るとバイセクシュアルと似ており、混同されることが多く、こちらもまた「バイセクシュアルの一部」と扱われることもある。
パンセクシュアルの場合、好きになる相手のセクシュアリティは関係ないため、全てのセクシュアリティを好きになりえる。ここが、ポリセクシュアルとの違いである。
ちょっと難しいかもしれないが、
バイセクシュアル
……相手のセクシュアリティを意識して、「男性」と「女性」を好きになる。
ポリセクシュアル
……相手のセクシュアリティを意識して、複数のセクシュアリティを好きになる。
パンセクシュアル
……相手のセクシュアリティを意識しないので、全てのセクシュアリティを好きになりうる。
これが、それぞれのセクシュアリティのポイントである。
ポリセクシュアルは複数の人を好きになるの?
「複数性愛」「多性愛」と聞くと、「複数の人を同時に好きになるの?」と思う人もいるかもしれない。
これは、バイセクシュアルやパンセクシュアルなど複数のセクシュアリティを好きになる人に対してよくぶつけられる疑問だ。
結論から言うと、もちろんそういう人もいるかもしれない。だが、 ヘテロセクシュアル(異性を好きになる人)で浮気をする人・しない人がいるように、バイセクシュアルでもポリセクシュアルでも、浮気をする人はするし、しない人はしないのだ。
ちなみに、セクシュアリティに関係なく、複数の人と合意の上で恋愛関係を結ぶ「ポリアモリー」を実践する人がいる。同性婚が認められておらず、かつ一夫一婦(モノガミー)制の日本ではなかなか馴染みがないかもしれないが、ポリアモリストの方たちは関係者全員の合意を得た上で恋愛関係を結んでいるので、「浮気」や「不倫」とは違う。先日「まんがいちTV」というバラエティー番組でも特集が組まれていた。
また、つい最近まで放送されていた北川景子さん主演の「家売るオンナの逆襲」でも、ポリアモリーのような生き方をする方々が登場している。
おわりに
今回はポリセクシュアルについて解説した。聞いたことがなかったという人が多いかもしれないが、セクシュアリティが多様であることが感じられただろうか。
はじめにも書いたように、ポリセクシュアル以外にもセクシュアリティは数えきれないほど存在しているし、そもそも本来は第三者が区切り、定義するようなものでもない。「~“だから”このセクシュアリティ」といった決まりはなく、自分がしっくりくる呼称を使えばよい。
性のあり方や恋愛のスタイルは人それぞれである。
「性別は”男”と”女”の二つだ」
「異性を好きになるのが”普通”だ」
と思ってしまう方が多いかもしれないが、性はグラデーションである。好きになるタイプが人それぞれ違うのと同じで、「普通」「あるべき姿」なんてものはない。
世界には多様な人が生きている。「人生」や「幸せ」のカタチが人それぞれ違うように、セクシュアリティもひとそれぞれ。誰か「一部」の人が違うのではなく、私たちも多様な中の一人だということを覚えておきたい。