面接にのぞむ前に決めておくべきこととは?【LGBT就活・転職ガイド 6-2】
雰囲気に流されたカミングアウトは避ける
カミングアウトのスタンスを決めずに面接にのぞんだところ、「苦労した経験は?」と聞かれ、とっさに「セクシュアリティが原因で不登校になりまして……」といってしまい、面接官から深掘りされてパニックになってしまった、という人がいました。
自己分析のコラムでお話ししたように、カミングアウトのメリット・デメリットをふまえ、スタンスを決めておかないと、動揺してしまったり、仕事と関係のない話にずれてしまったり、思わぬ失敗につながるため、気をつけたいところです。
面接をスムーズに進めるためにも、改めてカミングアウトのスタンスを確認してから面接にのぞみましょう。
カミングアウトのタイミングは、自己PRや体験にからめて話そう
カミングアウトをする場合は、そのタイミングをあらかじめ考えておきましょう。ポイントは、次の例のように自己PRや体験にからめて話し、面接を有利に運ぶことです。
面接官「学生時代に苦労したことは何ですか?」
回答例「はい。高校生のとき、1年間の不登校を乗り越え、学校を卒業したことです。私はゲイで、中学生時代に同性に惹かれることに気づきました。そのことが原因でいじめられ、高校2年生で不登校になりました。
しかし、家族の支え、友人の支え、先生のサポートを経て、学校に戻ることができました。
1年間の勉学の後れをとりましたが、いじめられたことをいい訳にしたくないと奮起し、一層勉強に励み、受験では志望の大学に進むことができました。
この苦労を乗り越えた経験が、大きな自信になり、逆境を励みに努力をする力が私の最大の強みと自信になりました」
このように答えることで、LGBTであることをカミングアウトしつつ、強みをアピールすることができます。LGBTの話に限らず、ネガティブなエピソードをポジティブな話につなげて伝えることは、面接で常に意識してほしいポイントです。ネガポジ変換も参考にしてください。
面接終了前のタイミングで伝えるときは
自己PRや志望動機のエピソードの中で伝えられなかったり、タイミングを逃してしまった場合は焦らずに、次の例のように面接の最後に伝えるのもひとつの手です。
面接官「最後に何かご質問などございますか?」
回答例「今日は貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございました。最後にお伝えしておきたいことがあります。私はトランスジェンダーです。
女性の身体をもって生まれてきましたが、心の性別は男性です。
御社に入社した際も、性自認である男性として働きたいと思っています。
面接の趣旨とは関係のないことかもしれませんが、私にとっては大切なことなのでお話しさせていただきました。
性別と仕事の能力はまったく関係ないと私自身思っておりますので、入社した暁には御社で一人のビジネスパーソンとして、精一杯活躍できるよう、これからも一層励んでまいります」
カミングアウトをしないときも準備をしておこう
カミングアウトをしない場合でも、しないなりに対策を練っておくことをおすすめします。
何となくその場しのぎに誤魔化してしまうと、人を見るプロである面接官に「何か隠しごとがあるのではないか」と不信感をもたれたり、つっこんだ質問をされて困ってしまうことがあるかもしれないからです。
たとえば「学生時代に力を入れたことは何ですか?」と聞かれたとします。本当はLGBTサークルの代表を務めたことですが、何となく国際交流サークルの話に置き換えて話した結果、あまり心のこもっていないエピソードになってほしい、面接官に「あまりがんばっていなかったのかな」と思われてしまう可能性があります。
あやふやな発言は本心でないと伝わる可能性が高いので、あらかじめ無理のない回答を考えて、練習しておくとよいでしょう。
隠すことはなんとなく後ろめたい気持ちになってしまいますが、カミングアウトをするか・しないかは、どんなときも本人が選択することです。自分の選択に誇りをもってください。
Q. カミングアウトをして面接にのぞむことにしました。性自認に合った性表現やふるまいにまだ慣れず、ルックスにも自信がありません。
面接までに時間があるのならば、性自認に合った表現で、なるべく多くの人に会って話をし、少しずつ慣れていきましょう。
できれば社会人と話をしたり、表現やふるまいのアドバイスをもらったり、面接の練習をしてもらえたらベストです。
ただ覚えておいてほしいことは、男性に見えるか、女性に見えるかは仕事の本質ではないということです。
それよりも社会人として礼儀あるふるまいができるか、適切な言葉を使えているか、清潔感があるかなどの重要なことを忘れずに、過度に意識しすぎないようにしましょう。
ルックスは選考には関係ありませんが、身だしなみは第一印象を左右する重要なポイントです。堂々としたふるまいで笑顔を心がけ、面接を楽しむくらいの気持ちでのぞんでください。
Q. カミングアウトをするかどうかはまだ決めていませんが、いざというときのためにどのように練習しておけばよいでしょうか?
自分がLGBTであることを知っている家族や友人に頼んで、想定される質問集にもとづき、あらゆる場合の予行演習をしておきましょう。
練習相手がいなければ、一人で練習する様子をスマホで録画して、自分の話し方や話している内容を振り返り、良い点と悪い点を書き出して、改善していくことをおすすめします。
Q. カミングアウトの仕方にコツはありますか?
いつ誰にカミングアウトするかによっても、伝え方はさまざまです。それが友人であっても面接官であっても、ひとつ意識してみるとよいのが「カミングアウトした先に、相手に何を求めるのか」という意図を伝えることです。
エピソードの中で単に触れるだけなのか、理解しておいてほしいのか、あるいは福利厚生など制度面で確認したいことがあるのか、ということがはっきりしているだけで、相手の受け取りやすさは大きく違ってきます。
唐突にカミングアウトだけをしてしまうと、マイナスな印象につながることもあるので、自己PRや志望動機などのエピソードの中に織り交ぜながら伝えるとよいでしょう。
POINT
- カミングアウトは自己PRや体験にからめて話すとよい
- カミングアウトをするか・しないかは、自分で選択する
- カミングアウトをすると決めたら、タイミングや話し方をあらかじめ準備しておく
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