世界で活躍するトランスジェンダーモデルまとめ
最近では、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの頭文字をとった、セクシュアルマイノリティの総称)であることを公表している芸能人や著名人も増えてきており、テレビや雑誌などでその活躍を目にする機会も多くなってきました。
そんな中で2019年8月、ヴィクトリアズ・シークレットとシャネルという2つの有名ブランドが、トランスジェンダーのモデルを起用したというニュースをご存知でしょうか。2社ともトランスジェンダーモデルの起用は初めてのことで、とても話題になりました。
このように、トランスジェンダーモデルの方々の活動の場が広がり、性別の垣根を超えて自分らしさを表現できる環境が整えられつつあります。
そこで今回は、世界で活躍しているトランスジェンダーモデルの方々をご紹介します。
記事の後半では、海外のモデルさんだけでなく日本で活躍するトランスジェンダーの方々についても取り上げています。
【海外編】
1. テディ・クインリヴァン
テディさんは、16歳のときに性別適合手術を受け、以来女性として生活しています。端正な顔立ちとすらりと伸びた手足をもち、誰もが見とれてしまうような美しさの持ち主です。自身がトランスジェンダーであることを公表する以前、10代の頃からルイ・ヴィトンやグッチなどの有名ブランドのショーで活躍し続けていましたが、2017年のカミングアウトを経て、今もなおモデル業界の第一線でその存在感をおおいに発揮しています。
そんな彼女が、2019年8月、シャネルの新しいビューティ・キャンペーンに大抜擢。新ビューティラインの顔として選ばれ、シャネルの公式インスタグラムには、彼女のメイク動画が投稿されています。これまでシャネルは、トランスジェンダーを公表しているモデルを起用したことはありませんでした。アイコニックなイメージだったラグジュアリーブランド・シャネルがトランスジェンダーモデルを起用したことは、ファッション業界において、包括性(インクルーシブネス)をより広めていくきっかけになるとされ、多くの注目を集めています。
2. ヴァレンティナ・サンパリオ
ヴァレンティナさんは、ブラジル出身のトランスジェンダーモデルで、その抜群のスタイルはもちろん、力強さと可憐さとをもちあわせた魅力的な表情が印象に残ります。これまでもブラジル版の『ELLE』やフランス版『VOGUE』など、有名ファッション誌の表紙を飾ってきました。ヴォーグがトランスジェンダーのモデルを誌の表紙に起用したのは初めてのことで、さらに、3月号は同誌の中でも重要視されている月刊で、その重要な月の表紙に起用されたことがより多くの人の関心を集めました。彼女を起用した仏ヴォーグは、「人権の尊重」と「前進することの大切さ」というメッセージを表紙に込めたそうです。(参考:同誌史上初!トランスジェンダーのモデルを表紙に起用した仏ヴォーグ誌に称賛の声)
2019年8月には、ヴァレンティナさんのヴィクトリアズ・シークレットへの起用も発表されました。ヴィクトリアズ・シークレットは、ショーのキャスティングディレクターが「トランスセクシュアルやプラスサイズのモデルは起用しない」と発言したことによって、人々の批判を浴びていました。そんな中、今回ヴァレンティナさんを起用したことは、ブランドの方向性を今後大きく変化させていく意思表示にも考えられます。これまでジェンダーやファッションの分野でマイノリティとされてきた人々のための、多様性・包括性を取り入れた新しいヴィクトリアズ・シークレットへの期待が高まります。
3. ライズ・アシュリー
ライス・アシュリーさんは、19歳になるまでトランスジェンダーという存在を知らなかったそうです。自分自身もトランスジェンダーであると自覚した彼は、24歳のときにトランジション(ホルモン治療や性別適合手術などによって、身体の性を自認する性に適合させること)を始め、今では男性モデルとして世界中で活躍しています。アメリカの高級百貨店・バーニーズの全国的な広告やディーゼルのキャンペーンにも起用されただけでなく、俳優としての活動も行なっており、幅広くその才能を発揮しています。
アメリカの男性誌『GQ』の英国版のコラムの中で、彼のディーゼルのキャンペーンへの起用は、性差別が課題となっているファッション業界における、包括性を追求するための重要な契機とされています。レイスさんはトランス男性であることによって業界内で不当な差別を経験しましたが、差別に屈することなく自分の男らしさに自信をもち、自分らしく振る舞う姿に多くの人が勇気付けられているのではないでしょうか。
4.ベンジャミン・メルツァー
シックなスーツを着こなすベンジャミン・メルツァーさん。彼は、FtMモデルとしてヨーロッパで初めて、世界で最も広く読まれている男性誌『Men’s Health』のドイツ版の表紙を飾ったことで話題になりました。
The Telegraphによるインタビューの中で、同誌の表紙への起用に関し、ベンジャミンさんは「多くの人々が本当の自分を隠している。だからトランスコミュニティの存在を可視化したかった」と語っています。彼は23歳まで女性として生活していましたが、トランジションや肉体のトレーニングを経て、今の男性らしい身体を獲得しました。生まれもった性に縛られず、本当の自分らしさを追求することで、人々の視線や態度を変えられることを証明しています。
【日本編】
1. 佐藤かよ
様々なテレビ番組に出演しモデルやタレントとして活躍している佐藤かよさん。現在はゲーマーとしての活動も積極的に行っており、自身のチャンネルで生放送の配信をしたり、ゲーム関連のイベントに参加したりしています。
2010年、「魔女たちの22時」という番組でトランスジェンダーであることをカミングアウト。メディア上では「美しすぎる男性」として話題になりました。その後もタレント業を精力的にこなし、映画『探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点』ではゲイバーで働くホステス・ヒロミ役として出演を果たしています。その他にもたくさんの広告やショー、イベントに携わり、幅広く活躍しています。
2. 西原さつき
西原さつきさんは、タレント、女優、モデルなどマルチに活躍しており、「女の子らしく」なりたい男性のためのレッスンスクール・乙女塾を創設。自身も運営に加わり、ボイス講座やメイク講座など、女性化のためのレッスンを実施しています。他にも、カンコー学生服のサポーターも務めています。また、2018年1月に4週にわたって放送されたNHKドラマ『女子的生活』では、トランスジェンダー役への「女性らしい所作」の指導を行い、「ともちゃん」という役で出演も果たしています。
この『女子的生活』というドラマは、こちらの記事で詳しく紹介しています。他にもLGBTが登場するドラマを数多く取り上げていますので、興味のある方はぜひチェックしてみてください。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
これまでファッション業界では、非常に限定的な「男らしさ」「女らしさ」が求められ、それらは明確な線引きによって分断されていました。しかし、今回ご紹介したように、トランスジェンダーモデルの方々の活躍によって、その境界線が少しずつ緩和されてきています。
シャネルやヴィクトリアズ・シークレットなどのトランスジェンダーモデル起用をきっかけとして、ファッション業界の課題となっている「包括性」がより広く浸透し、生まれもった性別に関係なく、より気軽にファッションを楽しめるようになっていくといいですね。