ジャンル別!おすすめのLGBTに関する本10選と感想
LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーの頭文字をとったセクシュアルマイノリティの総称)をカミングアウトしながら芸能界で活躍する人も増え、LGBTであることをカミングアウトすることのハードルも以前に比べれば比較的低くなったのではないでしょうか。
親しい人にカミングアウトされたとき、自分のセクシュアリティについてきちんと知りたいとき。私たちはLGBTに関する正しい情報を必要とします。
では私たちはどのようにして情報を得るのでしょうか?
たしかにインターネット上には多くの情報があふれています。
しかし、書籍には絵本のような子供でも楽しめるものから、かなり専門書的な学術内容にふみいったものまで、様々なものがあります。
今回のコラムでは、そのなかでも「そうだったのか!」と気づきをもてるような書籍を選抜し、紹介します。
これら友人・同僚や家族からカミングアウトを受けた人、LGBT当事者の子供をもつ人、はたまたLGBT当事者として自身と向き合いたいと思っている人の助けにもなるはずです。
また、紹介する書籍は、
- 子供と大人向け
- 教育現場で働く方や学生向け
- 学術的な内容を知りたい方向け
- 経営者や社会人向け
- 小さな子供やその親御さん向け
といったようにジャンルを分けてご紹介します。
内容量も多~少で示しているので参考にしてみてください。
子供と大人向け
「字ばかりの本は難しい…子供と一緒に読みたい……」
そう思う方にとっての、入門的な1冊になるでしょう。
1. 『13歳から知っておきたいLGBT+』』(2017)
内容
- 性自認、ジェンダーの概念、当事者の体験記(主に欧米の方)
- 10ページ程度の用語集
- スペクトラム
- 性的なアイデンティティと恋愛アイデンティティ
性自認とは?「男性」「女性」だけじゃないってどういうこと?【「わからない」でもいいじゃない】
文章量:少
基本的な構成内容は当事者の体験記なので、少し学術的な内容を知りたい、LGBTに関しての知識や用語解説を見たいという方には物足りなさがあるかもしれません。
しかし、当事者インタビューが写真付きでのっているので、性の多様性を知ったり、LGBTといっても個人個人で違いがあって一様ではないことが分ったりと一度読んで損はないと思います。
見やすさ
写真はとても多く、色彩も豊かなので見ていて飽きません。また図解も多いため、スペクトラムのような少し難しい考え方も比較的簡単に理解することができるはずです。
2. 『LGBTだけじゃ、ない! 「性別」のハナシ』(2016)
内容
- LGBT基礎知識
- パンセクシュアル、アセクシュアル、フレキシブルとは?
恋愛はしない?アセクシュアル(エイセクシュアル)って何?
【LGBT用語解説】パンセクシュアルとは?~バイセクシュアル・ポリセクシュアルとどう違う?〜
インターセックスとは?性分化疾患(DSD)との違い〜日本の現状から有名人まで総まとめ~【“体”の多様性】
文章量:少
筆者自身がインターセックスであり、その筆者とゲイのアシスタントの掛け合いから始まります。
最近メディアの中でよくとりあげられるようになったLGBTについて基本的な知識を紹介しつつ、パンセクシュアル、アセクシュアルやフレキシブルのようなまだ聞きなれない人も多いのでは?といった内容にもふみこんでいます。
見やすさ
四コマ漫画のような形で全編が構成されているので、特別な知識がなくてもスラスラと読めてしまいます。
キャラクターもコミカルで親しみやすいので、若者だけではなく、大人やお年寄りでも楽しめる一冊となっています。
教育現場で働く方や学生向け
「教育現場でのLGBT問題、日常生活のLGBT事情を知りたい!」
そんな方のための書籍です。
3. 『LGBTってなんだろう? -からだの性・こころの性・好きになる性 』(2014)
内容
- LGBT基礎知識
- 教育現場でのLGBTについて考える(トイレ、制服、修学旅行等々)
- 日常生活でのLGBTについて考える(恋バナ、カミングアウト等々)
- 現在の政府や学校の取り組みと制度紹介、授業実態報告
- LGBT当事者の相談窓口紹介
- LGBTに関しての○×クイズ
- カミングアウトをする時、された時
文章量:多
LGBTの基礎知識に始まり、トイレ、学校行事、日常生活の中の話題に至るまで、細かな点まであつかっています。また、○×クイズ、親子、先生対談や当事者のストーリーを挟むなど、読んでいて途中で疲れない工夫があります。
巻末には政府や学校の取り組み紹介、小学校~大学までの授業実態の報告、当事者の相談窓口など、当事者が読んでも得られる内容の多いものになっています。
見やすさ
図解にキャラクターなど、白黒ではあるものの読みやすく、情報も整理されているためサラッと読み進めることができます。また、クイズ形式ということもあり、受動的にならず、主体的に考えられる内容になっているのもおススメです。
4. 『はじめて学ぶLGBT 基礎からトレンドまで (スッキリわかる!)』(2019)
内容
- LGBT基礎知識
- LGBTに関する統計データとその結果に対する批判的考察
- LGBTのイメージと現実のギャップ、ホルモン療法や手術について
- LGBTと学校
- 海外と日本のLGBT事情
- LGBTと市民生活・法律、科学とセクシュアリティの定義
- LGBTビジネス
文章量:多
内容はかなり網羅的になっています。しかし、著者がキャラクター化されていて、先生と生徒の対話形式でお話が進むので、読んでいて専門書的な難しさは感じません。
また、既存のイメージやアンケート調査結果に再びメスをいれているのは一味ちがった視点なので面白いですね。
見やすさ
文字は大きめで色分けもあるので非常に見やすく、キャラクターが沢山出てくるのでハードルの高さを感じません。
学術的な内容を知りたい方向け
少し学術的な内容も知りたい、でも大きな本は持ち運びに大変……
そんな方のための2冊です。
5. 『LGBTを読みとく : クィア・スタディーズ入門』(2018)
内容
- LGBTの基礎知識
- ゲイ・レズビアンの歴史
- トランスジェンダーとは?(同性愛者=トランスヴェスタイト<異性装>?、トランスセクシュアルの概念)
- クィアスタディーズの基本概要と歴史
- 日本社会の現状をクィアスタディーズの観点からよむ
- 読書案内(さらに異なった視点からLGBTを分析した書籍を紹介)
文章量:多
かなり学術的な内容になっていて、その内容も網羅的かつ現状の批判的なものになっていて、学術的な情報をえたいと考えている人にとっては最適だと思います。
また、LGBTという言葉や表向きLGBTフレンドリーな社会に隠された闇を独自の視点であばき、問題をなげかけているので読みごたえはバッチリです。
見やすさ
新書のため、持ち運びのしやすさは抜群で、移動中などにさっと読むことができるのはとてもいいポイントです。しかし、図解はほぼないのであくまで一歩ふみこんだ内容を求める人に向いている1冊といえます。
6. 『カミングアウト』(2018)
内容
- LGBT基礎知識
- カミングアウトのプロセス(する選択、しない選択)or(する側、される側)
- 法・制度とLGBT
- 教育現場でのLGBT当事者
「カミングアウト」って何?~LGBT カミングアウトストーリーまとめ~
内容分量:多
LGBTのカミングアウトに特に焦点をおいて話をすすめており、それに付随する形でLGBTに関する法や社会状況を紹介しています。
一橋大学ロースクールで起きた事件もケーススタディとして扱っているので、カミングアウトをする側の気持ちとされる側の気持ち、両方の立場にいる人が共感、または考えることのできる内容になっています。
見やすさ
こちらは新書で、大きさとしても持ち運びに便利な文庫本サイズです。また、このサイズの中にカミングアウトを通しての人間関係が、出会いから再構築まで細やかに描かれ、本人や当事者の体験談も紹介されているのは一見の価値アリです。
経営者や社会人向け
「職場でのLGBT研修などを通して学んだことを深めたい!」
「企業としてダイバーシティの考え方を取り入れていきたい!」
という方のための2冊を紹介します。
7. 『職場のLGBT読本』(2015)
内容
- LGBT基礎知識
- LGBT当事者の抱える職場での障壁
- LGBT当事者におこなったアンケートを通した職場環境の現実
- 実際の企業のケーススタディ
- ケーススタディから学ぶアライになるためのポイント
【LGBT用語解説】アライとは?LGBTの当事者でも、そうでなくても、あなたも今日からアライになろう
文章量:中
前半部でLGBTに関しての基礎知識が網羅的に書かれているので、LGBTに関してまだよく分からないといった人でも大丈夫です。
後半部は職場での課題や現状理解、実際の企業のケーススタディが紹介されています。そこでアライになるためのポイント等が説明されるので、理解しやすい構成になっているといえます。
見やすさ
対話形式ですすんでいく内容もあり、図解も盛り込まれているので、カラーではないもの見やすさはあります。また、実際の企業取り組み例が多いので、社会人や就活を目の前にしたLGBT当事者、LGBT当事者の社員や部下をもつ方にも興味深い1冊だと思います。
8. 『LGBTを知る』日経文庫(2018)
内容
- LGBT基礎知識
- 企業とLGBT社員について考える
- ダイバーシティを目指したロードマップ作り
- LGBT層をとりこんだマーケティング
- ケーススタディを用いて取り組みを考える
文章量:多
扱っている分野としては経営学に分類されるため、その内容も企業がLGBTとどう歩んでゆくかというかなり企業側にフォーカスした内容となっています。
しかし、その分ロードマップ作り、マーケティング編やケーススタディなど内容は充実しているので、経営者や社会人向けではありますが、読み応えのある一冊であることは確かです。
見やすさ
こちらも文庫本のため、図解等々はほとんどみられません。しかし、持ち運びのしやすさと値段の手ごろさに加え、内容の充実度もかなりのものがあります。
小さな子供やその親御さん向け
「小さいころから偏見のない心を育みたい!」
「子供に読みきかせられる1冊はないの?」
そう考えている方にぜひおすすめしたいのが次の2冊です。
9. 『くまのトーマスはおんなのこ ジェンダーとゆうじょうについてのやさしいおはなし』(2016)
内容
- カミングアウトの際のトランスジェンダーの葛藤
- ジェンダーについての考え方
- カミングアウトを受ける側の葛藤
文章量:少
エロールの大親友テディベアのトーマスは、実は女の子になりたいと願っていました。しかし、それをエロールに話せばこれ以上友達ではいられなくなるのではないかと思い、悩みながらも本当の自分をみせることを決意します。
大親友の真実を知ったエロールの答えとは……続きは絵本でぜひ。
見やすさ
絵本のため読みやすさはとてもあります。また、作者の実父がトランスジェンダーであり、その経験をもとに自身の息子のために書いた本なので、内容や微妙な心理描写は読んでいて引きこまれるポイントではないでしょうか。
絵も素朴でとてもかわいらしいので、子供も喜んで読んでくれると思います。
10. 『いろいろ いろんな かぞくの ほん』(2018)
内容
- 人種や性別にとらわれない様々な家族のカタチ
文章量:少
こちらはその題名の通り様々な家族のカタチを紹介する絵本です。日本ではお父さんとお母さんのいる家庭というのが“普通”だとされてきましたが、この絵本は家族の正しい形などは決っていないということを教えてくれます。
見やすさ
絵本のため小さな子供に読み聞かせたり、またプレゼントとして贈ったりしてもいいのではないでしょうか。この絵本ではLGBTの家族が特別に大きく取りあつかわれているわけではありませんが、その特別視しないこともこの絵本のよいところだと思います。
おわりに
インターネット上から得られる便利な情報とはまた一味違ったものが書籍にはつまっています。もし少しでも気になったものがあれば、目を通してみてください。その時間があなたの視野を、心を、発想をより豊かなものにしてくれるでしょう。